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新型転換炉ふげん発電所は、重水減速沸騰水冷却型の動力炉として自主開発され、1979年に本格運転を開始した。2003年3月末の運転停止までに748体のMOX燃料を使用し、熱中性子炉1基あたりのMOX燃料使用規模として世界最大の実績を有すること、亜鉛を注入し、放射能蓄積を抑制する技術などのプラント管理技術等、わが国におけるプルトニウム利用技術を先導的に牽引した。「ふげん」は、2003年3月29日に運転を終了し、その後の廃止措置計画の具体化が進んでいる。日本原子力研究開発機構が
原子炉の廃止措置計画を取りまとめ、平成18年(2006年)11月7日、
原子炉等規制法に基づき、経済産業省に対して廃止措置計画の認可申請を行った。その計画書の概要を紹介する。
1.新型転換炉原型炉施設の主要経緯(設置許可から廃止措置計画の認可申請まで)
昭和45年11月30日 設置許可
昭和45年12月11日 建設開始
昭和53年 3月20日 初臨界
昭和54年 3月20日 本格運転開始(電気出力16.5万キロワット)
平成15年 3月29日 運転終了
(累積発電電力量約219億2,400万キロワット時、平均設備利用率約62%)
平成15年 8月13日 原子炉内全燃料取り出し完了
平成16年 2月20日 「原子炉へ燃料を再度装荷できないようにする措置」の経済産業省大臣承認
平成18年11月 7日 廃止措置計画の認可申請を経済産業省へ提出、安全協定等に基づき福井県、敦賀市及び美浜町に廃止措置計画連絡書を提出
平成19年12月28日 廃止措置計画の一部補正を経済産業省へ提出、安全協定等に基づき福井県、敦賀市及び美浜町に廃止措置計画認可補正申請連絡書を提出
平成20年 2月12日 廃止措置計画および組織変更等に伴う原子炉施設保安規定の変更について認可
廃止措置計画の認可を受け、「新型転換炉ふげん発電所」を「原子炉廃止措置研究開発センター」へ移行
2.廃止措置対象施設の
解体方法
廃止措置対象施設が
使用済燃料を貯蔵していること、廃止措置工事に関する経験・実績を蓄積すること、
被ばく低減のために放射能減衰を考慮した解体時期とすること等から、廃止措置の期間を4段階に区分(
図1、
図2参照)し、この順序で実施する。
(第1段階) 使用済燃料搬出期間(平成20年認可〜平成25年度頃)
使用済燃料搬出及び重水搬出を計画的に行うとともに、使用済燃料の貯蔵に係る安全確保のための機能を維持管理し、その機能に影響を与えない範囲で、供用を終了した放射能レベルの比較的低い施設(タービン発電機)・設備及び汚染のない施設・設備の解体撤去を行う。
(第2段階) 原子炉周辺設備解体撤去期間(平成26年度〜平成30年度頃)
使用済燃料の搬出完了等に伴って供用を終了した放射能レベルの比較的低い施設・設備及び汚染のない施設・設備の解体撤去を行うとともに、原子炉領域解体撤去に用いる遠隔解体装置等の設置範囲にある干渉設備・機器等の解体撤去を行う。原子炉本体の解体に向けた準備を進める。
(第3段階) 原子炉本体解体撤去期間(平成31年度〜平成39年度頃)
放射線業務従事者の総被ばく線量が原子炉運転中の定期検査時と同等以下の被ばく線量となる放射能減衰を考慮、かつ、上記第1段階、第2段階の期間に蓄積した廃止措置工事に関するデータ、経験・実績を活かして、放射能レベルの比較的高い原子炉領域の解体撤去を行う。また、汚染したすべての設備・機器等を解体撤去し、各建屋及び構築物の汚染の除去工事完了後に、すべての
管理区域を順次解除する。
(第4段階) 建屋解体期間(平成40年度)
管理区域を解除した建屋及び汚染のない建屋も含めて廃止措置対象施設を解体し、廃止措置を完了させる。
3.放射性固体廃棄物の処理及び処理方法
廃止措置を円滑に進めていくための具体的な作業の一つに放射能インベントリ評価がある。そのために、旧日本原子力研究所のJPDR解体技術実証試験で開発されたCOSMARD(Code System for Management of Reactor Decommissioning、原子炉デコミッショニング管理に関する計算プログラム)システムの放射能インベントリ評価コード(ANISN、DOT−3.5(中性子束分布を求める輸送計算コード)および
ORIGEN (放射化量を求める燃焼計算コード))を用い、中性子束分布とコンクリート、圧力管材、カランドリア管材等の放射化量および放射性核種濃度を算出し、実測値との比較評価を実施している。また、原子炉建屋内のコンクリートの汚染量評価は、代表的な場所数カ所からサンプルを採取してベータ線、
