<大項目> 基礎基盤研究および先端的研究
<中項目> 核融合研究開発
<小項目> ITER計画
<タイトル>
ITER計画の経緯−最終設計− (07-05-03-06)

<概要>
 国際熱核融合実験炉ITERは、(1)核融合エネルギー増倍率 Q(*1)が10以上の核融合燃焼を300-500秒間持続することを達成すること、(2)Qが5以上の条件のもとで定常運転の実証を狙うこと、さらに、(3)Qが無限大となる自己点火条件(外部より加熱パワーを加えないで核融合燃焼を持続する条件)を達成することができると見込まれている。炉工学の立場からは、核融合基盤技術を統合し、その有効性を実証することを狙いとしている。1992年から6年間日本、米国、EU及びロシアによる国際共同で工学設計をまとめた後、3年間の延長期間に、実験上、運転上の融通性をもたせながらも、できるだけ装置を小型化し、建設費を低減する努力を払い、2001年に低コスト化した装置の工学設計を完成した。
 ITERでは、約20年間の運転を想定し、核融合燃焼での目的を達成するとともに、発電ブランケットの工学試験のために、14MeVの中性子負荷積算量が第一壁において平均0.3MW/m2となる核融合燃焼運転を予定している。
(*1)Q:核融合反応により発生するパワーが外部よりプラズマに加える加熱パワーに対して何倍であるかを示す値。
<更新年月>
2014年03月   

<本文>
1.計画目標と技術目標
1.1 計画目標
 ITERの計画目標は、トカマク核融合炉の科学的技術的成立性を実証することである。すなわち、ITERは、制御された点火と定常状態を究極の目標とした重水素−三重水素の燃焼(D-T運転)を実証すること、統合されたシステムにおいて核融合炉に本質的な技術を実証すること、更に核融合炉の実用化に必要な高熱負荷と核工学要素の統合された試験を行うことにより、この目標を遂行する。
1.2 技術目標
 計画目標を達成するための技術目標が1992年にITER理事会によって採択され、6年間のEDA協定の設計活動が進められた。その後、1998年に、計画目標を維持しつつも建設コストを半減して計画の実現性を高めるため、物理や工学R&Dの進展をもとに装置を小さくするように技術目標を見直した(表1)。「日本の大型トカマク装置JT-60を始め世界の主要なトカマク装置において得られた定常運転に関する最新の研究進展を取り入れ、技術目標の重点を定常核融合システムの開発に置いて最適化するべき」と書かれているように、低コスト化はわが国の主導で進められた。
2.基本仕様
 ITERの主要諸元(最終設計報告書2001年7月、参考文献2)を表2に示す。また、ITER装置の概念図を図1に示す。定格核融合出力は50万kW、核融合エネルギー増倍率Qは10以上、プラズマ電流は1,500万アンペアで核融合燃焼時間400秒以上である。プラズマの主半径は6.2m、プラズマ中心でのトロイダル磁場強度は5.3T(テスラ)である。ITERの設備は、炉心構造系、超伝導コイル系、加熱・電流駆動系、燃料循環処理系、電源系、冷凍・冷却系、計測制御系、組立分解修理系、廃棄物処理系、サイト・建屋系より構成される。このうち、特に炉心構造系は遠隔保守の必要性から組立分解修理系との整合性に重点をおいて設計されている。
3.工学設計活動(EDA:Engineering Design Activities)
 ITER/EDAの目的はITER実機の建設に進むか否かの判断に必要な工学設計データベースの構築と、それに必要なキーテクノロジーに関する実規模モデルによる試験及び要素開発を含む工学R&Dの実施と評価であった(参考文献3、4)。また、これと並行して物理R&D、すなわちディスラプション制御、先駆的閉じ込め改善、粒子熱制御など物理領域のテーマについての研究開発を、世界で稼働中の装置を有効に活用しながら進めた(参考文献5)。
4.ITER計画のスケジュール
 「共同実施協定」が参加極政府の間で調印された後、参加極の国内手続きを待って、ITERの建設、運転・利用、廃止措置を実施するITER事業体が設立される。
 最終設計報告書(参考文献2)によると、ITER事業体は、建設サイト国の許認可を得て、設立から2年後に建設に着手し、8年間で建設を完了した後、ファースト・プラズマを生成する(図2)。
 その後、燃料に水素及び重水素を用いた運転を約4年間行い、装置の検収や特性把握を十分に行うとともにD-T運転を模擬する。これに続いて、D-T運転は2段階で実施される予定である。はじめの約6年間で核融合出力と放電時間を徐々に増やしていき、核融合エネルギー増倍率Qが10以上の核融合燃焼を実証する。また、定常運転について研究するとともに、発電ブランケットの工学試験を適宜行う。次の約10年間のD-T運転では、総合性能の改善を図ると共に、より高い中性子負荷での機器・材料試験に重点を置く。
 これらの約20年間の運転によりITERの技術目標を達成した後、運転を完了して除染・解体等の廃止措置の段階に入る。
(前回更新:2006年3月)
<図/表>
表1 技術目標のまとめ
表2 ITERの主要パラメータ
図1 ITERの鳥瞰図
図2 ITERの建設スケジュール

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<関連タイトル>
トカマク型核融合装置の研究開発 (07-05-01-06)
国際熱核融合実験炉(ITER)の概要 (07-05-03-01)
国際熱核融合実験炉(ITER)の装置概要 (07-05-03-02)
ITER計画の経緯−計画全体の経緯と日本の実験炉計画− (07-05-03-03)
ITER計画の経緯−工学設計活動における詳細設計− (07-05-03-04)
ITER計画の経緯−工学設計活動(延長期:1998-2001年)、コンパクトITER− (07-05-03-05)

<参考文献>
(1)EDA協定、議定書1、議定書2及び延長協定. ITER EDA Agreement and Protocol 1. ITER EDA Documentation Series No.1. IAEA Vienna,1992. ITER EDA Agreement and Protocol 2. ITER EDA Documentation Series No 5. IAEA,Vienna,1994. Text of the Agreement Extending the EDA Agreement. ITER Council Proceedings:1998.ITER EDA Documentation Series No 15. IAEA Vienna,1999.
(2)Final Report of the ITER Engineering Activities,IAEA 2001,
(3)ITER Technology R&D、Fusion Engineering and Design,Vol.55 p.97-358(2001)
(4)日本原子力研究所 那珂研究所:特集 ITER工学設計活動報告書、日本原子力学会誌、Vol. 44 No.1 p.16-89.(2002)
(5)ITER Physics Basis, Nuclear Fusion,Vol.39,No.12(1999)
(6)高津 英幸:第三段階における炉工学研究開発の進捗、核融合研究開発基本問題検討会(2003年7月10日)、

(7)核融合フォーラム・ホームページ:
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