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<概要>
 原子炉施設、加速器施設等の放射線取扱い施設では、作業者が常時立ち入る場所におけるγ線中性子線の空間線量率を連続監視するためエリアモニタが設置されている。エリアモニタの役割は、施設、装置等に異常があった場合にこれを早期に発見して対処すること、及び危険を作業者に知らせ、個人の被ばく線量の軽減を図るためのものである。
 γ線エリアモニタは検出器の種類から電離箱式、GM計数管 式、シンチレーション式および半導体式の4つに分類される。また、設置場所で分類すると、屋内の作業環境用と、屋外の環境監視用とがある。
 なお、中性子線エリアモニタの検出器としては、BF3計数管が一般に使用される。
<更新年月>
2002年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 放射線取扱い施設内においては、作業者が常時立ち入る場所におけるγ線、中性子線等による外部被ばくの管理を行うことによって、線量限度を超えないようにする必要がある。
 エリアモニタは、作業区域におけるγ線および中性子線の空間線量率を定位置において連続して測定し、その測定値を記録装置に常時記録すると共に、線量率が一定の管理レベルを超えた場合には即時警報を発報する装置である。これにより、作業者は周囲の放射線の状況を把握し、もし何らかの異常が生じ、線量率が上昇した場合は警報音等によりその状況を知り、放射線管理上適切な措置を講ずることができる。
 エリアモニタは、一般に放射線の検出器と、検出器からの信号を受けて実際の線量率を表示するレートメータおよび表示している数値データを常時記録する記録計、ならびに必要に応じてデータの解析、保存を行うデータ処理部から構成される。 図1 にγ線エリアモニタ及び中性子線エリアモニタの検出器の設置例を、また 図2 に中央監視盤の例を示す。
(1)γ線エリアモニタ
 γ線エリアモニタに使用されている主な検出器として、電離箱、GM計数管、シンチレーション検出器および半導体検出器の4種類がある。
 日本工業規格では、エネルギーが80keV〜3MeV
までのX線およびγ線の線量率を連続的に監視するためのエリアモニタについて規定している。γ線エリアモニタに関連するJISには以下のものがある。
  JIS Z4324-1980 X線およびγ線エリアモニタ
  JIS Z4325-1983 環境γ線連続モニタ
  JIS Z4326-1983 環境γ線連続モニタの校正方法
  JIS Z4511-1983 照射線量測定器の校正方法
 原子力安全委員会では、事故時用放射線計測系の審査指針の中で、事故時用γ線エリアモニタの測定上限値として、格納容器用105Sv/h、敷地周辺用10−1Sv/h、原子炉建家(BWR)または原子炉補助建家(PWR)用101Sv/hとしている。
  表1 に各種γ線エリアモニタの検出器の性能の概要を示す。各検出器とも使用可能な測定範囲として4〜5桁程度であり、施設内の作業環境用として10−1〜104μSv/hおよび101〜106μSv/hのシリコン半導体検出器、GM計数管あるいは電離箱が一般に使用されている。NaI(Tl)シンチレーション検出器は、感度がよいので主として施設周辺の環境監視用モニタとして使用され、一検出器でパルス系と電流系の信号を併用することにより、バックグラウンドレベルから最大10−1Sv/hの線量率の測定が可能である。又、原子炉建家用γ線エリアモニタとしてアルゴンあるいは窒素を封入した電離箱は最大103Sv/h、格納容器用としてシリコン半導体検出器は最大105Sv/hまで対応している。
(2)中性子線エリアモニタ
 原子炉施設などにおいては、中性子線による体外被ばくの防護が放射線管理上重要な施設もある。これら施設内では、一般に速中性子の他にコンクリートなどの遮蔽体によって減速された熱中性子とが混在しており、熱中性子から20 MeV 程度の速中性子までが管理の対象となる。中性子線エリアモニタは、主として異常発見を目的として熱中性子、速中性子、あるいは両者のフルエンス率(n/cm2・s)を測定する。検出器としてはBF3計数管が一般に使用されている。BF3計数管はBF3(3フッ化ホウ素)ガスを充填した比例計数管で、ホウ素と入射する中性子とによる核反応で生ずるα線を計数する。BF3計数管の熱中性子に対する感度(単位中性子フルエンス当りの計数率(cps/(n・cm−2・s−1))は充填ガスの圧力、計数管の有効容積などによって決まる。モニタおよびサーベイメータに使用されているBF3計数管の仕様を 表2 に示す。モニタの場合、これらの計数管を選択することにより10−1〜103n/(cm2・s)の中性子フルエンス率を測定することができる。
 BF3計数管は熱中性子に高い感度をもつが、中性子エネルギーの増大に従って感度が減少する。このため速中性子に対しては、感度を高くするためにパラフィンなどの減速材により熱中性子にして測定する方法がとられる。また、減速材の表面を0.5mm程度のカドミウム板で覆うと、カドミウムのカットオフエネルギー(0.5eV)以上の速中性子のみを測定することができる。
(3)エリアモニタの警報設定値
 モニタは1〜2レベルの警報機能を備えている。さらに、故障による指示値の異常な低下を検知して故障警報を表示する機能をもたせる場合が多い。
 警報設定値の考え方を示すものとして、ICRP Pub.26に示されている放射線管理基準の1つである調査レベル(investigation levels)がある。警報設定値は、異常事態の確実な検知という観点から、施設の平常運転時の放射線レベルの状態を十分把握した上で適切な値を選ぶ。
<図/表>
表1 γ線エリアモニタに使用される検出器の例
表1  γ線エリアモニタに使用される検出器の例
表2 中性子エリアモニタに使用されるBF3計数管の例
表2  中性子エリアモニタに使用されるBF3計数管の例
図1 エリアモニタ検出器の設置例
図1  エリアモニタ検出器の設置例
図2 放射線モニタの中央監視盤の一例
図2  放射線モニタの中央監視盤の一例

<関連タイトル>
サーベイメータ(α線、β線、γ線、中性子等) (09-04-03-04)
環境集中監視システム (09-04-03-15)
施設内放射線集中監視システム (09-04-03-16)
放射線管理基準 (09-04-05-01)
管理区域 (09-04-05-03)
作業環境モニタリング (09-04-06-01)
環境放射線モニタリング (09-04-08-02)

<参考文献>
(1) 辻本忠、草間朋子:放射線防護の基礎 第3版、日刊工業新聞社(2001年3月)、p.68-78
(2) 日本原子力産業会議(編):詳解・放射線取扱技術 新版、日本原子力産業会議(1995年4月)、p.363-414
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