<本文>
放射線を取り扱う管理区域に立ち入る者は、入域中の被ばく線量の測定のため、個人モニタを常時着用しなければならない。
外部被ばく線量測定用個人モニタは個人線量計であり、
フィルムバッジ、熱ルミネッセンス線量計(TLD)、
ガラス線量計、直読式線量計等がある。これらの個人線量計のうち、上位3種は長期間の積算線量の測定に適しているため、1ヶ月ないし3ヶ月間連続して使用するいわゆる基本線量計として利用されている。一方、直読式線量計は、使用者自身が現場で線量を読み取れるようになっている線量計で、被ばくの自己管理や警報音を利用した放射線作業の管理等に利用されており、補助線量計と呼ばれている。
すべての放射線作業従事者は基本線量計を着用する。補助線量計は、比較的高線量率の場での作業や入域毎の線量把握の必要性がある場合、あるいは管理区域内に一時的に立ち入る見学者等に対して簡便な線量計として利用されるもので、原則的には基本線量計を1個着用しておけばよい。
個人線量計の着用位置は、体幹部表面のもっとも多く被ばくする部分を代表する位置とされるが、通常は胸部(女子は腹部)である。X線装置等を利用した作業などで含鉛防護衣等を着用する場合に、体幹部上で防護衣による被覆部分と露出部分における線量値が明らかに異なることが予想される際(不均等被ばく)には、防護衣の内側と外側(主に頭頚部の被ばくを代表する位置)の2ヶ所ないしは3ヶ所にそれぞれ線量計を着用する。なお、使用可能な線量計が1個しかない場合には、作業環境に応じて着用位置を決める。線量が低い作業環境では、被ばく線量の過小評価を避けるため、防護衣の外側に線量計を着用する。また、高線量の作業環境では、着用位置を防護衣の内側とする。ただし、防護衣のない部位(露出部分)の被ばく線量を過小評価するおそれがあるので、サーベイメータ等で測定して不均等被ばくの考え方で補正することが望ましい。
体幹部上1ヶ所にのみ線量計を着用した場合、その線量計から得られた1cm線量当量がその作業者の
実効線量となる。複数の線量計を体幹部上の異なった位置に着用した場合、日本の従来の法令では、計算式を用いてそれぞれの線量計の測定値から実効線量当量を計算することになっていたが、科学技術庁告示第5号(平成12年10月23日)(改正平成16年3月25日文部科学省告示第40号)では、算出式は規定されないことになった。平成12年10月23日付の科学技術庁原子力安全局放射線安全課長通知「
国際放射線防護委員会の勧告(ICRP Pub.60)の取り入れ等による放射線障害防止法関係法令の改正について」では、
組織荷重係数の変更により不均等被ばくによる影響が小さくなったため、不均等被ばくの算出式は法令に規定しないこととした、と述べられている。この通知の別紙3に、外部被ばくによる実効線量の算定についての新旧比較が示されている。これを
表1に示す。
個人線量計着用に際しては、線量計の表裏を間違えないように注意するとともに、使用中に脱落することがない様に作業服のポケットなどに確実に装着する。手、足等体幹部以外の部位に、大きな被ばくが予想される場合は、同部位にも局部用の小型の線量計を着ける。これらの線量計には指輪や腕輪あるいは絆創膏タイプのものがある。いずれの線量計も、検出部が
線源に対向するように手掌、手首内側などに確実に装着する。汚染防止用のゴム手袋を使用する場合には、その内側に装着する。
個人線量計の着用位置を
図1に示す。
浮遊性の
放射性物質が問題となるような作業場所では、内部被ばく管理用個人モニタとして空気中放射能濃度測定用の個人エアサンプラが使用されることがある。しかし、同サンプラは、ウラン鉱山坑内等での粉塵中の放射能測定などきわめて限定された条件下でのみ使用される。
<図/表>
<関連タイトル>
個人モニタリング (09-04-07-01)
外部被ばくモニタリング (09-04-07-02)
個人線量計 (09-04-03-03)
外部被ばくの評価 (09-04-04-03)
内部被ばくの評価 (09-04-04-04)
<参考文献>
(1)International Atomic Energy Agency,Basic Requirements for Personnel Monitoring,IAEA Safety Series No.14(1980)
(2)盛光亘他(編):外部被曝モニタリング、日本アイソトープ協会、東京(1986)
(3)International Commission on Radiation Protection,General Principles of Monitoring for Radiation Protection for Workers. ICRP Publication 35,Ann. ICRP 9(4),(1982)
(4)丸山隆司他(編):外部被曝における線量当量の測定・評価マニュアル原子力安全技術センター、東京(1988)
(5)日本アイソトープ協会(編):アイソトープ法令集I、(株)丸善(2003年3月)、p.434-460
(6)原子力規制関係法令研究会(編):原子力規制関係法令集(2004年)、(株)大成出版社(2004年9月)、p.1418-1534