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<概要>
 発電用軽水型原子炉安全審査において、原子炉施設の安全性評価の妥当性を判断する際の基礎を示す目的で定められたものである。
 ここでは本指針の抜粋、すなわち、適用範囲と概要について述べる。
(平成2年8月30日 原子力安全委員会決定)

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。本データに記載されている安全評価に関する審査指針については、原子力規制委員会によって見直しが行われる可能性がある。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」は昭和53年9月に当時の原子力委員会が定め、原子力安全委員会が引継いだものである。その後、技術の改良及び経験の蓄積を踏まえて、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(以下「安全設計審査指針」という。)が改訂され、「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(以下「重要度分類指針」という。)が制定された。これを踏まえて両指針との対応を図ると共に、本指針の内容のいっそうの明確化を図るため、平成2年8月に改訂された。
 本指針は安全設計評価と立地評価に分類されるが、以下にその概要を述べる。

I. 安全設計評価
1.安全設計評価の目的
 原子炉施設の安全設計の基本方針の妥当性は、「安全設計審査指針」によって審査される。原子炉施設の構築物、系統及び機器は、通常運転状態を超える異常状態においても、安全確保のため所定の機能を果たすことが求められている。このためには異常状態、すなわち「運転時の異常な過渡変化」及び「事故」に関して、解析に際して考慮すべき事項を参照しながら解析を行い、解析結果を評価する必要がある。以下にこの評価に当たって想定すべき事象及び判断基準を示す。

2.「運転時の異常な過渡変化」としての評価に当たって想定すべき事象
 原子炉の運転中に機器の単一の故障や誤動作又は運転員の誤操作などによって生ずる異常な状態に至る事象の内、原子炉施設が制御されずに放置されると、炉心あるいは原子炉冷却材圧力バウンダリに過度の損傷をもたらす可能性のある事象が発生した場合に機能すべき安全保護系などの「異常影響緩和系」(以下「MS」という。)に属する構築物、系統及び機器の設計の妥当性を確認するために選定された事象である。具体的には、以下に示す異常状態を生じさせる可能性のある事象とする。
(1)炉心内の反応度又は出力分布の異常な変化
(2)炉心内の熱発生又は熱除去の異常な変化
(3)原子炉冷却材圧力又は原子炉冷却材保有量の異常な変化
(4)その他原子炉施設の設計により必要と認められる事象

3.「事故」としての評価に当たって想定すべき事象
 「運転時の異常な過渡変化」を超える異常な状態であって、発生した場合は原子炉施設からの放射性物質の放出の可能性のある事象の内、原子炉施設が制御されずに放置されると、炉心あるいは原子炉冷却材圧力バウンダリに過度の損傷をもたらす可能性のある事象が発生した場合に機能すべき安全保護系などの「MS」に属する構築物、系統及び機器の設計の妥当性を確認するために選定された代表的な事象である。具体的には、以下に示す異常状態を生じさせる可能性のある事象とする。
(1)原子炉冷却材の喪失又は炉心冷却状態の著しい変化
(2)反応度の異常な投入又は原子炉出力の急激な変化
(3)環境への放射性物質の異常な放出
(4)原子炉格納容器内圧力、雰囲気等の異常な変化
(5)その他原子炉施設の設計により必要と認められる事象

4.「運転時の異常な過渡変化」の解析結果の評価にあたっての判断基準
 想定された事象が生じた場合、炉心は損傷に至らず、かつ、原子炉施設は通常運転に復帰できる状態で事象が収束される設計になっていることを確認する。そのための具体的な判断基準は以下の通りである。
(1)最小限界熱流束比又は最小限界出力比が許容限界値以上である。
(2)燃料被覆管は機械的に破損しない。
(3)燃料エンタルピーは許容限界値以下である。
(4)原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力は、最高使用圧力に 1.1倍以下である。

5.「事故」の解析結果の評価にあたっての判断基準
 想定された事象が生じた場合、炉心の溶融あるいは著しい損傷のおそれがなく、かつ、事象の過程において他の異常状態の原因となるような2次的損傷が生じなく、さらに放射性物質の放散に対する障壁の設計が妥当であることを確認する。そのための具体的な判断基準は以下の通りである。
(1)炉心は著しい損傷に至ることなく、かつ、十分な冷却が可能である。
(2)燃料エンタルピーは制限値を超えない。
(3)原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力は、最高使用圧力の 1.2倍以下である。
(4)原子炉格納容器バウンダリにかかる圧力は、最高使用圧力以下である
(5)周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えない。

II. 立地評価
1.立地評価の目的
 原子炉の立地条件の適否は「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(以下「原子炉立地審査指針」という。)によって審査される。具体的には「重大事故」及び「仮想事故」を想定し、解析に際して考慮すべき事項を参照しながら解析を行い、結果を評価する必要がある。以下にこの評価に当たって想定すべき「重大事故」及び「仮想事故」の内容、判断基準及び解析に当たって考慮すべき事項を示す。

2.「重大事故」としての評価に当たって想定すべき事象
 「I. 安全設計評価」の「事故」の解析結果を参考にして、それらの「事故」の中から放射性物質の放出の拡大の可能性のある事故を取り上げて、技術的に最大と考えられる放射性物質の放出量が想定される事象であり、原子炉格納容器内放出に係る事故及び原子炉格納容器外放出に係る事故をそれぞれ想定する。

3.「仮想事故」としての評価に当たって想定すべき事象
 「重大事故」として取り上げた事故について、より多くの放射性物質の放出量を仮想した事故を想定する。

4.「重大事故」及び「仮想事故」の解析結果の評価にあたっての判断基準
 解析結果が「原子炉立地審査指針」に適合していること。

5.解析に当たって考慮すべき事項
 「重大事故」及び「仮想事故」の解析に当たっては、「原子炉立地審査指針」の趣旨にのっとって行うこと。
 なお安全設計評価及び立地評価に当たっての評価すべき具体的事象並びにそれらの事象の解析、評価に当たって参考とすべき具体的条件及び判断基準の適用方法については、この指針改訂と同時に付録として発行されたが、この付録は今後設計の改良、経験の蓄積等を踏まえて、必要に応じ随時追補等が行われることになっている。
<関連タイトル>
安全審査指針体系図 (11-03-01-01)
原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて (11-03-01-03)
発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-01-05)
発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針 (11-03-01-23)

<参考文献>
(1) 科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):改訂8版 原子力安全委員会 安全審査指針集、大成出版(1994)
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