<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 高速増殖炉燃料集合体は、形状、構造がほぼ同じの炉心燃料集合体とブランケット燃料集合体の2種類があり、断面形状が六角形のラッパ管内に多数の燃料要素を収納したものである。燃料要素は、ステンレス鋼製の薄肉細管の被覆管内に燃料ペレットが填められ、上下を端栓で密封溶接され、燃料要素の周囲にワイヤスペーサが巻かれている。燃料要素は下部端栓を固定し、六角形状の束にしてラッパ管内に自立して保持されている。燃料ペレットは、炉心燃料が減損ウラン・プルトニウム酸化物ペレット、ブランケットが減損ウラン酸化物である。燃料集合体の上部には炉心への装荷、装脱時、交換機グリッパーで掴み、離しができる構造のハンドリングヘッドが、下部には燃料要素を除熱する冷却材ナトリウムの流入孔を設けたエントランスノズルが取付けられている。
<更新年月>
1996年03月   

<本文>
  図1 に「もんじゅ」の炉心配置図を、 表1 に炉心燃料集合体の設計主要目を、 図2 に炉心燃料集合体(ワイヤスペーサ型)の構成を示す。また 表2 にブランケット燃料集合の設計主要目を、 図3 にブランケット燃料集合体の構成を示す。高速増殖炉の燃料には、原子炉の炉心の中央領域に円筒状に装荷する炉心燃料集合体と、その周囲を円環状に取り囲むブランケット燃料集合体の2種類がある。さらに、炉心燃料集合体には、燃料要素(燃料ピンとも呼ぶ)の間隙を保つスペーサにワイヤを用いるものと、グリッドを用いるものの2種類がある。
 1.炉心燃料集合体
 高速増殖炉の炉心燃料集合体は、六角柱状のラッパ管と称するステンレス鋼製の鞘のなかに、細い被覆管に炉心燃料ペレットを封入した多数の炉心燃料要素(「もんじゅ」では169本)を正三角形状の配列で収納したものである。冷却材の流路となる燃料要素間の間隙は、被覆管にスパイラル状に巻かれたワイヤスペーサ(ラッピングワイヤとも呼ぶ)またはグリッドスペーサで保たれている。ラッパ管の下部にはエントランスノズル、上部にはハンドリングヘッドが溶接固定されている。ハンドリングヘッド、ラッパ管及びエントランスノズルのそれぞれに六角形の各面に設けられているスペーサパットは、炉心に装荷した燃料集合体相互の間隔を保つ役目を有している。
 ラッパ管は燃料要素冷却のための流路を確保するとともに、燃料集合体を保護する機械的強度をもたせるのにも役立っている。
  エントランスノズルは次の機能を担っている。
  (1) 炉心燃料集合体を炉心構造物下部に設けられた連結管に挿入装着し、支持固定する。
  (2) エントランスノズルに設けられいる複数個の冷却材流入孔(オリフィス孔)の数を調節して、高圧プレナムより流入する冷却材ナトリウム流量を配分し、炉心の出力分布に対応する発熱を除去できるようする。
 炉心燃料集合体に導入されたナトリウムは、燃料要素間の間隙を通過しながら炉心燃料要素を除熱し、上方に流出する。オリフィス孔は、ノズル円筒側面上六方向に分散配置され、これらが異物によって同時に塞がることのないように配慮されている。
 高速増殖炉の燃料交換は遠隔操作で行われるので、ハンドリングヘッドは燃料集合体を炉心に装荷したり装脱したり、位置を変更したりするため、燃料交換機のグリッパで燃料集合体最頂部を掴み、離し、吊り上げ、吊り下げが出来るよう特殊な形状に内側が加工されている。また最頂部の外側は六角形がつぼんだ形の陵線を形成し、山形のエッジ状傾斜面に加工されている。一方、エントランスノズルの上部には、セルフオリエンテーション機構と呼ばれる大中小の寸法の異なったキーが三方向に取り付けられている。これらのキーは、燃料集合体挿入時にハンドリングヘッド頂部の傾斜面に当り、燃料体に右周りか左周りのモーメントを与え、隣接する周り6体の燃料集合体で形成される挿入すべき六角形状の孔へ自らの六角形状集合体の角度を合わせ(セルフオリエンテーション)、挿入し易くする機能を備えている。
