<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 研究炉等
<小項目> わが国の原子力開発機関の研究炉
<タイトル>
JRR-4 (03-04-02-03)

<概要>
 JRR−4(Japan Research Reactor−4)はわが国初の原子力船「むつ」の実物大モックアップによる遮へい実験を目的として日本原子力研究所東海研究所(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所)に建設され、1965年1月28日初臨界に到達した。翌1966年最大熱出力2,500kWでの運転に成功し、遮へい実験を開始した。1976年には原子炉の最大熱出力を3,500kWへ上昇して原子炉性能の向上を図り、遮へい実験、原子炉技術者養成、放射化分析、シリコン照射、ラジオアイソトープ生産等多目的な実験に対応できる研究炉として使用してきた。
 その後、米カーター大統領(当時)の提唱する核不拡散政策に対応した試験・研究炉用燃料濃縮度低減化計画に従って、1996年1月に90〜93%高濃縮ウラン板状燃料による運転を終了し、20%濃縮ウラン板状燃料への炉心変更を行うと同時に原子炉施設の整備および実験照射設備の整備・拡充(医療照射用の中性子ビーム実験設備、大口径のシリコン照射設備等の設置)を行った。1998年7月から、20%濃縮ウランを用いた炉心で臨界を達成し、同年10月から共同利用運転を再開して、新たに整備した医療照射設備を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)や大口径のシリコン照射等に利用されている。
<更新年月>
2005年09月   

