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試験研究用および研究開発段階にある原子炉施設(発電用は除く)における安全規制の流れを
図1 に示す。試験研究用および研究開発段階における原子炉施設(発電用は除く)に関する、原子炉施設の設置(変更)許可、原子炉施設の設計と工事の方法の認可、原子炉施設の溶接の方法の認可と溶接検査の実施、
保安規定の認可と使用前検査の実施、
定期検査の実施、
保安検査、運転に関する報告等の徴収、原子炉の
解体に係る規制等に関しては、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下、「原子炉等規制法」という)に規定されており、この原子炉等規制法に基づいて、一貫して文部科学省が実施している。
原子力安全委員会は、文部科学省から諮問された設置(変更)許可申請に関する行政庁審査(一次審査)の結果について調査審議(二次審査)を行うほか、その後文部科学省が行う設計と工事の方法の認可、原子炉施設の溶接の方法の認可と溶接検査の実施、保安規定の認可と使用前検査の実施、定期検査の実施、保安検査、運転に関する報告、原子炉の解体届の受理などに関して報告を受け、規制、審議、調査を行なっている。
1.原子炉施設の設置の段階
試験研究用および研究開発段階にある原子炉施設(発電用は除く)を設置しようとする者(申請者)は、その設置の許可(あるいは変更の許可)を文部科学省に申請しなければならない。文部科学省は原子炉施設の構造等の基本設計が原子炉による災害防止上支障がないものであること、設置者が原子炉施設の設置と運転に必要な技術能力を有していること等、許可の基準に適合しているかを申請書にもとづき審査する。行政庁(文部科学省)はその審査結果(一次審査)について原子力安全委員会および
原子力委員会に諮問する。原子力安全委員会(実質的には原子炉安全専門審査会)は、原子炉等規制法に基づき、原子炉施設の構造等が原子炉による災害防止上支障がないものであること、および申請者が原子炉施設の設置と運転に必要な技術能力を有していること等を審査し、答申する。原子力委員会は、設置が
原子力基本法にのっとり平和利用の目的にかなっていること、申請者が経理的基盤があることおよび計画的遂行ができること等を審査し答申する。この原子力安全委員会および原子力委員会による審査を二次審査と呼ぶが、行政庁による一次審査とあわせて行うこの体制をダブルチェック体制と呼んでいる。このダブルチェック体制の両審査に合格し、経済産業大臣の同意を得て、文部科学大臣が申請者に設置(あるいは設置変更)を許可する。許可を受けた者を原子炉設置者という。
2.原子炉施設の建設の段階
原子炉施設の設置(変更)許可を受けた後、試験研究用および研究開発段階にある原子炉施設(発電用は除く)の原子炉設置者は、実際の工事に
着手する前に、その設計および工事の方法について文部科学省の認可を受けなければならない。また、設計及び工事の方法について認可を受けた後も、工事の途中および工事の完了後、原子炉施設を使用する前に保安規定の認可を受け、溶接検査および使用前検査を受け、認可どおり工事が行なわれているかどうか等の確認を文部科学省によって受けなければならない。
原子力安全委員会では、建設段階の規制調査として
安全審査の際の基本設計等の考えが的確に実現されているかを確認するため、設計および工事の方法の認可等の報告を定期的に受け、これらの報告内容を検討し、設置(変更)許可の段階における基本設計の審査事項に照らし確認する事項があれば説明を求め、必要に応じて現地調査を実施する。
3.原子炉施設の運転の段階
原子炉設置者は、運転開始前に、施設の運転・管理、巡視点検、
放射線管理、
放射性廃棄物の管理等、安全運転上重要な事項を記載した保安規定を作成し、文部科学大臣から保安規定の認可を受けなければならない。また運転計画を届けなければならない。
原子炉設置者は、原子炉施設の保安の監督を行わせるため、国が定める免状を有する者のうちから原子炉主任技術者を、また
核物質の防護に関する業務をを統一的に管理させるため国が定める要件を満たす者のうちから核物質防護管理者を選任しなければならない。
原子炉設置者には各原子炉施設ごとに記録保管が義務付けされており、放射線被ばく管理、
放射性廃棄物管理については年度ごとに文部科学省から原子力安全委員会へ報告される。
さらに、運転開始後においては、毎年1回の施設定期検査が文部科学省により行われるほか、原子炉設置者は毎年運転計画を作成し、文部科学省に届出を行なわなければならない。また、原子炉施設の故障・トラブル等が発生したときは、直ちに報告を行うこととなっている。これらのうち原子炉の計画外停止等原子炉等規制法に基づき報告されたものについては文部科学省から原子力安全委員会に報告される。なお、改正された原子炉等規制法に基づき2000年(平成12年)7月から毎年4回保安規定の遵守状況の検査が文部科学省によって行なわれている。
原子力安全委員会では、運転段階の規制調査として、技術能力の維持を含め安全確保対策が適切に行なわれているかを確認するため、文部科学省から上記の保安検査の結果等の報告を定期的に受けこれらの報告内容を検討し、必要に応じて現地調査で確認している。
4.原子炉施設の解体の段階
原子炉等規制法では、原子炉設置者に対し、試験研究用および研究開発段階にある原子炉施設(発電用は除く)の原子炉の解体に関し、解体の方法と工事工程、ならびに核燃料物質および核燃料物質に汚染された物の処分を記載した解体届を文部科学大臣に提出することを義務付けている。文部科学大臣は、解体届について、災害の防止上必要と認めるときは、原子炉設置者に対し措置命令を発することができる。また、解体にともなって発生する放射性廃棄物の廃棄、放射線管理等についても規制が行なわれる。
<図/表>
<関連タイトル>
日本における原子力行政の新体制(2001年) (10-04-01-01)
原子力施設に対する国の安全規制の枠組 (11-01-01-01)
原子力安全委員会の安全規制に関する活動(2001年) (11-01-01-02)
原子力施設の安全確保を図るための基本的考え方 (11-01-01-05)
高速増殖炉の安全性評価の考え方 (11-02-02-02)
原子力船の法体系 (11-02-02-04)
<参考文献>
(1) 科学技術庁原子力安全局(監修):原子力規制関係法令集2000年版、大成出版(2000年6月)
(2) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書平成12年版、財務省印刷局(2001年4月)