<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> スウェーデン
<タイトル>
スウェーデンの原子力発電開発 (14-05-04-03)

<概要>
 スウェーデンは、水力以外のエネルギー資源に恵まれず、第二次世界大戦後の1945年から原子力開発に着手した。1979年の米国TMI事故をきっかけに、1980年に原子力発電に関する国民投票が行われ、議会は新たな原子力発電所の建設の禁止と、原子力に代わる現実的な新しいエネルギー源が利用できる場合は2010年までに12基の原子炉を廃止することを決定した。1986年の旧ソ連におけるチェルノブイル事故により、原子炉廃止への圧力が一層加わり、1999年にはバーセベック1号機(出力60万kW、1975年運転開始)が、2005年にはバーセベック2号機(出力60万kW、1977年)が運転を停止した。しかし、代替電源の確保が進まなかったことや、経済面・雇用面への影響、温室効果ガスの削減などを背景に脱原子力政策は事実上凍結された。2009年2月、連立政府が新しいエネルギー政策を発表したことで、原子炉のリプレースに向けた政策転換が決定している。2016年11月現在、オスカーシャム、リングハルス、フォルスマルクの3サイトで計10基、967.6万kW(ネット電気出力)の原子炉が稼働中である。2004年以降、熱出力の増加、熱交換率の向上などの出力増強と原子炉寿命を60年に延長するPLEX計画が進められている。
<更新年月>
2016年11月   

<本文>
1. 原子力発電開発の現状
 2016年11月現在、オスカーシャム(Oskarshamn)、リングハルス(Ringhals)、フォルスマルク(Forsmark)の3ヵ所のサイトで計10基、967.6万kW(ネット電気出力)の原子炉が稼働中である(表1および図1参照)。2014年の原子力による発電電力量は623億kWh、総発電電力量に原子力が占める割合は41.5%ある(図2参照)。化石燃料資源に乏しいスウェーデンでは、火力発電の比率は極めて低く、水力と原子力が重要なベースロード電源となっている。なお、オスカーシャム発電所は北欧地域で最大の原子力発電施設であるが、2016年2月16日、運転者であるOKG(Oskarshamnsverkets Kraftgrupp)は、オスカーシャム1号機を運転期間45年となる2017年6月30日に閉鎖すると発表した。また、2014年から運転寿命を60年に延長する大規模な安全性改良工事を実施していた2号機についても再稼働させず、早期閉鎖することを発表した。これは大株主であるE.ONの勧告を受けて2015年10月の臨時株主総会で決定した方針に従ったものである。OKGは、原子炉の閉鎖は安全性の問題によるものではなく、電力価格低迷の長期化や原子力税の増額などにより、1・2号機の運転は経済的利益が伴わないためとしている。ただし、3号機に関しては運転寿命を迎える2045年まで運転を継続する。1号機の廃止措置許可申請書は2015年6月にOKGから国土環境省に提出されている。
 また、バッテンフォール社でも2015年10月15日、リングハルス1号機を2019年に、2号機を2020年に閉鎖すると発表した。2基とも2025年まで運転する予定であったが、電力価格の低迷や政権交代後の原子力政策(原子力課税の引き上げ)等を考慮して閉鎖を決定したと述べている。なお、同発電所3、4号機の運転計画については変更しないとしている。
2. 原子力発電開発の経緯
 水力発電資源以外のエネルギー資源に恵まれないスウェーデンは、第二次世界大戦後の1945年から原子力開発に着手した。はじめは国内にある少量のウラン資源を使用した天然ウランが利用できる重水炉を開発した。電気・熱併給炉オゲスタ原子力発電所(AGESTA:PHWR、出力1.2万kW、ストックホルム近郊)は1964年3月に運転を開始したが、ウラン資源が予想より少ないこともあって1974年6月に閉鎖された。
 その後、政府とアセア・グループの折半出資によるアセアアトム社が独自にBWRを開発し、1960年代後半から1970年にかけて国内にBWRを9基建設した。フィンランドにもBWRを2基輸出している。また、米ウェスチングハウス社は1968年に現地法人WHモニター社を設立し、3基のPWRを建設した。これにより1990年には3サイト12基、約1000万kWの原子力発電所が運転され、1990年の原子力による発電電力量は730億kWh、発電電力量の構成は水力49.9%、原子力46.5%、火力3.6%となった。なお、ウラン探鉱プロジェクトは世界市場でウランが安価で入手できるため1985年末に中止した。
 1988年1月4日にアセアアトム社の親会社であるアセア社とスイスのブラウンボベリ社が合併し、欧州で最大規模の重電機メーカー、アセア・ブラウン・ボベリ社(ABB:Asea Brown Boveri)が発足した。これによりアセアアトム社はABBアトム社(AA:ABB−Atom)と改称した。2000年5月、ABB社の原子力事業部門が英原子燃料会社(BNFL)に買収されたことにより、AA社は2000年以降、ウェスチングハウス社に統合された。
