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<概要>
 放射性同位元素等取扱施設は、放射線診断・治療、非破壊検査食品照射等のために放射性同位元素又は放射線発生装置を取り扱う施設である。これらの利用に伴ってRI等取扱施設から施設外へ気体廃棄物、液体廃棄物、放射線が放出される。これらの放射線(放射能)は、法令に定める限度を超えないように、かつ、ALARA(As Low As Reasonably Achievable;合理的に達成できる限り低く)の考えに従ってそれぞれの事業所において放出管理されている。
<更新年月>
2004年08月   

<本文>
1.RI等取扱施設
 RI(Radio Isotope、放射性同位元素)等取扱施設は、放射線の性質及び物質との相互作用等の特徴を利用した放射線診断・治療、非破壊検査、厚さ計、レベル計、食品照射、測定・分析等を行うためにRI等(密封RI、非密封RI及び放射線発生装置)を取り扱う施設である。表1に主な密封RIの使用許可・届出事業所数を示す。また、表2に主な供給量を示す。
 RI等の使用にあたっては、施設の遮蔽能力、排気・排水設備の性能等が十分であるかどうか、事前に、環境への影響に関する安全評価が行われる。これに基づいて、文部科学省へ使用許可申請等が行われ、安全が確認された後に許可されるようになっている。
2.施設からの放射線(放射能)及び放出低減措置
 RI等取扱施設外へ放出される放射線(放射能)は、RI等の利用に伴って施設外に漏洩する直接放射線、排気筒から放出される気体廃棄物及び排水設備から放出される液体廃棄物に大別され、それぞれ、以下に示すような放出低減措置がなされている。
(1)直接放射線
 表1に示す63Ni、3H、14C等は、β線を放出する核種で線源容器等で容易に遮蔽され施設の外へ放射線の影響はない。一方、60Co、137Cs等は、透過力の強いγ線を放出する核種で、RI装備機器、照射装置等として照射室等の特別に遮蔽が施された管理区域内で使用されている。また、60Co、137Cs、192Ir等を用いた非破壊検査装置は、工場の現場や野外等へ移動して使用されることがある。この場合には、一時的にその周辺の放射線が高くなることがあるので、装置周辺を管理区域に設定し法令の基準を超えないように管理される。その他、食品照射、医療器具滅菌等に利用されている60Co、137Cs等の密封大線源を用いた放射線照射施設では、照射室等を管理区域に設定し厚いコンクリート壁又は水プール等で遮蔽して大量に放出される放射線を遮蔽している。放射線発生装置は、装置の運転によってγ(X)線、中性子線等が発生するため、専用の照射室等を管理区域に設定して、γ(X)線のコンクリート遮蔽の他に、中性子線に対しても水素、ホウ素化合物を添加した遮蔽材を用いて遮蔽している。
(2)気体廃棄物
 気体廃棄物は、物理的性状によって粒子状及び揮発性の放射性物質、放射性ガスに区分される。
 非密封RIの場合は、フード等で取扱われて飛散したRIが、空気中に浮遊し作業室内の空気と共に排気浄化され排気筒から施設外に気体廃棄物として放出される。非密封RIの内99mTc、147Pm等は、粒子状の放射性物質で、排気筒から施設外に放出される前に、排気設備に設置された高性能フィルタHEPAフィルタ)で補集される。125I等の揮発性のRIは、前述したHEPAフィルタでは浄化できないので活性炭フィルタに吸着させて排気を浄化する。133Xe等の放射性ガスは、前述したHEPAフィルタ及び活性炭フィルタでは補集されず排気筒から施設外へ放出される。
 放射線発生装置の内、高エネルギーの電子加速装置等の場合は、空気の成分である酸素及び窒素が放射化し、13N、15O等の短半減期核種が生成され、排気筒から気体廃棄物として施設外へ放出される。
(3)液体廃棄物
 非密封RI取扱施設では、RIで汚染された器具等の二次洗浄液及び手洗い廃液等の低レベルの廃液を廃液貯槽に貯留し、希釈するか又は減衰を待つ等の方法により施設外へ放出している。一次洗浄液等の比較的放射能レベルの高い廃液等は排水設備へ流さずポリ容器等に貯留して、殆どの事業所は、最終的に日本アイソトープ協会等の貯蔵所に集荷し処理処分している。
3.放出管理
 RI等取扱施設から放出される気体廃棄物及び液体廃棄物は、法令に定められた事業所境界における空気中濃度限度又は水中濃度限度の基準を超えないように放出管理されている。これによって、事業所境界における一般公衆の被ばくが年間1mSv以下となることを担保している。また、RI等取扱施設からの直接放射線については、管理区域境界においては週300μSvを、事業所境界においては3月間250μSvを超えないように、それぞれ測定管理されている。
<図/表>
表1 主な密封RIの使用許可・届出事業所数(核種別、機関別)、2003年度
表1  主な密封RIの使用許可・届出事業所数(核種別、機関別)、2003年度
表2 主な非密封RIの供給量(核種別、機関別)、2003年度
表2  主な非密封RIの供給量(核種別、機関別)、2003年度

<関連タイトル>
加速器(高エネルギー放射線発生装置) (08-01-03-02)
放射性同位元素 (08-01-03-03)
放射性気体廃棄物 (09-01-02-02)
放射性液体廃棄物 (09-01-02-03)
管理区域 (09-04-05-03)
放射性排出物の放出前モニタリング (09-04-06-05)
排気排水設備 (09-04-10-04)

<参考文献>
(1)日本アイソトープ協会(編):主任者のための放射線管理の実際 改定2版、日本アイソトープ協会(1994年12月)
(2)日本アイソトープ協会(編):ラジオアイソトープ密封線源とその取り扱い 改定5版
(3)日本アイソトープ協会(編):アイソトープの安全取扱入門−教育訓練テキスト− 改定3版、丸善(1990年6月)
(4) 放射線取扱者教育研究会(編著):放射性同位元素等取扱者必携 改定第2版、オーム社(1990年4月)
(5)飯田博美(著):放射線管理技術、日本放射線技師会編放射線双書
(6)日本アイソトープ協会(編):医療用アイソトープの取扱いと管理 改定3版、丸善(1985年9月)
(7)日本医学放射線学会、日本アイソトープ協会(編):放射線診療における被曝の管理 改定3版、丸善(1987年9月)
(8)竹内 清(著):JNICレポート放射線遮蔽設計計算の理論と実際 第3巻 総集編、日本原子力情報センター
(9)日本原子力研究所:保健物理−管理と研究−No.33(1990年度):JAERI−M 91−171、1991年11月
(10)科学技術庁原子力安全局(監修):放射線利用統計2000、日本アイソトープ協会(2000年12月)
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