<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 安全審査指針等
<小項目> 発電用原子炉施設に関する安全審査指針等
<タイトル>
発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-01-05)

<概要>
 本指針は、昭和45年4月に当時の原子力委員会が発電用軽水型原子炉の設置許可申請(変更許可申請を含む)に係る安全審査において、安全性確保の観点から設計の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として定めたものである。その後、昭和52年6月に見直しが行われ、さらに平成2年8月に原子力安全委員会による全面的な見直しが行われ、発電用軽水型原子炉の技術の改良・進歩、及びこの間に、米国で発生したTMI事故等、国内外に生じた様々な事象から得られた教訓も含めた発電用軽水型原子炉に関する経験の蓄積の反映と指針の内容の一層の明確化及び体系化を図った改訂が行われている。内容としては、原子炉施設全般及び安全確保に関わる構成機器、要素について安全設計の基本的な要求を59項目に分けて示している。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。本データに記載されている発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針については、福島第一原発事故から得られた教訓を踏まえ、原子力規制委員会によって見直しが行われる見込みである。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2010年03月   

<本文>
 「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」は昭和45年4月に当時の原子力委員会が定め、その後、原子力安全委員会により、技術の改良及び進歩、TMI事故を始め国内外に生じた事象から得られた教訓を含めた経験の蓄積を反映するため、平成2年8月に全面的な改訂が行われたものである。なお、本指針の全面改訂の際に、原子炉施設の安全性を確保するために必要な各種の機能(安全機能)について相対的な重要度を定めた「発電用軽水炉施設の安全機能の重要度分類に関する指針」(重要度分類指針)が別に定められた。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)原子炉施設の設計においては事故が起きないように考慮し、さらに仮に事故が起きたとしても、一般公衆には放射線被ばくの被害を与えないように多重の防護対策をとる設計が要求されている。この安全設計の基本的考え方を述べているのが、本指針である。その内容としては、施設全般、原子炉及び計測制御系、原子炉停止系及び反応度制御系並びに安全保護系、原子炉冷却系、原子炉格納容器、燃料取扱い及び廃棄物処理系について、全部で59項目の要求を「指針」として示している。なお、表現の簡略化のため、指針本文の「構築物、系統及び機器」は「機器等」と略記する。
 以下、全ての「指針」について項目を列記し、内容の要点を括弧内に示す。
1.施設全般
指針 1 準拠規格及び基準(安全機能を有する機器等の設計、材料の選定、製作及び検査は、それらが果たすべき安全機能の重要度を考慮して適切と認められる規格及び基準によること。)
指針 2 自然現象に対する設計上の考慮(安全機能の重要度、機能喪失時の影響を考慮して耐震設計を行い、地震その他の自然現象によって安全性が損なわれない設計であること。)
指針 3 外部人為事象に対する設計上の考慮(想定される外部人為事象より安全性が損なわれない設計であり、また、第三者の不法な接近等を防御するため適切な措置を講じた設計であること。)
指針 4 内部発生飛来物に対する設計上の考慮(施設内部で発生する飛来物により原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であること。)
指針 5 火災に対する設計上の考慮(火災に対し発生防止、検知,消火など防護設計をすること。)
指針 6 環境条件に対する設計上の考慮(安全機能を有する機器等は、その安全機能が期待されているすべての環境条件に適合できる設計であること。)
指針 7 共用に対する設計上の考慮(複数基で共用の安全機能が期待されている機器等は、1基の異常状態において他基の安全機能が阻害されないこと。)
指針 8 運転員操作に対する設計上の考慮(原子炉施設は、運転員の誤操作を防止するための適切な措置を講じた設計であること。)
