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<概要>
 海外における原子力発電所の運転期間の長期化については、各国ごとに様々な取り組みがなされている。特に米国においては、原子力発電所の運転期間が法令により定められており、その延長については運転認可更新規則により実施されている。ここでは、米国および欧州(仏、独、英)の状況(高経年化対応の技術評価)についてまとめた。
<更新年月>
2007年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.米国
 原子力発電所の運転期間は原子力法により40年と定められており、運転認可更新規則によりさらに20年までの期間の延長が認められている。運転認可更新申請(LRA)が運転認可更新規則(10 CFR Part 54)等の要求事項と適合しているかNRCが審査するための評価指針と判断基準が標準審査計画書(SRP-LR NUREG-1800)で規定されており、技術評価の概要は以下のとおりである。
(1)評価対象機器
 評価対象機器は、設計基準事象時およびその後も以下の機能を保証するために機能が維持されていなくてはならない安全関連の系統、構築物および機器である。
原子炉冷却材バウウンダリの健全性
・原子炉の安全停止機能
・損傷すると安全関連の機器の機能に直接支障を来たすすべての安全関連の系統、構築物、機器他
(2)評価内容
a.評価対象機器の抽出
 ここでは、評価対象機器のうち、静的(Passive)で、長寿命(Long-Lived)の機器のみを対象としている。これは、動的な機器は保守規則(Maintenance Rule)により、その機能遂行性を確認するように定めており、また、その機能遂行性は通常のモニタリングで容易に確認できることから、圧力バウンダリのように静的で、その機能遂行性が容易に確認できないものについて評価を行うよう求めている。
b.経年変化事象の評価
 対象となる経年劣化事象が運転延長期間中適切に管理されることを保証する。
c.期間限定経年劣化解析(TLAA)
 設計等に時間の因子を考慮したものについて、運転延長期間についても問題ないと再評価するか、運転延長期間中適切に管理できることを評価する。
(3)評価対象の経年変化事象
 主な経年変化事象として以下の項目があげられている。
・炭素鋼機器の腐食
・ステンレス鋼、高ニッケル合金のSCC(応力腐食割れ
・疲労(環境疲労含む)
・ステンレス鋼鋳鋼の熱時効
炉内構造物のIASCC(照射誘起応力腐食割れ)など
(4)経年劣化事象の管理方法
 経年劣化事象の管理については、以下の内容があげられている。
・新規管理プログラム(AMP)の策定
・期間限定経年劣化解析(TLAA)の実施
・1回検査(評価で有意と判断しなかった事象が発生していないことの確認)
(5)運転認可更新の状況
 米国における運転認可更新の申請および認可状況を表1に示す。(2007年1月末現在) 運転認可更新申請済みのプラントは55基あり、そのうち認可取得済み48基、審査中7基となっている。最終的には、運転認可更新申請プラントは、103基のうち85基程度になる見込みである(表2参照)。
2.欧州
(1)フランス
 規制によるプラント運転期間の制限はない。
 10年毎の定期安全レビュー(PSR)として、安全要件への適合性が評価され、必要に応じてプラント変更措置が摘出されている。なお、これまでの定期安全レビューにおいて、経年劣化事象に係る評価・検討は実施されていなかった。経年劣化事象に対する評価・検討は、ライフタイムプロジェクトと称して実施されており、フランス電力公社(EDF)がフラマトム社(現AREVA NP社)の支援のもと、経年劣化事象に関する研究を実施し、評価対象機器の抽出や、これらの機器に対する経年劣化管理プログラムの策定を実施するとともに経年劣化関連情報のデータベース化を図るものである。
 安全規制局(DGSNR)が、運転開始後30年を迎えるに当たって、第3回目のPSRで実施要求した具体的内容は次のとおりである。米国との比較を表3に示す。
a.第3回目の10年毎検査(VD3)時に実施すべき案件
・経年劣化が原子炉の安全性に特に影響を及ぼす可能性があるクリティカル機器のリストの見直し
・クリティカル機器の経年劣化とこれに対する対策
・補修・取替計画・方法
・運転経験および経年劣化事象の分析・評価と保全計画の見直し
・実機環境・運転条件を考慮した経年劣化事象に係る研究計画
・VD3で実施する調査、検査および改造工事等の計画
b.VD3以降の運転継続適合性証明書の作成
 運転継続適合性証明書では、VD2(20年目の原子炉停止時検査)からVD3(30年目の原子炉停止時検査)までの間の運転経験を反映したVD3の全体計画および経年劣化が原子炉の安全性に影響を及ぼす可能性があるクリティカル機器について、運転継続が可能である根拠を示すことを要求する。
