<大項目> 放射線利用
<中項目> 放射線利用の基礎
<小項目> 放射線利用の概要
<タイトル>
放射線利用に関する統計 (08-01-04-02)

<概要>
 放射線源にはラジオアイソトープ放射線発生装置がある。このうちラジオアイソトープは、理工学、医学、薬学、農林・生物学などの幅広い分野にわたって利用されている。使用されるラジオアイソトープの種類も、また、利用の形態も様々である。利用の形態を大別すると、金属やセラミックスの容器に密封して用いられる線源(密封線源)と非密封線源とがある。密封線源は医学や理工学方面に多く使用され、農林・生物学でも使用されている。非密封線源は医薬品として使用されることが多いが、生物学でも使用されている。
<更新年月>
2012年02月   

<本文>
 わが国では、現在全国約6,000を超える事業所で放射線源としてラジオアイソトープ(RI)または放射線発生装置の利用が行われている。(ラジオアイソトープの日本語呼称については本文末の注を参照。)
 放射線源のうち、ラジオアイソトープは理工学、医学、薬学、農林・生物学などの幅広い分野にわたって利用されている。使用されるラジオアイソトープの種類も、また、利用の形態も様々である。利用の形態を大別すると、金属やセラミックスの容器に密封して用いられる線源(以下、密封線源もしくは密封アイソトープと呼ぶ)と非密封ラジオアイソトープ(以下、非密封線源もしくは非密封アイソトープと呼ぶ)とがある。密封線源は医学、理工学、農学等の分野で照射用線源として多く使用され、また、医学分野では病院でのがんの診断・治療、工学分野では、工場現場などでの工業計測、溶接個所の非破壊検査による使用が多い。農林・生物学でも照射用線源が使用されている。非密封アイソトープは医薬品として使用されることが多く、生物学では主に追跡子(トレーサ)として使用されている。
 現在利用されているラジオアイソトープの種類(放射性核種)は、密封線源として29核種程度、非密封線源として37核種程度あり、α線アルファ線)、β線(ベータ線)、γ線ガンマ線)及び中性子線が利用されている。以下、わが国におけるアイソトープの利用統計から、主な項目の内容について簡単に説明する。
 図1に、使用許可・届出事業所数の年度推移(2011年3月31日現在)を示す。ここ数年前から民間企業の届出数が急増するとともに、その他の機関、おそらく民間企業付属の研究所・試験所、研究施設が増加傾向にある。教育機関では横ばい傾向、医療機関が若干の増加傾向にある。
 図2に、使用許可・届出事業所の利用形態(2011年3月31日現在)を示す。総数では、密封線源のみの利用がほぼ半分を占めるが、医療機関では、放射線発生装置のみがほぼ半分を占め、残りのほとんどを発生装置と密封線源の利用、非密封線源と密封線源それに発生装置の利用が占めている。教育機関では、非密封線源のみの利用がほぼ半分を占め、残りを密封線源のみの利用と非密封線源と密封線源のみの利用が占めている。研究機関では、非密封線源のみの利用が4割を占め、密封線源のみの利用と非密封線源と密封線源の利用が比較的多い、民間企業・その他の機関では密封線源のみの利用が大部分である。
 表1に、おもな非密封アイソトープの供給量の推移(核種別、2006〜2010年度)を示す。3H、14C、131Iなど多くはほぼ横ばい傾向にあるが、18F、68Geは増加傾向、32P、35S、51Crなどは減少傾向にある。
 表2に、2010年度におけるおもな非密封アイソトープの供給量(核種別、機関別)を示す。3H、14C、32P、51Cr、99Mo、99mTc、125Iは、教育機関、研究機関、民間企業に多く供給され、医療機関には32P、51Cr、68Ge、99mTc、186Reが、民間企業には85Kr、131Iが多く供給されている。
 表3に、おもな密封アイソトープの供給量の推移(核種別、2006〜2010年度)を示す。60Co、85Kr、192Irはほぼ横ばい傾向にあるが、125Iは増加傾向にある。
 表4に、2010年度におけるおもな密封アイソトープの供給量(核種別、機関別)を示す。57Co、60Co、68Ge、137Cs、192Irがどの機関にも供給され、3Hは教育機関、63Ni、85Kr、169Ybなどは民間企業のみに供給されている。
 表5に、表示付認証機器の使用届出台数(種類別・機関別)(2011年3月31日現在)を示す。表示付認証機器総数の42.5%は民間企業における届出台数で、校正用線源、レベル計、水分密度計、水分計、ガスクロマトグラフによる利用のための届出が多い。届出数の多いのは、その他の機関における校正用線源、民間企業におけるガスクロマトグラフ、その他の機関における爆発物・薬物検知器である。
 この利用統計は、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年6月10日法律第167号)」(施行:昭和33年4月1日。以下、放射線障害防止法という。)の規定に基づいて、ラジオアイソトープまたは放射線発生装置の使用を文部科学大臣に許可された事業所、及び1個または1式あたりの放射能が下限数量の1,000倍以下の密封されたラジオアイソトープのみの使用を文部科学大臣に届け出た事業所、及び表示付認証機器の使用を届け出た事業所を対象としたものである。
 なお、供給量等は社団法人日本アイソトープ協会が供給・集荷した数量である。
 また、用語のそれぞれは以下の記述に従っている。(参考文献1に基づく。)
1.使用許可・届出事業所及び認証機器届出事業所:
 放射線障害防止法の規定にもとづいて、ラジオアイソトープまたは放射線発生装置の使用を文部科学大臣に許可された事業所(許可事業所)および1個または1式あたりの放射能が下限数量の1,000倍以下の密封されたラジオアイソトープのみの使用を文部科学大臣に届け出た事業所(届出事業所)及び表示付認証機器の使用を届け出た事業所(表示認証機器届出事業所)。
2.販売・賃貸事業所:
 放射線障害予防法の規定にもとづいて、ラジオアイソトープを業として販売または賃貸することを文部科学大臣に届け出た事業所。
3.医療機関:
 医療法にもとづく病院及び診療所
 (教育機関および民間企業の附属病院ならびに診療所を含む)。
4.教育機関:
 学校教育法にもとづく学校(大学にあってはその学部)。大学の附属病院および附属研究所・試験所・研究施設等を除く。
5.研究機関:
 国立、独立行政法人、公立、特殊法人、公益法人等の研究所および試験所ならびに教育機関または民間企業の附属研究所・試験所・研究施設。
6.民間企業:
 民間の工場および作業場。附属研究所・試験所・研究施設ならびに附属病院を除く。
7.その他の機関:
 上記3、4、5および6の分類に属さない事業所。