指針 9 信頼性に関する設計上の考慮(安全機能が期待されている機器等は、安全機能の重要度に応じて高い信頼性を確保・維持し得る設計であり、特に重要度の高い系統は多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること。)
指針10 試験可能性に関する設計上の考慮(安全機能を有する機器等は、安全機能の重要度に応じて運転・停止中に試験・検査ができること。)
2.原子炉及び原子炉停止系
指針11 炉心設計(通常運転時・運転時の異常な過渡変化時に燃料の許容設計限界を超えることがなく、また、通常運転時・異常状態時に安全停止及び炉心冷却が確保できること。)
指針12 燃料設計(使用期間中に生ずる種々の因子に耐えて健全であり、輸送及び取扱い中に過度の変形を生じないこと。)
指針13 原子炉の特性(固有の出力抑制特性を有し、出力振動を制御できること。)
指針14 反応度制御系(反応度制御系は反応度変化を調整し、所要の運転状態を維持できること。また、制御棒の最大反応度価値は、想定される反応度投入事象に対し、原子炉冷却材圧力バウンダリを破損せず、また、炉心冷却を損なうような炉心構造物の破壊を生じない設計であること。)
指針15 原子炉停止系の独立性及び試験可能性(原子炉停止系は高温状態で臨界未満を維持できる2つ以上の独立した系統を有し、試験可能性を備えた設計であること。)
指針16 制御棒による原子炉の停止余裕(反応度価値が最大の制御棒1本が完全に引き抜かれても、炉心を臨界未満にできる設計であること。)
指針17 原子炉の停止系の停止能力(高温状態、低温状態のいずれにおいても炉心を臨界未満にし、その状態を維持できること。)
指針18 原子炉の停止系の事故時の能力(事故時でも炉心を臨界未満にし、その状態を維持できこと。)
3.原子炉冷却系
指針19 原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性(通常運転時及び異常状態において原子炉圧力バウンダリの健全性を確保できるとともに、冷却系に接続する配管系は、原則として隔離弁を設けること。)
指針20 原子炉冷却材圧力バウンダリの破壊防止(いかなる状態でも脆性的挙動を示さず、急速な伝播型破壊を生じない設計であること。)
指針21 原子炉冷却材圧力バウンダリの漏えい検出(原子炉冷却材の漏洩を速やかに、確実に検出できること。)
指針22 原子炉冷却材圧力バウンダリの供用期間中の試験及び検査(健全性を確認するために、供用期間中に試験、検査が出来ること。)
指針23 原子炉冷却材補給系統(冷却材の小規模の漏えい時にも、適切な流量で給水できること。)
指針24 残留熱を除去する系統(原子炉停止後の残留熱を除去できること。また、外部電源が喪失しても安全機能が達成できるよう、多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること。)
指針25 非常用炉心冷却系(配管破断等による冷却材喪失に対し、燃料の重大な損傷を防止でき、燃料被覆金属と水の反応を十分小さい量に制限でき、外部電源が喪失しても安全機能が達成できるよう、多重性又多様性、独立性を備えた設計であること。)
指針26 最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統(重要度の特に高い安全機能を有する機器等で発生又は蓄積された熱を、最終的な逃がし場に輸送できること。)
指針27 電源喪失に対する設計上の考慮(原子炉施設は、短時間の全交流動力電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できること。)
4.原子炉格納容器
指針28 原子炉格納容器の機能(設計用の想定事象に起因する荷重及び適切な地震荷重に耐え、適切に作動する隔離機能とあいまって所定の漏えい率を超えないこと。)
指針29 原子炉格納容器圧力バウンダリの破壊防止(指針20と同じ。)
指針30 原子炉格納容器の隔離機能(格納容器を貫通する配管系には隔離弁を設け、事故時に隔離を必要とする事態には、確実に閉止すること。)
指針31 原子炉格納容器隔離弁(隔離弁は、実用上可能な限り格納容器に接近して設け、原則として格納容器の内側、外側に各1個を設けること。また、閉止後駆動動力源の喪失によっても隔離機能が喪失することがないこと。)
指針32 原子炉格納容器熱除去系(設計用の想定事象に起因して放出されるエネルギーによって生じる容器内の圧力・温度を低下させるに十分な機能を有すること。)
指針33 格納施設雰囲気を制御する系統(設計用の想定事象に起因して環境に放出される放射性物質の濃度を減少させる格納施設雰囲気浄化系、及び格納容器内に存在する水素又は酸素の濃度を抑制する可燃性ガス濃度制御系を設けること。)
5.安全保護系
指針34 安全保護系の多重性(安全保護系は、同一機能を重複して設けること。)
