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<概要>
 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2003年に、事業の効率的な推進のため、特殊法人が改組されてできた研究開発のマネージメント機関である。事業の目的は、(1)産業技術の強化、(2)エネルギーの安定供給と地球環境問題への対応、及び(3)京都メカニズム・クレジットの取得である。技術的課題に対して夫々の分野の民間企業、大学、公共研究機関などを結集した開発体制をとり、その研究開発を管理調整し、研究−試験−実用化までを一貫してマネージメントする。技術開発分野は、バイオテクノロジー・医療技術、電子・情報と機械システム、ナノテクノロジー・材料、新エネルギー、省エネルギー、京都メカニズム・クレジット取得等と多岐にわたり、かつ技術の基礎から実用化、エネルギーについて技術の導入から普及、新エネルギーの開発から安定供給、二酸化炭素の排出量取引等を含み広範囲である。
<更新年月>
2010年11月   

<本文>
1.沿革
 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)は、1970年代の二度の石油危機の経験を基にそれに対応できる石油代替エネルギーの開発と導入を目的とした、(特)新エネルギー総合開発機構の設立(1980)から始まる(表1)。
 その後、経済の発展を維持する産業技術を総合的に進める事業が加わり、1988年に(特)新エネルギー・産業技術総合開発機構に改組された。当時の事業は、原子力を除いた殆どすべての新エネルギー・省エネルギー技術開発とその導入・普及事業、種々の産業技術の研究開発と実用化促進、石炭の合理化、アルコールの製造販売などであった。
 2003年に、事業の効率的な推進のため、より民間に近い(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構に改組された。同年に石炭の合理化業務は廃止され、2006年にアルコールの製造販売業務は特殊会社に移管された。
2.目的
 当機構の目的は、以下の三点である。
(1)産業技術の強化
 石油代替エネルギーやエネルギー使用合理化の技術や諸工業技術に関し、民間の力を活用して研究開発しその利用の促進をはかり、また国際的に協調して総合的に進め、産業技術の向上とその実用化・企業化を進める。
(2)エネルギーの安定供給と地球環境問題への対応
 上記の成果を利用してエネルギーの安定的かつ効率的な供給を確保し、地球環境問題に対応し、かつ経済及び産業の発展に役立てる。
(3)京都メカニズム・クレジットの取得
 「気候変動に関する国際連合枠組条約」の京都議定書に規定の排出量取引に参加し、規定に基づく温室炭素効果ガスの排出量削減の約束履行に寄与する。
3.事業計画
3.1 第一期中期計画(2003年10月〜2008年3月)
 第一期には研究開発及び企業化について以下のような成果があった。
(1)太陽光発電技術などの競争力のある産業の創出
(2)研究論文:1,000報、特許出願:国内5,000件、国際1,000件、人材育成:5,000人
(3)新エネルギー技術の開発・導入による二酸化炭素の国内削減量は640万トン/年
3.2 第二期中期計画(2008年4月〜2013年3月)
 表2にNEDOの第二期の事業と分野を示す。以下に、主に技術の研究開発について述べる。
(1)研究開発のマネージメント
 NEDOは、研究開発のマネージメント機関である。課題に対して夫々の分野の優れた民間企業、大学、公共研究機関などの力を結集した開発体制をとり、その研究開発を管理調整し、中長期的に研究−試験−実用化までをマネージメントする(図1)。
 第二期の研究開発は次の事項に留意して進める。
 a.新機軸(イノベーション)の創生
 既存の延長線から外れた新機軸の科学技術の創生を図り、民間、大学、公的研究機関の協力以上の知の融合が生まれる拠点形成を進める。
 b.科学技術の成果の実用化促進
 世界の科学技術情報を把握する。成果の利用事業者へ“もう一押し”助言する。情報交換・発信等を積極的に進める。
 c.環境と人間重視の科学技術への取組み
 環境と人間重視の取組みを強化し、これを世界に発信し、日本の競争力の強化と満足感の向上を図り、あわせて国際社会に貢献する。
d.地球環境・エネルギー問題に貢献
 新エネルギー・省エネルギー技術の利用促進を図る。京都メカニズム・クレジット取得事業により、国際的に地球環境・エネルギー問題に貢献する。
(2)主な事業の概要
A.産業技術
 a.バイオテクノロジー・医療技術
 生活の質的向上のため、健康・医療の基盤技術、生物機能を活用した生産−処理−再資源化のプロセス技術などに重点を置く。
 b.電子・情報と機械システム
 情報の自由な発信・共有により個人の能力の発揮を図る。高度な情報通信(IT)社会の実現と経済・産業の発展促進を念頭に、技術の多様性、技術革新、情報化に伴うエネルギー消費の増大を考慮する。