c.VD3以降の保全プログラムの作成
 VD3以降の運転安全性を確保するために、機器・構築物の経年劣化又は機器等の旧式化に対する以下の対応を要求する。
・機器・構築物の経年劣化監視および補修・取替計画
・経年劣化の抑制のための運転方法および設備・機器の変更計画
・運転継続のために必要な技術力の維持
上記DGSNRの要求を受けて、事業者としてEdFは、Fessenheim-1(900MWe)が第3回目の10年毎の原子炉停止を2008年に迎えるに際して、2002年から第3回目のPSR対応検討を進めている。
・10年毎原子炉停止では約3か月間プラントを停止し、大物機器の取替・補修等が実施される。安全重要度分類Class-1機器については10年毎原子炉停止において点検・補修を行う。
・第3回目の10年毎原子炉停止(VD3)では、通常点検対象になっていないコンクリート構造物や、防震用ゴム等の点検が予定されている。それ以外の機器・設備等については、燃料交換の為に約18か月毎に1か月程度プラントを停止し、ASMESec.XIに準拠した保守規則(Maintenance Rule)に基づく、運転経験の反映、点検、補修が実施されるが、点検・補修項目について定型的に決められてはいない。
・実際に類似プラントで発生経験がある、あるいは今後発生の可能性を否定できない経年劣化事象ならびに補修または取替の困難さを考慮し、追加的な経年劣化管理が必要な機器・構造物として、原子炉圧力容器、主冷却材ポンプ、加圧器、主冷却材配管、蒸気発生器原子炉格納容器(原子炉格納容器電気貫通部、ハッチ、内張(ライナー)を含む)、計装制御機器、ケーブル、土木構造物に含まれる機器・構造物を選定し、設計基準(規制要件、規格基準、仕様、ガイドライン)、運転経験および経年劣化メカニズム、当該経年劣化メカニズムの評価方法、検査・監視、緩和・補修・取替等を記載した保全プログラムを作成し追加的な経年劣化管理を行うこととしている。
 EdFから提出されるPSR報告について、DGSNRはフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN12)や外部の技術支援を受けて評価を行い、経年劣化管理に関する総括評価報告(Justification Files)を作成し、EdFが30年以降もプラントの安全運転が可能かどうかの見解書を2008年に公表する予定である。
(2)ドイツ
 2002年の原子力法改正により、32年運転相当の総発電量に到達した時点で運転終了とされており、運転延長はない。
 定期安全レビューを実施し、プラント安全状態の評価として、最新の安全基準および慣行との比較評価が実施されている。また、確率論的安全評価(PSA)が実施されている。
(3)イギリス
 規制によるプラント運転期間の制限はない。
 定期安全レビューを実施し、最新基準との比較として、安全解析書等の再評価、プラント寿命を制限しうる経年劣化事象の抽出が行われている。
(前回更新:2005年1月)
<図/表>
表1 米国運転認可更新に係る申請済みプラント(55基)
表1  米国運転認可更新に係る申請済みプラント(55基)
表2 米国運転認可更新申請予定プラント(30基)
表2  米国運転認可更新申請予定プラント(30基)
表3 米国およびフランスの保守管理における高経年化対策の位置づけ
表3  米国およびフランスの保守管理における高経年化対策の位置づけ

<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向・北米(2005年) (01-07-05-04)
主要国の原子力発電所の耐用年数 (02-02-03-13)
原子力発電所の高経年化対策の現状 (02-02-03-18)
原子力発電所運転終了予定調査 (05-02-03-02)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)

<参考文献>
(1)西田泰信:第1回学術講演会 要旨集、日本保全学会(2004年7月)、p.209-221
(2)NRCホームページ:Reactor License Renewal,Plant Application for License Renewal,http://www.nrc.gov/reactors/operating/licensing/renewal.html
(3)原子力安全・保安院:高経年化対策検討委員会における議論の概要(平成18年11月、資料 合1-1)
(4)原子力安全基盤機構:米国及びフランスの保守管理における高経年化対策の位置づけ(平成18年10月30日、資料9-5)
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