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<概要>
 大量のエネルギー資源の消費から生じる廃棄物のうち、気体廃棄物はオゾン層の破壊、温暖化等の地球規模の環境変化に密接に関連すると推測されている。このうち、温暖化に対する対策は急を要すると考えられた。1997年の「気候変動に関する国際連合枠組条約」の会議で、京都議定書が採択され2005年に発効した。締約国は、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出削減を約束した。
 日本は、京都議定書の第一約束期間(2008−12年)に基準年(1990年)の二酸化炭素排出量から6%の削減を約束している。2005年には関連技術の革新、関連企業の省エネ、セメント技術の改良等の「京都議定書目標達成計画」を決定し、2008年2月には同計画を改定して、施策の確実な実施により基準年より0.8〜1.8%下げる計画である。さらに森林の吸収と京都メカニズムを合わせて、基準年より6%の低下が達成できる見込みとなっている。
<更新年月>
2009年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.エネルギー消費の影響と京都議定書
 現代社会は、大量のエネルギー資源の消費で成り立っている。図1は、世界の一次エネルギー資源の消費を示す。2006年には石油換算で109億トンを消費し、その87.9%は石油、石炭、天然ガス等の化石燃料である。これらの消費は大量の固体廃棄物、液体廃棄物そして気体廃棄物を生み出す。固体廃棄物は処分が課題であり、液体廃棄物はしばしば国境を越えて生活水、河川と海洋の汚染をひき起こす。気体廃棄物はオゾン層の破壊、温暖化等の地球規模の環境変化に密接に関連すると推測され、特に、温暖化に対する対策は急を要すると考えられる。
 図2に示す国々は、1997年の「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」の締約国会議で採択され2005年に発効した京都議定書で、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出削減を約束した。米国は批准していない。また、中国やインドは削減の義務は無い。
2.日本の対応
2.1 技術開発等による対応
 図3に示すように、日本は、京都議定書の第一約束期間(2008−12年)に基準年(1990年)の二酸化炭素排出量から6%の削減を約束した。議定書発効の2005年4月には、関連技術の革新、関連企業の省エネ、セメント技術の改良等の「京都議定書目標達成計画」が決定された。2008年2月には同計画に改定が加えられ、施策の確実な実施により基準年より0.8〜1.8%下げ、さらに森林の吸収と京都メカニズムを合わせて基準年より6%低下できる見込みとなっている。
 この計画の下に、以下に示すように、産業界の自主的な対策の拡充と強化、施設や住宅の省エネ、高性能機器の導入等を勧めている。さらに新エネルギー利用の増大と原子力利用を推進する。計画は毎年見直して対策を追加・強化する方針となっている。
(1)自主行動計画の推進について
 日本経団連は、加盟企業の産業関連の50業種、業務関連の32業種、運輸の17業種、エネルギー転換の4業種で、目標を定めて温室効果ガスの排出削減に努めてきた。
 改定計画では、日本経団連の非加盟業種を含め、1)新規計画の立案、2)目標値の明示、3)出来高の検証、4)余裕のある業種の目標再設定等により、排出量を基準年(1990年)の±0%を達成する計画となっている。
(2)住宅・建築物の省エネ性能の向上
 これまで、新築の建築物の省エネ対策を進めてきた。改定ではさらに、1)住宅・建築物の省エネ対策の届出義務を中小の住宅・建築物に拡大(法改正)、2)省エネ住宅・建築物の普及(促進税制の創設)、住宅の性能表示やサッシなどの省エネ性能の表示、モデル住宅の導入・改築の支援、3)省エネのモデルプロジェクトの支援等を進める。
(3)トップランナー機器等の対策
 これまでトップランナー基準を導入してきた。さらに、1)個別機器の性能向上を図り基準の対象を拡大、2)既に対象の機器の範囲の拡大と基準の強化等を図る。
(4)工場・事業場における省エネ対策
 これまでに、エネルギー消費の大きいオフィスビル等は省エネを進めてきた。さらに、1)現行の工場・事業場単位の規制から企業単位の管理(法改正)、2)フランチャイズチェーンを単位とした省エネの導入、3)企業・工場間の熱利用などを自主的に相互援助するエネルギー・二酸化炭素の共同削減事業等を支援する。
(5)自動車の燃費の改善
 これまでの世界最高の燃費の、更なる改善を図る。2015年基準に適合する自動車の拡大と普及を図る。また、クリーンディーゼル車、電気自動車、ハイブリッド車、天然ガス車等の普及を図る。アイドリングストップ装置の搭載を進める。
(6)中小企業の排出削減対策の推進
 中小企業の排出削減設備の導入について、資金面の支援を一層充実する。大企業の技術や資金による中小企業の省エネの評価と認証を進め、目標値の引き上げを促す。
(7)新エネルギー対策
 エネルギー源の多様化のため、風力、バイオマス、太陽光発電、コジェネレーション・システム、燃料電池等の利用を支援し、省エネ・省二酸化炭素型のエネルギーシステムを実現する。また、地域の特長を生かした未利用エネルギー、廃棄物焼却熱等の利用を促進する。
2.2 京都メカニズムによる対応
 図4に示すように、京都メカニズムは温室効果ガスの排出削減を約束した先進国等が、目標を達成するために利用できる措置で、自国の温室効果ガス排出量が排出枠を上回った場合に、外国から排出枠を購入し、また外国に協力・実施した温室効果ガス削減量を自国の削減量にできる仕組となっている。
 図5は先進国の共同事業(JI)や先進国と開発途上国の共同事業であるクリーン開発メカニズム(CDM)への投資の推移を示す。バイオマス、水力、風力などの開発利用等の共同実施(JI)やクリーン開発メカニズム(CDM)には、2007年には、イギリス、日本等から中国、インド等に約600百万トンの二酸化炭素削減に相当する投資がある。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
図1 世界の一次エネルギー消費の推移
図1  世界の一次エネルギー消費の推移
図2 エネルギー消費による世界の二酸化炭素排出量
図2  エネルギー消費による世界の二酸化炭素排出量
図3 2010年度の温室効果ガス排出量の削減約束と見通し
図3  2010年度の温室効果ガス排出量の削減約束と見通し
図4 京都メカニズムの概要
図4  京都メカニズムの概要
図5 共同実施(JI)やクリーン開発メカニズム(CDM)への投資国
図5  共同実施(JI)やクリーン開発メカニズム(CDM)への投資国

<関連タイトル>
地球の温暖化問題 (01-08-05-01)
温室効果ガス (01-08-05-02)
運輸部門における炭酸ガス排出量と今後の温暖化防止対策 (01-08-05-31)
地球温暖化防止対策のためのエネルギー・環境関連税 (01-08-05-33)
地球温暖化問題への対応策 (01-08-05-36)
二酸化炭素の放出抑制対策 (01-08-05-37)
環境問題に関する国際会議(国際的取組み) (01-08-04-07)
地球温暖化防止京都会議(1997年のCOP3) (01-08-05-15)
国連気候変動枠組条約第5回、第6回および第7回締約国会議(COP5・COP6・COP7) (01-08-05-20)
京都議定書(1997年) (01-08-05-16)

<参考文献>
(1)環境省、環境白書2008、総説1、第1章、pp.2-8、http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h20/pdf/1-1-1.pdf、第2章、pp.15-19、 http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h20/pdf/1-1-2.pdf
(2)資源エネルギー庁、エネルギー白書2008、第1部、第2章、pp.67-73
(3)環境省、京都議定書目標達成計画(平成17年)骨子、http://www.env.go.jp/houdou/gazou/5937/6699/2285.pdf
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