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<概要>
 新型転換炉の冷却材の熱流動挙動は軽水炉と異なるので、原子炉冷却系および非常用炉心冷却系を模擬した実規模試験装置が建設された。また冷却系構成要素毎の個別試験の成果を組み込んだシステム解析コードが開発され、これら試験装置や原型炉を用いた異常時の過渡特性試験により検証されている。さらに事故時を対象に冷却材の放出現象、燃料の非常冷却効果が解明され、広汎な事故条件に対応した解析コード群により、安全解析、安全評価が可能となっている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 新型転換炉の異常時および事故時の冷却材の熱流動挙動は軽水炉と異なるので、原子炉冷却系および非常用炉心冷却系を模擬した実規模試験装置(安全性試験装置)を用いて、現象解明および解析モデルの開発が行われてきた。
異常時を対象に、冷却系構成要素毎の個別の熱流動試験により得られた解析モデルや相関式はシステム解析コードに組み込まれ、このコードは実規模試験装置や「ふげん」を用いた異常な過渡変化試験により、その妥当性が検証されている。
 さらに事故時を対象に、配管破断試験、非常用炉心冷却系(ECCS)作動試験により、冷却材の放出現象、燃料集合体の冷却効果を解明し、広汎な事故条件に対応する解析コード群が開発されており、安全解析、安全評価が可能となっている。
1.安全性試験装置
  安全性試験装置は、実規模大で「ふげん」を模擬したループとECCSのモックアップおよび付属装置から構成されている。 図1 に安全性試験装置の系統図を示す。
 この試験ループは炉心に相当する26本の圧力管群、蒸気ドラム、循環ポンプ、ウォータードラムおよびこれらを結ぶ配管で構成され、「ふげん」の再循環系1ループの約1/5規模に相当する。実寸大の圧力管のうち6本は電気間接加熱の模擬燃料集合体が挿入され、残り20本は流路面積が等しく成るようプラグが挿入される。燃料集合体の出力は5体が崩壊熱を模擬した200KW 、残り1体が定格出力からスクラム後の崩壊熱変化を電源の制御で模擬できる。再循環ポンプはモータの電源周波数制御により、原子炉トリップ後のコーストダウン特性を模擬できる。下降管、入口管および主蒸気管にはそれぞれ破断口が設けられ、瞬時破断を模擬できる。
 また「ふげん」のECCSを模擬する急速注水系、低圧注水系、高圧注水系はいずれも実機同様に、蒸気ドラム圧力、水位の低下信号により自動的に起動するようになる。
 データ収録システムは計測点の多数化、高速化が図られ、現象解明、モデル検証を容易にしている。
2.異常時の現象解明および評価
  冷却系の異常な過渡変化挙動を解明するためには、まず燃料集合体の伝熱限界および冷却系構成要素毎の個別熱流動特性が必要となる。
(1) 燃料の伝熱限界(バーンアウト
  燃料集合体の伝熱限界は炉心性能、安全性に直接関係する最重要特性値であり、燃料集合体、圧力管流路を実規模で模擬し、高精度で測定可能な別の試験装置(大型熱ループ:HTL)による多数のバーンアウト試験から求められた。 図2 に伝熱限界相関式から求められた限界出力と個々の測定値との対比を示す。運転時の燃料集合体出力は適切な裕度を保った状態に設定し、温度変化時にもこの制限値を超えないことが要求される。
(2) 蒸気ドラム内の気水分離特性
  蒸気ドラムは冷却材水量の40%を占め、過渡特性に大きな影響を及ぼす。圧力管出口管より流入する二相流を分離する気水分離特性試験も行われ、蒸気ドラム内の熱流動解析ができるようになった。
(3) 圧力管などの流動圧力損失
 燃料集合体、出入口配管などの流動圧力損失特性は、また別の実規模試験装置(コンポーネント・テストループ;CTL)を用い、広範囲の二相流条件に対する相関式として求められた。さらにこの特性に依存する圧力管チヤンネルへの流量配分コードも開発された。
(4) システム解析
 このようにして得られた個別の解析コードあるいは相関式は、出力制御系、蒸気ドラム水位一定のプラント制御系を含む全体のシステム解析コードに組み込まれた。これらコードの妥当性は安全性試験装置あるいは「ふげん」を用いたシステム試験でも検証されており、各種の異常な過渡変化に対し、適切な評価を行うことが可能となっている。例として 図3 に外部電源喪失時の模擬試験結果とそれに続く原子炉隔離時冷却系作動の模擬試験結果と解析との比較を示す。解析は主要パラメータを精度よく予測している。
