<本文>
TMI事故に関連して、米国を除く主要な諸外国及び国際機関の対応は次のとおりである。
1. 西ドイツ
西ヨーロッパ諸国の中では、もっとも活発な検討を行った。事故直後から主として内務省の
原子炉安全委員会を中心に行われ、全ての
原子力発電所の安全性の点検の実施を指示し、1979年6月20日には加圧器逃し弁の開閉信号の改善、運転員の教育訓練の強化、水素ガス対策等に関する勧告が出された。その後も引続き長期的に検討を要する事項として、設計基準、事故防護の考え方、運転経験の評価方法等に関しての検討が行われた。
2. 英国
軽水炉を1基も設置していないため、TMI事故については調査を進めるものの、自国の原子炉に対しては特に目立った動きはなかったが、教育訓練、緊急時対策等は大きな教訓としている。
3. フランス
TMI事故以降も、基本的には、原子力の安全性の考え方に特に再検討を要することはないとしながらも、運転上の規定、運転員等の訓練、事故、故障の解析とその適用等について安全対策に活かすべく必要な措置がとられた。
4. カナダ
原子力管理委員会は、すべてのCANDU炉所有者に対し、設計の見直しを行なうよう指示し、回答を求めた。この結果をもとに、重要な機器の設計、運転管理等を含む56項目の勧告を行ない、当面可能な事項について逐次実施することとした。
5. 国際原子力機関(
IAEA)
事務総長の提案により、1979年5月専門家会議を開催し、TMI事故に関連して、以後の活動について検討した結果
(1)国際シンポジウムの開催。
(2)原子力安全基準策定事業(
NUSS計画)の安全基準類の見直し。
(3)緊急時支援体制の整備。
(4)事故時緊急体制に関する国際条約の締結の促進。
(5)助言及び技術援助サ−ビスの強化。
等が提案され、理事会で承認された。IAEAで、安全基準類の見直し作業が進められていたものについては、TMI事故に関連して大幅な手直しは必要ないと判断された。また、TMI事故に関連して、各国で種々の項目について検討が行なわれてきたものについて、その結果等を論議するため1980年10月20〜24日にかけてストックホルムにおいて「最近の原子力発電所の安全性問題に関する国際会議」が開催された。この会議の目的は
(1) 最近の安全性問題を評価して、明確化すること。
(2) 原子力発電所の安全性を維持して、改良する方法及び手段を確認すること。
(3) 全ての関係者の間で安全性問題について継続的な情報交換を行なうこと。
(4) 国際協力を推進することを明らかにすること。
などであり、本会議には、日本を含め44ケ国及び10国際機関が参加し、今後の原子力の安全性について幅広く積極的な議論が展開された。
6. 経済協力開発機構原子力機関(
OECD/NEA)
TMI事故後、1979年6月に米国
NRCの協力のもとに、原子力施設安全性委員会特別会合を開き、米国からTMI事故の報告を受けるとともに、各国の対応についても、報告があり、以後の方針等について検討が行なわれた。この結果を踏まえ、
(1) TMI事故に関連して各国のとった安全研究の見直しのとりまとめ。
(2) TMI事故に関連して各国当局がとった規制措置のとりまとめ。
(3) TMI-2号炉炉心の国際的評価。
等について、作業を行うことを決定した。
また、原子炉の立地政策についての特別会合において、米国のその後の対応及び各国の対応について報告があり、また、1980年11月の年次総会においても、引き続き報告が行なわれた。
<関連タイトル>
TMI事故の経過 (02-07-04-02)
TMI事故時の避難措置 (02-07-04-03)
TMI事故直後の評価 (02-07-04-05)
TMI事故の我が国における対応 (02-07-04-06)
TMI事故直後の米国における対応 (02-07-04-07)
<参考文献>
(1) 原子力安全委員会:昭和56年版 原子力白書