 そのため、高度情報通信機器・デバイス基盤関連技術、新製造技術、ロボット技術、宇宙産業の高度化に関する基盤技術などの課題に取り組む。
 c.ナノテクノロジー・材料
 広範な科学技術の発展基盤になる技術を確立するため、研究開発から利用まで分野の連携による技術融合を図り、ナノテクノロジー、新材料の創製技術などの課題に取り組む。
B.エネルギー・環境技術
 a.新エネルギー・省エネルギー
 開発には、安定供給の確保、環境への適合、市場原理の活用等を考慮する。
 エネルギー技術の普及には、設置場所の選定から運転までを原則二年以内とする。
 重点的に取り組むべき分野の技術開発、導入・普及を推進する。
 b.省エネルギー
 温室効果ガスの排出削減に繋がる技術の開発と、その実証、導入・普及に取り組む。
c.燃料電池自動車
 定置用燃料電池等の早期実用化と普及のため、技術開発、安全化、基準化、標準化及び実証試験を一体的に進める。
d.水素エネルギー
 実用化のため、水素の製造、輸送、貯蔵等の研究開発を進める。技術上の課題を明らかにし、安全性、信頼性等の確認、基準、標準を制定する。実証試験を行う。
C.国際的な実証と連携
 太陽光発電システム等の国際共同実証、国際エネルギー消費効率化等技術普及協力、バイオマス等の研究協力、国際連携クリーンコール技術開発プロジェクト、APEC援助事業、IEA情報交換事業、二国間協力協定、人材交流などにより、技術の国際的な実証と普及を進める。
D.京都メカニズム・クレジット取得関連
 中小企業の省エネルギーを支援する温室効果ガス排出削減支援事業、開発途上国等を技術支援する二酸化炭素の排出量取引(京都メカニズム・クレジット取得)により、日本の削減目標の達成と国際環境問題に貢献する。
E.テーマ公募型事業
 産業の競争力強化を図るため、若手研究者、企業等から広くテーマを募集する。表3は2009−10年のテーマ公募型事業の例を示す。
F.産学連携・人材育成
 NEDOは人材育成の場を提供する。産業技術フェローシップ事業、NEDOプロジェクトを核とした産学連携等により人材の量的、質的拡充を図る。
G.調査・評価など
 産学官が共通の認識を持つため内外の産業の客観的な情報を収集・解析し、研究と技術開発の基盤を構築する。
4.組織、予算、情報発信
4.1 組織と人員
 図2は、表2に示す事業を進めるNEDOの組織を示す。2010年度の予算は総額2,097億円(表4)、職員は約1,000名である。
4.2 情報発信
 NEDOの成果は表5に示す形式で発表されており、ホームページから入手できる。
(前回更新:2004年1月)
<図/表>
表1 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の沿革
表1  (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の沿革
表2 NEDOの事業分野一覧(2010年)
表2  NEDOの事業分野一覧(2010年)
表3 テーマ公募型事業一覧
表3  テーマ公募型事業一覧
表4 NEDOの予算(2010年)
表4  NEDOの予算(2010年)
表5 NEDOの研究開発情報と技術情報
表5  NEDOの研究開発情報と技術情報
図1 NEDOの研究開発のマネージメント
図1  NEDOの研究開発のマネージメント
図2 NEDOの組織
図2  NEDOの組織

<関連タイトル>
省エネルギ−技術の開発推進 (01-06-03-01)
エネルギーと地球環境問題 (01-08-05-04)
地球温暖化防止京都会議(1997年のCOP3) (01-08-05-15)
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)
新エネルギーと省エネルギーの技術開発 (01-09-07-02)
新エネルギー開発における国際協力 (01-09-07-03)
日本の省エネルギー政策 (01-09-08-02)
石油代替エネルギーの供給目標と新エネルギーの利用 (01-09-09-02)

<参考文献>
(1)電子政府の総合窓口イーガブ、独立法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法
(2)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、第二期中期目標

(3)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 ホームページ、パンフレット、NEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構 2009〜2010、NEDOのミッションとポリシー p.3、NEDOの概要、p.192
(4)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 ホームページ、事業・プロジェクト紹介
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