<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> スウェーデン
<タイトル>
スウェーデンの原子力政策および計画(1988年以降) (14-05-04-02)

<概要>
 スウェーデンでは、1979年の米国スリーマイルアイランド原子力発電所事故を受けて「脱原子力」政策を打ち出した。1980年の国民投票の結果、2010年までに原子力発電所を段階的に廃止する決議が議会で採択され、バーセベック1号機が1999年11月末に、同2号機が2005年5月末に強制閉鎖された。しかし、代替電源が確保されなかったため、バーセベック発電所の閉鎖予定はたびたび変更された。
 2006年9月17日の総選挙で、中道右派4党が前与党の社会民主党を破り、穏健党のラインフェルト党首を首班とする連立政権が発足した。4党は共通の政策綱領として、2010年まで原子炉の新設・閉鎖は行わず、既存の原子炉の出力増強に注力する方針に合意した。脱原子力からの政策転換は2011年3月に起きた福島第一発電所事故後においても変更されていない。こうしたなか、経済的理由から、2015年9月にバッテンフォール社がリングハルス発電所1・2号機の早期閉鎖を、2015年10月にOKG社がオスカーシャム発電所1・2号機の早期閉鎖を発表した。2040年までに再生可能エネルギー100%のエネルギー供給システムの構築を目指すスウェーデン政府は、低炭素化における原子力発電の重要性を認め、設備容量に課していた税制を2017年から2年間で段階的に廃止していく方針を明らかにしている。
<更新年月>
2016年11月   

<本文>
1. 原子力発電の位置づけ
 2016年11月現在、スウェーデンでは10基の原子力発電所が運転中で、2014年の原子力による発電電力量は623億kWh、総発電電力量に原子力が占める割合は41.5%ある(表1および図1参照)。化石燃料資源に乏しいスウェーデンでは、火力発電の比率は極めて低く、水力と原子力が需要なベースロード電源となっている(図2参照)。1980年3月の国民投票により「段階的脱原子力政策」を決定したスウェーデンは、1999年12月バーセベック1号機(BWR、61万5,000kW)を、2005年5月にバーセベック2号機(BWR、61万5,000kW)を強制閉鎖させた。しかし、代替電源の見通しがつかないことから、それ以降閉鎖された原子炉はなかった。一方、原子炉の耐用年数を50年とした場合、既存原子炉は2015年以降次々と運転寿命を迎える。
2. スウェーデンの原子力政策
 原子力政策をめぐる動きを表2に示す。
2.1 脱原子力政策を決定するまでの動き
 スウェーデンの原子力発電開発は、1950年〜1960年にかけて対ロシア政策のために計画された核兵器開発の経験を基に進められた。1972年に商用原子炉オスカーシャム1号機(BWR、48万7,000kW)が運転開始。エネルギー自給率の向上を目指した商用原子炉の開発は、大手電力会社バッテンフォール(Vattenfall)社と原子炉メーカーアセア・アトム社(ASEA:Asea Atom)社が協力して推進し、1985年までに12基の原子力発電所が建設された。しかし、1979年3月のスリーマイル島原子力発電所事故を契機に反原子力運動が高まり、原子力発電の利用の是非を問う国民投票が実施された。この結果、スウェーデン議会は2010年までの段階的原子炉閉鎖を1980年3月に決定、1987年には新規原子炉の建設を禁止する法律が可決された。詳しくはATOMICAタイトル「スウェーデンの原子力政策および計画(1987年まで)」を参照。
2.2 脱原子力政策
 脱原子力決定以降、主要政党間の攻防戦が続いたが、1991年1月、社会民主党、自由党、中央党の主要三政党は、1988年の議会決定(1995〜96年にバーセベック原子力発電所にある2基の原子炉を閉鎖する)を放棄することに合意した。スウェーデン議会は同年6月、エネルギー節約、エネルギーの効率的利用、新エネルギーへの投資の5カ年計画を進め、毎年それらの進捗状況を監視しながら、原子力廃止計画を決めるという新しい国家エネルギー政策を正式に承認した。一方、少数与党である社会民主党は1997年2月、政策上提携関係にある中央党、左翼党との間で、バーセベック発電所の早期閉鎖等を盛り込んだエネルギー政策を決定した。
