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<概要>
 試験研究用及び研究開発段階にある原子炉施設の安全審査に用いられる指針類は、基本的には発電用原子炉についての指針類を準用するものとするが、特別に、水冷却型研究炉、原子力船高速増殖炉プルトニウムを燃料とする原子炉、原子炉施設の解体、新型転換炉についての指針類がある。ここでは、これら指針類の要約を示す。
<更新年月>
2006年08月   

<本文>
 原子力安全白書(平成6年版)によれば原子力安全委員会の用いる安全審査指針類として34件ある。基本的には発電用原子炉についての指針類を準用するが、特に試験研究用及び研究段階にある原子炉の安全審査のために策定された指針は以下の7件である。
1.水冷却型試験研究用原子炉施設に関する安全設計審査指針
a)策定年月日:平成3年7月18日、平成13年3月29日一部改訂
b)内 容:水冷却型試験研究用原子炉施設(以下、「水冷却型原子炉」という)の安全確保の観点から、安全設計の妥当性について判断する際の基礎を示すために定めたものである。構成は以下のとおりである。まえがき、適用範囲等、用語の定義、原子炉施設全般(10指針)、原子炉および原子炉停止系(10指針)、原子炉冷却系(5指針)、原子炉建屋、実験設備等(2指針)、安全保護系(6指針)、制御室等(4指針)、計測制御系および電気系統(2指針)、核燃料取扱系(3指針)、放射性廃棄物処理施設(4指針)、放射線管理(4指針)添付:水冷却型試験研究用原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する基本的考え方
2.水冷却型試験研究用原子炉施設の安全評価に関する審査指針
a)策定年月日:平成3年7月18日、平成13年3月29日一部改訂
b)内 容:水冷却型研究炉の安全評価(安全設計の基本方針に関する評価および原子炉立地条件としての周辺公衆との隔離に関する評価)の妥当性について判断する際の基礎を示すために定めたものである。設計評価および立地評価において評価すべき範囲、評価すべき事象の選定、判断基準、解析に当たって考慮すべき事項等を示している。
3.原子力船運航指針及びその適用に関する判断のめやすについて
a)策定年月日:昭和45年11月12日、平成元年3月27日改訂
b)内 容:原子力船の港湾等における運航の安全性に関する技術的基準についてとりまとめたものである。以下に示す(a)および(b)で構成されてる。
(a) 原子力船運航指針
 この指針は原子力船の港湾等における運航の安全性に関し、万一の事故の際、公衆からの原子力船の隔離状態の適否を判断するためのものであって、原子力船の原子炉の設置許可(外国原子力船にあっては、本邦水域立入り許可)に先だって、原子炉安全専門審査会が行なう安全審査の際の基準並びに関係行政機関の行う規制、指導及び原子力船運航者の原子力船運航の基本となるものである。
(b) 原子力船運航指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやす
 この判断のめやすは、原子力船運航指針を適用する際に使用するためのものである。なお、昭和39年5月27日に原子力委員会が決定した原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて(平成元年3月27日改訂)の別紙2 原子力船運航指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやすの付記を、この判断のめやすにも準用するものとする。
4.高速増殖炉の安全性の評価の考え方
a)策定年月日:昭和55年11月6日、平成元年3月27日改訂、平成2年8月30日改定、平成13年3月29日一部改訂
b)内 容:高速増殖炉の安全評価(安全設計の基本方針に関する評価および原子炉立地条件としての周辺公衆との隔離に関する評価)の妥当性について判断する際の基礎を示すために定めたものである。設計評価および立地評価において評価すべき範囲、評価すべき事象の選定、判断基準、解析に当たって考慮すべき事項等を示している。なお、高速増殖炉の安全評価に当たっては、既存の各種安全審査指針との関係は次のとおりである。
(イ)次のものについては、そのまま適用される。
「原子炉立地審査指針およびその適用に関する判断の目安について」
「プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量について」
「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針
(ロ)次のものについては、高速増殖炉に特徴的な面を除いては、参考とすべきである。
「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」
「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」
(ハ)次のものについては、参考とすることができる。
「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」
「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」
5.プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量について
a)策定年月日:昭和56年7月20日、昭和58年5月26日改訂、平成元年3月27日改訂、平成13年3月29日一部改訂
b)内 容:プルトニウムを燃料とする原子炉の万一の事故に関連して、その立地条件の適否を判断するために用いるプルトニウムに関するめやす線量について定めたものである。適宜改訂されてきており、最近では、ICRP1990年勧告(Publication60)の反映のため平成13年3月29日に一部改訂された。
[参考]
 プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量については、A)目的・内容:人体に及ぼす放射線の影響は、放射線防護の観点から、確率的影響確定的影響とに大別される。「めやす線量」を決めるに際して考慮する必要があるのは、確率的影響のうちの発がんであり、問題とすべき臓器は、肺、肝及び骨である。B)見直し・策定の理由:1.プルトニウム及びその他の放射性物質に関する新しい生物学的知見が得られた。 2. 国連科学委員会(UNSCEAR)等において放射線被曝による人体への影響の評価に関する作業の成果が公表された。これらの知見や研究成果等をふまえ、めやす線量を見直したもの。C)備考:「プルトニウムに関するめやす線量について(昭和44年11月13日原子力委員会)を見直したもの。
6.原子炉施設の解体に係る安全確保の基本的考え方
a)策定年月日:昭和60年12月19日、平成13年8月6日一部改訂
b)内 容:商業用の発電用原子炉施設等の解体も視野に入れ、JPDR及び原子力船むつの解体実績並びに商業用の発電用原子炉施設における放射性物質濃度の高いシュラウド及び蒸気発生器の交換実績等も踏まえ、解体技術の進展、国外において先行している解体の動向等の知見を集約し、安全確保に対する基本的考え方を定めたものである。構成は、以下のとおりである。まえがき、用語の説明、安全確保上重要な事項、原子炉の機能停止措置、解体中の原子炉施設の維持管理、解体撤去作業における安全確保、放射性廃棄物の取扱い、解体完了の確認のあり方、解体に当たっての安全性の評価、および解説
7.新型転換炉実証炉の安全性の評価の考え方
a)策定年月日:昭和63年6月9日、平成2年8月30日改訂
b)内 容:青森県大間町に建設が計画されている新型転換炉(ATR)実証炉の安全性評価について安全審査に際しての基本的考え方を定めたものである。構成はまえがき、検討結果および別紙とから成っている。別紙では新型転換炉実証炉の安全設計について、および新型転換炉実証炉の安全評価について示してある。すなわち、新型転換炉実証炉の安全設計と安全評価では、それぞれ、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針について」と「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」等を準用又は参考とするとし、ATRの特徴(冷却材ボイド反応度係数、減速材温度反応度係数、出力係数、重水中のトリチウム生成、MOX使用、圧力管、カランドリア管等)について十分な検討、配慮が必要である。
<関連タイトル>
水冷却型試験研究用原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-02-03)
水冷却型試験研究用原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する基本的考え方 (11-03-02-04)
発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-01-05)

<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):平成6年版原子力安全白書、大蔵省印刷局(1995年7月)
(2) 科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(編):改訂8版 原子力安全委員会審査指針集、大成出版(1994年)
(3) 原子力安全委員会:国際放射線防護委員会Publication 60(1990年勧告)の原子力安全委員会安全審査指針類への取入れに係る検討結果について
(4) 原子力安全委員会:指針20010806原子炉施設の解体に係る安全確保の基本的考え方
(5) 原子力安全委員会 : 安全審査指針集
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