<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> スウェーデン
<タイトル>
スウェーデンの電気事業および原子力産業 (14-05-04-06)

<概要>
 スウェーデンでは、国営電力庁が1992年に民営化されたバッテンフォール社により発電電力量の約45%を発電し、国内の電力網の大半を管理している。スウェーデンの2009年の総発電電力量は1,337億kWhで、そのうち原子力が500億kWhであり、発電電力量の構成比は水力が48.8%、原子力が37.4%、火力が11.9%で、風力が1.9%である。
 また、デンマーク、フィンランド、ノルウェー等近隣諸国と送電線で連係しており、ノルド・プール(Nord Pool)と呼ばれる完全自由化された北欧電力取引市場を形成し、電力融通を行っている。
 スウェーデンの原子力産業は、1988年1月にスウェーデンのアセア社とスイスのブラウン・ボベリ社が合併し、欧州で最大規模の重電メーカー、アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)社が発足した。子会社であるアセア・アトム社はABBアトム社と改称し、1989年には米国のPWRメーカー、コンバスチョン・エンジニアリング(CE)を買収してABB-CE社として、国内外の原子炉系統、炉心、蒸気系統等を供給した。しかし、2000年5月、世界的な原子力産業界再編の流れの中で、英原子力燃料会社(BNFL)がABBの原子力部門を買収。同じく1999年にBNFLに買収された米国PWRメーカーウェスチングハウス(WH)社と統合された。
<更新年月>
2010年12月   

<本文>
1.スウェーデンの電気事業
1.1 スウェーデンの電力事情
 2010年11月現在、10基939.9万kW(ネット電気出力、2011年3月までは35万kW減の904.9万kW)の原子力発電所が運転中で(図1参照)、2009年の総発電電力量1,337億kWhのうち原子力発電による電力量は500.4億kWh。総発電電力量の構成比は水力48.8%、原子力37.4%、火力11.9%、風力1.9%で、原子力の比率は大きい。図2にスウェーデンの発電量の推移を示すが、1970年代から1987年にかけて急激に上昇しているが、この上昇を支えたのが、同時期に相次いで建設された原子力発電であった。一方、大規模な水力発電所の建設は1970年代には既に一段落しており、その後はほぼ一定量の発電量を維持し、1987年以降ほぼ横ばいを保っている。また、1970年代に若干使われていた火力発電は今ではほとんど使われず、1990年代以降は民生用・産業用のコジェネ発電が増加している。再生可能エネルギーはバイオマスの利用が盛んである。一方、風力発電に関しては普及が遅かったものの、今後は急速な拡大が見込まれている。電力需要の推移は図3に示すように、発電量と同様、1987年頃まで大きく上昇したものの、それ以降はほぼ横ばいを保っている。また、2008年の電源別発電設備容量は水力が1,619万kW、原子力が893.8万kW、火力が802.7万kW、風力が102.1万kWで、設備容量をみると、水力、原子力、火力、風力の占める割合は、それぞれ47.4%、26.1%、23.5%、および3%である。図4に発電設備容量の推移を示す。
 スウェーデンはノルウェー、デンマーク、フィンランド、ドイツおよびポーランドと送電線で連係しており、ノルド・プール(Nord Pool)と呼ばれる完全自由化された北欧電力市場を形成し、国際的な電力融通を行っている。ノルド・プールは1993年よりノルウェーが開設した電力取引所で、1996年よりスウェーデンに、1998年よりフィンランドに、2000年よりデンマークの東部・西部系統の電気事業者、需要家に開放されている。スウェーデンの送電線運用会社Svenska Kraftnatとノルウェーの送電線運用会社StatnettSFが共同で保有している。2009年時点のスウェーデンのノルド・プールによる電力取引は、輸入量が13,765GWh、輸出量が9,080GWhとなっている。
1.2 スウェーデンの電気事業体系
 スウェーデンでは、電力需要地が国内南部に集中しているのに対し、豊富な水資源は北部に偏在している。需要地から離れた所に大規模な水力発電プラントを建設し、送電することが求められた為、大規模な投資が必要とされ、スウェーデン国内には大規模な発電会社が誕生した。20世紀初頭にはバッテンフォール(Vattenfall、前身は1909年に設立された王立水力発電委員会(Kungliga Vattenfallstyrelsen)で、国営企業)など大規模発電会社が設立され、工場や地方自治体、共同組合営などの小規模配電会社へ電力を販売する体制が整えらた。電力系統が形成される過程の1946年以降は、バッテンフォールが220kV以上の基幹系統や送電線の計画、建設、運用を独占的に行った。また、国有基幹系統を利用する送電は、基幹利用協定を通して、大規模電気事業者12社のみの寡占的な電力供給体制が運用された。1960年代に入って原子力開発が進むと、国内南部に建設された原子力発電所と水力発電系統が統合され、南北間の連系線強化が図られ、1964年にはバッテンフォールと大規模電気事業者12社間で余剰電力を取引するための制度作りが進められ、法規則が制定された。
 スウェーデン政府は1991年、バッテンフォールの送電部門を分離・独立させる決定を行い、1992年1月には独占的供給体制を緩和するため、220kV・400kVの基幹送電線を所有・運用する中立的な国有系統運用局Svenska Kraftnat社(SvK)を設立した。また、電力市場の競争促進を目的に、1996年には新電気事業法を施行し、卸市場・小売市場の全面自由化を実施、1998年に施行した新電気法により送電系統への自由なアクセスを認め、発電・配電部門に競争導入を図るなど電力市場の規制緩和を進めた。電気法で定められた送配電事業規制機関として、2005年1月にエネルギー庁(STEM)内にエネルギー市場監督局(EMI:Energy Markets Inspectorate)が設立、2008年1月から独立した政府機関として電力、天然ガスおよび地域熱併給市場の規制、ガイドラインの策定、監督を行っている。
 このように、電力会社の民営化を経ずにスウェーデンの電力自由化は実施されたが、発電電力の約45%はバッテンフォールが、ついでドイツのE.ONの子会社であるE.ON Sverige(旧Sydkraft)と、フィンランド政府系エネルギー企業FortumのFortum Power and Heatの3社が、国内発電電力量の約85%を供給している。なお、1950年には約2000社あった配電事業者も、2006年時点では地方公営の約168社に吸収合併され、国外企業による保有シェアも増大している。図5に電気事業者の推移を示す。
 また、バッテンフォール社は、送電線によって結ばれた北欧諸国やバルト海対岸諸国フィンランド・デンマーク・ドイツ・ポーランドのエネルギー企業を中心に積極的に買収を進め、ヨーロッパ有数の多国籍エネルギー企業となっている。特に2000〜2002年にかけてドイツの大手電力会社3社(HEW、VEAG、Bewag)と石炭会社(LAUBAG)を買収して、ドイツ国内第4位の電力企業となっているほか、2009年には石炭と天然ガスを扱うドイツ企業N.V.Nuon Energyを傘下においてベネルクス市場を開拓している。
2.スウェーデンの原子力産業
 スウェーデン政府は、民間企業アセア・グループとの折半出資で原子炉メーカー、アセア・アトム社(AA:Asea Atom)を設立。独自にBWRを開発して、1972年には初の原子力発電所を建設した。その後、国内12基中9基を建設し(表1参照)、1970年代中期にはフィンランドへ2基輸出した。スウェーデンの原子力技術はきわめて高く、独自の軽水炉設計を開発し、高い設備利用率、低い被ばく線量などの優れた運転実績と、独自の安全哲学に基づくフィルターベント装置(通称FILTRA、1985年完成)を据付け、プロセス固有安全炉PIUSの技術開発、さらに総合的な放射性廃棄物管理体制を確立した。
 1988年1月にアセア・アトム社の親会社であるアセア社(Asea)とスイスのブラウン・ボベリ社(BBC:Brown Boveri et Cie)が合併し、欧州で最大規模の重電気メーカーとしてアセア・ブラウン・ボベリ(ABB:Asea Brown Boveri)社を発足して、アセア・アトム社はABBアトム社に改称した。1989年には米国のPWRメーカー・コンバスチョンエンジニアリング(CE:Combustion Engineering)を買収して子会社化して、アセア・ブラウン・ボベリ・アトム・コンバッション・エンジニアリング社(ABB-CE社)となった。
 ABBアトム社は1970年代にBWR75の設計を開発し、フォルスマルク2基(電気出力93万kW)とフィンランドのオルキルオト2基(電気出力70万kW)として実現した。BWR75のコンセプトは1985〜86年に稼働を開始したフォルスマルク3号機(電気出力105万kW)とオスカーシャム3号機(電気出力105万kW)でその最終的な形に達している。その後、BWR75をベースに格納容器の設計およびプログラマブル制御機器の実装に改善がなされ、BWR90を開発した。
 また、1983年から1991年にかけて韓国と原子力分野の技術提携を行い、ABB-CE社が開発したSystem 80をベースに100万kW級の韓国標準型原子炉OPR1000を開発し、1995年に霊光原子力発電所3号機(韓国)で使用した。1990年代後半には改良型のSYSTEM 80+をベースに140万kW級の韓国標準型原子炉APR1400を開発して、新蔚珍原子力発電所(韓国)などで採用している。しかし、2000年5月、世界的な原子力産業界再編の流れの中で英原子力燃料会社(BNFL)がABBの原子力部門を買収。同じく1999年にBNFLに買収された米国PWRメーカーであるウェスチングハウス(WH)社と統合された。
前回更新(2002年1月)
<図/表>
表1 スウェーデンの原子力発電所の主契約者等
図1 スウェーデンの原子力発電所配置図
図2 スウェーデンにおける発電電力量の推移
図3 スウェーデンにおける消費電力量の推移
図4 スウェーデンの発電設備容量の推移
図5 スウェーデン国内における電気事業者の推移

