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<概要>
 東京電力、関西電力をはじめ電力会社が、原子力発電に本腰を入れはじめるなかで、5月、原子力発電の東海発電所が臨界に達し、11月に初の送電に成功した。この炉は定格電気出力16万6000kwの本格的な発電炉で、翌年営業運転に入った。日本にも本格的な商業原子力発電の時代が到来した。前年ジュネーブで開かれた原子力平和利用国際会議では、各国における新型転換炉、高速増殖炉の開発の進展ぶりが明らかにされ、わが国の動力炉開発への取り組みも悠長ではいられなくなってきた。前年発足した動力炉開発懇談会は、18回に及ぶ審議の末、7月に中間結論として原子力開発の大綱をまとめ、新型転換炉と高速増殖炉を並行して開発することを決めた。4月に原研大洗研究所が竣工、同じ日材料試験炉の建設に着手した。海外では、英国は5月、AGRとBWRを評価して、ダンジネスB発電所に改良型ガス冷却炉(AGR)の採用を決めた。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1965年
(昭和40年)
1/22   インド、トロンベイ・プルトニウム抽出工場操業開始
1/28 原研、遮蔽研究用原子炉JRR−4臨界(1000〜3000kW、プール型)  
1/30 原電、米WH、GE両社に2号炉の見積書提出を依頼  
2/3   米ピーチボトム発電炉火災発生事故
2/5 電源開発調整審議会、新電力長期計画(1964〜70年度)を政府原案通り決定.開発規模は137万kW(年度平均20万kW)  
2/8   米GE社、ドレスデン第2原子力発電所(電気出力79万3000kW)建設でターンキー契約締結
2/11   米英、1956年の高速炉の技術情報交換協定を更新
2/11   米アルゴンヌとオークリッジの国立原子炉学校閉鎖
2/21 原研、研究部門を中心に大幅な機構改革を実施  
2/21 原研、アイソトープ事業部設置  
3/1 原子力船事業団の原子力第1船指名競争入札。造船7社とも応札辞退  
3/4 有澤廣巳原子力委員、衆院科学技術特別委で「原子力開発利用長期計画を再検討する」との意向を表明  
3/13 東工大原子炉工学研究所開所(所長武田栄ー教授)  
3/18   南ア第1号原子炉Safari−1臨界(研究用高濃縮ウラン、タンク型、出力2万kW)
3/20   南米コロンビア、研究炉(10kW)運転開始
3/31 原子力5グループ、原研と材料試験炉JMTRの建設契約締結  
4/3   米、小型原子炉SNAP−10A搭載の人工衛星打上げ
4/22 原研大洗研究所起工。JMTR着工  
5/4 原電東海炉臨界(コールダホール改良型、16万6000kW) カナダAECL天然ウラン重水減速軽水沸騰冷却型原子炉(CANDU−BLW)の建設のため新グループ設置
5/10 原研、仏CEAと放射線化学に関する研究協力協定に調印  
5/12 衆院科学技術特別委、「動力炉関発に関する小委員会」設置を決定  
5/25   英、ダンジネスB発電所(120万kW)に改良型ガス冷却炉AGR採用を決定(AGRがBWRより安価)
5月   米ラメイ原子力委員、電力会社に対し、原子力発電所の発注にはGE、WHの大手2社以外のメーカーにも機会を与えるよう要請
5/31 原子力委原子力事業従業員災害補償専門部会、原子力事業従業員の災害補償に必要な措置についての報告書提出  
6/1   米ORNLの溶融塩黒鉛減速型実験炉MSRE臨界
6/11 原研、JPDR−2計画を発表  
6/16 英ダンジネスA原子力発電所1号炉(55万kW)臨界
6/18 原燃、わが国のウラン資源埋蔵量を発表(4月1日現在で確定鉱量120万6000トン、ボーリングによる予想鉱量との合計約401万3000トン)  
6/25   英サイズウェル原子力発電所1号炉(58万kW)臨界
7/6 原子力委動力炉開発懇、2つのワーキング・グループ(新型転換炉、高速増殖炉)設置を決定(中間結論)  
7/14 原燃、人形峠倉見地区で高品位のウラン鉱床の露頭を発見  
7/29 原子力委、原子力第1船の建造着手を若千延期し、開発基本計画の実施上の問題点を検討することを決定  
7/30   インド、3号炉にCANDU型の採用を決定
8/6 日本造船工業会、原子力第1船の建造促進に関する要望書を関係筋に提出  
8/7 日本原子力普及センター発足(理事長岡野保次郎原研顧問)  
8/17   米、NPT案を国連軍縮委員会に提案(9/24ソ連も同様な案を国連総会に提案)
8/18 原産原子力船委員会、原子力第1船の建造問題で懇談
1.第1船の建造は中断しない
2.搭載原子炉は国産とする
3.経費見積り増分に対する国の予算は十分購じて欲しい などの点でー致
 