ガンマ線の測定および分析を行った。
炉内構造物は、現行の低レベル放射性廃棄物の政令濃度上限値を超える廃棄物となることが確認された。さらに、これらの評価に基づき廃棄物量を評価すると、全体の廃棄物量は約37万トン発生するが、そのうち放射性物質として処理処分が必要な廃棄物は約0.4万トンと推定されている。
表1に
核燃料物質によって汚染された固体状物質の既貯蔵量及び今後の推定発生量を示す。廃棄物の処理、処分方法(
図3参照)を要約すると以下のとおりである。
1)放射性固体廃棄物は、関係法令等に基づき、放射能レベル区分や性状に応じて、適切な方法により処理を行い、廃止措置期間完了までに原子炉等規制法に基づき廃棄の事業の許可を受けた者の廃棄施設に廃棄する。
2)放射性廃棄物の処理に当たっては、分別、減容、除染等の廃棄物処理装置等により放射性廃棄物の発生量の合理的な低減に努めるとともに、解体撤去物及び放射性廃棄物を適切に処理・管理するために、必要な装置を導入する。
3)廃棄先は、解体撤去に伴って放射性固体廃棄物が発生し、廃棄施設へ搬出が必要となる時期までに確定することとする。
4)放射性物質として扱う必要のないものは、原子炉等規制法に定める所定の手続き及び確認を経て施設から搬出し、可能な限り再利用に供するよう努める。
5)放射性廃棄物でない廃棄物は、産業廃棄物として適切に廃棄するとともに、可能な限り再利用に供するよう努める。
4.施設周辺の一般公衆の被ばく評価
原子炉施設の長期間に及ぶ廃止措置において、施設周辺の一般公衆及び放射線業務従事者の放射線被ばくを、合理的に達成可能な限り低減することを目指すが、要点は以下のとおりである。
1)放射性気体廃棄物の放出による被ばく、
放射性液体廃棄物の放出による被ばくを合算した廃止措置期間中の平常時における一般公衆の年間
実効線量は、法令で定める線量限度1 ミリシ−ヘ゛ルトを下回ることはもとより、「発電用軽水型原子炉施設周辺の
線量目標値に関する指針」に記載する線量目標値の年間50マイクロシーヘ゛ルトを下回る。
2)放射性固体廃棄物からの直接線量及びスカイシャイン線量は、「発電用軽水型原子炉施設の
安全審査における一般公衆線量評価について」に記載する線量の基準の年間50マイクロク゛レイを十分下回る。
3)廃止措置期間中に想定される事故時の一般公衆の実効線量は、「発電用軽水型原子炉施設の
安全評価に関する審査指針」に記載された事故時評価の判断基準5ミリシーヘ゛ルトを十分下回る。
(前回更新:2003年3月)
<図/表>
<関連タイトル>
新型転換炉のプラント構成 (03-02-02-04)
原型炉「ふげん」 (03-04-02-09)
原子炉廃止措置に係る国の考えと安全規制 (05-02-01-01)
東海発電所(GCR)の廃止措置計画 (05-02-03-14)
<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2000/2001年版、(2000年10月)、p.166
(2)(財)原子力施設デコミッショニング研究協会(現(財)原子力研究バックエンド推進センター):「第11回報告と講演の会」要旨集(2000年11月)、p.41−49
(3)井口幸弘ほか:日本原子力学会:2000年秋の大会予稿集 L9、p.725
(4)井口幸弘ほか:“廃止措置エンジニアリング支援システムの構築”、核燃料サイクル開発機構、サイクル機構技報、No.10(2001年3月)、p.59−66
(5)柳澤務:“「ふげん」の廃止措置への取り組み”、(財)原子力施設デコミッショニング研究協会、デコミッショニング技報、No.21(2000年3月)、p.2−11
(6)白鳥芳武ほか:“ふげん発電所の廃止措置のための放射化量評価”、核燃料サイクル開発機構、サイクル機構技報、No.16(2002年9月)、p.63−72
(7)日本原子力研究開発機構 敦賀本部:新型転換炉ふげん発電所の廃止措置計画の認可等について(平成20年2月12日)、
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/2008/02/p080212.pdf
(8)日本原子力研究開発機構:新型転換炉原型炉施設廃止措置計画の概要(平成20年2月12日)
(9)日本原子力研究開発機構:原子炉廃止措置研究開発センターホームページ