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<概要>
 石油価格は過去2度にわたる石油危機を契機に急騰し、わが国の経済は大きな撹乱を受けた。政府は、このような混乱を繰り返してはならないとの決意を込めて、1980年以降、石油代替エネルギー対策を総合的・計画的にかつ重点的に推進していくため、代替エネルギー対策の「財源確保」や「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(石油代替エネルギー法)の制定および「NEDOの設立」など推進の体制を確立してきた。また、石油代替エネルギー法に基づく「石油代替エネルギーの供給目標」が閣議決定を経て改定されてきた。2002年3月の改定は、新エネルギー利用等として、バイオマス及び雪氷のエネルギー利用を追加し、新エネルギーの導入を一層進める施策に基づいて、国民の最大限の努力と理解を前提としている。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.石油代替ネルギー開発・導入体制整備
 過去2度にわたる石油危機によって、わが国は大きな経済撹乱を受け、わが国経済の石油に対する脆弱性が1度ならず、2度にわたって浮き彫りにされた。三度このような混乱を繰り返してはならないとの決意を込めて、それまで必ずしも統一的な理念のもとに政策が推進されていなかった石油代替エネルギー対策を総合的に、しかも計画的かつ重点的に推進していくために1980年度から、次のような代替エネルギー対策の推進体制が確立された。
(1)必要資全の長期的安定的確保(電源開発促進税の使途の拡大および税率の引き上げならびに石油税の使途の拡大)。
(2)安定的、計画的な予算措置(特別会計制度の整備)。
(3)代替エネルギーの開発・導入を計画的に推進するための法制の整備(「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」の制定)。
(4)中核的推進母体の設立([新エネルギー総合開発機構(1988年新エネルギー・産業技術合開発機構(NEDO)に改称)の設立]およびその機構の強化)。
2.新エネルギー政策の現状
 新エネルギーは、現時点においては、経済性や出力の不安定性といった課題があるものの、資源制約が少なく、環境特性に優れた性質を有するエネルギーである。そのため、石油の中長期的な安定供給が懸念される状況にある中、資源の乏しいわが国のエネルギー安定供給の確保を図る観点、並びに、CO2等温室効果ガスの排出量削減など地球環境問題への対応を図る観点から、その導入を加速的に進展させることが急務である。このような状況に鑑み、政府としては、低コスト化・高性能化のための技術開発や、新エネルギー設傭の設置に対する補助を通じた導入促進に取り組んでいる。
2.1 「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(代エネ法)」
 エネルギーの安定的かつ、適切な供給の確保の観点から、石油代替エネルギーの開発・導入の法的枠組みとして代エネ法を制定(1980年制定、1992年改正)し、石油代替エネルギーの供給目標を策定・公表するとともに、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じた各種の措置を講じている。
2.2 「長期エネルギー需給見通し」
 エネルギーの安定供給に努力しつつ、エネルギー消費の一層の効率化、新エネルギー、原子力等の非化石エネルギーの導入促進等を進めていくとの観点から策定された「長期エネルギー需給見通し」について、1997年12月のCOP3におけるわが国の2010年に向けた二酸化炭素排出量の削減目標を踏まえ、1998年6月に同見通しを改定した。さらに2001年7月に今後目指すべきエネルギー需給の姿として「長期エネルギー需給見通し」のさらなる改定を行っている。
2.3 「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」の制定
 2010年の目標の達成に向けて新エネルギーの導入を加速的に進展させるため、1997年4月に「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」を制定した。本法は、新エネルギー利用等を総合的に進めるため、各主体の役割を明確化するとともに、新エネルギー利用等を行う事業者に対する金融上の支援措置等を規定したものであった。また、同年9月、本法に基づき、国民、事業者、政府等の各主体が講ずべき措置に関する基本的な事項等を規定した基本方針を策定した(2002年1月に本法の「新エネルギー利用等」として、バイオマス及び雪氷のエネルギー利用を追加するため、施行令第1条にこれらを追加する改正を行った)。
2.4 国内における新エネルギーの導入に向けた政府の支援体系
(1)技術開発
 新エネルギー技術の低コスト化、性能向上等のため、重要な開発課題に関する技術開発を実施。
(2)実証試験
 技術開発の成果を踏まえ、当該開発技術の実用化・市場投入を図る上で障害となる問題点の抽出、解明、対策等実使用における有効性等を実証確認するための実証研究を行う。
(3)導入促進
 実用化段階における新エネルギーについて、量産化による早期市場の自立化を誘導するための初期需要の創出を図る(住宅用太陽光発電システムの導入支援、クリーンエネルギー自動車の導入支援)。
 事業者や自治体などが行うモデル的な新エネルギー導入を支援し、同様の事業の波及を促す(太陽光発電、風力発電、廃棄物発電、コージェネレーション、クリーンエネルギー自動車等の先進的な導入プロジェクトに対する支援)。
(4)新エネルギー関連国際協力の推進
 相手国のエネルギー需給構造高度化のみならず、エネルギー需要の増大が懸念されるアジア諸国における環境問題の解決等に資するものとして、新エネルギーの開発途上国における普及を促進する。具体的には、国際的な共同実証研究、わが国の技術を用いたモデル事業、ODAによる研究協力事業を実施している。
 各新エネルギーの導入状況を表1に示す。
3.石油代替エネルギー対策の概要
 石油代替エネルギー対策のスキームは、以下の3つに大別される。
3.1 開発
(1)海外炭、地熟、水力等の資源開発
(2)原子力、石炭、天然ガス、新エネルギー等の技術開発
3.2 導入促進
(1)太陽光発電システム、廃棄物発電、クリーンエネルギー自動車等新エネルギーの導入促進
(2)地域エネルギーの開発利用の促進
(3)原子力、石炭火力、水力、地熱等の発電のための利用を促進する電源の多様化対策
(4)石炭転換、天然ガス化促進等の一般産業の燃料転換対策
3.3 国際協力
(1)IEA等による情報交換
(2)発展途上国に対するODAによる協力等
・供給確保対策には、内外石炭資源の開発、地熱開発、水力開発が取り上げられている。
・導入促進対策には、燃料転換の促進、ソーラーシステムの普及促進、石炭火力発電所の建設の促進、新エネルギー等の開発・導入の促進が挙げられている。
・技術開発では、石炭エネルギー、太陽エネルギー、地熱エネルギー、その他が考えられている。
4.石油代替エネルギーの供給目標
 2002年3月22日閣議決定によって、開発及び導入を行うべき石油代替エネルギーの種類及びその種類ごとの供給数量の目標が定められ、1998年9月18日閣議決定の供給目標は廃止された。石油代替エネルギーの供給目標(2010年度)を表2に示す。この目標は、民間の最大限の理解と努力、政府の重点的かつ計画的な政策の遂行及び官民の協力の一層の強化を前提としたものであり、環境の保全に留意しつつこれを達成するものとする。なお、原子力に係る供給目標を達成するため、核燃料サイクルの国内における確立に取組むこととにしている。
<図/表>
表1 新エネルギーの導入状況
表1  新エネルギーの導入状況
表2 石油代替エネルギーの供給目標(2010年度)
表2  石油代替エネルギーの供給目標(2010年度)

<関連タイトル>
日本の最終エネルギー消費構成と推移 (01-02-02-06)
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)

<参考文献>
(1)省エネルギー総覧編集委員会(編):省エネルギー総覧2004/2005、通産資料出版会(2003年12月)
(2)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、エネルギーフォーラム(2004年1月)
(3)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)
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