 1970年代にABBアトム社が開発・設計した「BWR75」は、フォルスマルクの最初の2基(出力93万kWe)とフィンランドのオルキルオトの2基(出力70万kWe)で実現されている。そのコンセプトは1985〜86年に稼働したフォルスマルク3号機とオスカーシャム3号機(出力105万kWe)で最終的な形に達した。その後、ABBアトム社は安全性の高いシステム基準と技術を導入した「BWR90」を開発。また、冷却材喪失事故時炉心冠水やコアキャッチャ、フィルタベントなどを採用して安全性を高め、経済性の向上を目指した発展型BWRである「BWR90+」(出力150万kWe)を開発した。
3. 脱原子力政策とその撤回
 1979年に起きた米国TMI事故をきっかけに、1980年に実施した国民投票を受け、スウェーデン議会は新たな原子力発電所の建設の禁止と、条件付きで2010年までに12基の原子炉を廃止することを決定した。その後、1986年に起きた旧ソ連のチェルノブイル事故により原子炉廃止への圧力が加わり、1988年に政府は1995年から原子炉の廃止を開始することを決定した。労働組合や産業界の反対があったものの1999年にはバーセベック1号機(Barsebeck:ネット電気出力60万kW、1975年運転開始)、2005年にはバーセベック2号機(Barsebeck:ネット電気出力60万kW、1977年)が停止した。
 しかし、代替え電力供給設備の設置が進展しなかったこと、また経済面や雇用面などに対する影響が大きかったことから、脱原子力政策は事実上凍結することになった。
 なお、F.Wagner(マックスプランク研究所)とE.Rachlew(スウェーデン王立工科大学)が2016年5月にEPJ Plusに発表した論文によると、ベース電源である原子力発電所900万kW分を全廃して風力発電で代替した場合、2230万kWの風力発電設備と860万kWのガス火力発電設備が必要であるとされ、炭酸ガス排出量は現在の2倍になると試算している。また、スウェーデンは現在年間340億kWhの電力を輸出し、125億kWhを輸入する電力純輸出国であるが、原子力が全廃になった場合は電力純輸入国に転じ、隣国フィンランド等への影響も大きい(図3参照)。
 このようななか、スウェーデンの連立政府は2009年2月5日、欧州連合の地球温暖化対策/エネルギー政策をベースとした新しいエネルギー政策を発表した。政策の具体的内容は、「当面の間」としながらも地球温暖化対策における原子力発電の重要性を認め以下の4項目を挙げている。
 (1)今後も出力増強の申請を、従来通り適切に取り扱う。
 (2)原子力発電所の基数が現状の10基以内に維持されるのであれば、同一サイトへのリプレースも承認する。
 (3)「脱原子力法」を破棄し、新規炉の建設に向けた新しい法体系を整備する。
 (4)原子力発電所の新規建設に対し、財政面での補助は行わない。
4. 既設炉の改良と原子炉のリプレース計画
 スウェーデンでは、2004年以降、閉鎖されたバーセベック1・2号機の合計出力120万kWを上回る140万kWの出力増強計画や、安全性の向上、原子炉寿命を60年に延長するPLEX計画が進められている(表2参照)。出力増強は熱出力の増加と蒸気発生器の交換と設備改造、タービン発電機の交換等の熱効率の向上により行われる。また、PLEX計画に関しては、リングハルス3・4号機とフォルスマルク1−3号機を対象に、2004年〜2017年にかけて改良工事が行われている。
 スウェーデン国内における原子炉の新規建設計画は、2010年の原子力法改正以降長らく申請されなかったが、バッテンフォール社はスウェーデン放射線安全庁(SSM)に対し、原子炉のうち最大2基を建て替えるための建設許可申請を2012年7月に提出している。これは2025年以降のリプレースを見据えたもので、8〜10年かけて、リプレースの有無を検討するという。
5. 原子炉の安全検証と安全強化対策
 スウェーデンでは、TMI発電所事故後、「大規模な放射能汚染防護が重要」として、1980〜1990年にかけて、シビアアクシデントを軽減するためのフィルターベントを設置しており、2011年3月に起きた福島第一発電所事故後も運転停止等に追い込まれた原子炉はない。ただし、2011年に実施したEUストレステストではいくつかの脆弱性が認識され、炉心溶解を防ぐ安全強化措置として、2020年までに、既存の主冷却系とは独立した別個の冷却系である独立型炉心冷却装置の設置が予定されている。
 2008年の放射線安全庁(SSM)の発足以来、スウェーデンの原子力発電所の事故および緊急時等の規制が見直され、特に国際原子力事象評価尺度(INES)レベル2以上のものに関しての規制が強化されている。図4に1991年〜2013年の間に報告された原子力施設におけるINESレベル1以上に分類される発生件数を示す。この間INESレベル1が94件、INESレベル2が10件報告されているが、2000年以降トラブルの発生件数は非常に改善されている。なお、2006年7月25日にフォルスマルク1号機で発生した短絡・地絡現象に端を発する原子炉スクラム、2系統の無停電電源系の機能不全、2台の非常用ディーゼル発電機の自動起動失敗はINESレベル2に分類された。フォルスマルク発電所ではその後も技術的トラブルが発生したため、SSMは2006年9月〜2009年4月まで出力増強を認めず、特別監査を実行した。リングハルス発電所でも2005年〜2009年のSSM通常監査時に安全管理と手順書遵守が指摘され、2009年7月〜2013年6月にかけて特別監査が実施された。オスカーシャム発電所に関しては経年劣化の管理不備が指摘され、2012年12月からSSMの特別監査体制下に置かれ、OKG社は2013年10月から半年ごとの業務改善報告が義務付けられている。
