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<概要>
 作業環境モニタリングは、放射線障害防止法をはじめ原子炉等規制法などの法律により測定項目、測定場所、測定頻度等が定められている。モニタリング項目は、外部放射線、空気汚染および表面汚染であり、作業環境中のそれらのレベルの増減や拡大等の測定・評価の手段となる。モニタリング結果に異常がなければ、作業環境と作業者の安全性が確保されており、これらのことが客観的に確認できる。
<更新年月>
2004年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)作業環境のモニタリングは、放射線障害防止法をはじめ原子炉等規制法等の法律により測定項目(図1参照)、測定場所、測定頻度等が定められている。また、昭和47年に制定された労働安全衛生法では、放射線業務を行う作業場の外部放射線による線量当量率および空気中の放射性物質濃度の測定を義務づけており、さらに、昭和50年5月に公布された作業環境測定法では、作業環境測定士の資格を有する者が放射性物質取扱作業室の「放射性物質の空気中濃度」の測定を行うことを義務づけている。
(2)作業環境のモニタリングの種類として、外部放射線モニタリング、空気汚染のモニタリングおよび表面汚染のモニタリングがある。このほか放射性放出物のモニタリングおよび管理区域に出入りする作業者、固体廃棄物・線源の搬出入、搬出物品にたいするモニタリングも広義な解釈として作業環境モニタリングに含めている。
(3)作業環境モニタリングの方法として、据付型モニタにより連続して監視する方法と携帯型のサーベイメータ(β,γ,中性子等)等により定期的にモニタリングする方法がある。原子炉等の大型の原子力施設では、放射線管理集中監視システムにより監視している。据付型モニタには、作業環境中のガンマ線や中性子線等のレベルを監視するエリアモニタと排気筒からの放射性放出物や作業環境の空気中の放射性物質を測定する空気汚染モニタなどがあり、それぞれ線量限度、排気中または空気中濃度限度に対応した補助限度や誘導レベルに到達すると警報が発生する。作業環境中の試料の採取(サンプリング)は、作業域の濃度が適切に評価できる条件で行われ、スペクトロメトリ(α,β,γ)法による核種分析も実施される。モニタおよびサーベイメータは、被ばくの形式や評価対象に対応した適切な測定器、国家標準(標準線源と校正)とのトレーサビリティーが保たれた測定器が使用される。
(4)施設や設備の保守・点検を行うために作業計画に基づく放射線作業を行う場合がある。この場合は、作業届の提出とともに放射線作業対策の評価、放射線防護の最適化に必要な作業環境中の外部放射線や放射性汚染密度のモニタリングを行い、被ばくが放射線管理基準値以下であることを確認する。行為の正当化に適合した作業線量の予測を検討し、作業に際しては、防護器材(マスク、手袋、衣服等)および個人モニタの着用、放射線防護の3原則の適用、防護上の遮へいによる局部被ばくの防止、汚染拡大防止処置等の対策が実施される。
 作業中は、作業環境中の放射線や放射性物質のレベルの増減や拡大等に関する作業環境モニタリングおよび個人モニタリングの情報を監視しながら被ばく管理上の助言を与えるとともに、作業域への入退者の表面汚染検査計等による検査を実施し、万一汚染があれば皮膚汚染モニタリングが行われる。
 このように、作業環境モニタリングは、作業前、中、後の各種のモニタリングをとおして、作業者の被ばくの低減につながる客観的な情報を得るうえで重要な役割を果たす。また、作業環境モニタリングの特徴は、モニタリングして得られた情報に異常がなければ、環境と作業者の安全性が健全な状態で保持されていることが迅速かつ客観的に確認できることにある。
<図/表>
図1 作業環境モニタリングの項目
図1  作業環境モニタリングの項目

<関連タイトル>
空気汚染モニタリング (09-04-06-03)
表面汚染モニタリング (09-04-06-04)
放射線管理基準 (09-04-05-01)

<参考文献>
(1)日本アイソトープ協会:「作業者の放射線防護のためのモニタリングの一般原則」:ICRP Publ.35、日本アイソトープ協会
(2)安全衛生技術試験協会:作業環境測定ガイドブック(4)」、(1976)
(3)原子力安全技術センタ:「外部被ばくにおける線量当量の測定・評価マニュアル」、(1988)
(4)原子力安全技術センター:「放射性表面汚染の測定・評価マニュアル」、(1988)
(5)原子力安全技術センター:「内部被ばくにおける線量当量の測定・評価マニュアル」、(1988)
(6)辻本 忠、草間朋子:「放射線防護の基礎」第3版、日刊工業新聞社、(2001)
(7)日本アイソトープ協会:「作業環境の放射線モニタリング/計画から立案まで」、丸善、(1978)
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