8/25   米ORNLの超ウラン研究用高中性子束アイソトープ生産炉HFlR臨界(熱出力10万kW)
8/26 原子力委、茨城県東海地区原子力施設の周辺整備実施を決定  
8/27 原研ホットラボ完成  
8月   米ロチェスター・ガス&エレクトリック社、プルックウッドに建設する原子力発電所にPWR採用を決定
8月   GE、コネチカット・ライト&パワー社のミルストンポイント原子力発電所(60万kW)を受注
9/9 原研JPDRに国産試作燃料2体を装入  
9/21 IAEA総会開催(東京、71か国340名) 英動力省、第2次原子力発電計画を拡大(500万kWから800万kWに)
9月   西独カールスルーエの天然ウラン重水型多目的炉MZFR臨界(電気出力5万7000kW)
9/30 原電、第2号原子力発電所(敦賀)の炉型は米GE社のBWRに決定  
9/30 原研JRR−3によるRIの生産開始  
10/16 原子力委、動力炉開発の進め方を検討するため調査団を欧米に派遣(団長丹羽周夫原研理事長)  
10/19 原研高崎研、放射線によるエチレン重合のための中間規模試験装置により、粉末ポリエチレンの製造に成功  
10/21 原燃、使用済燃料再処理工場の詳細設計で仏サンゴバン社と交渉開始  
10/22 原研、材料試験炉用臨界実験装置JMTRC臨界  
11/1 厚生省(現厚生労働省)、原爆被爆者実態調査を実施(初の全国一斉調査) 米 AEC、政府民間の共同原子力発電所建設計画(電気出力33万kW、高温ガス冷却炉)の契約をコロラド・パブリック・サービス社とGA社との間に締結
11/10 原電東海炉、試験発電(2000kW)に成功  
11/18 原子力委、食品照射集門部会設置(部会長住木諭介理研副理事長)  
11/22   米AEC、原子力発電所のための設計基準を公表
11/23   米コンソリデーテッド・エジソン社、インディアン・ポイント第2原子力発電所(100万kW、世界最大)の建設をWH社に発注
11/26 原燃東海製錬所プルトニウム燃料開発室完成(主工事契約者米ニューメック社)  
11月   米GE、研究炉製造部門から手を引くと発表
12/14 原研(現日本原子力研究開発機構)、軽水臨界実験装置TCA臨界  
12/15 中央電力協議会、1965年度電力長期計画(1965〜75年)を発表、原子力分は1965〜70年で90万kW、1965〜75年で435万kW  
12/16   英サイズウェル原子力発電所2号炉臨界(29万kW)
12/21 原産、東海地区原子力地帯整備促進で関係方面に要望  
12/24 原燃と地質調査所、岐阜県土岐次月峠付近でウラン1次原鉱を確認  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1965年
(昭和40年)
2/7   米、ベトナム戦争で北爆開始
3/15 東芝、中部電力知多発電所1号機向44万2000kwタービン発電機完成  
3/18   ソ連宇宙船ウォスホート2号打上げ(宇宙飛行士約10分の宇宙遊泳に成功)
4/30   英、鉄鋼国有化白書発表
6/4   米宇宙船ジェミニ4号打上げ(宇宙飛行士約20分宇宙遊泳に成功)
6/22   日韓基本条約、漁業・請求権・在日韓国人の法的地位・文化協力の4協定など調印
7/4 第7回参議院選挙(自民71・社会36・公明11、東京地方区で自民党全滅)  
7/29 東大宇宙研、中型ロケット・カッパー9H型12号打上げ成功  
8/21   米宇宙船ジェミニ5号打上げ8日間(190時間55分)の長時間飛行を行う
10/1 国勢調査実施、総人口9827万4961人(東京都1086万9244人)  
10/21 朝永振ー郎、量子電磁学でノーベル物理学賞  
11/19 閣議、財政処理のため国債発行を決定(戦後初の赤字国債)  
11/26   仏、最初の人工衛星に成功
12/4   米宇宙船ジェミニ7号打上げ(約14日の長時間の飛行とジェミニ6号とのランデブーに成功)
12/10 日本、国連憲章改正により増設された安保理事会非常任理事国に当選  





<関連タイトル>
わが国の試験研究用および開発中の原子炉一覧(2003年12月) (03-04-01-02)
JRR-4 (03-04-02-03)
高速増殖炉の必要性 (03-01-01-02)
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)
新型転換炉の特徴 (03-02-02-02)
新型転換炉開発の経緯 (03-02-06-01)


<参考文献>
(1)森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2)原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3)森 一久編:原子力は、いま(上巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(4)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
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