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世界における炉型別の発電設備容量の構成比(2009年1月現在)はPWRが65%、BWRが22%、重水炉が6%、軽水冷却黒鉛炉が3%、ガス冷却黒鉛炉が3%である。ここでは、代表的な発電炉(一部に研究用原子炉を含む)であるBWR、RBMK、PWR、VVER、CANDU、GCR、高温ガス炉および高速増殖炉の燃料について述べる。
1.
軽水炉(軽水冷却型発電炉)の燃料
BWR(沸騰水型原子炉)とPWR(加圧水型原子炉)は、それぞれ米国の2大電機メーカGE社とWH社が1950年代に最初に開発したものである。その両メーカと電力会社との協力で逐次改良が加えられており、それに伴い燃料も改良されている。BWRとPWRはその後欧州、日本、韓国および中国等に導入され、これら諸国のメーカも改良を加えてきた。
BWRとPWRの
燃料集合体は、設計仕様が異なるが同一炉型の中で比べると、時の経過とともに新しい原子炉は電気出力が増大し、新型燃料集合体を使用している場合が多く、高燃焼度化が図られている。1980年頃から1000MWe級の原子炉が運転を開始しており、炉心当たりの燃料集合体数のみならず、燃料集合体1体中の
燃料棒数も増加している。最近では軽水炉でのプルサーマル利用として、この両型炉に
MOX燃料の利用が進められている。日本でも2006年に電力各社が導入計画を改訂するとともに、その実現に向け着実な取り組みを行い、2サイトの発電所において2009年12月と2010年3月にMOX燃料の装荷による運転を開始している。
1.1 BWR(沸騰水型原子炉)等の燃料
(a)BWRの燃料
図1にBWRの燃料体を示す。この炉型では、炉心において原子炉水は沸騰して蒸気化され、その蒸気が直接発電機タービンヘ送られる直接サイクル方式を採用している。
BWRの燃料棒は、
235U濃縮度2−4%程度の二酸化ウラン焼結ペレットをジルカロイ2合金で被覆したものである。この燃料棒が正方格子状(7×7、8×8、9×9など)に配列され燃料集合体を構成している。
米国のGNF社(旧GE社)の他に仏のAREVA NP社、日本ではグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(GNF:米GE、日立、東芝三社の国際燃料合弁会社)および原子燃料工業がBWR燃料を製作している。
(b)RBMK(黒鉛減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉)の燃料
図2にRBMK(英語名:LWGR )の燃料体を示す。この炉型では、炉心の圧力管(中に燃料集合体を収納)から出た原子炉冷却水が
蒸気ドラムで蒸気化され、その蒸気が直接発電機タービンヘ送られる直接サイクル方式を採用している。通常のBWRとは区別されるが、沸騰水型原子炉の一種であり、原子炉事故で有名になったチェルノブイル原子力発電所の炉型である。チェルノブイル4号機事故(1986年4月)の後、この炉が正の
ボイド係数をもつこと、
制御棒の炉停止裕度が少ないこと、原子炉格納容器がないことなどの設計欠陥を指摘されている(残りの1〜3号機は2000年12月までに全て閉鎖された)。国際世論の反対もあり、RBMKは今後新たに建設される計画はない。
燃料としては、1,000MWe級で濃縮度2%の二酸化ウランを用い、燃料棒被覆材がZrNb1.0であり、圧力管内に3.5m長の燃料を2体縦方向に重ねて装填することなどが特徴である。燃料はロシア連邦の Mashinostroitelny Zavod社製である。
1.2 PWR(加圧水型原子炉)等の燃料
(a)PWRの燃料
図1にPWRの燃料体を示す。この炉型では、157気圧に加圧された1次冷却水が炉心と
蒸気発生器の間を循環し、2次冷却水が蒸気発生器で蒸気となって発電機タービンに送られ、蒸気発生器に戻る。
PWRの燃料は、BWRと同様の低濃縮ウランで、二酸化ウラン焼結ペレットをジルカロイ4合金で被覆したものである。この燃料棒が正方格子状(17×17、18×18など)に配列して燃料集合体を構成している。燃料棒はBWRより若干細い。主な製作会社として、米国のWH社の他に、仏のAREVA NP社(FBFC)、英のNDA社、韓国核燃料会社、日本では三菱原子燃料および原子燃料工業がPWR燃料を製作している。
(b)VVER(ロシア型加圧水型原子炉)の燃料
図3にVVERの燃料体を示す。この炉型は欧米のPWRのロシア版であるが、燃料棒被覆材がZrNb1.0であること、燃料棒の配列が六方格子状であることなどが特徴である。この炉型の安全性の強化のため、IAEAが中心となって安全上の改善についての提案、実行に助言を続けている。
