<本文>
1)気体廃棄物及び液体廃棄物はそれぞれ特別に設計された排気設備及び排水設備から排出すべきことを
障害防止法、原子炉等規制法等で定めている。排気設備及び排水設備はこれらの廃棄物を浄化、さらに大量の空気または水で希釈すること等によって排出口(排気口または排水口)及び事業所境界等における放射性物質の濃度を
濃度限度以下にする性能を有することが要求される。
2)排気設備は排気管、排気浄化装置、排風機、排気筒(排気口)等から構成される。排気設備の例を
図1 に示す。
排気管は、その内部を汚染空気が流れるために、気密構造で腐食しにくい材料で作られている。また、故障時に汚染空気の系外への拡散を防止するためにダンパ等が設けられている。
排気浄化装置は、排気口における放射性物質の濃度を管理基準以下にするために設けられ、
プレフィルタ、
HEPAフィルタ、
チャコールフィルタ等で構成されている。プレフィルタはHEPAフィルタの上流側に設置し、大きな粒子を捕集することにより、HEPAフィルタの耐用期間を延ばしている。HEPAフィルタはサブミクロンの微粒子を捕集するために用いられる。また、その他の除去装置として静電気式集塵装置、湿式集塵装置等が用いられる。
ヨウ素、不活性ガス等の気体状の放射性物質にはチャコールフィルタ、ホールドアップタンク等が用いられる。
排気筒(排気口)は、排気浄化装置によって浄化された空気を環境に放出し拡散希釈するために設けられ、その位置や高さは、隣接施設の位置等の条件により決められる。
さらに、施設内の人が立入る場所における放射性物質の濃度を濃度限度以下にするため、
空気汚染の発生する作業はセル、フード、グローブボックス等の閉じ込め設備内で行ない、排気側は排気設備に連結されており建物内に汚染空気が広がらないようにしている。閉じ込め設備の設計例を
表1 に示す。汚染した空気は低レベル区域から高レベル区域へと流れ、逆流しないようにし、建物内は常に負圧及び風向が管理されるように適切な換気回数が設定される。原子力施設における換気回数の設定例を
表2 に示す。
3)排水設備は、排液処理装置、排水浄化槽、排水管、排水口等から構成される。
排液処理装置は液体廃棄物を濃縮、イオン交換等により放射性物質を分離して処理するために設けられる。
排水浄化槽は廃液を浄化、希釈するために設けられ、貯留槽(貯留タンク)、希釈槽等で構成される。貯留槽は、放流前の廃液をいったん貯留することによりその放射性物質濃度及び水質(
pH等)を見きわめ、またある期間貯留することにより
半減期の短い
核種の減衰をまつために用いられる。貯留槽は2槽以上設置し、一つの槽で濃度の測定、希釈、放流が行われている間は、切換えバルブ操作により、新たに発生した廃液は、他の槽に貯留される。貯留槽から廃液が溢れることのないように、満水警報装置を設けてある。
希釈槽は、貯留槽内の廃液の放射性物質の濃度が濃度限度を超えているとき、希釈水を加えてその濃度を濃度限度以下にするために設けられている。
図2 に貯留槽の構成例を示す。
排水管は、内部に汚染がつきにくく、腐食しにくい材料を用い、廃液の滞留する部分ができにくいように曲がりを少なくし、接合部の内面は平滑に仕上げ、勾配を設けている。
<図/表>
<関連タイトル>
空気中濃度限度 (09-04-02-15)
廃液中または排水中の濃度限度 (09-04-02-07)
排気モニタ、排水モニタ (09-04-03-06)
空気汚染モニタリング (09-04-06-03)
放射性排出物の放出前モニタリング (09-04-06-05)
放射性気体廃棄物 (09-01-02-02)
放射性液体廃棄物 (09-01-02-03)
<参考文献>
(1)「建築設計資料集成5」 日本建築学会、丸善、1973年
(2)「医療用アイソトープ使用施設設計基準資料」 日本アイソトープ協会、1980年
(3)「アイソトープ便覧」 日本アイソトープ協会、丸善、1983年
(4)「空気清浄ハンドブック」 日本空気清浄協会、オーム社、1981年