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<概要>
 これまで「原子力ブーム」に沸いたが、1960年代に入ると、原子力開発は世界的にもスローダウンの波に見舞われた。安価な中東原油の進出によって、火力発電のコストが下がり、原子力発電の経済性の目標が遠ざかるという現象が生じた。そのような情勢のなかで、原子力委員会は2月、初めての総合計画である「原子力開発利用長期計画」を公表し、原子力発電については、1961〜70年の10年間に百万kwを建設するという現実的目標を打出した。6月に、原子力損害賠償に関する二法案がようやく成立した。国産技術の開発では、原子燃料公社は4月、国産鉱石による金属ウラン製錬体制を確立、日立製作所の手による初の国産原子炉(教育訓練用)が、12月に完成した。また、原研がわが国独自のアイデアによると誇りをもって進めていた半均質炉開発のための臨界実験装置が、1月に臨界となった。6月に、日本は米、英、仏、ソ連とともにIAEA 理事国に指名された。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1961年
(昭和36年)
1/3   米アイダホ原子炉試験場、BWR型実験用発電炉SL−1(300kW)暴走事故、3名死亡
1/19 三菱金属、米NUMEC社との技術提携認可  
1/20   AEC委員長にグレン・T・シーボーグ博士を任命
1/25 原研、半均質炉臨界実験装置臨界  
1/27   ユーラトム、西独民間2社と原子力船研究開発契約締結
1月   ギオルソ(米)ら、103番元素ローレンシウム(Lw)発見
2/7   仏電力庁、EDF−3の耐圧容器にプレストレスト・コンクリートを採用
2/8 原子力委、原子力開発利用長期計画を発表  
2/20 原電、第2号原子力発電所建設決定  
3/7   西独カールスルーエ原子力センター、国産1号炉FR−2(天然ウラン重水型研究炉、1万2000kW)臨界
3/20   ユーラトム、核融合研究で西独プラズマ研究所と協力協定締結
3/23   伊イスプラ研究センター、ユーラトムへ移管
3/24 池田原子力委員長、原子炉の安全確保の見地から在日米軍当局に水戸射爆場使用禁止を厳重に申し入れ  
3/28 原電、コールダホール改良型発電炉用黒鉛素材を仏からの輸入に変更  
3/30 米アイダホ、世界最初の移動式発電炉ML−1臨界  
3/31 原研東海研、わが国初のMHD方式による熱電気直接変換実験に成功  
4/1 名古屋大学附置プラズマ研究所設置  
4/4   英サイズウェル原発(コールダホール改良型、58万kW)着工
4/18 原子力委、JRR−3で住友金属工業及び古河電工製燃料体の試用決定  
4/20 科学技術庁(文部科学省)委託調査、原子炉事故の災害評価を試算  
4/28 原燃公社、国産ウラン原鉱石から約200kgの金属ウランの製錬に成功  
5/23 原産、原子力第1船の所有運航形態の早期決定を要望  
6/8 原子力損害賠償法案及び原子力損害賠償補償契約法案、参院本会議で可決、成立。翌年3/15施行  
6/8 原研、RI製造試験工場開所  
6/9 原電、東海発電所着工  
6/15 農林省、放射線育種場完成、照射開始  
6/22   米・英・仏・ソ・日、IAEA理事国に指名される
6/28   米人工衛星「トランシット4A」軌道にのる(送信機電源はPu−238使用のSNAP−3、出力2.7W)
6/29   ベルギー・モルの材料試験炉BR−2臨界(5万kW)
6/30 原研、水性均質炉臨界実験装置臨界  
6月   西独原子力水力省、ペブル・ベツド原子炉の開発研究に450万ドルの補助金を支出
7/3   ユーラトム理事会、加盟国の発電用原子炉計画に対し3200万ドル(1961年分、1900万ドル)の支出決定
7/13 原産、東大工学部の原子力教育研究体制の整備拡充に関する再要望書を関係各方面に提出  
7/15   オランダ・ペッテン原子力センター、ユーラトムヘ移管
7/26 通産省、JPDR 工事認可  
8/19   英ブラッドウェル原発(2基合計28万5000kW)第1号炉臨界
8/22 原研、JRR−2第2次装荷燃料の加工業者に米バブコック&ウイルコックス社を選定 
8/24 原産、名古屋大学工学部の原子力教育研究体制の整備拡充とプラズマ研究所の整備に関する再要望書を提出  
8/27 茨城原子力開発協議会、水戸対地射爆場の接収解除を陳情  
8/28   英バークレイ原子力発電所(2基合計30万kW)第1号炉臨界
8月   西独原子力水力省、西独B&W社の低出力ガス冷却原型炉の設計開発に1800万マルクの補助金を支出
8月   西独原子力省、発電兼材料試験用多目的原子炉(天然ウラン重水型5万kW)の建設をジーメンス社に発注
8/31 原子力委原子炉安全専門審査会発足(会長矢木栄東大教授)  
9/6 文部省、次年度に国立大学の理工学部に原子力、原子核学科等を含む34学科と短大に3学科を新設、既存20学科の拡充改組を決定  
9/6 原産、原子力施設地帯整備特別委を設置(委員長井上五郎中部電力会長、原子力施設の立地問題を地域の総合開発計画として検討)  