(注)ラジオアイソトープは、英語のRadioisotopeの読みに基づく呼称であり、本来は放射性同位体(同一元素の同位体のうち放射性のもの)を意味する。しかし、日本では特定同位体から成る物質を表す概念と解して、ラジオアイソトープを放射性同位元素と呼ぶことも多い。
(前回更新:2005年2月)
<図/表>
表1 おもな非密封アイソトープの供給量の推移(核種別、年度別)(2006−2010年度)
表2 おもな非密封アイソトープの供給量(核種別、機関別)(2011年3月31日現在)
表3 おもな密封アイソトープの供給量の推移(核種別、年度別)(2006−2010年度)
表4 おもな密封アイソトープの供給量(核種別、機関別)(2011年3月31日現在)
表5 表示付認証機器の使用届出台数(種類別・機関別)(2011年3月31日現在)
図1 使用許可・届出事業所数の年度推移(2011年3月31日現在)
図2 使用許可・届出事業所の利用形態(2011年3月31日現在)

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<関連タイトル>
放射線利用の概要 (08-01-04-01)
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原子力電池(アイソトープ電池) (08-04-02-08)
放射性トレーサ法の原理と応用 (08-04-03-01)

<参考文献>
(1)文部科学省科学技術・学術政策局(監修):放射線利用統計2011、日本アイソトープ協会(2011年12月)
(2)文部科学省科学技術・学術政策局(監修):アイソトープ等流通統計2011、日本アイソトープ協会(2011年12月)
(3)日本アイソトープ協会(編):改訂版−やさしい放射線とアイソトープ、丸善(1996年2月)
(4)石榑 顕吉ほか(編):放射線応用技術ハンドブック、朝倉書店(1990年11月)
(5)(財)日本原子力文化振興財団(編):原子力の基礎講座、第7巻、アイソトープ・放射線の利用、1996年3月
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