<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の立地・建設・運転・保守
<小項目> 原子力発電所の運転・保守
<タイトル>
原子力発電所の高経年化対策の現状 (02-02-03-18)

<概要>
 日本において初期の原子力発電所の運転が開始されてから30年以上が経過した。日本の原子力発電所では安全性・信頼性の確保の観点から、品質保証体制の下に保守管理活動が行われ、様々な保全が継続的に実施されるとともに、国や独立行政法人により厳格な検査、審査が実施されている。一方、原子力発電所の運転の長期化に対しては、安全性・信頼性のより一層の向上に向けた取り組みとして、高経年化対策の活動が実施されている。さらに、美浜発電所3号機二次系配管破断事故を契機に高経年化対策の充実が図られている。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足したため、本データに記載されている原子力の安全性・信頼性確保に関する考え方や具体的な高経年化対策についても見直しや追加が行われる可能性がある。
<更新年月>
2006年12月   

<本文>
1.高経年化対策の実施状況
 原子力発電所の高経年化対策については、原子力委員会が1994年(平成6年)に策定した「原子力の研究、開発および利用に関する長期計画」また、平成6年に示された「総合エネルギー調査会原子力部会(現総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会)中間報告」等でその必要性が指摘され具体的な検討が開始された。
 1996年(平成8年)に資源エネルギー庁から「高経年化に関する基本的な考え方」として、具体的な評価手法、評価例が示され、事業者はこれに基づき具体的な検討を開始している。1999年(平成11年)には、初期に運転を開始した軽水型商業用原子力発電所である、日本原子力発電株式会社敦賀発電所1号機(営業運転開始:1970年3月、電気出力:357MW、炉型:BWR)、関西電力株式会社美浜発電所1号機(営業運転開始:1970年11月、電気出力:340MW、炉型:PWR)、東京電力株式会社福島第一原子力発電所1号機(営業運転開始:1971年3月、電気出力:460MW、炉型:BWR)について、高経年化対策に関する事業者の検討が行われ、詳細な技術評価結果が公表された。
 この活動は定期安全レビュー(PSR)に組み込み継続的に実施され、2003年(平成15年)末には、関西電力株式会社高浜発電所1・2号機、中国電力株式会社島根原子力発電所1号機、九州電力株式会社玄海原子力発電所1号機の高経年化対策に関する報告書が公表され、これらを含め5事業者により、9プラントにおいて実施されている 表1に高経年化対策の実施状況を示す。
 なお、事業者による高経年化対策に関する技術評価等は、自主的な保安活動の位置付けにより実施されてきたが、2003年(平成15年)9月に「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」が改正され、その実施の義務規定が整備されるとともに、保安規定の要求事項となった。
2.高経年化対策の概要
 原子力発電所の高経年化対策については、1996年(平成8年)の資源エネルギー庁「高経年化に対する基本的な考え方」において、安全上重要でかつ補修取替が困難な機器・構築物(加圧水型原子炉(PWR):8機器、1構築物、沸騰水型原子炉(BWR):6機器、1構築物)を評価対象とし、技術評価にあたっては、考慮すべき経年変化事象に対し、現状が適切に管理されているか、あるいは発生・進展の可能性があるか、運転期間中の健全性に対し十分な裕度を有するかなどについて評価が行われ、高経年化に対応するための保全活動が評価されている。
 事業者においては、この考え方を取替容易な機器を含めた原子力発電所の安全機能を有するすべての構築物、機器に展開し評価が実施されている。
 事業者において実施された技術評価内容(関西電力株式会社高浜発電所1号機の例)について、技術評価対象機器を表2に示す。また、図1に経年変化事象の抽出および技術評価手順について示す。
3.高経年化対策の評価結果
 事業者の評価結果(関西電力株式会社高浜発電所1号機の例)では、高経年化に関する技術評価結果から、大部分の機器については現状の保全を継続することにより長期的な健全性が確保されることが確認された。しかしながら、一部の機器については、今後の高経年化を考慮した場合、現状実施している保全に加えさらに充実すべき対応事項が抽出された。これらの新たな保全策については長期保全計画としてとりまとめられている(図2)。事業者は、この長期保全計画については、保守管理活動の一環として、発電所の具体的な保全計画に反映し、計画的に実施していくこととしている。同時に、今後更に充実すべき技術開発課題について以下の事項が抽出されている。
 関西電力株式会社高浜発電所1号機における長期保全計画の例を表3に示す。なお、高経年化に関する評価は、現在の最新知見に基づき実施されたものであり、今後10年を超えない期間ごとに新たな知見を踏まえて再評価が実施される。
 技術開発課題(高浜発電所1号機の例)
(1)原子炉容器中性子照射脆化の上部棚吸収エネルギー低下に関する評価技術の整備
(2)原子炉容器中性子照射脆化に関する関連温度上昇に対する脆化予測式の精度向上
(3)原子炉容器中性子照射脆化に関する使用済試験片再生技術の確立
(4)ステンレス鋼の照射誘起型応力腐食割れ評価技術の確立
(5)ケーブルの絶縁低下に関する実機環境を模擬した評価手法の確立
4.高経年化対策の充実
 2004年8月9日に発生した関西電力美浜発電所3号機二次系配管破損事故を契機に、今後の原子力発電所の高経年化対策の在り方について、これまで実施してきた9プラントの高経年化評価等を踏まえ、透明性・中立性の確保を図りつつ、科学的・合理的判断に基づく実効性の高い対策を実施するために、2004年12月に、原子力安全・保安部会に高経年化対策検討委員会が設置された。内外の最新の知見を採り入れ、高経年化対策の拠り所となる基準、指針等の明確化や国による合理的な検査の在り方等について検討を行い、2005年8月31日に報告書「実用発電用原子力施設における高経年化対策の充実について」を取りまとめ公表した(図3および図4)。報告書の方針に沿って、2005年12月に省令改正・標準審査要領等の整備を行い、透明性・実効性の確保を図るとともに、各種施策の実現に向けた取り組みが行われている(図5)。
 2006年10月現在、東京電力福島第一原子力発電所3号機、中部電力浜岡原子力発電所1号機、関西電力美浜発電所3号機の3プラントについて、事業者は高経年化技術評価(60年の供用を仮定)の実施および長期保全計画(10年間の追加保全策)の策定を行い、国に報告し、国はその妥当性を審査した。さらに、四国電力伊方発電所1号機の高経年化技術評価等報告書の提出を受け、その審査が開始されている。
(前回更新:2005年1月)
<図/表>
表1 高経年化対策の実施状況
表2 技術評価対象機器
表3 長期保全計画(例)
図1 経年変化事象の抽出および技術評価手順
図2 高浜発電所1号機高経年化対策検討に基づく長期保全計画(概要)
図3 高経年化対策のガイドライン等の整備体系
図4 事業者の長期保全計画に関する国の関与
図5 高経年化対策の充実

