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<概要>
 これは、「水冷却型試験研究用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の添付資料で、同指針を安全審査の際に適用するにあたって、原子炉施設の安全機能の重要度についての判断のめやすを与えるものであり、各種の安全機能の設計に対して、安全上の見地からそれらの相対的重要度を定め、適切な要求を課すための基本的な考え方を定めている。ここでは、本考え方のほぼ全文を示す。
(平成3年7月18日原子力安全委員会決定)

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。本データに記載されている研究炉安全機能の重要度分類の考え方については、原子力規制委員会によって見直しが行われる可能性がある。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 これは、平成3年(1991年)7月18日に原子力安全委員会が策定した、「水冷却型試験研究用原子炉施設に関する安全設計審査指針」(以下「研究炉の安全設計審査指針」という。)の添付資料として出されたものであり、同指針を安全審査に具体的に適用するにあたって、原子炉施設の安全機能の重要度について判断のめやすを与えることを目的に作成されたものである。内容的には、平成2(1990年)8月30日に原子力安全委員会が策定した「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(以下「軽水炉の重要度分類指針」という。)の考え方が参考とされているが、具体的な例示では研究炉の特徴と多様性に対処できるようになっている。

1.基本的な考え方
 研究炉の安全機能の重要度分類は次の基本的考え方に基づいて行う。
(1) 安全機能の区分
 安全機能を持つ構築物・系統及び機器を安全機能の性質に応じて次の2種に分類する。
 1)その機能の喪失により、原子炉施設を異常状態に陥れ、一般公衆や放射線業務従事者に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれのあるもの(異常発生防止系;以下「PS」という。)。
 2)原子炉施設の異常状態のとき、異常の拡大を防止するか急速に収束させ、一般公衆や放射線業務従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被ばくを防止するか緩和する機能をもつもの(異常緩和系;以下「MS」という。)。
(2)重要度分類と設計上の基本目標
 PS,MSのそれぞれに属する構築物・系統及び機器を、それらが持つ安全機能の重要度に応じて表1のように三つのクラスに分類する。各クラスは表2のように定義する。各クラスに属する構築物・系統及び機器の基本設計や基本設計方針は次の目標を達成出来るものでなければならない。
 1)クラス1:合理的に達成できる最高度の信頼性を確保し、維持すること。
 2)クラス2:高度の信頼性を確保し、維持すること。
 3)クラス3:一般の産業施設と同等以上の信頼性を確保し、維持すること。
2.分類の適用の原則
 表2に示す分類を具体的に適用する場合、(1)関連系の範囲と分類、(2)二つ以上の安全機能を持つ構築物・系統及び機器、(3)分類と隔離の原則、(4)異クラスの接続の4項目については、「軽水炉の重要度分類指針」を参考にする。
3.研究炉の特徴
 以上のように、この「研究炉の重要度分類の考え方」は「軽水炉の重要度分類指針」と整合を図っているが、研究炉の構造概念や運転形態が次のように基本的に発電用軽水炉とは違っている点も考慮されている。
 a)冷却水の温度・圧力が低く、冷却系統の構成が比較的に簡単である。
 b)原子炉の出力が小さく、核分裂で出来る放射性物質の総量が少ない。
 c)燃料形態が異なり、1本あたりの反応度が大きく、高出力炉では出力密度が高い。
 d)炉の運転時間が短く起動停止が容易で、系統の温度や放射線レベルが低い。
 e)各種の実験設備を持つため、実験者の放射線被ばくの機会が多い。
4.「研究炉安全設計審査指針」への分類の適用
 「研究炉安全設計審査指針」の「自然現象」、「信頼性」及び「電気系統」のそれぞれに対する設計上の考慮において規定されている「重要度の特に高い安全機能を有する構築物等」と本分類との関係が示されている。
5.重要度分類の例
 原子炉の熱出力によるグループ分けに対応させたそれぞれの安全機能に属する構築物、系統及び機器の重要度分類例を、表3及び表4に参考用として示す。ここで例示した構築物、系統及び機器は、水冷却型研究炉で共通的に設備されていると考えられるものである。
 なお、個々の原子炉施設への「研究炉の重要度分類の考え方」の適用は、原子炉施設全体の安全設計との関連において判断するものとする。
<図/表>
表1 安全上の機能別重要度分類
表1  安全上の機能別重要度分類
表2 安全上の機能別重要度分類に係る定義
表2  安全上の機能別重要度分類に係る定義
表3 異常状態発生防止機能(PS)の重要度分類例(参考用)
表3  異常状態発生防止機能(PS)の重要度分類例(参考用)
表4 異常状態影響緩和機能(MS)の重要度分類例(参考用)
表4  異常状態影響緩和機能(MS)の重要度分類例(参考用)

<関連タイトル>
発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針 (11-03-01-23)
試験研究用及び開発中の原子炉を特定した安全審査指針類の整備 (11-03-02-01)
水冷却型試験研究用原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-02-03)
水冷却型試験研究用原子炉施設の安全評価に関する審査指針 (11-03-02-05)

<参考文献>
(1) 科学技術庁原子力安全局安全調査室(監修):改訂8版・原子力安全委員会 安全審査指針集、大成出版(1994年10月)
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