 1997年6月10日、スウェーデン議会は地理的に最も不適当な発電所として、シドクラフト社が所有・運転するバーセベック原子力発電所1・2号機(ASEA−Atom製BWR、各出力60万kW、隣国デンマークの首都コペンハーゲンから23kmの距離に位置する)の閉鎖を盛込んだエネルギー再編法案(実質的な“脱原発法案”)を可決した。決定を不服としたシドクラフト社は提訴したが、スウェーデン最高行政裁判所は1999年6月16日、「政府の命令は違法とはいえず、これを取消す法的根拠はない」とする判決を下した。シドクラフト社は、1999年11月30日に政府と国営電力バッテンフォール社との間で補償協定を締結したことで、同日1号機の運転を停止した。2号機に関しては閉鎖期限が何度も変更されたが、最終的に2005年5月31日政府命令により強制閉鎖されるに至った。ただし、バーセベック発電所の強制閉鎖は、原子力に反対する社民党政権を環境保護政党が閣外協力するという政治情勢と、デンマークの強硬な閉鎖要求に応じたものであって、代替電源が確保されたものではなかった。
2.3 脱原子力政策撤回へ向けた動き
 スウェーデンの発電構成は水力と原子力が主力で総発電電力量の約85%を占める(図2参照)。ただし、水力発電は降水量に大きく左右され、自然保護の観点から1960年以降ダムの新建設は行われていない。再生可能エネルギーの利用に関しても風力発電の開発が急ピッチで進められているが、2014年の発電実績は約11億kWh、総発電電力量の7.3%に過ぎない(図3参照)。化石燃料資源に乏しいことから、火力発電の比率は極めて低く、温室効果ガス排出量の削減面からも増加は見込めない。従ってスウェーデンはノルウェー、フィンランド、デンマークとの北欧四か国間の国際連携網による輸入電力で需要を賄っており、エネルギー・セキュリティ面からは常に不安定である(図4参照)。
 このようななか、2006年9月の選挙で脱原子力政策を掲げていた社会民主労働党が破れ、スウェーデンの連立政府(穏健党、中央党、自由党、キリスト教民主党の中道右派連合)が誕生した。新政府は2007年2月に承認された欧州連合の地球温暖化対策/エネルギー政策をベースとした新しいエネルギー政策を2009年2月5日に発表。政策は環境面での持続可能性、国内産業界の競争力強化、エネルギー安全保障の3つを柱とし、原子力発電のリプレースを認める方針となった。具体的には、「当面の間」としながらも地球温暖化対策における原子力発電の重要性を認め、以下の4項目を挙げている。
(1)今後も出力増強の申請を、従来通り適切に取り扱う。
(2)原子力発電所の基数が現状の10基以内に維持されるのであれば、同一サイトへのリプレースも承認する。
(3)「脱原子力法」を破棄し、新規炉の建設に向けた新しい法体系を整備する。
(4)原子力発電所の新規建設に対し、財政面での補助は行わない。
 2010年6月18日、スウェーデン議会は耐用年数を迎えた既存炉をリプレースする政府案を僅差で可決し、2011年1月に「原子力活動法(Act on Nuclear Activities:1984)」を改正、既存の原子炉が老朽化して完全に停止した場合に、同一サイトで新規原子炉を建設することを可能にした。
2.4 福島第一発電所事故以降の原子力政策
 スウェーデンの脱原子力政策からの転換方針は2011年3月に起きた福島第一発電所事故後も変更されていない。2016年6月、社会民主党政権は2040年までに再生可能エネルギー100%のエネルギー供給システムに移行するために必要な措置として、原子力発電の設備容量に課していた税制を2017年から2年間で段階的に廃止していく方針を明らかにしている。これは社会民主党のほか、穏健党、緑の党、中央党、キリスト教民主党を加えた5党が、長期的なエネルギー政策に関する議会の枠組合意として公表したもので、既存の原子力発電サイトで10基までの新規建設を含む原子力発電所の建て替えを許可すると明記した。これは低炭素化における原子力発電の重要性を容認するもので、2040年を脱原子力への目標値として定めるのでないと強調している。これらは長引く電力価格の低迷と高額な原子力税を理由に、2015年9月にバッテンフォール社がリングハルス発電所1・2号機の早期閉鎖を、2015年10月にOKG社がオスカーシャム発電所1・2号機の早期閉鎖を発表したことを受けたものである。
