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<概要>
 技術開発プロジェクトの大型化・多様化が予想されるため、省エネルギーをさらに進めるためには、国際協力・産学官の一層の密接な連携の下に総合的・計画的な研究開発を積極的に推進していくことが重要になっている。エネルギー関連の設備機器等を省エネルギーの目的に叶ったものにすることは、省エネルギーを通じて、実質的に資源の増大と同じ効果を持っている。
 経済産業省では、国際競争力のある産業技術研究開発を進めるため、2001年1月の中央省庁再編成を契機に、国が計画して実施する研究開発を新たに「研究開発プログラム方式」で実施することとした。これにより、従来の「ニューサンシャイン計画」にある研究開発テーマはこの新たな方式に引き継がれ、「ニューサンシャイン計画」の名称はなくなった。
 省エネルギ−技術の研究開発は、産業界、学会、関係省庁、関連団体等の意見を国(経済産業省)がプログラムに反映させ、これに基づき産業技術総合研究所等の国の研究機関、新エネルギー・産業技術総合開発機構などの関係機関・団体、研究組合、大学、学会、産業界等で、事業助成、委託、補助金などの制度で実施されている。
 2002年6月、省エネルギー技術開発の実効性を上げる観点から、需要側の課題を抽出し、その課題を克服するための技術シーズに重点化を図る「省エネルギー技術戦略」のとりまとめを受け、民間団体等から幅広く公募を行う新しい技術開発スキームが2003年度から開始され、技術の波及効果が大きく、より投資効果の高い技術開発、トップランナー方式の効果的な実施に資するような技術開発等が実施されている。
<更新年月>
2005年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 今後の技術開発のプロジェクトは、大型化・多様化し、開発リスクの増大等の困難が予想される。そこで、省エネルギーをさらに進めるためには、環境保全の観点も踏まえつつ、国際協力・産学官の一層の密接な連携の下に総合的・計画的な研究開発を積極的に推進していくことが重要になっている。
 エネルギー関連の設備機器等を省エネルギーの目的に叶ったものにすることは、国民に特段の業務を課したり、経済成長を過度に抑制したりすることなく、省エネルギー化を実現出来て国民経済上からも望ましい。また、実質的に資源の増大と同じ効果を持っており、エネルギー資源に恵まれないわが国にとっては非常に有益なことである。
 経済産業省(産業技術環境局)では、平成13年1月の中央省庁再編成(省庁再編)を機に、国際競争力のある産業技術研究開発を進めるため、関連組織を再編成するとともに、研究開発を、成果のチェック&レビューを含む総合的・効率的な「研究開発プログラム方式」で実施することとし、省エネルギーに係る技術開発もこの方式で実施することとなった。
 省エネルギ−技術の研究開発は、産業界、学会、関係省庁、関連機関・団体等の意見を国(経済産業省)がプログラムに反映させ、これに基づき産業技術総合研究所等の国の研究機関、新エネルギー・産業技術総合開発機構などの関係機関・団体、研究組合、大学、学会、産業界等で、事業助成、委託、補助金などの制度で実施されている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial Technology Development Organization:NEDO)では、国の「研究開発プログラム方式」等に則して、新エネルギー・省エネルギーの開発および導入普及事業並びに産業技術の研究開発関連事業等を実施している。
 2002年6月に、民生・運輸部門におけるエネルギー需要が増加傾向にある状況を踏まえ、需要側すなわちエネルギー消費側から見た課題を抽出し、その課題を克服するための技術シーズに重点化を図ることが重要とする「省エネルギー技術戦略」のとりまとめを受け、省エネルギー技術の基盤研究から実用化開発、実証研究まで民間団体等から幅広く公募を行い、需要側の課題を克服する新しい技術開発スキームが2003年度から開始されている。
1.中央省庁再編成と産業技術研究開発の強化
