<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 原子力施設の安全規制
<小項目> 再処理施設の安全規制
<タイトル>
再処理施設の安全規制の概要 (11-02-04-05)

<概要>
 「再処理施設」については、安全確保の上から発電用原子炉なみの安全規制が適用され、事業の指定、施設の設置許可、工事計画の認可、保安規定の認可、運転管理の監督などは経済産業省によって一貫した規制が行われている。また、原子力安全委員会は行政庁が行った安全審査の結果をダブルチェックしている。安全審査に当り直接準拠すべき指針等は、「再処理施設安全審査指針」と「核燃料施設の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量」である。再処理施設の運転管理については、保安規定の制定が義務づけられている。定期検査の対象となる施設・設備が指定されているほか、放射性廃棄物の年間放出基準が設定されている。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
1.再処理施設の安全規制と安全審査指針
 再処理施設は、他の核燃料施設と比較して、安全性確保の観点から数々の特徴、例えば、
(a)取扱う放射能が多量であり、かつ臨界管理が厳重に実行されなければならないこと、
(b)プロセス全体が複雑な化学工程の組合せからなり、反応系は主に酸性水溶液系であること、
(c)放射性の物質の種別が多様であるほか、高レベル放射性廃棄物とTRU(超ウラン元素)含有廃棄物(通称TRU廃棄物)が発生すること、
などの特徴を持っている。
(1)安全規制の概要
 「再処理施設」については、「原子炉等規制法」に基づき、施設の設置許可(設置変更の許可を含む)、工事計画の認可、保安規定の認可、運転管理の監督等、一貫して経済産業省が安全規制を所管している。原子力安全委員会は行政当局が行った安全審査の結果について、最新の科学技術的知見に基づき客観的立場から調査審議を行うこととしている(ダブルチェック体制)(図1参照)。表1は、「建設前段階」、「建設段階」および「運転段階」の各段階に応じて、設計、工事方法および運転管理方法の妥当性を確認するための規制システムを示すものである。
 再処理事業を計画するものは(日本原燃(株)の例)経済産業大臣の「指定」を受けなければならない。この指定に際しては、平和目的、計画的遂行、技術的能力、経理的基礎および災害防止の観点からの審査が行われる。また経済産業大臣は再処理事業を指定するに当って、原子力委員会および原子力安全委員会の意見を聞き、それを尊重することとされている。指定を受けた「再処理事業者」は、指定に続き設計および工事の方法の認可、使用前検査、保安規定の認可等を受けなければならない。さらに、溶接方法の認可、溶接検査を受ける必要がある。また、事業開始後は、毎年1回の定期検査を受けなければならない。
(2)安全審査の概要
 経済産業省および原子力安全委員会による「再処理施設」の安全審査では、通常運転時はもとより万一の想定事故時でも一般公衆の安全が確保されるよう、適切な立地選定、安全設計等がなされているか否かが確認のポイントとなる。審査の焦点は次のとおりである。
・立地点およびその周辺の自然現象(地震、気象、水理等)や社会事象(交通等)によって、再処理施設の安全性が損なわれないよう安全設計がなされていること。
・放射能の施設内閉じ込めについてはセル構造の採用などで万全を期するとともに、従業員が被曝限度量を超えないよう放射線の防護と管理がなされていること。
・特に「臨界管理」と化学物質の「火災・爆発防止」に細心の対策が講じられた安全設計であること。また、たとえ機器の故障、誤操作が発生しても、主要装置や施設の健全性が損なわれないよう設計されていること。
・施設の運転に際し、異常の発生を防止するとともに、異常の発生を早期に発見し、その拡大を未然に防止できるような安全設計であること(注:“深層防護(defense in depth)”の理念に相当する)。
・立地評価事故(原子炉施設の重大事故および仮想事故に相当する)を想定しても公衆の安全が確保しうるよう(公衆に過度の被曝を与えないように)、当該施設と公衆居住区域との離隔距離が適切に判断された立地条件であること。
