<大項目> 基礎基盤研究および先端的研究
<中項目> 核融合研究開発
<小項目> ITER計画
<タイトル>
ITER計画の経緯−計画全体の経緯と日本の実験炉計画− (07-05-03-03)

<概要>
 国際熱核融合実験炉(ITER)は、大型トカマク装置(日本のJT-60、EUのJET)の次の段階の核融合研究開発を進めるために、1988年に日本、米国、EU、ソ連(当時)の4極の国際協力で開始した計画である。1990年まで概念設計活動(CDA)が行われ、1992年から1998年までは工学設計活動(EDA)、2001年までは延長EDAが実施された。その後、ITER暫定活動(ITA)が行われるとともに、ITERの国際枠組みや建設サイトを決める政府協議が進められた。この間、新たに中国、韓国、インドが参加し、2007年にITER協定が発効してITER機構が創設され、フランスカダラッシュでITERの建設が開始された。
 ITERは実燃料である重水素(D)と三重水素(トリチウム、T)を用い、少なくとも約50万kW(熱出力)、300秒以上の本格的なDT燃焼を世界で初めて試験すると同時に、大型超伝導コイルブランケット、中性子工学など将来の核融合炉で必要となる全ての工学技術要素を総合的に試験することを目的としている。
<更新年月>
2014年03月   

<本文>
1.国際熱核融合実験炉(ITER)計画
 1985年スイスのジュネーブでの米ソ首脳会談における「核融合研究の重要性と国際協力の拡大を支援する」共同声明をきっかけとして、国際的に協力して核融合開発にあたるということで、国際原子力機関(IAEA)のもとで日本、米国、ヨーロッパ連合(EU)、ソ連(当時)の4極の協力により、国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor:ITERと称す)計画を進めることになった。
 ITER計画は、1988年4月にドイツのミュンヘン郊外ガルヒンクにあるマックスプランク物理研究所を拠点として、概念設計活動(Conceptual Design Activities:CDAと称す)として開始された。この設計は、のべ約400人・年の規模で行われ、1990年12月に終了した。そしてこの成果を踏まえITER建設に向けた設計を行う工学設計活動(Engineering Design Activities:EDAと称す)に進むことで4極は合意し、1992年7月からその活動を開始した。EDAの活動は、装置を建設するのに必要な工学設計と、実機級の試作を含む研究開発(Research and Development:R&Dと称す)を含んでいた。EDAでは、最高議決機関であるITER理事会が活動全体を監督し、運営諮問委員会と技術諮問委員会が理事会に助言を行い、具体的な設計活動は、ITER所長の率いる共同中央チーム(「JCT」と称す)が中核となって行った。EDAにおける実施体制を図1に示す。他方、4極はそれぞれの国内チームを組織し、ITER所長の調整の下で工学R&Dと設計の一部を分担した。JCTは、那珂(日本原子力研究所 那珂研究所(現日本原子力研究開発機構 那珂核融合研究所)内、日本)、ガルヒンク(ドイツ、EU)、サンディエゴ(米国)の3サイトで設計作業を行い、那珂サイトでは超伝導コイルや遠隔保守装置、プラズマ制御機器、トリチウム循環系等の真空容器の外側にあるシステムの設計を担当した。ガルヒンクでは、真空容器、ダイバータ、遮蔽ブランケットなど真空容器の内側の構造物の設計を分担した。また、サンディエゴでは、これら機器設計の統合とプロジェクト管理を行った。1992年12月にEDAの技術目標が定められ、これを満たす概要設計は1994年1月に承認された。概要設計に基づく中間設計報告書は1995年12月に承認され、さらに1996年12月に詳細設計報告書がITER理事会に提出され、各極内でその評価が行われた。また、1997年7月に開かれた会合で、2001年7月までのEDAの延期が了解され、3年間延長された。この延長期間に米国が離脱したが、日本、EU、ロシアの3極によって最終設計を2001年に纏めあげている。このように、ITER計画の工学設計活動は、1992年から2001年まで実施され、ITER建設の鍵となる技術の開発を行い、トカマクを構成する主要部分の製作可能性を示すとともに、トカマク、付属設備、建屋等全体の設計を一通り完了した。
 2002年からはITERの国際枠組みや建設サイトを決める政府間協議と並行して、ITER移行措置(ITA)の活動が進められた。この活動は、EDAの終了後、建設が開始するまでの間、EDAで得られた成果を維持しつつさらなる改良を含めた詳細な設計を進めるとともに、工場製作及び現地工事に必要な主要技術の確認を行い、発注仕様書の準備を進め設計を深めるために、那珂とガルヒンクに国際チーム作業サイトを設置して進められた。2005年末に、カダラッシュに作業サイトが開設され、2007年の初めに、作業サイトはカダラッシュに一本化され、2007年10月のITER国際核融合エネルギー機構(ITER機構)の発足に伴いITAは終了した。
 政府間協議は2001年に開始され、途中から日本、米国、EU、ロシアに加えて中国、韓国、インドが参加して、以下の項目の検討がなされた。
・建設・運転・実験・廃炉に関する協定(ITER協定)
・物品調達の分担と調達方法
・プロジェクト運営
・ITER建設サイト
・ITER機構長等の人事
 この協議において、日本とEUが建設サイトの誘致を強く希望したためその決定に時間がかかったが、2005年に建設サイトが南仏カダラッシュに決定した。この決定と同時に、幅広いアプローチ活動を日本とEUの協力で進めることも決まった。2006年11月、ITER参加各極の閣僚級による会合がパリ・エリゼ宮(大統領府)で開催され,ITERの35年にわたる建設・運転・利用・廃止措置の共同実施に関する協定の署名が行われ、2007年10月に「ITER事業共同実施のためのITER国際核融合エネルギー機構を設立する協定」が発効した。これによりITER機構が創設され、カダラッシュにおけるITERの建設活動が開始された。

