<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 TMI-2はバブコック&ウイルコック社の設計による電気出力95.9万kWのPWR型で、1978年3月に臨界となり、同年12月に運転を開始した。事故が発生したのは1979年3月28日午前4時であった。営業運転を開始してから3ヶ月後のことであった。約97%で定格出力運転中、制御用空気系の故障のため主給水ポンプがトリップ、更にタービンがトリップしたことから、原子炉一次系の温度、圧力が上昇したため設計通り加圧器逃し弁が開き、原子炉は緊急停止した。その後、一次系圧力低下に伴って自動的に閉まるべき加圧器逃し弁が故障していて開固着の状態となり、ここから一次冷却水が系外に流失した。このため炉心は2/3が露出して大きな損傷をうけた。この事故に伴って放射性物質の外部放出による周辺公衆の個人の被曝線量は1mSv以下であり、健康に与える影響はほとんど無視できる程度であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 この事故は、加圧器逃し弁が開固着して一次冷却材が流出し、炉心の冷却が不十分であったのに、運転員が一次冷却材は十分にあると誤判断したことによる。制御室内にあった正しい情報に気が付かず、事故発生後の状況の信頼できない情報に固執してしまった。すなわち、一次冷却材の圧力、温度、逃し弁出口温度、ドレンタンク圧力、温度、格納容器内圧、サンプ水位などの指示計では、加圧器逃し弁から一次冷却材が大量に流出して一次系内保有量が減少していることを示していた。しかしながら、運転員はアラーム信号を相互に結びつけて考えようとせず、加圧器の水位が上昇し、高い値を示していることのみ注目して、一次冷却材は十分にあると判断し、非常用炉心冷却装置ECCS)を早期に停止してしまった。
 蒸気発生器への主給水系故障に端を発し、種々の故障、誤操作が重なって、放射性物質が外部環境に異常に放出されるという事故であった。
1. 事故前の状況
 1979年3月28日午前4時、TMI-2号炉事故が発生した。初臨界に達してから1年、営業運転を開始してから3カ月後のことである。この間TMI-2号炉には数多くのトラブルが発生しており、それらを完全には解決しないまま運転を継続していた。
 TMI-2号炉の全体概要を 図1 に示す。事故前のプラント運転状況を 図2 に示す。
  今回の事故に直接関連するものとして、次のような状況であったことが判明している。
  (1) 加圧器逃し弁又は安全弁から毎時約1.4立方メートルもの一次冷却材の漏洩があり、そのまま長期間運転を続けていたこと。
  (2) 主給水喪失時に、直ちに蒸気発生器に給水するための補助給水系の弁が2個とも閉じられたままの状態で運転が行われていたこと。
 これらは、いずれもTMI-2号炉の運転条件を規定した技術仕様書に違反した行為である。
2. 事故の発端及び経過
 事故時の一次系圧力の推移を 図3 に示す。事故の直前まで原子炉は定格の約97%の出力で運転されていた。事故前11時間にわたって2次系の脱塩塔(図1の(14))から、イオン交換樹脂を再生するための移送作業が続けられていたが、この移送配管に樹脂がつまり、作業は難航していた。この時に、おそらくは樹脂移送用の水が弁等を制御する計装用空気系に混入したために、脱塩塔出入口の弁が閉じ、この結果主給水ポンプが停止し、ほとんど同時にタービンが停止(トリップ)した。タービン・トリップの結果、一次系の温度、圧力が上昇し、加圧器逃し弁が開いた。その後も一次系圧力は上昇し、事故発生後約8秒(主給水ポンプ停止後の時間)で原子炉は自動停止(スクラム)した。このため、一次系圧力は急速に低下し、加圧器逃し弁の閉設定圧力にまで下ったが、この逃し弁が故障して開いたままになり、一次冷却材の流出が続いた。すなわち、小破断冷却材喪失事故の状態になっていた。事故発生後から約20分後のプラント状況を 図4 に示す。
 一方、2次系では、主給水ポンプの停止により3台の補助給水ポンプ(図1の(26))が起動し、蒸気発生器に給水しようとしたが、前にも述べたように、2個の弁(図1の(24))が閉じられていたので、補助給水が蒸気発生器に到達しなかった。このため、主給水ポンプ停止後約2分で、蒸気発生器の2次側の水はほとんど蒸発してしまい、蒸気発生器による除熱能力は急速に低下した。8分後、運転員がこれに気づき、主蒸気逃し弁を開いて蒸気発生器の除熱能力は回復した。
 一次系では、加圧器逃し弁からの一次冷却材の流出が続いていた。このため、一次系圧力が低下し、非常用炉心冷却装置(ECCS)作動設定圧に達したので高圧注入ポンプが2分後に自動起動した。しかしながら、一次系圧力低下に加えて、蒸気発生器の除熱能力が低下していたので、一次冷却材が局所的に沸騰を起し、発生した蒸気泡が一次冷却材を加圧器に押し上げた。このため加圧器の水位は上昇し、見かけ上一次冷却材の量が増加しているかの如き現象を呈した。運転員は常々加圧器が満水となり圧力制御不能になる状態を回避するよう教育されていたため、加圧器水位上昇から誤判断して高圧注入系ポンプ1台を停止し、2台の流量を最低限にまで絞り、更に原子炉からの一次冷却材の抽出量を最大にした。TMI-2号炉の緊急手順書によれば、高圧注入系を停止するときは、加圧器水位だけでなく、一次系圧力が非常用炉心冷却装置(ECCS)作動圧力以上であることが条件とされており、運転員のこの措置は緊急手順書に違反した行為であった。