 このような安全設計に対する基本方針を踏まえ、具体的な再処理施設の安全審査に当っては、申請者が提出した「再処理施設設置(変更)許可申請書および同添付書」に基づき、表2に示した二つの指針、すなわち「核燃料施設の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量について」および「再処理施設安全審査指針」のほか、法令で定められた基準との適合性を判断することとしている。必要がある場合には、現地調査、解析計算を併行し、審査のための基礎資料としている。
(注)わが国では使用済燃料の再処理事業は、日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)・核燃料サイクル研究所で行われている。また、日本原燃は1992年12月に指定を得て再処理施設の建設を開始し、2009年の操業開始を目指して試験運転を行っている。
2.再処理施設の運転管理
(1)保安規定と定期検査
 再処理施設の運転管理については、「使用済燃料の再処理の事業に関する規制」およびその他の経済産業省令によって、保安のために必要な措置に関わる基本的事項が定められている。また経済産業大臣の認可する「保安規定」によって、運転管理に関する組織、機器の操作等の詳細な規定が決められている。さらに、放射線管理記録等主要な情報については、定期的に事業者から行政庁に報告が行われることになっている。故障、事故等の発生時には、これとは別の報告(通知)が直ちに行われることが義務付けられている。
 再処理施設において「定期検査」の対象となる主な施設または設備は、使用済燃料の受入れ施設および貯蔵施設、再処理設備本体、製品貯蔵施設、計測制御系統、放射性廃棄物貯蔵施設、放射線管理施設、その他付属施設であり、検査ではそれらの機能に異常がないこと、基準値を十分に満足していることなどの確認が行われる。
(2)保安規定と放射性廃棄物放出基準
 原子力機構・核燃料サイクル研究所の再処理施設から環境に放出される放射性物質の量およびこれによる周辺公衆の被曝線量(線量当量)は表3に示すように評価された。したがって、同施設の周辺公衆被曝線量は、法令で定める線量当量限度年間1ミリシーベルトを十分下回っている。さらにALARAの考えに基づき、一層の低減化が図られている。なお、この評価は1990年(平成2年)、同施設の本格運転(ホット運転)に当ってなされた「国の安全審査」の結果得られた推定値である。本表に示された「気体および液体廃棄物の放出量」をもとに「保安規定」で定める「年間放出基準」を設定したものが表4の第2欄「年間放出量基準(GBq)」である。
 なお、同施設から実際に環境に放出されている放射性廃棄物の量は、保安規定で定められている基準値をはるかに下回っている。平成5年度における実績を表4の最右欄に示す。前出のクリプトン85の場合には、放出基準(保安規定)8.9E7GBqであるのに対し、実績では5.3E6GBqと基準値の6%程度の放出量である。
 再処理施設周辺地域の「環境モニタリング」によって得られたデータは原子力安全委員会の放射線防護専門部会・環境放射線モニタリング中央評価分科会で審議され、その報告が原子力安全委員会に提出される。
<図/表>
表1 原子炉等規制法に基づく「再処理施設」に対する規制体系
表2 再処理施設の安全審査に直結する指針等
表3 原子力機構・再処理施設の平常時における放射性物質の放出等に伴う一般公衆の線量当量評価結果
表4 原子力機構・再処理施設おける放射性廃棄物の放出量基準と放出量(平成5年度)
図1 原子力施設の安全審査の体制

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<関連タイトル>
再処理プロセスと安全性についての基本的考え方 (11-02-04-01)
再処理プロセス廃棄物の安全技術の概要 (11-02-04-04)
再処理施設安全審査指針 (11-03-03-03)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成6年版、大蔵省印刷局(1995年)
(2)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成18年版、佐伯印刷(2007年)
(3)原子力安全委員会事務局(監修):原子力安全委員会 安全審査指針集(改訂12版)、大成出版(2008年)
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