<図/表>
表1 スウェーデンにおける原子力発電所の一覧
表2 スウェーデンの原子力発電所の改造工事、出力増強計画
図1 スウェーデンにおける原子力発電所の配置図
図2 スウェーデンにおける原子力発電の位置付け
図3 ENTSO−E加盟国間の電力相互移入状況(2015年)
図4 スウェーデンの原子力発電所における異常事象発生件数

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
スウェーデンの原子力政策および計画(1987年まで) (14-05-04-01)
スウェーデンの原子力政策および計画(1988年以降) (14-05-04-02)
スウェーデンの核燃料サイクル (14-05-04-05)
スウェーデンの電気事業および原子力産業 (14-05-04-06)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2008年版(2008年10月)、
p.305−307
(2)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2016年次報告(2016年
4月)、p.148−149、p.96
(3)「原子力年鑑」編集委員会編纂、日刊工業新聞社発行:原子力年鑑 2017年
版(2016年10月)、スウェーデン
(4)国際エネルギー機関(IEA):Electricity generation by fuel(Sweden)、
http://www.iea.org/stats/WebGraphs/SWEDEN2.pdf
(5)世界原子力協会(WNA):Nuclear Power in Sweden 2016年11月、http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-o-s/sweden.aspx、Nuclear share figures(2004−2014)、http://www.world-nuclear.org/information-library/facts-and-figures/nuclear-generation-by-country.aspx
(6)Swedish Energy Agency:Energy in Sweden 2008,Energy indicators 2008,

(7)スウェーデン環境省:Sweden’s sixth national report under the Convention
on Nuclear Safety-Swedish implementation of the obligations of the Convention
(Ds 2013:56)(2013年10)、http://www.government.se/49b75d/contentassets/969cfb2b71e34f24bf3d7be5e23f6381/swedens-sixth-national-report-under-the-convention-on-nuclear-safety---swedish-implementation-of-the-obligations-of-the-convention-ds-201356
(8)European Network of Transmission System Operators for Electricity
(ENTSO-E):STATISTICAL FACTSHEET 2015(2016年5月)、https://www.entsoe.eu/Documents/Publications/Statistics/Factsheet/entsoe_sfs2015_web.pdf
(9)国際原子力機関(IAEA):Country Nuclear Power Profiles Sweden(2014)、
https://cnpp.iaea.org/countryprofiles/Sweden/Sweden.htm
(10)F.Wagner and E.Rachlew:Study on a hypothetical replacement of nuclear
electricity by wind power in Sweden、European Physical Journal Plus、Vol.131
(No.5)(2016年5月)、http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:2309691/component/escidoc:2343784/Wagner_Study.pdf
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