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<概要>
 日本で最初の商業炉である東海発電所のガス炉(GCR型)は、31年余の運転の後、1998年に閉鎖された。
 東海発電所の廃止措置では、日本における実用原子力発電所廃止措置の最初の事例として、将来の軽水炉の廃止措置につながる技術を確立することが求められている。廃止措置計画は、原子炉、附属設備及び建屋を解体撤去し、更地の状態に復することを基本としている。燃料搬出が2001年6月に完了し、2001年10月4日、東海発電所の解体届が経済産業省に提出された。同年12月4日、廃止措置工事に着手し、先行解体の第1期工事が2006年3月に完了した。原子炉規制法等の改正により廃止措置の認可制が導入され、2006年3月10日付けで東海発電所廃止措置計画認可申請書が提出された。当初計画では原子炉領域安全貯蔵終了後、平成23年度(2011年度)から解体工程に着手する予定であったが、解体撤去物等搬出装置の導入の準備に時間を要していることから、解体工程を平成31年度(2019年度)に開始し、廃止措置完了を平成37年度(2025年度)とする変更届が平成25年12月に原子力規制委員会に提出された。これによると、2019年度から原子炉本体、生体遮へい体、建屋等を撤去し、廃止措置完了を平成37年度(2025年度)としている。廃止措置工事に伴い発生する廃棄物の量は約19.2万トンで、このうち放射性廃棄物は12%であり、放射性廃棄物として扱う必要のない物約4万トン、放射性でない廃棄物約12.9万トンである。
<更新年月>
2014年01月   

<本文>
1.廃止措置の全体計画
(1)計画の概要
 廃止措置の基本は原子炉、附属設備及び建屋を解体撤去し、サイトを更地の状態に復する事である。東海発電所は1966年7月に営業運転を開始し、31年8か月にわたる営業運転の後、1998年3月31日に閉鎖した。原子炉からの燃料搬出が2001年6月に完了し、2001年10月4日に解体届が経済産業省に提出され、同年12月4日に廃止措置工事に着手し、先行解体の第1期工事が2006年3月に完了した。原子炉規制法等の改正により廃止措置の認可制が導入されたことを受け、2006年3月10日付けで東海発電所廃止措置計画認可申請書が経済産業省に提出された。
 この申請時点での計画では原子炉領域安全貯蔵終了後、平成23年度(2011年度)から解体工程に着手する予定であった。しかし、解体撤去物等搬出装置の導入の準備に時間を要していることから、廃止措置計画の変更届を平成25年12月に原子力規制委員会に提出し、原子炉領域の解体工程の開始を平成31年度(2019年度)、廃止措置の完了を平成37年度(2025年度)に変更した(図1参照)。なお、原子炉領域以外の附属設備等は、安全貯蔵期間開始時点から順次撤去することとし、既に幾つかの機器の撤去が完了または進行中である。
(2)工程の概要
・2001年度〜2005年度(約5年間):安全貯蔵措置、解体準備工事、使用済燃料冷却池の洗浄・排水工事、附属設備撤去工事、放射性廃棄物処理等
・2006年度〜2019年度:原子炉領域安全貯蔵、原子炉領域以外の設備(熱交換器、燃料取替機等附属設備)の撤去等
・2019年度〜2025年度(約7年間):原子炉本体の解体、各建屋の解体等
各期間の工事の対象範囲を図2に示す。
(3)放射性廃棄物の処理処分方法
・解体で発生する放射性廃棄物は、性状に応じて減容、固化等の処理後、容器に封入し、最終的には埋設処分する。処理処分のフローの概念を図3に示す。
・埋設処分先は、原子炉本体等の解体工事に着手する前までに確定することとし、確定できない場合は、安全貯蔵期間を延長する。
・原子炉本体等の解体に着手する前に発生する放射性廃棄物は少量であり、既設の貯蔵設備で原子炉本体等の解体に着手するまで一時保管を行う。廃止措置で発生する放射性廃棄物の推定量を表1に示す。
2.2001年度〜2005年度工事実績
(1)計画詳細
・安全貯蔵措置;主ガス弁等の閉止などの系統隔離により原子炉領域の安全貯蔵措置を行い、この期間中は安全貯蔵領域の解体は行わない。安全貯蔵対象範囲を図4に示す。
・廃止措置準備工事;解体工事に必要な電源設備改造などの整備工事を実施する。
・使用済燃料冷却池の洗浄・排水工事;使用済燃料冷却池内の水中機器を洗浄し撤去した後、冷却池の壁面を洗浄しつつ排水する。
・附属設備の撤去工事;燃料取替機・タービン他附属設備の撤去などを実施する。
・放射性廃棄物の処理;本期間に発生する放射性廃棄物は僅かであり、容器に収納し、既設の貯蔵設備に保管する。
(2)工事結果
 本期間の工事は2001年12月4日に開始された。まず、原子炉本体に接続されている系統の弁等をすべて閉止、原子炉領域を隔離する安全貯蔵措置を実施した。その後、使用済燃料建屋冷却池の洗浄・排水、タービン建屋領域の機器撤去、原子炉サービス建屋領域・燃料取扱建屋領域の機器撤去、燃料取替機撤去等をほぼ計画どおり実施し、2006年3月に完了した。タービン建屋領域の機器撤去工事は、タービン建屋内を資機材置場等に活用するため、先行して作業が行われた。タービン発電機撤去の様子を図5に示す。
 使用済燃料冷却池の洗浄・排水工事は、今後設置を計画している放射性廃棄物前処理設備の設置エリア確保のため、この冷却池内の燃料スキップ等水中機器の撤去、冷却池壁面の洗浄及び冷却水の排水を実施した。工事前の状況を図6に、高圧ジェット水による洗浄等の様子を図7に、また洗浄、排水後の状況を図8に示す。
 原子炉サービス建屋領域機器撤去工事としては、原子炉サービス建屋地下、1階及び外壁領域の機器について実施した。給水ポンプ室機器撤去前後の様子を図9に示す。
 燃料取替機器撤去工事としては、燃料取替機を撤去、2006年3月完了した。切断には大型バンドソーが使われた(図10参照)。
3.廃止措置計画認可後の工事
 原子炉領域解体撤去工事前の主要工事である熱交換器の撤去は、2006年8月に開始された。熱交換器は、4基あり、1基あたり重量が約750(内部構造物含む)トン、高さ約25m、直径約6mと大きく、大規模な工事となる。撤去手順は、周辺機器を撤去し、熱交換器と原子炉をつないでいるガスダクトを撤去した後、熱交換器を撤去する。撤去には熱交換器を吊り下げ、下部から順次遠隔切断装置で切断撤去するジャッキダウン工法を採用している(図11参照)。
 遠隔切断装置は、熱交換器建屋3階上部に円筒型の熱交換器を囲むようにリンク状のモノレールを敷設し、そこに遠隔交換切断装置(一次切断)を2台設置している。熱交換器は、下部から順次9分割し、その後、搬送台車で移動し、収納容器に入るサイズまで二次切断する(図12参照)。
 撤去・細断した熱交換器は、伝熱菅をL3廃棄物(極低レベル放射性廃棄物)として処分する計画であるが、胴体、バッフル版等については、ブラスト除染装置等で除染してクリアランス確認後、再利用する計画である。
 原子炉領域解体撤去は、2019年度から開始し、炉内挿入物、原子炉本体、生体遮へい体、建屋等を撤去し、更地の状態に復し、廃止措置を2025年度に完了する計画である。原子炉本体の解体撤去は、先行して上部構造物を解体撤去し、さらに上部二次生体遮へい及び上部一次生体遮へい体を解体撤去するとともに、遠隔解体装置を設置するための遮へい機能を備えた解体装置操作床を設置する(図13)。その床に遠隔解体装置を設置し、熱遮へい材、圧力容器等を切断・撤去する工法が検討されている。
(前回更新:2006年9月)
<図/表>
表1 射性固体廃棄物等の推定発生量
表1  射性固体廃棄物等の推定発生量
図1 東海発電所の廃止措置スケジュール(2013年12月現在)
図1  東海発電所の廃止措置スケジュール(2013年12月現在)
図2 工事の対象範囲
図2  工事の対象範囲
図3 東海発電所廃止措置で発生する廃棄物の処理処分の概念フロー
図3  東海発電所廃止措置で発生する廃棄物の処理処分の概念フロー
図4 安全貯蔵対象範囲
図4  安全貯蔵対象範囲
図5 タービン発電機撤去作業
図5  タービン発電機撤去作業
図6 使用済燃料冷却池の工事前の状況
図6  使用済燃料冷却池の工事前の状況
図7 使用済燃料冷却池のスキップ移動・吊り上げ、高圧ジェット洗浄
図7  使用済燃料冷却池のスキップ移動・吊り上げ、高圧ジェット洗浄
図8 使用済燃料冷却池の機器撤去後の洗浄、排水後の状況
図8  使用済燃料冷却池の機器撤去後の洗浄、排水後の状況
図9 給水ポンプ室機器撤去前後の状況
図9  給水ポンプ室機器撤去前後の状況
図10 燃料取替機大型バンドソーによる切断
図10  燃料取替機大型バンドソーによる切断
図11 熱交換器撤去の概念図
図11  熱交換器撤去の概念図
図12 熱交換器の解体撤去に用いる一次切断装置概念図
図12  熱交換器の解体撤去に用いる一次切断装置概念図
図13 原子炉本体解体の概念図
図13  原子炉本体解体の概念図

