<本文>
1.新エネルギーにおける国際協力の基本方針
2001年6月新エネルギー部会でとりまとめられた部会報告「今後の新エネルギー対策のあり方について」は、今後わが国が国内において取り組むべき対策のあり方をとりまとめたものであるが、エネルギーの安定供給や地球環境問題の克服は、わが国だけの課題にとどまらず、まさに地球レベルで取り組んでいく課題である。そのような中で、アジアをはじめとする諸外国において再生可能エネルギーの導入が促進されることは望ましいことから、わが国における新エネルギー導入の成果や関係企業の取組を国際的なレベルに広げつつ、世界の再生可能エネルギーの導入に貢献していくべきであり、官民においてそのような努力が併せて行われることが期待される。
また、特に今後エネルギー需要の高い伸びが見込まれる開発途上国への国際協力のあり方については、新エネルギー部会及び省エネルギー部会合同の「国際協力小委員会」を設置し、別途専門家による審議が行われ、報告書がとりまとめられた。
さらに、2000年7月の沖縄サミットでの提言を踏まえ、現在G8レベルで検討されている「開発途上国における再生可能エネルギーの普及・促進のための国際協力」についても、今後の実効ある取組が期待される。
新エネルギー導入大綱においては、以下のように、国際協力の推進について述べている。
近年、発展途上国、とりわけアジア太平洋地域の国々においては、経済発展に伴うエネルギー需要の急増からエネルギー安定供給確保の問題に直面する一方、不十分な環境対策のまま化石エネルギーを利用しているところもあり、環境問題に対する意識も高まりつつある。これらの国々においては、新エネルギーの種類によっては、潜在的導入可能量の規模が大きい場合も少なくないと考えられる。わが国としては、アジア太平洋地域を中心に、実施可能な国際協力を従来にも増して積極的に取り組むことが必要であるが、このような国際協力は、わが国のエネルギーの安定供給に資するものであり、また、海外での需要拡大に伴う新エネルギーに関する全体の市場規模が拡大するという効果も有する。また、先進国との間でも、引き続き積極的に技術情報の交換、共同研究を行い、新エネルギー技術の効率的な開発に努める。
2. 途上国との国際協力
2.1 モデル事業
2.1.1 国際エネルギー使用合理化等対策事業
アジア太平洋地域の開発途上国等では、経済の発展に伴って、エネルギー需要が今後とも急激に増大していくと見込まれている。このため、これら諸国では、先進国で実用化されている「エネルギー有効技術」導入への気運が高まり、大きな関心を寄せている。こうした関心の高まりに応えるため、経済産業省が提唱する
グリーンエイドプランの一環として、NEDOはエネルギー有効利用技術の普及を図るための事業を実施している。なお、1996年度より新たに開始するモデル事業は「国際連合気候変動枠組条約に係る
共同実施活動(AIJ)」としても取り組み、現在中国・インドネシア・タイ・ベトナムとの間でAIJとしてのモデル事業を実施している(
図1)。
・有効性実証
日本で既に実用導入されている効果的なエネルギー有効利用技術を、これら諸国で普及するため、実規摸関係施設に導入し、当該技術の有効性を実証するモデル事業を行っている。
・エネルギー消費効率化等協力基礎事業
ア.国際エネルギー消費効率化調査等協力基礎事業
関係国のエネルギー施策、エネルギー消費動向等の把握・分析、エネルギー有効利用方策の調査・提言等を行う。
イ.共同実施等推進基礎調査
わが国の民間企業ベースによるエネルギー有効利用技術の導入に係るプロジェクトを支援し、これらの将来の共同実施(
JI)や
クリーン開発メカニズム(
CDM)化に向けたF/S調査を行う。
・国際エネルギー消費効率化等モデル事業
先進国において技術的に実証された設備を開発途上国のエネルギー多消費設備等に付設し、当該技術(省エネルギー技術及び石油代替エネルギー技術)の有効性実証、普及を行うために、エネルギー有効利用モデル事業を6件実施している(
表1)。
・国際エネルギー消費効率化等技術普及事業
技術専門家をモデル事業の実施サイト及び同業種の他工場等に派遣し、当該技術の普及活動等を行う。
2.1.2 国際石炭利用対策事業
アジア・太平洋諸国の開発途上国では経済の着実な発展に伴って今後石炭の需要が急激に増大していくと見込まれる。この石炭利用に伴う地球環境問題等に対応しつつ、石炭需給の安定化を図るためにNEDOは次の事業を実施している。
(1)各国の環境に調和した石炭利用技術の導入を促進するため、わが国等で成熟したCCTを開発途上国内で実証し普及を促進するために、モデル事業を実施している(導入支援事業・共同実証事業)。
(2)各国の技術、経済状況の実情を踏まえた石炭利用にかかわる総合的なマスタープランの策定を行っている。