2.我が国における核融合実験炉の研究開発
 核融合実験炉は、プラズマ加熱入力とプラズマ中での核融合反応による出力が等しくなる条件、いわゆる、臨界プラズマ条件を実現している臨界プラズマ試験装置(JT−60(日本)、JET(EU))と、発電実証を一定の経済性を念頭に置いて実現する核融合原型炉との中間ステップに位置する装置である。1992年6月、原子力委員会は、「自己点火条件の達成及び長時間核融合燃焼の実現、原型炉に必要な炉工学技術の基礎の形成」を目標とした「第三段階核融合研究開発基本計画」を策定した。この計画の骨子は次の通りである。
○目標:自己点火条件の達成及び長時間核融合燃焼の実現、原型炉に必要な炉工学技術の基礎の形成
○内容:
(1)炉心プラズマ技術
  1)トカマク型実験炉による自己点火条件の達成と長時間核融合燃焼の実現
  2)実験炉以外の研究開発
   a.トカマク型装置での先進的・補完的研究開発
    b.ヘリカル型、逆転磁場ピンチ型、ミラー型、コンパクト・トーラス型、
     慣性閉じ込め装置を用いた研究開発
(2)炉工学技術
 核融合炉実用化に必須の炉工学技術の内、長期間の研究開発を要する技術開発(超伝導、炉構造、プラズマ対向機器、加熱・電流駆動、トリチウム技術、ブランケット技術、材料、計測・制御技術)、慣性閉じ込め装置における高出力ドライバー開発
(3)安全性に関する研究
(4)核融合炉システムの設計研究
○分担:核融合実験炉は日本原子力研究所の担当とし、実験炉以外の研究開発は、大学、国立研究機関、日本原子力研究所が連携協力して実施する。また、産業界の積極的参加をうながす。
 本計画に沿って、日本原子力研究所では、その中核となる核融合実験炉の設計活動を進めた。さらに、JT-60及びJFT-2Mのプラズマ実験装置による研究開発と炉工学に関する各種研究開発、安全性に関する研究、核融合炉概念の設計検討等が進められた。
 その後、国際協力により進めているITER計画の進展に基づき、1996年に原子力委員会は、ITERをわが国の第三段階計画における実験炉と位置づけて開発することが適切であるとの見解を示し、ITER計画はわが国の核融合研究開発における実験炉計画と位置づけられた。2005年の原子力委員会核融合専門部会では、これまでの研究の進展を踏まえ、トカマク方式の核融合研究開発において、核融合エネルギーの早期実現の観点から、核融合研究開発の次の段階を見通した開発戦略を検討した。その結果、核融合研究開発は第三段階計画に沿って着実に進展していると結論し、核融合エネルギーの早期実現を目指すために、第三段階計画における施策を明確化した(表1参照)。
<図/表>
表1 第三段階核融合研究開発基本計画における今後の核融合研究開発の推進方策について
図1 ITER工学設計活動(EDA)の実施体制

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<関連タイトル>
トカマク型核融合装置の研究開発 (07-05-01-06)
国際熱核融合実験炉(ITER)の装置概要 (07-05-03-02)
ITER計画の経緯−計画全体の経緯と日本の実験炉計画− (07-05-03-03)
ITER計画の経緯−最終設計− (07-05-03-06)

<参考文献>
(1)特集ITER 工学設計、プラズマ・核融合学会誌78, Supplement (2002).
(2)下村安夫:ITER建設に向けて、プラズマ・核融合学会誌 86 (2005) 143.
(3)核融合研究開発部門編集チーム:カダラッシュでITER進展、エネルギーレビュー 2011-9 (2011) 50.
(4)文部科学省HP:http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021.htm
(5)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑1997年版、原産(1997年10月)
(6)山本賢三:核融合の40年−日本が進めた巨大科学、ERC出版(1997年11月)p.271
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