 加圧器逃し弁から流出した一次冷却材により、ドレンタンク(図1の(25))の圧力は上昇し、ラプチュアディスクが破れ、格納容器内に一次冷却材が流出した。この水は格納容器サンプに入り、サンプポンプによって補助建屋に移送された。
3. 燃料の破損
 一次冷却材はますます減少し、蒸気泡が増加した。このため、一次冷却材ポンプの振動が激しくなったので、ポンプ破損を恐れた運転員は一次冷却材ポンプを停止した。ポンプが運転されている間は、水と蒸気の混合物が循環して炉心を冷却していたが、ポンプが停止されるとこの循環流が止り蒸気と水が分離し、炉心の上部が蒸気中に露出し始めた。事故発生後約2時間後のプラント状況を 図5 に示す。
 事故発生2時間20分後、運転員は加圧器逃し弁が開いているのに気がつき、元弁を閉じたが、高圧注入系は絞られた状態であった。炉心の水は蒸発し、炉心はおそらく上部2/3程度露出したと思われる。露出した燃料は温度が急上昇し、重大な損傷が生じて大量の放射性物質が一次系内に放出された。また、燃料被覆と蒸気が反応して、大量の水素が発生した。
 事故発生後3時間20分、短時間ではあったが高圧注入系が起動され、この冷却水が一次系内に注入され、炉心は再び冠水した。おそらくこの後再び炉心が露出することはなかったと思われる。しかしながら、注入時の急冷により炉心のかなりの部分の形状が変化したと思われる。
4. 収束への努力
一次冷却材ポンプの停止後、自然循環冷却がうまく行われていないことが判明したので、運転員は、一次冷却材ポンプ1台を起動したが、ループに残った僅かの水を注入したのみで空転し振動が激しくなったので、20分足らずで停止させた。運転員は、ループに水蒸気泡が存在して自然循環を妨げていると考え、加圧して気泡をつぶそうとしたが、気泡の中には相当量の水素もあるため成功しなかった。そこで今度は余熱除去系による炉心冷却を目指し、加圧器逃し弁を開いて余熱除去系の使用可能な圧力まで一次系圧力を下げようとしたが、これも成功しなかった。事故発生後約10時間30分後のプラント状況を 図6 に示す。この間、一次系内にあった水素の一部が格納容器内に放出され、急激な燃焼を起こして、約2kg/cm2(28psi)の圧力パルスが発生している。事故後13時間20分、再度一次冷却材ポンプを動かして炉心冷却を試みることになり、高圧注入系流量を増加し一次系を加圧し、また、1台の一次冷却材ポンプを約10秒間動かした。この結果、ループの気泡が除去され、自然循環が始まったことが確かめられた。事故発生から15時間50分後、一次冷却材ポンプ1台を再起動し、蒸気発生器を通じての除熱がようやく成功し、事故は制御可能な状態になった。
 しかし、一次系内にはまだ大量の水素が残っていたが、抽出水の脱気操作と加圧器元弁のベント操作を行うことにより、4月2日までにほぼ完全に水素は除去された。
 4月13日、一次冷却材に溶解しているガス抜きを開始し、一次冷却材の温度、圧力を下げ、4月27日からは一次冷却材ポンプを停止し、自然循環冷却による長期冷却に入った。
 炉容器内損傷の最終状況を 図7 に示す。この事故により、炉心は大損傷を受け、大量の放射性物質が炉心から放出された。このうち環境に放出された放射性物質は、事故が収束してからも、原子炉の補助系など汚染された系統からかなりの期間(1ケ月以上)わずかながらも環境への放出が続いた。これらを合計しても、放出された希ガスは約250万キュリー、ヨウ素は約15キュリー程度と推定されている。集団線量はほぼ2,000人レム程度(個人の被曝線量は平均1ミリレム)であった。
<図/表>
図1 スリー・マイル・アイランド2号炉の全体概要
図1  スリー・マイル・アイランド2号炉の全体概要
図2 事故前のプラント状況(約97%出力で運転中)
図2  事故前のプラント状況(約97%出力で運転中)
図3 事故時一次系圧力の推移
図3  事故時一次系圧力の推移
図4 事故発生後約20分後のプラント状況
図4  事故発生後約20分後のプラント状況
図5 事故発生後約2時間後のプラント状況(一次冷却材ポンプ停止)
図5  事故発生後約2時間後のプラント状況(一次冷却材ポンプ停止)
図6 事故発生後約10時間30分後のプラント状況
図6  事故発生後約10時間30分後のプラント状況
図7 スリー・マイル・アイランド2号炉炉内容器内の最終状況
図7  スリー・マイル・アイランド2号炉炉内容器内の最終状況

<関連タイトル>
米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所事故の概要 (02-07-04-01)
TMI事故時の避難措置 (02-07-04-03)
TMI事故直後の評価 (02-07-04-05)
TMI事故の経過 (02-07-04-02)
TMI事故の我が国における対応 (02-07-04-06)
TMI事故直後の米国における対応 (02-07-04-07)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):昭和56年版 原子力安全白書 大蔵省印刷局(昭和56年12月)
(2)日本原子力文化振興財団(編):原子炉の原理・研究用原子炉)(昭和59年3月)
(3)原子力安全委員会:米国原子力発電所事故特別委員会第3次報告書、昭和56年5月
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