(3)CMG(コール・マイン・ガス)回収・利用システム共同実証事業を中国遼寧省において実施している。
(4)CCT導入・普及を促進させるために、日本国内において、これらの国々の技術者(政府機関・石炭生産会社・石炭ユーザー)等を対象にCCT移転研修事業を開催している(技術移転事業)。
(5)今後予想されるアジア・太平洋諸国を中心とする石炭需要の増大に伴う地球環境問題等に対応しつつ、石炭需給の安定化を図るため、APEC諸国等におけるCCTに関する各種情報交換及び情報収集・整備等のための調査を行っている(国際協力推進事業)。
2.2 共同実証事業
・太陽光発電システム等国際共同実証開発
太陽光発電システム等の実用化技術開発、導入普及の推進を図るためには、太陽光発電システム等の改良(コスト低減等)、信頼性の向上・実証を効率的に進めることが必要である。このため、日本では得がたい自然条件、社会システム等を有する海外諸国と協力して国際共同実証開発を行っている。
(1)太陽光発電系統連係システム実証研究(タイ・ミャンマー)
・ACモジュール等の系統連係に伴う影響の定量的把握
・電力負荷<需要>側の需要調整による出力変動分の吸収の定量的把握
(2)太陽光発電コンビネーションシステム実証研究(カンボジア)
(3)太陽光発電等分散配置型システム実証研究(カンボジア)
(4)分散型太陽光発電システム実証研究(モンゴル)
2.3 研究協力事業(ODA事業)
研究協力事業は、開発途上国のみの研究開発能力では解決困難な、技術開発課題(技術ニーズ)について調査し、わが国の技術力、研究開発能力を活用しつつ、開発途上国の研究機関と共同で研究開発を実施することにより、当該技術開発課題の解決及び開発途上国の研究開発能力の向上を図ることを目的に1983年度に通商産業省(現・経済産業省)において創設された事業である。NEDOは1993年度以降その一元的な実施機関として、現在、環境・産業技術に関するODA事業を展開している。研究協力事業の基本的なスキームを
図2に示す。
以下の研究協力がある。
1.環境技術総合研究協力
2.環境対応型水資源有効利用システムに関する研究協力
3.先進的マルチメディア情報システムの開発に関する研究協力
4.副生品利用型簡易脱硫システムの実用化に関する研究協力
5.地域適合型太陽光発電システム等の実用化に関する研究協力
6.プラスチック加工技術・品質検査技術に関する研究協力
7.製錬所排煙・廃水対策技術に関する研究協力
8.環境対応型工業用水循環利用向上技術に関する研究協力
9.製錬所煙灰の無害化金属回収技術に関する研究協力
10.提案公募型開発支援研究協力
11.研究機関能力向上支援
3.APECとの連携
アジア太平洋地域における経済、エネルギー、環境(3E)の共通課題を討議するために設置された
アジア太平洋経済協力会議(APEC)に、1990年5月、同地域の再生可能エネルギー、エネルギー技術開発等のエネルギーに関する課題を検討するためのワーキンググルーブ(EWG)が設置された。NEDOは、このAPEC/EWGが実施する事業に参加するとともに、当該機関の活動を支援するために、エネルギーR&D技術移転セミナーを実施している。
4. IEAとの連携及び先進国との協力
エネルギー関連技術の進歩は、エネルギーの安全、地球環境問題、経済社会の発展という各国共通の目的を達成するために不可欠であり、こうした世界共通の課題に対応するため、1974年国際エネルギー機関(IEA)が設立された。NEDOは、わが国のエネルギー・環境に関する研究開発の中核的機関として、IEAの活動に参加し、同分野での研究開発に資するための関連情報の収集・交換を行っている(
図3)。
また、二国間情報交換事業情報交換を通じて当該分野の研究開発の一層の促進を目的に、フランス、スウェーデン、ドイツ等、海外の主要な政府系研究機関と情報交換協定を締結し、R&Dレポート等の技術情報の交換、専門家会合等の開催を実施している。さらに、国際シンポジウム等NEDOが行っている、新エネルギー、省エネルギーの技術開発及び導入促進、産業技術、環境技術の研究開発等をより効果的に推進することを目的として、諸外国との積極的な人材交流を図っている。
<図/表>
<関連タイトル>
太陽光発電システム (01-05-01-01)
太陽電池の原理 (01-05-01-03)
<参考文献>
(1)省エネルギー総覧編集委員会(編):省エネルギー総覧2004/2005、通産資料出版会(2003年12月)
(2)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)
(3)新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO):事業紹介、国際関連事業、途上国等との協力事業,