2.HWR(重水減速型原子炉)の燃料
図4にCANDU(カナダ型重水炉:重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉)の燃料体を示す。この重水減速沸騰軽水冷却圧力管型炉はカナダが開発したもので、天然ウランが使用でき、また原子炉運転中に燃料交換ができる。燃料の形態は軽水炉とほぼ同じで、二酸化ウランを用いるが、燃料棒はクラスター型配置で燃料集合体を構成する。CANDUでは圧力管(中に燃料集合体を収納)が横置きである。
3.ガス冷却型原子炉の燃料
代表的なガス冷却型原子炉には、減速材に黒鉛を
冷却材に炭酸ガスを使用しているGCR(黒鉛減速炭酸ガス冷却炉)とAGR(改良型ガス冷却炉)があり、また、減速材に黒鉛を冷却材にヘリウムガスを使用しているHTGR(高温ガス冷却炉)がある。
GCRは英国で開発され、この改良型がAGRである。GCRは、AGRとともに発電炉として今でも運転中であるが、2010年1月現在、26基のうち22基が閉鎖している。日本では唯一のGCRである東海発電所が1998年3月に閉鎖した。
図5にGCRの燃料体を示す。
図6にHTGR(高温ガス冷却炉)の燃料体を示す。この炉型では、多重コーティングした被覆粒子燃料の中に
核分裂生成物(
FP)を閉じ込めることができ、固有安全性が高いといわれている。また、発電よりはむしろ高温核熱の工業利用を目指して開発が行われてきた。軽水炉の燃料集合体に相当するものにペブル型(ドイツ型:AVR、THTR-300)とブロック型(アメリカ型:Peach Bottom,Fort St.Vrain)がある。ドイツおよびアメリカのこれらの原子炉は、1970年代から1980年代までに運転を終了している。
一方、日本では、1998年11月にブロック型(ピン・イン・ブロック型)燃料のHTTR(高温工学試験研究炉)が
臨界に達し、2004年4月に原子炉出力温度950℃の全出力運転を達成した。中国では、ペブル型燃料を採用したHTR-10が2000年12月に臨界に達し、2003年1月に定格出力に達した。
4.FBR(液体金属冷却高速増殖原子炉)
図7に高速増殖原型炉「もんじゅ」の燃料体を示す。この炉型では、ブランケット領域に装荷されている
238Uから中性子照射によって
239Puが生成される、すなわち、プルトニウムが増殖できることが特徴である。しかしながら、主な開発国であった米、英、フランス、ドイツは計画中止となり、ロシア連邦、日本およびインドが現在開発を進めている。MOX(二酸化ウラン・プルトニウム)ペレットを装填した細径燃料が六角格子状に配列され燃料集合体を構成する。なお、もんじゅは1995年のナトリウム漏れ事故の後、長期間停止していたが、事故対策措置の終了後に国と自治体の承認を得て2010年5月に再起動して臨界を達成し、順次出力上昇試験を行う予定である。
(前回更新:2002年8月)
<図/表>
<関連タイトル>
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)
高速増殖炉の燃料設計 (03-01-02-06)
新型転換炉の燃料集合体 (03-02-02-08)
高温ガス炉燃料の安全性 (03-03-03-01)
原子炉型別ウラン燃料 (04-06-01-03)
BWR用ウラン燃料 (04-06-03-01)
PWR用ウラン燃料 (04-06-03-02)
<参考文献>
(1)原子力安全研究協会(編集・発行):軽水炉発電所のあらまし(改訂版)(1994年10月)
(2)Fuel Designs (PWR, BWR, VVER, CNEA, RBMK and PNC), Nucl.Eng.Inter., 40(494), 26-36(1995)
(3)IAEA : Directory of Nuclear Power Rectors,Vol.4(1962)
(4)原子力安全研究協会(編集・発行):旧ソ連型データブック(解説書)(1994年3月)
(5)原子力安全研究協会(編集・発行):旧ソ連型データブック(資料編)(1993年3月)
(6)日本原子力産業協会(編集発行):世界の原子力発電開発の動向 2010年次報告(2010年4月)、p.106-109、
(7)日本原子力産業協会(編集・発行):原子力年鑑2010(2009年10月)、p.289
(8) (社)日本電気協会新聞部(編集・発行):原子力ハンドブック2009年版(2009年8月)、p.135, p.253