 平成13年1月6日の中央省庁再編成で通商産業省は経済産業省となり、これにともない平成13年4月に工業技術院は15の研究所を統合し独立行政法人「産業技術総合研究所」(産総研)として分野融合的かつ重点・戦略的な研究開発を推進する機関として発足、産総研は経済産業省産業技術環境局の組織の一翼を担うこととなった。
 経済産業省では、省庁再編を契機に、国際的な競争力のある産業の創造・発展に結びつく産業技術力の強化を図ることとした。産業技術に関する研究開発を進めるに際しては、社会ニーズや市場の動向、国内外の技術動向、国際競争力の動向、産業技術戦略上の位置づけ等について俯瞰的な視点から分析し、政策目標を定め、その目標を達成するために必要な研究開発課題(テーマ)の設定、資源配分、成果の政策上の活用の方策、政策実現のための環境整備や他の政策との連携等まで含め、研究開発プログラムを立案し、実施することとした(研究開発プログラム方式)。この研究開発プログラム(方式)では、a)政府研究開発投資の費用対効果の向上、b)重複的投資、不要な投資を回避することによる研究開発全体としての効率性の向上、c)当該分野における民間部門を中心とする研究開発投資の誘発の期待、d)産業政策遂行上の「ツール」としての「技術」の比重向上(“研究開発のための研究開発”からの脱却)、の目的を明確にした。
 このような省庁再編後の産業技術研究開発の強化策に沿って、従来の「ニューサンシャイン計画」で平成13年度以降も継続して研究開発を進める必要のあるテーマは、新たな「研究開発プログラム」に含められ、同時に「ニューサンシャイン計画」の用語はなくなった。
 平成13年度までに終了した省エネルギー技術開発のテーマ(「新エネルギー」を含む)について、概要と主な研究開発成果を表1-1表1-2に示す(「新エネルギー」を含む)。
2.ニューサンシャイン計画における省エネルギー技術の研究開発
 平成12年度までに実施された「ニューサンシャイン計画」における省エネルギー技術開発のテーマについて、概要と主要成果を表2-1表2-2および表2-3に示す。
 表2に示す全17件のテーマで、平成12年度でテーマが終了したものは「広域エネルギー利用ネットワークシステム開発」と「石炭水素添加ガス化技術開発」の2件である。平成13年度まで継続予定のテーマは「新型電池電力貯蔵システム開発」などの4件、平成14年度まで継続予定のテーマは「超低損失電力素子技術開発」などの5件、平成15年度まで継続予定のテーマは「産業用コージェネレーション実用技術開発」などの3件、平成16年度まで継続予定のテーマは「燃料電池発電技術開発(溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)発電技術開発)などの3件となっている。
3.NEDOによる省エネルギー技術開発
 テーマは実施形態から(1)先導研究、(2)研究開発、(3)実用化開発、の三つに分類されている。「先導研究」とは、産業ニーズや社会ニーズに応える革新的技術シーズを発掘するため、例えば、大学・国立研究所の研究者等による産業応用を意図した研究開発をいう。テーマの分野を決め、公募による提案書を技術的観点から審査し、委託先を決定するテーマ公募型である。「研究開発」とは、産学官の知見を結集し研究開発プロジェクトを実施することにより、産業技術の基盤を育成する研究開発をいう。委託によりテーマを実施する「実用化開発」とは、社会ニーズに対応した民間企業等において行われる実用化試験段階の研究開発をいう。これらは補助金の交付により課題を実施する。
 平成13年度現在、NEDOで実施している省エネルギー技術開発を表3に示す。表3のうち主なテーマの概要について以下に述べる。
(1)先導研究
○エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発
 省エネルギー技術は、機械・電子・通信・化学・材料など多分野の技術が複雑に相関する技術であり幅広い基盤技術が必要である。このため、省エネルギー型設備・機器またはシステムが理論的には確立されているものの、実用化を図るには材料や他分野の技術が必要であり、この技術の適用について十分に技術的な検討を行うことが必要である。また同時に、経済性や波及効果等、実用化・導入に向けた具体的な問題点を抽出し解決することが重要である。