 バッテンフォール社によると、1kWhあたりの原子力発電コストは収益22オーレ/kWhに対し、32オーレ/kWhの経費がかかるとしている。1984年に導入された1kWhあたり0.2オーレ(約0.03円)の原子力発電税は、2000年には2.7オーレ(約0.34円)に、現在では容量税として7オーレ(約0.89円)に上昇、再生可能エネルギー支援費用25オーレ/kWhが加算されると内訳を説明している。また、包括的な近代化プログラムにより2040年代半ばまで原子力発電所の運転継続が可能になったものの、スウェーデン放射線安全庁(SSM)が2014年に独立の炉心冷却機能の設置を提案したこと、2020年以降さらに厳しい安全要件を満たさねばならなくなったことなど、採算が合わないとしている。
 ちなみに世論調査による国民の原子力評価を示す。KSU(Nuclear Safety and Training)の委託によりNovous社が実施しているもので、約1,000人の成人を対象とした「将来のエネルギー源として原子力発電をどう考えるか」という問いを、TMI事故以降毎年2回、継続している。福島事故前の2010年8月には、原子力利用への賛成が77%(そのうちリプレース可が40%)、反対が19%であったが、事故後の2011年5月には原子力利用が69%(そのうちリプレース可が33%)、反対が24%に、最新の2015年11月の世論調査では原子力利用が68%(そのうちリプレース可が34%)、反対が20%となっている(図5参照)。調査から、「若年層」「女性層」が原子力に対して懐疑的な意見を抱いているものの、全体として原子力の支持率は比較的高水準で安定的に推移していると思われる。
<図/表>
表1 スウェーデンにおける原子力発電所の一覧
表2 スウェーデンの原子力政策の変遷
図1 スウェーデンにおける原子力発電所の配置図
図2 スウェーデンにおける原子力発電の位置付け
図3 スウェーデンにおける電源別発電設備容量の推移
図4 スウェーデンの電力輸出入実績の推移
図5 スウェーデンにおける原子力に関する世論調査

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
スウェーデンの原子力政策および計画(1987年まで) (14-05-04-01)
スウェーデンの原子力発電開発 (14-05-04-03)
スウェーデンの原子力開発体制 (14-05-04-04)
スウェーデンの核燃料サイクル (14-05-04-05)
スウェーデンの電気事業および原子力産業 (14-05-04-06)
スウェーデンのPA動向 (14-05-04-07)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2016年次報告(2016年4月)
(2)(社)日本エネルギー法研究所:諸外国における原子力発電所の安全規制に係る法制度 VI 原子力政策の変遷[参考情報2]JELI・R・No.127、2013年11月
(3)原子力発電検査局(SKI):
(4)世界原子力協会(WNA):Nuclear Power inSweden、2016年11月、http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-o-s/sweden.aspx
(5)国際エネルギー機関(IEA):Electricity generation by fuel(Sweden)、http://www.iea.org/stats/WebGraphs/SWEDEN2.pdf
(6)Novus:原子力に関する世論調査、2015年11月、http://analys.se/wp-content/uploads/2015/06/20151217-novus-karnkraftsopinion1.pdf
(7)Swedish Energy Agency:Energy in Sweden 2015、2015年12月
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