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<概要>
 3月スリーマイル・アイランド(TMI)2号炉で、冷却水の大量漏洩による放射能の外部放出事故が発生した。原子力発電が開始されてから世界最大の事故であっただけに、世界の原発国に与えた衝撃は大きく、原子炉の安全確保に何段階もの対策をとる多重防護方式の妥当性が実証されたが、原発では大事故は起らないという確信は崩れた。原発の安全確保は極めて現実的なものとなった。原子力委員会は4月、TMI事故についての情報の収集・分析などの活動を始め、安全確保対策に反映させるべき事項として、いわゆる52項目をまとめ、7月には原子力発電所などに係る防災対策上当面とるべき措置を決定した。9月に動燃(現日本原子力研究開発機構)のウラン濃縮パイロット・プラントが運転開始した。カナダのCANDU 導入問題については、前年初夏から新型転換炉「ふげん」と比較し、検討を重ねてきたが、原子力委員会は8月に導入見送りを裁定し、これで自主開発路線の推進が明確になった。


<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1979年
(昭和54年)
1/10 玄海原発、わが国原発の最長連続運転新記録(256日)を達成  
1/17   米DOEとWH社、使用済燃料隔離パイロットプラント(WIPP)の技術協力で契約
1/19   米NRC、ラムッセン報告(WASH−1400)の要約部分の支持撤回を表明
1/22 通産省(現経産省)、原発立地の円滑な推進をはかるための「公開ヒアリング」を制度化  
1/26 原子力安全委、安全審査に関するダブルチェック大綱を決定  
2/18   スイスで原子力国民投票51.2%対48.8%で原発支持される
2/20   米環境審議会、「原発拡大は不必要」とするエネルギー報告書を発表
2/27 原子炉等規制法一部改正法案が衆院本会議で可決、民間再処理に道を開く(6/1参院通過成立、12/18施行)  
2月 神戸製鋼が開発した非磁性鋼板、JT−60に採用決定  
3/9 東京電力福島第一原発6号臨界(BWR、110万kW) スウェーデン政府、原発12基の運転などを内容とする新エネルギー法案を議会に上程
3/10 女川原発建設に関する漁業補償問題決着  
3/17 政府、海洋投棄規制条約(ロンドン条約)承認条件を国会に提出  
原子力工学試験センター磯子工学試験所が開所  
3/20 新型転換炉原型炉「ふげん」が本格運転開始。国産発電炉第1号  
3/27 関西電力大飯1号機(PWR、117万5000kW)が営業運転開始  
3/28   米スリーマイル島(TMI)原発2号機(B&W社製PWR)で、大規模の原子炉事故が発生3/30州知事、非常事態を宣言、周辺住民避難。4/6事態終息
3/28   ユーロディフのトリカスタン濃縮工場(ガス拡散法)が操業開始(2200トン SWU/年)
3/30   米会計検査院、原発事故時の対応に関する報告書を発表
4/3 大平首相、閣議で関係閣僚に原発防災体制の再点検を指示  
4/7   米カーター大統領、新エネルギー政策を発表
4/14   米NRC、TMI事故に関連してBWR運転者、WH社製PWR運転者、CE社製PWR運転者に指導・再点検を通達
4/24 通産省、原発24基の安全性総点検で中間報告  
4/26   スペインのマドリードで、約5万人が原子力反対デモ
4/27 政府、原子力防災対策の基本方針まとめる  
5/2 日米エネルギー研究開発協力協定(核融合、石炭液化など)調印  
5/7   米会計検査院、クリンチリバー増殖炉の建設は必要とする報告書を発表
5/8   西独ニーダーザクセン州、ゴルレーベンの核燃料パーク建設の無期延期を決定
5/14 通産省、原発安全性再点検の結果を安全委に報告  
5/21   米NRC、「少なくとも3か月間の原発新規許認可凍結」を発表
6/6 通産省、電力各社に原子力発電所総点検にもとづき8項目の改善を指示  
6/14   米国務省、使用済燃料の国際貯蔵施設構想を公表(ウェーク、パルミナ、ミッドウェーの3島が候補)
6/15 総合エネルギー対策推進閣僚会議、石油消費節減・原子力発電強化・石炭火力開発促進の諸対策を決定  
6/16   西ドイツ自由党大会で原子力推進派が圧勝
7/12 中央防災会議、当面の原発防災対策決定  
7/15   米カーター大統領、「発電用石油消費量を1980年代までに半減させる」新エネルギー政策を発表
7/16 高速実験炉「常陽」が熱出力7万5000kWを達成 英ウインズケール再処理工場で火災事故
7/20 原子力委、1980年度原子力予算編成で「もんじゅ」開発予算として異例の不足分を追加要求  
7/28   スペイン議会、エネルギー10カ年計画承認(原発、1989年1050万kW)
8/2   米NRC検査実施局、TMI事故調査報告書(NUREG−0600)を発表
8/10 原子力委、原子炉開発の基本路線における中間炉の考え方決定。CANDU炉導入見送り  
8/14   西独研究技術省、「原発のリスク評価研究」を発表(西独版ラスムッセン報告)
8/15 海洋開発審議会、海中ウランの回収は1990年代に実用化するなど長期展望まとめる  
8/26   米コロラド・フラットで1万6千人が原子力推進の集会開く
8/28 原研(現日本原子力研究開発機構)、米DOEとダブレット3プロジェクトに関する研究協力協定結ぶ  
9/3 自治省(現総務省)、島根県の核燃料税新設内諾  