 本研究開発は、産業、民生(家庭・業務)、運輸の各部門からの省エネルギーのニーズと技術シーズの融合を図るとともに、実用化に向けた経済性、導入効果等の分析を行うことにより、省エネルギー効果が高く、実用化・導入に繋がる革新的な基盤技術(要素技術およびシステム技術)を確立することを目的としており、これにより、新たな省エネルギー技術の実用化開発への道を拓く。
 研究開発項目は、イ)a)からハ)までの5項目で、各テーマの研究期間は、原則3年以内である。
イ)「エネルギーの高効率・合理化利用技術」の研究開発
a)基盤技術およびその周辺技術等の研究開発
b)システムの開発・構築等の研究開発
ロ)「エネルギー回収・蓄エネルギー技術」の研究開発
a)基盤技術およびその周辺技術等の研究開発
b)システムの開発・構築等の研究開発
ハ)「情報技術等を活用した省エネルギーネットワーク化技術」の研究開発
 各テーマの研究期間は、原則3年以内である。
(2)研究開発
〇高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発
 地球温暖化問題の高まりの中、二酸化炭素の排出抑制の必要性が増大しているが、我が国の二酸化炭素総排出量のうち、運輸部門の占める割合は約二割を占めており、自動車からの二酸化炭素排出抑制は極めて重要な課題となっている。このため、自動車単体の燃費向上、自動車燃料としてクリーンエネルギー利用の必要性が高まっている。
 これらの課題を達成していくために、燃費を大幅に向上させるハイブリッド機構とクリーンエネルギーを組み合わせた新しい自動車(Advanced Clean Energy Vehicle)を開発する。また、各国のクリーンエネルギー関連事項の調査を行う。
 平成13年度は要素技術の開発、車両試作、試作車の評価・改良、各国のクリーンエネルギー関連事項を調査する。
(3)実用化開発
○三重効用高性能吸収式冷温水機の開発
 冷暖房などの空調設備は、一貫して増加傾向にある業務部門のエネルギー消費の主要な要因を占め、その消費削減を図ることが重要である。空調設備として業務用を中心に事務所・ビル等で広く採用されている吸収式冷温水機は、さらなる高効率化を図ることにより、エネルギー消費のより一層の削減に貢献できる。
 本課題では、三重効用式の高性能吸収式冷温水機の実用化に向けた研究開発として、耐久性の向上、安全性の改善等を目的としたプロトタイプモデルの構築および実証研究を行い、冷房時におけるエネルギー消費効率を約30%以上改善することを目標とする。
 また、コージェネレーションシステムの排熱利用技術の開発により、トータルエネルギー効率の向上を図る。
○高効率・超低公害天然ガス自動車の実用化開発
 近年、運輸部門への石油代替エネルギーの導入およびディーゼル自動車に起因する都市部での大気汚染物質の低減が喫緊の課題となっている。このような状況に対して、ディーゼル自動車に替わるクリーンな天然ガス自動車の普及が望まれているが、本課題では以下の研究に取り組み、高効率・超低公害天然ガス自動車の実用化開発を行う。
イ)高効率エンジン開発、ロ)低公害化技術開発、ハ)エンジン車載・評価
 開発の対象は、特に都市内走行台数の多い2t貨物車および4t貨物車とする。
○待機時消費電力削減技術開発
 家庭の民生用機器について消費される電力の約1割は待機時消費電力(待機電力)であるといわれている。また、工場・オフィスの産業機械や事務機器の待機時においても電力が消費されている。このため、民生用機器、産業機械・事務機器等について、待機時消費電力の削減を図るための技術開発を行う。
4.省エネルギー技術戦略の推進
 2002年6月に、需要側の課題の克服につながる技術開発の方向性を明らかにした「省エネルギー技術戦略」のとりまとめを受け、シーズ技術の発掘から実証実験に至るまで、民間団体等から広く公募を行い、省エネルギー技術戦略にそった研究開発を重点的に進めている(図1)。省エネ技術開発の新しい体系を図2に、主要な技術開発を図3に示す。なお、これまで個別に実施していた研究開発は「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」に2003年度から大括り化している。2003年度においては、先導研究13件。実用化開発14件、実証研究6件のテーマ、さらに2004年度においては、先導研究5件、実用化開発8件、実証研究4件のテーマがそれぞれ採択された。今後、本プログラムにもとずき、省エネルギー技術の波及効果が大きく、より投資効果の高い技術開発を重点的に推進することとしている。