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<関連タイトル>
スウェーデンの原子力政策および計画(1987年まで) (14-05-04-01)
スウェーデンの原子力政策および計画(1988年以降) (14-05-04-02)
スウェーデンの原子力発電開発 (14-05-04-03)
スウェーデンの原子力開発体制 (14-05-04-04)
スウェーデンの核燃料サイクル (14-05-04-05)
スウェーデンのPA動向 (14-05-04-07)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2010年版、(2010年4月)、p.102-103
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2011、(2011年10月)、p.210-214
(3)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編、2008年、(2008年8月)、p.302-305
(4)Svensk Energi:Elaret OH 2009 engelsk、

およびElectricity year 2009:
(5)Swedish Energy Agency(Energimyndigheten):Energy Indicators 2009,

(6)Swedish Energy Agency(Energimyndigheten):ENERGILAGET 2009,

(7)Svenska Kraftnat:スウェーデンの電力統計2009、

(8)VATTENFALL:http://www.vattenfall.com/en/index.htm
(9)世界原子力協会(WNA):Nuclear Power in Sweden(2010年11月)、
http://www.world-nuclear.org/info/inf42.html
(10)Nordel Annual Statistics2008、
http://www.entsoe.eu/_library/publications/nordic/annualstatistics/Annual%20Statistics%202008.pdfおよびNordel Annual Statistics 2007、
http://www.entsoe.eu/_library/publications/nordic/annualstatistics/Annual%20Statistics%202007.pdf
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