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<概要>
 次期大型核融合装置(核融合実験炉)では、核融合装置保護のため健全性を計測しつつ、核燃焼プラズマを制御して核融合出力等の装置性能を絶えず制御する計測制御系が、核融合環境下で核融合炉システムとして充分な安全性を確保しながら運転・研究を実施するために必要である。耐放射線性センサーと機器要素の開発、核燃焼プラズマ制御用及び定常運転制御用計測システムについて信頼性の高い技術開発が要求される。
<更新年月>
2005年04月   

<本文>
1.計測制御技術
 既存のトカマク装置においては、表1に示すように数100秒の短い時間での計測制御技術が主であったが、核融合実験炉では、長時間(1,000〜10,000秒)運転あるいは定常運転が前提となり、核燃焼プラズマの制御、研究に対応する核燃焼プラズマ制御用中性子計測技術、定常運転制御用計測技術、耐放射線性計測素子、及び計測システムのその場較正技術等の開発が重要となる。表1に主な開発課題を示すが、この他に核融合実験炉では、その運転保守、プラズマ制御と性能最適化のために、プラズマ形状、位置計測用の磁場計測システム、プラズマ温度、密度分布計測用の光散乱計測システム、エネルギー損失をモニターするフ輻射損失計測システム等を組み合わせて用いることが必要である。また、これらの機器の遠隔保守性を考慮することが必要である。
2.耐放射線性計測センサー/機器要素
 核融合実験炉のブランケット近傍、真空容器内、ポートに取付けられる計測センサーや機器要素(反射鏡、窓等)は厳しい放射線環境において使用される。現状では、JT−60(原研(現日本原子力研究開発機構))、TFTR(米国)、JET(EU)及びT−15(ロシア)などの大型トカマク装置で経験はあるが、放射線量がこれらの実験装置の10〜100倍になる核融合実験炉では、耐放射線性能が優れたセンサー、光学機器要素の開発が、信頼性の高い計測システムを設計するために必要である。
3.核燃焼プラズマ制御用計測システム
 核融合実験炉では、D−T反応による燃焼によって発生する中性子発生量(14MeVのエネルギーを持つ中性子を含む)、中性子空間分布及びアルファ粒子を常時モニターすることにより、核融合反応状態の把握、核融合出力の計測が可能になり、核融合炉の運転の最適制御を行うことができる。この計測システムは最も重要な計測制御システムである。ピンホール構造のコリメータと数10チャンネルの中性子検出器を組み合わせることにより、プラズマ断面にわたる中性子発生量の空間分布とエネルギースペクトルを計測することが可能である。また、炉心プラズマから放射される全中性子をモニターするシステムとして、マイクロフィッションチャンバーがある。これはウラニウム235を用いた核分裂計数管である。耐放射線性に優れ、高分解能の検出器の開発が重要である。
4.定常運転制御用計測システム
 長時間(1,000〜10,000秒)運転あるいは定常運転では、核融合実験炉の運転保守、プラズマ制御に必要なプラズマ形状、位置計測用の磁場計測システムとして、既存のトカマク装置で使われているシステムを使用することが難しい。この計測に必要な積分器等の電子回路の熱的不安定性が計測精度の低下の原因になるためである。したがって、この電子回路の開発が重要課題である。また、これを解決するために、従来の磁場計測システムと異なる原理に基づいた回転磁気プローブ法の開発が進められている。
<図/表>
表1 計測・制御技術の現状と核融合実験炉での開発課題
表1  計測・制御技術の現状と核融合実験炉での開発課題

<関連タイトル>
核融合炉工学の研究開発課題(1)プラズマ加熱工学 (07-05-02-01)
核融合炉工学の研究開発課題(2)超伝導コイル (07-05-02-02)
核融合炉工学の研究開発課題(3)真空及び粒子制御 (07-05-02-03)
核融合炉工学の研究開発課題(4)第一壁工学 (07-05-02-04)
核融合炉工学の研究開発課題(5)ブランケット工学 (07-05-02-05)
核融合炉工学の研究開発課題(6)材料工学 (07-05-02-06)
核融合炉工学の研究開発課題(7)中性子工学 (07-05-02-07)
核融合炉工学の研究開発課題(8)トリチウム工学 (07-05-02-08)
核融合炉工学の研究開発課題(9)炉構造・遠隔保守 (07-05-02-09)
核融合炉工学の研究開発課題(10)安全工学 (07-05-02-10)

<参考文献>
(1)T.Nishitani, etc.:Rev.Sci. Instrum. Vol.68, No.1, 565?568 (1997).
(2)狐崎 晶雄・吉川 庄一:「新・核融合への挑戦」講談社ブルーバックス(2003)
(3)ジョセフ・ヴァイス 本多 力(訳):「核融合エネルギー入門」文庫クセジュ(2004)
(4)関 晶弘(編):「核融合炉工学概論−未来エネルギーへの挑戦」日刊工業新聞社(2002)
(5)近藤 育朗、栗原 研一、宮 健三:「核融合エネルギーのはなし」日刊工業新聞社(1996)
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