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<概要>
 核融合炉の安全性の重要な課題は、トリチウム、14MeV中性子及び中性子によって生成する放射化生成物に関するものである。したがって研究開発課題もこれらに対して一般公衆及び従業員の安全をどのように確保するかが主となっている。特に核融合炉の安全確保の方法に関しては、核融合炉においては、その特徴を考慮すると、「(反応を)止める」、「(崩壊熱を)冷やす」は容易だが、「(放射性物質の)閉じ込め」が主要な課題である。
 核融合炉の安全を確保するために必要な解析・評価手法の開発及びそのために必要なデータベースを確立するための研究開発(R&D)課題の項目とその現状を示す。
<更新年月>
2005年04月   

<本文>
核融合炉の安全性の重要な課題は、トリチウム、14MeV中性子及び中性子によって生成する放射化生成物に関するものである。したがってR&D課題もこれらに関するものが主となっている。
 核融合炉(核融合実験炉及びそれに続く将来炉)の安全確保に必要な今後の研究開発課題を表1に、放射性物質の閉じ込めに関する研究開発(R&D)課題の概要を図1に示す。 核融合実験炉の安全を確保するためには、特に重要と考えられる研究・開発課題を以下に示す。
(1)トリチウム拡散データの取得
 ・特に、非金属材料(C,TiC,SiC等)に対する低エネルギー(10〜100eV)
  D,T粒子入射時の拡散データ
 ・中性子、ガンマ線照射時の拡散データ
(2)分解修理時のトリチウム放出挙動の把握
 ・トリチウム追い出し方法の開発研究
 ・崩壊熱による温度上昇による影響
(3)室内放出トリチウムの化学形態変化(酸化速度)と、壁表面への吸着、脱離現象の解
  明と対策
(4)ダイバータ/リミター表面の安定性試験
 ・粉塵(ダスト)の挙動特性と除去対策
 ・高温下の金属の酸化蒸発挙動
(5)冷却材中の腐食性生物の生成と挙動
(6)低除染効率でも良いが大風量の室内雰囲気トリチウム浄化系の開発
(7)冷却水中トリチウムの効率良い濃縮回収技術の開発
(8)核融合炉システムの安全評価に関する方法論を、核融合炉の設計の進展に応じて精度
  を向上させて行く必要がある。
 核融合炉の安全確保の上で重要となる構造安全性の課題としては、以下の要求がある。
(1)基本的なトリチウム閉じ込め境界である真空容器の健全性が維持されること。
(2)超電導磁石の異常事象が、トリチウムを大量に含む機器の損傷を起こさないこと
(3)いかなる場合においても最終的なトリチウム閉じ込め境界である建家の健全性が維持されること。
<図/表>
表1 核融合炉の安全性R&D課題
表1  核融合炉の安全性R&D課題
図1 核融合炉における多重格納による安全確保と研究課題
図1  核融合炉における多重格納による安全確保と研究課題

<関連タイトル>
核融合炉工学の研究開発課題(1)プラズマ加熱工学 (07-05-02-01)
核融合炉工学の研究開発課題(2)超伝導コイル (07-05-02-02)
核融合炉工学の研究開発課題(3)真空及び粒子制御 (07-05-02-03)
核融合炉工学の研究開発課題(4)第一壁工学 (07-05-02-04)
核融合炉工学の研究開発課題(5)ブランケット工学 (07-05-02-05)
核融合炉工学の研究開発課題(6)材料工学 (07-05-02-06)
核融合炉工学の研究開発課題(7)中性子工学 (07-05-02-07)
核融合炉工学の研究開発課題(8)トリチウム工学 (07-05-02-08)
核融合炉工学の研究開発課題(9)炉構造・遠隔保守 (07-05-02-09)
核融合炉工学の研究開発課題(11)計測制御技術 (07-05-02-11)

<参考文献>
(1)関 泰:放射能安全性、機械の研究、47(1)、208(1995)
(2)関 泰:プラズマ核融合学会誌、ITER特集号、ITER安全R&D、73(6)、268(1997)
(3)関 泰:プラズマ核融合学会誌、小特集「核融合施設における安全解析」、73(8)、769(1997)
(4)関 晶弘(編):「核融合炉工学概論−未来エネルギーへの挑戦」日刊工業新聞社(2002)
(5)近藤 育朗、栗原 研一、宮 健三:「核融合エネルギーのはなし」日刊工業新聞社(1996)
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