<関連タイトル>
原子炉廃止措置に係る国の考えと安全規制 (05-02-01-01)
廃止方法 (05-02-01-03)
海外主要国における廃止措置の考え方 (05-02-01-10)
日本原子力発電(株)東海発電所の廃止措置について (05-02-03-13)
新型転換炉「ふげん」の廃止措置計画 (05-02-03-15)

<参考文献>
(1)日本原子力発電(株)ホームパージ:
(2)佐藤 忠道:東海発電所の廃止措置、原子力学会誌、40(11)、855-860(1998)
(3)日本原子力発電・東海発電所−わが国初の商業用原子炉廃止措置へ−、原子力eye、44(5)、26-27(1998)
(4)三角 昌弘、他、東海発電所蒸気発生器を対象としたクリアランス除染技術開発、デコミッショニング技報No.27、(2003年3月)
(5)山本 龍美、進む東海発電所廃止措置、商業用原子力発電所では日本初、p27-30、エネルギーレビュー、(2005年10月)。
(6)子栗 第一朗、東海発電所廃止措置は来年度いよいよ第2期工事へ、p13-15、エネルギーフォーラム(2005年11月No.611)
(7)東海発電所廃止措置認可申請書(2006年3月10日)
(8)Satuki Takenaka, Hideaki Kimura,et.al. Engineering Study on Decommissioning of Heat Exchangers in Tokai Power Station, ICONE 15-10597,(2007).
(9)苅込 敏、山内 豊明、東海発電所の廃止措置の現状と課題、デコミッショニング技報 No.47、(2013年3月).
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