 炉心燃料要素は、ステンレス鋼製の薄肉細管の被覆管に炉心燃料ペレット(減損ウラン・プルトニウム混合酸化物)と、その上下に軸方向のブランケット燃料ペレット(減損ウラン酸化物)を充填し、被覆管の上部と下部を端栓で溶接密封したものである。高速増殖炉で使用されている被覆管は通常316ステンレス鋼である。炉心燃料要素の直径は原型炉クラスで5mm〜7mm程度、被覆管の肉厚は0.3mm〜0.5mm程度である。上部ブランケット燃料ペレットと上部端栓の間は、FPガス プレナムと呼ばれている長さ約200mm程度の空間がある。この空間の中にペレットを押えつけているスプリングが封入されている。
 ワイヤスペーサ型炉心燃料集合体では、燃料要素の下部端栓と上部端栓の間の被覆管に1.3mm程度のスペーサの役目のワイヤ(ラピングワイヤ)が所定のピッチで数回巻かれている。各炉心燃料要素は、下部で支持部材に固定されているだけでワイヤスペーサを介して互いに接触し、ラッパ管内で束となって自立している。
 グリッドスペーサ型炉心燃料集合体では、燃料要素は格子状のグリッドスペーサで保持されている。スペーサには、燃料要素を格子の中心位置に保持するため、各々の格子の内面に突出部(ディンプル)が設けられている。グリッドスペーサはラッパ管内に取り付けられたグリッドスペーサ支持構造により支持されている。
 高速増殖炉の炉心燃料は高温、高出力密度下で8万〜10万MWd/tという高燃焼度を達成する必要があり、この目標を達成できるか否かは被覆管の材質と特性、強度にかかっている。高速増殖炉では燃料の出力密度が大きく、熱流束が高いので被覆管を薄くする必要があるが、内圧によるクリープ応力に耐える必要があり、燃焼によって発生する核分裂生成物FP)のガス圧をプレナムで吸収する工夫もなされており、また被覆管内には熱伝達を良くするためヘリウムガスが封入されている。
 被覆管の特性として、照射特性、冷却材ナトリウムとの共存性、高温(650℃〜700℃)でのクリープ特性など十分な高温、高燃焼に耐える材質が開発され、用いられている。
 「もんじゅ」の炉心燃料集合体の全長は約4,200mm、ラッパ管外対面寸法約105mmである。炉心燃料要素の全長は約2,800mm、炉心燃料ペレット部の長さは約930mmである。
2.ブランケット燃料集合体
 ブランケット燃料集合体の形状、構造は炉心燃料集合体とほぼ同じである。したがって、主な相違点についてのみ以下に述べる。
 ブランケット燃料要素は、減損ウラン酸化物ペレットを被覆管ないに密封したものであり、その直径は炉心燃料要素よりも太径の10〜12mm程度である。したがって、ブランケット燃料集合体内に正三角形状に収納されているブランケット燃料要素の本数も炉心燃料集合体の本数より少ない(「もんじゅ」では61本)。ブランケット燃料要素間の間隙はスパイラル状に巻き付けたワイヤスペーサで保持されている。
 ブランケット燃料集合体の発熱は小さいので、冷却材は低圧プレナムよりエントランスノズル下端部に設けられている流入孔を通ってブランケット燃料集合体内に流入する。これらの流入孔が異物による流路閉塞を起こさぬように対策が講じられている。
<図/表>
表1 「もんじゅ」の炉心燃料集合体の設計主要目
表1  「もんじゅ」の炉心燃料集合体の設計主要目
表2 「もんじゅ」のブランケット燃料集合体の設計主要目
表2  「もんじゅ」のブランケット燃料集合体の設計主要目
図1 「もんじゅ」の炉心配置図
図1  「もんじゅ」の炉心配置図
図2 「もんじゅ」の炉心燃料集合体(ワイヤスペーサ型)
図2  「もんじゅ」の炉心燃料集合体(ワイヤスペーサ型)
図3 「もんじゅ」のブランケット燃料集合体
図3  「もんじゅ」のブランケット燃料集合体

<関連タイトル>
高速増殖炉の炉心設計 (03-01-02-04)
高速増殖炉の燃料設計 (03-01-02-06)
高速増殖炉の燃料交換システム (03-01-02-14)

<参考文献>
(1) 柴原 格:高速増殖炉工学基礎講座 燃料工学(その1),原子力工業, Vol.35, No.6 (1989)
(2) 基礎高速炉工学編集委員会(編):基礎高速炉工学, 日刊工業新聞社(1993年10月)
(3) 動力炉・核燃料開発事業団:高速増殖原型炉もんじゅ発電所 原子炉設置許可申請書(昭和55年12月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