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<概要>
 エックス線作業主任者は、労働災害を防止するための労働安全衛生法のもとでの電離放射線障害防止規則の定めにより、エックス線作業主任者免許を有する者のうちから事業者が選任する。その職務は、エックス線作業に従事する労働者を指揮、その他労働者の安全と健康を確保するために必要な事項を行うことである。
<更新年月>
2002年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1)エックス線作業主任者の選任
 事業者は、労働災害の防止のためのみならず、快適な作業環境の実現と労働条件の改善を通して職場における労働者の安全と健康を確保する義務を法律により課せられている。その一つとして、高圧室内作業、アセチレン溶接装置等による金属の溶接等の作業、ボイラーの取扱い作業、爆発物、ベリリウム、アルキル水銀化合物、石綿等の特定化学物質等を製造し、または取り扱う作業、ガンマ線透過写真撮影作業など多種の危険を伴う作業・業務に対して、事業者は作業主任者の選任を義務付けられており、エックス線作業主任者もその中に含まれている。
 事業者は、エックス線装置の使用又はエックス線の発生を伴うエックス線装置の検査を行う場合およびエックス線管もしくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の発生を伴うこれらの検査を行う場合、エックス線作業主任者免許を受けたもののうちから、管理区域ごとにエックス線作業主任者を選任する義務がある。また事業者は、エックス線作業主任者を選任したときは、選任したエックス線作業主任者の氏名およびその者に行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係作業者に周知させるとともに、同一場所で行う作業に関するエックス線作業主任者を2人以上選任したときは、それぞれのエックス線作業主任者の職務の分担を定める義務もある。
2)エックス線作業主任者免許の取得
 エックス線作業主任者免許は、エックス線作業主任者免許試験に合格した者に与えられるとともに、以下の者に対しては都道府県労働基準局長が与えることが出来る。
 (1)診療放射線技師および診療エックス線技師法で定めるそれぞれの免許を受けた者
 (2)核原料物質核燃料物質および原子炉の規制に関する法律で定める原子炉主任技術者免状の交付を受けた者
 (3)放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律で定める第1種放射線取扱主任者免状の交付を受けた者
3)エックス線作業主任者の職務
 エックス線作業主任者は、次の事項の規定に適合していることを確認し、必要な場合には適切な措置を講じなければならない。
 (1)管理区域(注1)標識及びエックス線を管理区域外で使用する場合の立入禁止区域の標識が規定に適合していること
 (2)特定エックス線装置(注2)を使用する場合に、利用線錐(ビーム)の放射角が必要目的を越えないように絞られていること
 (3)特定エックス線装置を用いて間接撮影を行う場合に、利用線錐(ビーム)の底面が蛍光板の有効面を越えないこと、蛍光箱の照射線量が決められた線量を越えないよう遮蔽など有効な措置をほどこすこと
 (4)直接透視の場合、従事者が、作業位置でエックス線の発生を止めまたはこれを遮蔽できる設備を設け、必要以上の電流がエックス線管に通じた場合自動的に回路が開放される装置を設けること
 (5)放射線業務従事者被ばく線量を出来るだけ少なくするよう照射条件を調整すること
 (6)エックス線装置を装置室以外の場所で使用するとき、または定められた管電圧以上のエックス線装置を使用するときは、電力が供給されていることを自動警報装置により関係者に周知させること、照射開始前および照射中、管理区域内に労働者が立入っていないことを確認すること
 (7)外部被ばくによる線量当量測定器(フィルムバッヂ、ポケット線量計等)が適切に装着されていること
4)管理者の選任
 事業者は、当該装置の適正な保守管理のため、必要な知識を有する者を管理者として選任することが望ましい

(注1)外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が3ヶ月間につき1.3ミリシーベルトを超える恐れのある区域をいう。
(注2)波高値による定格管電圧が10キロボルト以上のエックス線装置をいう。
<関連タイトル>
エックス線発生装置の原理 (08-01-03-01)
実効線量 (09-04-02-03)
職業被ばくの評価 (09-04-04-08)
医療被ばく(患者の診断・治療時)の評価 (09-04-04-09)
管理区域 (09-04-05-03)
作業環境モニタリング (09-04-06-01)
外部被ばくモニタリング (09-04-07-02)
個人線量計の着用 (09-04-07-03)
放射線取扱主任者 (09-04-09-04)
X線と放射能の発見 (16-02-01-01)

<参考文献>
(1) 中央労働災害防止協会:電離放射線障害防止規則の解説 (2001)
(2) 日本アイソトープ協会(編):主任者のための放射線管理の実際、改訂2版(1994)
(3) 辻本 忠、草間朋子:放射線防護の基礎、第3版、日刊工業新聞社(2001)
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