<本文>
新エネルギーおよび
再生可能エネルギーの種類は極めて多様である。
表1に新・再生可能エネルギーの分類を、
表2に2001年6月総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告で示された新たな新エネルギー導入目標を示す。これまで、通商産業省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)では、1974年に新エネルギー技術として「サンシャイン計画」を、1978年に省エネルギー技術として「ムーンライト計画」をそれぞれ発足させ、長期的な視点に基づいて産官学の連携の下でエネルギー関連技術の研究開発を推進してきた。両プロジェクトでは、基本的な技術の確立、成果の実用化、関連分野への技術的波及等を目標に着実な成果をあげてきた。
表3に1996年度の時点における新エネルギー・省エネルギー技術開発の現状を示した。また、環境への負荷に対する低減化が重要視されてきたことに鑑み、1989年から「地球環境技術に係る研究開発制度」を発足させた。
地球規模で対応が必要な新エネルギー・環境問題の技術的ブレークスルーによる解決をめざすため、これまで実施してきた技術開発制度(サンシャイン計画、ムーンライト計画、地球環境技術開発)を統合し、1993年から新たに「ニューサンシャイン計画(エネルギー・環境領域総合技術開発計画)」を発足させ、持続的成長とエネルギー・環境問題の同時解決を目指した革新的技術開発を重点的に推進することとし、2000年度まで研究開発を進め成果をあげてきた。2001年1月の中央省庁再編成を契機にこれらの研究開発は「研究開発プログラム方式」で進められることとなり、ニューサンシャイン計画の名称はなくなった。
1.サンシャイン計画
「サンシャイン計画」は、エネルギー問題の解決とエネルギー多消費社会の中で深刻化した環境問題の解決を同時に図るため、1974年7月に発足したわが国最初の長期的・総合的な技術開発計画である。その基本方針は、「エネルギーの長期的な安定供給の確保が国民経済活動にとってきわめて重要であることに鑑み、国民経済上その実用化が緊急な新エネルギー技術について、1974年から2000年までの長期にわたり総合的、組織的かつ効率的に研究開発を推進することにより、数十年後のエネルギーを供給することを目標とする」と規定され、さらにこの理念を達成するために、太陽、地熱、石炭、水素エネルギー技術の4つの重点技術の研究開発が各々の実施計画の下に進められた。
サンシャイン計画の発足からほぼ4年が経過した1978年末から1979年にかけて、イラン革命を契機に国際石油需給は逼迫化し、これにともない石油価格は再び急騰した。こうした状況下において、サンシャイン計画に対する期待も一段と高まりを見せた。また、同計画の主要なプロジェクトは本格的なプラント開発段階を迎えつつあったことから、同計画の新たな方向づけが求められることになった。具体的には、(1)石炭液化技術開発、(2)大規模深部地熱開発のための探査・掘削技術開発、(3)太陽光発電技術開発が重点プロジェクトとして選択され、研究開発の加速的推進が図られた。
2.ムーンライト計画
ムーンライト計画では、エネルギー転換効率の向上、未利用エネルギーの回収、エネルギー供給システムの安定化によるエネルギー利用効率の向上とエネルギーの有効利用を図る技術の研究開発を行う。この計画では、(1)大型エネルギー技術を始めとして、(2)先導的、基盤的な省エネルギー技術開発、(3)民間の省エネルギー技術研究開発の助成、(4)国際研究協力事業、(5)省エネルギー技術の総合的効果把握手法の確立調査、および(6)省エネルギーの標準化を強力に推進することにした。
1994年度には、「スーパーヒートポンプ・エネルギー集積システム」等の6テーマを終了し、「
燃料電池技術」等の10テーマについては「ニューサンシャイン計画」に研究を引き継いでいる。地球環境技術研究開発では、(1)人工光合成等による二酸化炭素の固定に関する研究、(2)二酸化炭素の分離技術の研究、(3)生分解性化学物質の研究が「ニューサンシャイン計画」に組み入れられた。
3.ニューサンシャイン計画
従来、新エネルギー、省エネルギー、および地球環境技術の3つの分野の研究技術開発は独立に推進されてきたが、これらの分野はエネルギー利用と
地球温暖化をはじめとする地球環境問題に密接な関係を有しているので、総合的な観点から研究技術開発を推進していくことが重要である。また、技術的な観点からも、新エネルギー技術、省エネルギー技術、および環境対策技術は互いに重なる分野、共通的分野が存在するため、これらの有機的な連携を図ることにより、エネルギー・環境技術開発の効率的、加速的推進が期待された。このような観点から、工業技術院では1993年にサンシャイン計画、ムーンライト計画、および地球環境技術研究開発の体制を一体化した「ニューサンシャイン計画」を発足させ、持続的成長とエネルギー・環境問題の同時解決を目指した革新的な技術開発を開始した。
図1にニューサンシャイン計画の体系を示した。
この計画は、(1)
地球温暖化防止行動計画の実現を目標にしたエネルギー・環境技術開発プロジェクトの推進を目指す革新的技術開発、(2)地球温暖化による環境の荒廃を防止するための「地球再生計画」をねらいとした国際大型共同研究、(3)近隣途上国のエネルギー・環境制約の緩和について相手国の実状に適した技術的支援をねらいとした適正技術共同研究の3つの技術体系により構成された。
表4-1、