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<関連タイトル>
日本における原子力発電設備の維持基準 (02-02-03-15)
海外の原子力発電所の設備利用率の推移(2004年まで) (02-06-02-01)
原子力発電施設の高経年化対策と関連研究 (06-01-01-12)
軽水炉圧力容器鋼の脆化機構と研究動向 (06-01-01-30)

<参考文献>
(1)原子力委員会:原子力の研究、開発および利用に関する長期計画(1994年6月)
(2)総合エネルギー調査会:原子力部会中間報告(1994年6月)
(3)資源エネルギー庁:高経年化に関する基本的な考え方(1996年4月)
(4)原子力安全委員会:発電用軽水型原子炉施設の高経年化対策について(1998年10月)
(5)資源エネルギー庁:電気事業者の原子力発電所高経年化対策の評価および今後の高経年化に関する具体的取組について(1999年2月)
(6)原子力安全・保安院:原子力発電所の高経年化対策の評価について(2004年3月)
(7)関西電力株式会社:高浜発電所1号機高経年化対策に関する報告書(2003年12月)
(8)関西電力株式会社:高浜発電所2号機高経年化対策に関する報告書(2003年12月)
(9)関西電力株式会社:美浜発電所2号機定期安全レビュー(第2回)報告書(2001年2月)
(10)社団法人火力原子力発電技術協会:発電設備の予防保全と余寿命診断、IV.原子力発電所の高経年化対策(2001年年6月)
(11)原子力保安院ホームページ:審議会、高経年化対策検討委員会、実用発電用原子炉施設における高経年化対策の充実について−報告書−(平成17年8月31日)
(12)原子力保安院ホームページ:高経年化対策
(13)西田泰信:第1回学術講演会、要旨集、日本保全学会(2004年7月)、p.211
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