9/4 北海道と地元町村、北海道電力の共和・泊原発建設で基本合意 スウェーデン政府、放射性廃棄物貯蔵センター(貯蔵能力3000トン)建設を原則的に承認。1981年春着工
9/12 動燃(現日本原子力研究開発機構)、人形峠ウラン濃縮パイロットプラント第1期計画分1000台が完成、運転開始。12/26濃縮ウラン(3.2%)300kg回収に成功  
9/13 原子力安全委TMI特別委が第2次報告書、52項目の教訓(安全確保対策に反映させるべき事項)を指摘  
9/20 電源開発調整審議会、1979年度電源関発基本計画決定。むこう8年間に電源7300万kWの運転開始見込む  
9/25   米下院、1億7200万ドルのクリンチリバー増殖炉開発を含む1980年度予算を承認.9.27上院も承認
9/28   西独連邦・州首相会議、放射性廃棄物政策で合意(ゴルレーベンの再処理廃棄物センター構想の放棄など)
9/28   米会計検査院、「原発規制は近い将来電力危機を招来しよう」とする報告書を発表
9月   ソ連レニングラード原発3号臨界(黒鉛・沸騰水冷却型、100万kW)1980/2/17送電開始
10/1 日本核燃料開発、BWR 燃料を中心とした核燃料の研究開発に乗り出す  
10/4   米ワシントン州知事、ハンフォードの低レベル廃棄物埋設施設を無期限閉鎖
10/15 IAEAアジア原子力地域協力協定(RCA)加盟国政府専門家会議、東京で開催  
10/19 動燃、マイクロ波加熱直接脱硝方式によるPu混合転換技術を開発(米国原子力学会賞受賞)  
10/23   米NRC、TMI事故教訓に関する最終報告書(NUREG−0585)を発表
10/24 東京電力福島第一原発6号機(BWR、110万kW)が営業運転開始  
10/30   米TMI事故調査大統領特別委(ケメニー委)、NRCの改組など7項目の勧告を含む報告書を大統領に提出
11/7   仏、国立放射性廃棄物管理公社(ANDRA)設立
11/7   米NRC、TMI原発運転のメトロポリタン・エジソン社に15万5千ドルの罰金を命ず
11/19 原子力安全委、低レベル放射性廃棄物の試験的海洋処分の安全性を確認  
11/24 原子力安全委・日本学術会議共催、TMI原発事故テーマで初の学術シンポジウム開く  
11月 静岡県、核燃料税新設で自治省と折衝  
12/5 関西電力大飯2号機(PWR、117万5000kW)が運転開始  
12/6 原研の核融合研究施設起工(茨城県那珂町)  
12/7 電気事業審議会、電力長期需要見通し報告。原発は1995年度7800万kW 米カーター大統領、新原子力政策を発表(ケメニー勧告の支持、6か月以内の許認可再開要請)
日本分析センター竣工(千葉市山王町)  
12/17   ソ連で地域暖房用ミニ原子力発電所が運転開始
12/18   英エネルギー相、新原子力政策発表(1982年から10年間に1500万kWの原発建設。次期炉としてPWR導入、NNCの改組など)
12月 原研、実用燃料照射試験設備完成  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1979年
(昭和54年)
1/13 初の国公立大学入試共通1次学力試験実施  
1/17   カルテックス社、対日原油供給の削減を通告。他の国際石油資本(メジャー)も追従(イラン革命による第2次石油危機)
3/26   イスラエルとエジプト、平和条約に調印
6/26   資源エネルギー庁、環境影響調査要綱・環境審査指針をまとめる
6/28   第5回先進国首脳会議(サミット)開催(東京、〜6.29)。インドシナ難民問題・世界的石油危機で論議、原発推進で合意
7/31 松下電子工業、真空管の生産やめる(日本での真空管生産皆無に)  
8/10 閣議、新経済社会7カ年計画を決定。経済成長率(実質年平均)5.7%と想定  
8/31 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会、長期エネルギー需給暫定見通しを中間報告.1995年度の石油依存度43%  
9/29   米軍、減損ウランを利用した対戦車砲弾2900発を発注
12/6 石油公団・中国石油天然ガス探査開発公司、渤海海底油田共同開発で基本合意成立・調印  
12/7 電気事業審議会(現総合資源エネルギー調査会電気事業分科会)、長期電力供給目標を通産相に報告。1995年度までに石油火力分を10〜16%に引下げ(1979年度57%)  


<関連タイトル>
人形峠のウラン濃縮施設 (04-05-02-01)
米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所事故の概要 (02-07-04-01)
TMI事故の経過 (02-07-04-02)
TMI事故時の避難措置 (02-07-04-03)
TMI事故直後の評価 (02-07-04-05)
TMI事故の我が国における対応 (02-07-04-06)
TMI事故直後の米国における対応 (02-07-04-07)
TMI事故直後の諸外国等における対応 (02-07-04-08)
TMI事故の現状と調査研究 (02-07-04-09)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(上巻)(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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