<概要>
気体廃棄物の場合と同様に、
原子力施設等の運転等に伴って発生する放射性物資を含んだ排液または液流を液体廃棄物という。通常は、これらが環境中に直接放流される個所(排水口等)で「液体廃棄物」と呼ばれるが、それとは別に再処理工場、
ホットラボなどで生ずるかなり高いレベルの
放射能を含有する液体を呼ぶこともある。
このような液体廃棄物は放射能の強さに応じていくつかのグループに分けたのち、それぞれのグループごとにまとめて処理される(グループ別処理)。普通には、沈澱法、吸着法、蒸発濃縮法、イオン交換樹脂法などによる処理が施されるが、高放射性のものについては、ある期間、貯蔵タンクに貯めておいて「放射能の減衰効果」を利用する事も多い。
<更新年月>
1998年03月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
原子力施設からの
放射性廃棄物の発生から処理処分まで
図1 に示す。
気体廃棄物の場合と同様に、原子力施設等の運転等に伴って発生する放射性物資を含んだ排液または液流を液体廃棄物という。通常は、これらが環境中に直接放流される個所(排水口等)で「液体廃棄物」と呼ばれるが、それとは別に再処理工場、ホットラボなどで生ずるかなり高いレベルの放射能を含有する液体を呼ぶこともある。
原子力発電所から発生する液体廃棄物一覧を
表1 に示す。
このような液体廃棄物は放射能の強さに応じていくつかのグループに分けたのち、それぞれのグループごとにまとめて処理される(グループ別処理)。普通には、沈澱法、吸着法、蒸発濃縮法、イオン交換樹脂法などによる処理が施されるが、高放射性のものについては、ある期間、貯蔵タンクに貯めておいて「放射能の減衰効果」を利用する事も多い。
液体廃棄物の処理方法一覧を
表2 に示す。
1)原子力発電施設のうち、
BWRで発生する液体廃棄物の主なものは、各建屋の機器からの
ドレン、各建屋の床ドレン、復水脱塩系樹脂の再生廃液、保護衣類等を洗濯する際に生ずる洗濯廃液等である。PWRでの液体廃棄物は、一時冷却抽出水、機器ドレン、床ドレン、薬品ドレン、洗濯廃液等である。これらの廃液は、濾過装置、脱塩装置、蒸発濃縮装置等で処理された後、原則として循環再使用されるが、放射能の含有量が十分に低いことが確認されたものについては、一部を直接放流することもある。廃液を処理した後に残る放射能が濃縮された液、放射能を含んだ固体、放射能で汚染された固体等は
固化処理を施した後、固体廃棄物として管理される。
2)核燃料関連施設からの液体廃棄物は、発電施設で発生する液体廃棄物とは内容的にかなり異なっている。
ウラン採鉱・精錬施設、ウラン濃縮施設、ウラン燃料転換・加工施設などのウランのみを取り扱う施設では、各々の施設で行われている工程からの廃液流から、ウランを回収した後に残る液体または回収操作によって分離されてくる水が液体廃棄物の主体となる。これらの液体の大部分は
放射能濃度が規制値以下であることを確認した上で直接放流されるが、状況如何では固化して保管することもある。
3)ウランと共に
プルトニウムも扱う核燃料関連施設では、工程からの排液流からウランとプルトニウムを回収した後に残る液体または回収操作によって分離されてくる水について、特にプルトニウムの濃度に留意して検査し、プルトニウム濃度および他の放射能の濃度が規制値以下であるものは直接放流される。放流されないで残った液体廃棄物は、
TRU TRU廃棄物の区分の下で処理・保管が行われている。
4)核燃料再処理施設で発生する液体廃棄物は、再処理工程において発生する排液流が主体である。この内で最も放射能レベルが高いものはウランおよびプルトニウムを抽出した後に残る
核分裂生成物の殆んどとアメリシウム、キュリウム等のTRU元素を含む廃液であって、一般に「高レベル廃液」と称されている。これは冷却設備を持つ貯蔵タンク内にある期間保管された後に
ガラス固化することになっている。それ以外の廃液の扱いは、ウランと共にプルトニウムも取り扱う核燃料関連施設で発生する廃液に対するものと、大筋においてほぼ同じである。
<図/表>
<関連タイトル>
放射性廃棄物 (09-01-02-01)
再処理廃棄物の特性 (04-07-02-05)
高レベル廃液の処理 (04-07-02-07)
中・低レベル廃液の処理 (04-07-02-08)
高レベル廃液ガラス固化処理の研究開発 (05-01-02-04)
<参考文献>
(1)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック1997年版、日本原子力産業会議(1997年5月)
(2)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理ガイドブック1994年版、1994年7月
(3)資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1997年版、1997年8月