<本文>
1.はじめに
 JRR−4はわが国初の原子力船「むつ」の実物大モックアップによる遮へい実験を目的として建設され、1962年6月に着工し、1964年2月に建家関係の工事を完了後、直ちに原子炉本体、冷却設備、計測制御設備、実験設備等の据付工事に着手して、1965年1月28日初臨界になった。
 その後1965年11月から1,000kW運転、1966年4月から2,500kWの定格出力運転に入り、遮へい実験を開始した。1976年10月には技術者養成や放射化分析等の利用性を考慮した原子炉性能の向上を図るため、原子炉の最大熱出力を3,500kWへ変更した。
 原子炉には90〜93%濃縮ウランの燃料を用いていたが、核不拡散政策に対応するため、20%濃縮ウラン燃料への変更、原子炉各設備を最新の技術に対応した安全性の高い設備への更新、さらには実験利用者からの多様化、高度化への要望に対応するため、1996年1月に運転を終了し、原子炉の諸設備を改造した。改造にあたっては、非常用発電機の多重化や銀ゼオライトフィルターを備えた非常用排気設備を設ける等、安全対策の充実した最新の原子炉として整備し、さらに利用設備も中性子ビーム実験設備(医療照射設備)の設置、15cm径のシリコン照射設備を設けるなど整備・拡充を図った。1998年7月14日に20%濃縮ウラン燃料による炉心が臨界となり、同年10月より共同利用運転を再開した。
2.原子炉の概要
 JRR−4は、最大熱出力3,500kWのウランシリコンアルミニウム分散型合金燃料(濃縮度20%)を用いた軽水減速軽水冷却のスイミングプール型熱中性子炉で、最大熱中性子束は5.3×1013n/cm2・secである。(表1参照)
 原子炉本体の概要を図1に、炉心およびプール実験設備の配置を図2に示す。原子炉炉心部は、炉心タンク内に納められ、炉心ブリッジから水深9.8mのプール水中に吊り下げられている。炉心部には燃料要素20体が5行4列に並べられ、その周囲を燃料要素と同じ外形寸法を持つ黒鉛反射体等が取り囲んでいる。燃料体各列の間にはボロンステンレス製の制御板が挿入され、反射体領域には照射孔が設けられている。
 JRR−4は当初遮へい実験を主体として設計されたため、利用設備に関しては照射設備等の整備が不十分であったが、プール型炉であるという利点を生かして共同利用開始以降、利用性能向上のため各種の設備の整備が実施され今日に至っている。(表2参照)
 実験設備関係では、1983年、気送管に直結の短寿命核種分析設備の設置。1984年にリドタンク実験設備の重水タンク等の改修により実験の場の熱中性子束を従来の20倍に増大した。1998年に中性子ビーム実験設備の設置、即発γ線分析装置の設置を行った。照射設備関係では、運転開始後、炉心内簡易照射筒(Sパイプ)および運転中に試料の挿入・取り出しが可能な簡易照射筒(Tパイプ)を設置。続いて、シリコン照射専用筒(Dパイプ)およびカドミフィルタ付気送管照射筒の設置した。大口径シリコン照射専用筒(Lパイプ:12cm)、1998年には、気送管照射設備の改造、大口径シリコン照射専用筒(Nパイプ:15cm)の設置などの整備を行い利用設備の向上を図った。
 以上のような設備の改造等の中でも、1998年の利用設備の整備・拡充は、燃料の濃縮度低減化のための改造にあわせて実施されたものであり、ウラン濃縮度の大幅な変更に伴う性能の変化も多少あったが、気送管照射設備および簡易照射筒(Nパイプ)の改造と医療照射用中性子ビーム実験設備の設置により、利用設備は大幅に改善され、利用性能が格段と充実した。
 このうち、医療照射用中性子ビーム実験設備は、JRR−2において1990年から1996年までに33回実施していた医療照射を、JRR−2の運転終結に伴いJRR−4で引き継ぐことを目的に、従来のリドタンク照射設備を大幅に改造したものであり、医療照射ができる照射室を設けるとともに中性子ビームの線質を調整することができる重水タンクを設置した。中性子ビーム実験設備(医療照射設備)を図3に、そのビーム性能を表3に示す。また、医療照射時のボロン濃度が短時間で正確に測定できる中性子導管(スーパーミラー)を用いた即発γ線分析装置を新たに設置したほか、照射室に隣接して設置した施療室、実験室、準備室と併せて医療照射への対応設備を整備した。施療室では医療照射前後の開頭手術にも対応できる設備が設けられている。
 JRR−4は1965年の初臨界以来安全かつ安定に運転しており、小型炉の特徴を生かして個々の利用者からの実験に対応した出力、運転時間等の要求に対してきめ細かく対応することが可能である。現在、1日約7時間、週4日(火〜金)、年間約41週の共同利用運転を行っており、医療照射や放射化分析等のための専用運転を行う日も設けている。
3.利用状況
 1965年1月28日の初臨界後、1966年11月より1967年6月まで、当初の目的どおり原子力船「むつ」のための第一次モックアップ実験専用の運転が行われた。さらに、「むつ」の遮へい改修設計の参考にするための第二次モックアップ試験が1976年3月から6月まで行われた。
 1967年6月からは、研究所内を対象とした共同利用運転が開始され、1974年1月から研究所内外を対象とした共同利用運転に移行した。なかでも、1974年10月には、茨城国体における炬火の一つである「科学の火」の採火にJRR−4が選ばれ、盛大なセレモニーのもとに採火が行われた。
 共同利用運転開始以降、利用性能向上のため各種の設備の整備が実施され、大型研究炉と異なり、個々の利用者からの運転要求にもきめ細かく対応することが可能であるという特徴を生かして、遮へい実験、炉物理実験、炉工学実験、放射化分析、材料照射実験、ラジオアイソトープ製造、シリコン照射、医療照射および原子炉研修所の運転実習等多方面にわたって利用されている。特に、改造後に設置された中性子ビーム実験設備(医療照射設備)では、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy,以下、BNCTという。図4参照)による治療研究が行われている。
 この治療法は、原子炉で発生する中性子を利用して腫瘍細胞に集まったホウ素と中性子の反応を利用して腫瘍細胞を選択的に破壊し、脳腫瘍や皮膚がん(悪性黒色腫)を治すもので、腫瘍細胞のみを選択的に破壊できる放射線治療として注目されている。特に複雑に入り組んだ脳腫瘍等の治療には非常に有効な治療法といわれている。医療照射設備に用いられるビーム孔の炉心側には重水の厚さを変えられるよう多層の重水タンクを設置している。また、カドミウムシャッタの開閉と組合わせて、熱中性子から熱外中性子までの任意のエネルギー範囲の中性子ビームを選択して取り出すことができるようになっている。このため、本設備を用いるBNCTでは、患者の治療の条件にあわせた中性子のエネルギーを取り出して照射できるため、世界トップレベルの照射施設としての性能を有している。
 JRR−4での最初のBNCTは、1999年10月25日に実施され、2005年8月17日までに通算34回の医療照射が行われ、いずれの照射も良好な成績を残しているとの事である。なお、医療照射にあたっては、JRR−4を運転する原研(現日本原子力研究開発機構)と治療を担当する医師等との密接な連携プレーが不可欠であり、図5に示す実施体制を組んで万全を期して取り組んでいる。
<図/表>
表1 JRR−4諸元(改造後)
表2 JRR−4利用施設一覧
表3 中性子ビーム実験設備の性能
図1 JRR−4原子炉本体の概要
図2 JRR−4炉心およびプール実験設備
図3 中性子ビーム実験設備
図4 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)
図5 医療照射の実施体制

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<関連タイトル>
JRR-2 (03-04-02-01)
JRR-3(JRR-3M) (03-04-02-02)
原子力船「むつ」開発の概要 (07-04-01-01)
日本原子力研究開発機構 (13-02-01-35)

<参考文献>
(1) 日本原子力研究所東海研究所研究炉部:研究炉利用ハンドブック(1999年3月)
(2) 日本原子力研究所:研究炉利用ホームページ
(3) 日本原子力研究所:平成16年度研究炉部年報(JAERI−Review 2005−036)
(4) 日本原子力研究所東海研究所研究炉部:研究炉−現状と役割−、研究炉部パンフレット(1999年7月)
(5) 日本原子力研究所:研究炉JRR−4の低濃縮燃料による臨界について、日本原子力研究所ホームページ ニュース館、1998年7月10日
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