<図/表>
表1-1 省エネルギー分野における研究開発の主要成果等(平成13年度までに終了したテーマ)
表1-1  省エネルギー分野における研究開発の主要成果等(平成13年度までに終了したテーマ)
表1-2 省エネルギー分野における研究開発の主要成果等(平成13年度までに終了したテーマ)
表1-2  省エネルギー分野における研究開発の主要成果等(平成13年度までに終了したテーマ)
表2-1 省エネルギー分野における研究開発の主要成果(平成12年度)
表2-1  省エネルギー分野における研究開発の主要成果(平成12年度)
表2-2 省エネルギー分野における研究開発の主要成果(平成12年度)
表2-2  省エネルギー分野における研究開発の主要成果(平成12年度)
表2-3 省エネルギー分野における研究開発の主要成果(平成12年度)
表2-3  省エネルギー分野における研究開発の主要成果(平成12年度)
表3 NEDOにおける省エネルギー技術開発(平成13年度現在)
表3  NEDOにおける省エネルギー技術開発(平成13年度現在)
図1 省エネルギー技術戦略の推進
図1  省エネルギー技術戦略の推進
図2 省エネルギー技術開発の新しい体系
図2  省エネルギー技術開発の新しい体系
図3 主要な省エネ技術開発
図3  主要な省エネ技術開発

<関連タイトル>
省エネルギー関連法の概要 (01-06-02-01)
日本の省エネルギー政策 (01-09-08-02)

<参考文献>
(1) 資源エネルギー庁省エネルギー対策課(監修):第6章省エネルギー関連技術研究開発と普及の概要、省エネルギー便覧2001年版、(財)省エネルギーセンター(2001年11月30日)p.212-219
(2) 経済産業省のホームページ:産業技術政策全般(主要政策課題、分野別話題)http://www.meti.go.jp/policy/innovation_policy/index.html(2002年2月)
(3) 新エネルギー・産業技術総合開発機構のホームページ:事業紹介、新エネ・省エネ技術関連、10.省エネルギー技術(PDF)p.1-4 http://www.nedo.go.jp/(2002年2月)
(4) 経済産業省産業技術環境局研究開発課(監修・発行):1.研究開発プログラムの概要、2.平成14年度研究開発テーマの概要、3.終了テーマの概要とその結果、4,研究開発実施体制、「研究開発プログラムの紹介」(パンフレット)2002年(全82ページ)
(5) 総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会:省エネルギー部会報告書−今後の省エネルギー対策のあり方について−(2001年6月)、PDF (2002年2月)
(6) 資源エネルギー庁省エネルギー石油代替エネルギー対策課(監修):省エネルギー便覧(1998年度版)、(財)省エネルギーセンター(1999年3月)p.203
(7) 資源エネルギー庁(監修):1999/2000 資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.97,p.747-750
(8)資源エネルギー庁省エネルギー対策課:省エネルギー対策について II 4)省エネルギー技術開発(平成16年6月)
(9) 資源エネルギー庁:平成15年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)(2004.5)
(10) 資源エネルギー庁:平成16年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)(2005.5)
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