<本文>
(1)施設内放射線集中監視システムに使用されているコンピュ−タは、施設の規模によって異なり、放射線モニタが多数設置されている原子炉等の大型施設では、記憶容量が大きく処理速度が速い機能を持ったミニコンピュ−タが使われている。また、放射性物質取扱い施設等の小規模の原子力施設では、パ−ソナルコンピュ−タも使われており、施設の規模によって採用されるコンピュ−タの機能・能力は異なる。
(2)施設内放射線集中監視システムは、放射線モニタなどの放射線管理用測定機器とコンピュ−タから構成されており、モニタ等から送られてくる信号を専用のプログラムで計算・処理し、放射線モニタや
個人モニタ等で得られる
モニタリング測定デ−タの監視や記録保存に活用されている。施設内放射線集中監視システムの例を
図1 に示す。
なお、データ処理のためのコンピュータを含まないものも広義の集中監視システムに含まれる。
(3)施設内の放射線集中監視システムでは、以下のような計算機処理が行われている。
1 据置型モニタ(排気、排水、ダスト)による監視とデ−タ処理
施設周辺に住む公衆の放射線安全を確保するため、法令等で定められた放射線管理基準に基づいて据置型モニタの測定デ−タを監視し、その結果をディスプレイ上にトレンド(経時変化)表示するとともに環境に放出された放射性物質の空気中濃度と量を計算して記録・保存する。
2 エリアモニタ、
空気汚染モニタによる監視とデ−タ処理
施設内で働く
放射線業務従事者の放射線防護のために、エリアモニタ、空気汚染モニタによる施設内の作業環境モニタリングの測定デ−タを監視し、その結果をディスプレイ上にトレンド表示し、放射線管理基準と比較して放射線作業時の放射線安全を確認し記録・保存する。
3 個人モニタによる監視とデ−タ処理
放射線業務従事者の
外部被ばくを管理するため、個人モニタによる測定デ−タを法令等に定められた放射線管理基準等と比較して放射線安全を確認するとともに、報告書の作成と保存を行う。この機能を持った放射線集中監視システムは、小規模施設から原子炉等の大型施設まで採用されており、個人外部被ばく管理における省力化が図られている。また、原子炉等の大型施設では、内部被ばくモニタリングの測定デ−タ処理による内部被ばく管理も行われており、大量の個人線量デ−タの管理に活用されている。
4 その他のデ−タ処理
施設内放射線集中監視システムには、以上の機能の他に採取試料の測定デ−タ処理を行っている施設もある。これらの機能を有するシステムでは、作業環境モニタリングや周辺環境モニタリングで採取された試料の測定デ−タを処理し、放射線管理記録を作成することによって、放射線管理業務の省力化が行われている。
(4)
原子力発電所などの大型施設では、環境に放出される
放射性廃棄物のモニタリングや作業環境モニタリングならびに
個人モニタリング、搬出物品モニタリングなど放射線防護に関するすべての管理を放射線集中監視システムを用いて行っている。また、小規模の放射性物質取り扱い施設では、放射線業務従事者の被ばく管理や出入り管理など、特定の放射線管理業務に放射線集中監視システムが活用されている。
(5)モニタリング測定デ−タは、放射線業務従事者や公衆の被ばく評価に必要なものであるが、同時に施設の運転状況や健全性と深く関連している。このため大型施設では、本システムを利用して測定デ−タを解析し、施設の健全性の確認や異常時における発生原因を調査・診断する高度な管理システムを採用している例もある。
<図/表>
<関連タイトル>
作業環境モニタリング (09-04-06-01)
空気汚染モニタリング (09-04-06-03)
放射性排出物の放出前モニタリング (09-04-06-05)
個人モニタリング (09-04-07-01)
排気モニタ、排水モニタ (09-04-03-06)
エリアモニタ (09-04-03-05)
空気汚染モニタ (09-04-03-09)
放射線管理基準 (09-04-05-01)
環境集中監視システム (09-04-03-15)
<参考文献>
(1)山本峯澄:放射線管理の立場からみた放射線モニタ、保健物理、15、No.4, 295 (1980)
(2)石黒秀治:個人被ばく管理デ−タ処理システムの開発、保健物理、16、No.1, 33 (1981)
(3)和田茂行ほか:敦賀発電所の放射線業務の電算化システムについて、保健物理、22、No.1, 116 (1987)