3.事故時の現象解明および解析評価−−−冷却材喪失事故−−−
  原子炉では配管破断に伴う冷却材喪失事故(LOCA)が最も酷しい事象となる。熱流動挙動は、破断後冷却材が放出するブローダウン過程、ECCS水が注入され燃料発熱部に達するまでの再浸水過程、および燃料集合体を冷却する再冠水過程に大別される。
  一例として 図4 に安全性試験装置を用いて行った下降管150mm 口径破断( 実機大破断相当 )時の急速注水系作動を含めた試験結果と計算結果の比較を示す。
(1) ブローダウン特性
 ループの下降管、主蒸気管、入口管に設けられた模擬破断口による冷却材喪失事故模擬試験が行われ、ブローダウン特性が解明された。
 下降管大破断時のブローダウン特性(図4参照)は、液相主体の放出のため圧力および水位の低下は迅速である。破断と同時に再循環ポンプはトリップし、蒸気ドラム水位低で原子炉がスクラム、炉出力は崩壊熱となる。炉心内流量は低下、燃料集合体はドライアウトし温度上昇するに至る。
 主蒸気管破断では、減圧沸騰により蒸気ドラムの水位は一時的には上昇するが、遂には冷却材不足によりドライアウトする。ただし大破断に比べ大分緩やかな現象である。
 入口管破断時では、燃料集合体は一旦ドライアウトするが、圧力管内は直ちに逆流となり冷却される。
 このように大破断(下降管破断)と中小破断(主蒸気管破断及び入口管破断)とでは放出挙動が異なるので、別個の解析コードが開発されている。
(2) 再浸水過程
 大破断時は圧力、水位とも低下するので、早期に急速注水系が働き蒸気ドラムに注水、炉心を再浸水する。小破断時は水位は低下しても圧力は低下しないので、高圧注水系により蒸気ドラム内の蒸気相にスプレー状に注水、減圧を促進させ、後に急速注水系によりウォータードラム(下部ヘッダ)に注水、圧力管に流入させる。
(3) 再冠水過程
 ECCS水注入による燃料集合体冷却は、入口管破断を除き、燃料体下部からの再冠水により行われる。再冠水時冷却特性試験により、注水速度、燃料被覆管温度など因子の影響が解明された。入口管破断時の破断チャンネルの燃料体冷却は上部再冠水により達成される。冷却水が出口管を流下する速度および燃料体冷却時の熱伝達特性が明らかにされた。これらの試験結果から再冠水過程の解析コードおよび燃料棒毎の温度変化解析コードが開発されている。
 なお新型転換炉において事故時に作動する安全防護機器の主蒸気隔離弁、ウォータドラム入口の逆止弁および蒸気ドラムに設置される逃がし安全弁の試作品が試験装置に組み込まれ、破断時の機能試験により、その特性が確認された。
 これら解析コードのモデルの妥当性は、異常時の場合と同様、個別試験に加え複数のモデルを組み合わせた事故時のシステム解析コードとして、模擬試験との対比により検証されている。これらの結果から事故時のLOCA現象、ECCS水の冷却効果などに対する信頼性の高い安全解析、安全評価が可能となっている。
<図/表>
図1 「ふげん」熱水力安全性試験装置
図1  「ふげん」熱水力安全性試験装置
図2 「ふげん」燃料体の限界出力に関する計測と計算の比較
図2  「ふげん」燃料体の限界出力に関する計測と計算の比較
図3 「ふげん」外部電源喪失及びRCIC(原子炉隔離時冷却系)作動試験
図3  「ふげん」外部電源喪失及びRCIC(原子炉隔離時冷却系)作動試験
図4 「ふげん」三流体サブチャンネル熱流動解析と実験との比較(下降管150mmΦ破断)
図4  「ふげん」三流体サブチャンネル熱流動解析と実験との比較(下降管150mmΦ破断)

<関連タイトル>
新型転換炉の冷却システム (03-02-02-07)
新型転換炉の工学的安全防護システム (03-02-03-02)
新型転換炉想定事故の安全評価 (03-02-03-03)
新型転換炉の研究開発 (03-02-06-04)
冷却材の伝熱流動特性に関する研究 (06-01-03-02)

<参考文献>
(1) 動燃技報: No.69 1989.3. 動力炉・核燃料開発事業団。
(2) 日本原子力学会誌: 1989.12.
(3) 動燃技報: No.73 1990.3.
(4) 平成3年度 新型転換炉成果報告会予稿集: 1991.12. 動力炉・核燃料開発事業団。
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