9/9   米原子力巡洋艦ロングビーチ号進水
9月   米AEC、Garrett社と重元素のガス遠心分離法で研究開発契約を締結
9/11 原子力委、核燃料物質の所有方式決定(天然ウラン、劣化ウラン、トリウムは認可制民有、特殊核物質及び使用済燃料は国有)9/12閣議了解  
9/14 原研、東海研ホットラボ完成  
9/19 原電、安全性について慎重を期するため、東海発電所の完成予定を1964年7月末から1965年3月に変更と発表  
9/29 原子力委材料試験炉専門部会、材料試験炉の規模、設計建設、運営管理建設費及び運転費を内容とした中間報告書提出  
10/6   ソ連、インドと原子力協定調印
10/18 中央電力協議会、1970年度まで96.5万kW程度の原子力発電の開発を織込んだ電力長期計画を発表  
10/30 ソ連核実験の影響による放射能雨が問題化。内閣に放射能対策本部設置  
11/9 近畿大原子炉UTR臨界 オランダ・ペッテンのタンク型高中性子束材料試験炉HFR臨界(2万kW)
11/17 関西研究炉(京大炉)、大阪府下熊取町に設置決定  
11/20 日立、原研JRR−4(プール型舶用遮蔽研究用原子炉)受注  
11/29 原研JRR−2、3000kWの出力上昇試験運転に成功  
11月   英の原子力船建造計画、十分な経斉性が得られないことを理由に流産
11月   ユーラトム、舶用炉開発でオランダ原子炉センターと研究契約締結
12/1 放医研、原研東海研究所(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所)隣接地に東海支所設置 米ニューヨーク州電力会社の共同原子力グループ、AI 社とウラン炭化物燃料の開発契約締結
12/5 日米原子力産業合同原子動力会議開催(東京、〜12/8)  
12/8 立教大学トリガ型原子炉臨界  
12/10   米、非軍事用地下核爆発計画「プラウシェア」の第1号実験実施(深さ370m、推定規模より大きく地上に死の灰が洩れる)
12/15 東大原子核研究所、エレクトロン・シンクロトロン完成(750MeV)  
12/21   米原子力商船サバンナ号原子炉臨界
12/25 東京原子力産業研究所、教育訓練用原子炉臨界(100kW、日立製)  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1961年
(昭和36年)
1/3   米、キューバとの国交を断絶
2/9   ソ連、犬などを積んだ人工衛星船第4号(4.7トン)の打上げ回収に成功
2月 日本鉄鋼連盟、国立大学理工系学部に技術者確保のため資金援助を決定  
3/15 衆議院科学技術特別委員会発足  
3/23 学術会議原子核特別委、基礎科学振興5原則(自立、民主、自主、公開、平和)をまとめる。4/27総会で声明  
4/12   ソ連、人間衛星「ボストーク」打上げ、地球を1周し108分後帰還。8/6第2号の打上げに成功、17周25時間18分
4/16 松下電器、国産初の燃料電池(30W)発表  
5/5   米、有人ロケットに成功(15分間飛行して回収)
6/3   米、世界最強の推力(225トン)を持つ固体ロケット燃料の実験に成功
6/17 学校教育法改正公布(1962/4/1、5年制高等専門学校を設置)  
8/25 経団連・日経連、「技術教育振興策の確立に関する要望」を政府・国会あて提出。9/6文部省、理工系学生の増募を決定  
9/30   OECD 正式発足(EEC 18カ国と米、加)
10/24 電源開始、御母衣発電所完工(21万5000kw、ロックフィル式ダム)  
11/2 第1回日米貿易経済合同委員会開催(箱根、〜11/4)  
11/14 通産省(現経済産業省)、出光興産に山口県徳山、三菱化成工業に岡山県水島の各石油化学センター設立認可の方針決定(各地にコンビナート建設進む)  
11/29   米でチンパンジーを乗せた人工衛星打上げ、地球を2周して回収



<関連タイトル>
ウラン粗製錬 (04-04-01-01)
二酸化ウランおよび金属ウランの製造 (04-04-02-02)
日本の原子力損害賠償制度の概要 (10-06-04-01)
原子力損害賠償に関する国際条約と諸外国の国内制度 (10-06-04-02)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)

<参考文献>
(1)森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2)原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3)原子力開発十年史編纂委員会編:原子力開発十年史、日本原子力産業会議(昭和40年10月26日)
(4)森 一久編:原子力は、いま(上巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(5)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
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