指針35 安全保護系の独立性(安全保護系の重複した各々の系統は、分離し独立していること。)
指針36 安全保護系の過渡時の機能(運転時の異常な過渡変化時に、異常状態を検知し、原子炉停止系を含む適切な系統を自動的に作動させる設計であること。)
指針37 安全保護系の事故時の機能(事故時に、異常状態を検知し、原子炉停止系及び必要な工学的安全施設を自動的に作動させる設計であること。)
指針38 安全保護系の故障時の機能(系統にあらゆる不利な状況が発生しても最終的に原子炉施設が安全な状態に落ち着くこと。)
指針39 安全保護系と計測制御系との分離(計測制御系と部分的に共用する場合には、計測制御系の影響により安全保護系の機能を失わないように分離されていること。)
指針40 安全保護系の試験可能性(運転中に健全性及び多重性の維持を確認するため、定期的に、独立して試験できること。)
6.制御室及び緊急時施設
指針41 制御室(原子炉及び主要な関連施設の運転状況の監視及び操作ができること。)
指針42 制御室外からの原子炉停止機能(制御室外から原子炉を停止できること。)
指針43 制御室の居住性に関する設計上の考慮(火災に対する防護設計がなされ、事故時にも従事者が制御室に接近し、又はとどまり、事故対策操作が可能なこと。)
指針44 原子力発電所緊急時対策所(事故時に対策指令を発するために設置できること。)
指針45 通信連絡設備に関する設計上の考慮(適切な警報系及び通信連絡設備を設けること。)
指針46 避難通路に関する設計上の考慮(避難用照明、標識を有する設計であること。)
7.計測制御系及び電気系
指針47 計測制御系(通常運転時及び過渡変化時に、その状態を適切に監視できること)
指針48 電気系統(外部電源及び非常用所内電源を有すること。)
8.燃料取扱系
指針49 燃料の貯蔵設備及び取扱設備(貯蔵設備は、適切な格納系及び空気浄化系を有すること。また、取扱設備は、移送操作中の燃料集合体の落下を防止できること。)
指針50 燃料の臨界防止(貯蔵及び取扱い設備は、想定されるいかなる場合にも臨界を防止できること。)
指針51 燃料取扱場所のモニタリング
9.放射性廃棄物処理施設
指針52 放射性気体廃棄物の処理施設(周辺環境に対して、放出放射性物質の濃度及び量を合理的に達成できる限り低減できること。)
指針53 放射性液体廃棄物の処理施設(液体状の放射性物質の漏えいの防止及び敷地外への管理されない放出の防止を考慮した設計であること。)
指針54 放射性固体廃棄物の処理施設(処理過程において放射性物質の散逸等の防止を考慮した設計であること。)
指針55 固体廃棄物貯蔵施設(原子炉施設から発生する放射性固体廃棄物を貯蔵する容量が十分であり、かつ汚染の拡大を防止する設計であること。)
10.放射線管理
指針56 周辺の放射線防護(敷地周辺の空間線量率を合理的に達成できる限り低減できること。)
指針57 放射線業務従事者の放射線防護(作業性等を考慮して、遮へい、機器の配置、遠隔操作、放射性物質の漏えい防止、換気等、所要の放射線防護上の措置を講じること。)
指針58 放射線業務従事者の放射線管理(放射線被曝を十分に監視及び管理するための放射線管理施設を設けること。)
指針59 放射線監視(通常運転時及び異常状態において、少なくとも格納容器内雰囲気、原子炉施設の周辺監視区域周辺及び放射性物質の放出経路を適切にモニタリングできること。)
(前回更新:1998年5月)
<関連タイトル>
発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針 (11-03-01-06)
発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針 (11-03-01-07)
発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針 (11-03-01-09)
発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針 (11-03-01-10)
発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針 (11-03-01-23)

<参考文献>
(1)閣府原子力安全委員会事務局(監修):改訂12版 原子力安全委員会指針集 大成出版(2008年)
(2)原子力安全委員会ホームページ、原子力安全委員会審査指針集等、1.指針類
「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」
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