表4-2にニューサンシャイン計画の具体的な内容を示した。
サンシャイン計画やムーンライト計画で進められた技術開発のうち、近年太陽電池や燃料電池の開発は飛躍的な進展を見せており、コストダウンと需要の増大が相互に促進し合う「良循環」の見通しが得られる段階に至りつつある。しかし、本格的導入を図る上で製造設備の能力や需要拡大には一定のリードタイムが必要である。
ニューサンシャイン計画では、中長期的に顕著な効果が期待される革新的技術開発の課題として、(1)広域エネルギー利用ネットワークシステム技術(エコ・エネルギー都市システム)、(2)水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)、(3)経済・環境両立型燃焼システム技術(希薄燃焼脱硝触媒技術)に
着手している。また、国際的にも大幅な需要増大が見込まれる石炭については、環境に調和した利用が求められていることから、石炭転換技術について再生可能エネルギーや希薄燃焼脱硝技術等を組み合わせた「経済・環境調和型石炭転換コンプレックス技術」の研究開発を進めている。
4.各プロジェクトの成果
表5-1、
表5-2には、ニューサンシャイン計画(1993〜)、サンシャイン計画(1974〜1992)、およびムーンライト計画(1978〜1992)等において実施したプロジェクトの成果を示した。これらの成果のうち、(1)太陽光発電については、
電気事業法の改正、系統ガイドラインの制定や測定法に関するJIS(Japan Industrial Standards:日本工業規格、ジス)の制定、余剰電力の買い取りの実現など実用化の条件が整っている。(2)燃料電池発電については、リン酸型燃料電池システムの設置やスチーム冷暖房の利用に成功するとともに、コージェネレーションとして80.2%の総合効率を達成している。(3)
褐炭の液化については、1981年に豪州ビクトリア州において、50t/日規模の液化パイロットプラントによる研究を実施し、エネルギー資源の有効利用の技術開発を行っている。(4)水素エネルギー利用技術は、水素の製造、輸送、貯蔵、利用技術の開発を行い、水素自動車が公道を走ることも可能になっている。(5)新型電池電力貯蔵システムの開発はムーンライト計画で実施されてきたが、1992年から5年間の計画では、ナトリウム−硫黄電池および亜鉛−臭素電池について信頼性の向上、コストの低減、コンパクト化の研究を実施してきた。これらの電池については、100kW/400kWh級のモジュールを制作して充放電運転など各種の試験を行っている。(6)スーパーヒートポンプエネルギー集積システムについては、大出力を目指した集積システム技術の開発に取り組み、地域冷暖房設備として東京都臨海副都心などにこのシステムが設置されている。
5.エネルギー技術開発の新たな展開
経済産業省では、国際競争力のある産業技術研究開発を進めるため、2001年1月の中央省庁再編成を契機に、国が計画して実施する研究開発を新たに「研究開発プログラム方式」で実施することとした。これにより、従来の「ニューサンシャイン計画」にある研究開発テーマは、この新たな方式に引き継がれることとなり、ニューサンシャイン計画の名称はなくなった。今後の技術開発プロジェクトは、大型化かつ多様化するため、開発リスクの増大等が予測される。そこで、環境保全の観点も踏まえつつ、国際協力・産学官の一層の連携等を図ることが重要な課題となっている。
経済産業省では、2001年1月の中央省庁再編成を契機に、国際競争力のある産業技術研究開発を進めるため、関連組織を再編成するとともに、研究開発を総合的・効率的な「研究開発プログラム方式」で実施することとした。
エネルギー技術の研究開発は、産業界、学会、関係省庁、関連機関・団体等の意見を国(経済産業省)がプログラムに反映させ、これに基づき産業技術総合研究所等の国の研究機関、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの関係機関・団体、研究組合、大学、学会、産業界等で、事業助成、委託、補助金などの制度で実施されている。
これまでニューサンシャイン計画において進められてきた技術研究開発で、2001年度以降も推進すべきテーマについては、新たに研究開発プロジェクトに含めることとなった。
NEDOでは、2002年6月の新エネルギー部会報告に沿って、産業、民生(家庭・業務)、運輸の各部門において、基盤研究から実用化研究、実証研究に至るまで、需要側の課題を克服し得るエネルギー技術開発を戦略的に行っている。
<図/表>
<関連タイトル>
ムーンライト計画 (01-05-02-06)
<参考文献>
(1)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)
(2)省エネルギー総覧編集委員会(編):省エネルギー総覧2004/2005、通産資料出版会(2004年1月)
(3)資源エネルギー庁省エネルギー石油代替エネルギー対策課(監修):新エネルギー便覧1996年版、通商産業調査会(1996年3月)、p.18
(4)資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.639-661
(5)通産省資源エネルギー庁 石炭・新エネルギー部 エネルギー対策課(監修):新エネルギー便覧 1998年度版、通商産業調査会出版部(1999年3月)p.17,p.358
(6)資源エネルギー庁(監修):資源エネルギーデータ集 1997年版、(株)電力新報社(1997年5月)、p.149