<本文>
1.はじめに
原子力発電に係る研究開発は第2次世界大戦終了後、欧米各国を中心に活発に実施された。まず、試験
研究用原子炉、動力試験炉、次いで発電用原子炉の建設という順で開発が進められた。2011年1月現在、世界各国で436基の発電用原子炉が運転されている(
表1)。一方、原子力開発の初期に作られた発電用原子炉の中には、既にその運転終了の時機に近づいているものもある。原子炉の寿命は、その運転履歴や設備の内容、炉型等によって異なるが、一般的に、これまで30〜40年が目安と考えられてきた。
試験研究用原子炉は、すでにその役割を終了して廃止されているものも多く、我が国においては、旧日本原子力研究所のJRR-1が1968年に運転を停止し、その後は我が国の原子炉開発のモニュメントとして日本原子力研究開発機構の原子力科学研究所内に保存されている。JRR-3は、1983年に運転を終了し、1985年から1986年にかけて冷却系機器等及び炉体の撤去がなされ、もとの原子炉建家内に新しい研究炉であるJRR-3Mが建設され現在稼動中である。旧炉心は、実験利用棟の地下保管室に特殊大型廃棄物として保管されている。旧日本原子力研究所のJPDR(動力試験炉)は1996年3月31日に解体撤去が完了した。また、JRR-2は、1996年12月運転を停止し、炉心の密閉処置、冷却系等の撤去工事を2003年12月までにほぼ終了した。そのほか原子力船むつ原子炉、重水臨界実験装置(DCA)、(株)日立製作所日立教育訓練用原子炉(HYR)、(株)東芝教育訓練用原子炉(TTR-1)、立教大研究用原子炉(BUR)、東京都市大(旧武蔵工大)炉(MITRR)及び東大原子炉やよい施設などが廃止措置中あるいは計画中である。
2.発電用原子炉の廃止計画
世界の発電用原子炉の廃止状況については、2003年12月時点では、出力30MWe以上の原子力発電所約90基の運転が停止され、小型のパイロットプラントを含めるとその数は105基を超える。このうち、数基がすでに解体撤去され、続いて20基以上が現在準備あるいは解体中である。その内訳は、米国28基、英国18基、ドイツ17基、フランス11基、ロシア10基、カナダ4基、イタリア4基、日本4基である。
日本原子力産業協会の調査によると、2011年1月現在、国別の稼動中の発電用原子炉の発電出力は、
図1に示すとおりである。世界の原子力発電設備容量及び運転開始基数/年分布を
図2に示す。また、稼働中の原子力発電所の運転年数分布を
図3に示す。これらの原子炉の運転終了時期を運転開始後40年の仮定と比較すると、2011年6月末で運転年数が40年を超える原子炉は20基であり、35年以上は76基となっている。
3.主要諸国の計画
3.1 米国
米国の原子力発電設備容量は、原子力発電プラントの運転認可が更新されなければ今後徐々に減少し2035年にはゼロとなる。しかし、上述のように運転認可更新の申請により、75%のプラントが更新されるとすれば原子炉寿命が2053年まで延びることになる(
図4参照)が、このまま続けば、将来、信頼できるベースロード電力を供給することができなくなる。
このような状況を打開するために、米国エネルギー省(
DOE)及び電力研究所(
EPRI)は、1998年3月20日に原子力プラント最適化(NEPO)プログラムと称する合同戦略プランを策定し、2000年度から推進している。このプログラムの狙いは、原子力発電プラントの安全性を維持しつつ、信頼性、稼働率及び経済効率を向上させる新しい技術を開発し適用することによって、米国で現在運転中の商業原子力発電プラントが、運転認可期間の40年に加え、20年の寿命延長期間を通して十分な電力を経済的に供給し続けることができるようにすることである。その後の原子炉規制法の改正により、20年間の運転延長(最長60年まで)がNRCの審査により認められるようになった。運転認可更新の申請及び承認状況を
表2に示すが、2004年1月までに23基、(合計出力2,158万9,000kW)で運転認可が更新された。なお、2004年以降、2011年10月時点では、運転中の原子炉104基中、延長承認済みが71基、審査中が14基となっている。廃止措置については、これまでに閉鎖された原子力発電所は29基であり、このうち12基は解体が完了し、現在、7基が解体中、7基が安全貯蔵中であり、3基について遮蔽隔離/埋設の措置が施されている。(ATOMICAデータ (13-01-02-08)参照)。
3.2 英国
現在、マグノックス型原子炉4基、改良型原子炉18基及びPWR1基が稼働中で、閉鎖された原子炉はマグノックス型原子炉22基、その他が22基である。
原子力施設の廃止措置の監督機関として、2005年4月に、原子力施設の廃止措置機関(
NDA)が設立された。 ウィンズケール原子力発電所(WAGR:3.6万kWe、AGR)の解体プロジェクトが1982年に開始され、炉心の黒鉛ブロック、原子炉容器、生体遮へい等を撤去し2011年に完了した。
3.3 フランス
現在、PWR型58基が稼働中であり、フランスの全発電量の約80%を占めている。運転を停止した発電炉はガス炉8基、軽水炉1基を含め合計11基であり、電力公社(
EDF)により廃止措置計画が進められており、第一世代原子炉8基について2002年に解体が開始され2026年までに完了する予定である。
3.4 ドイツ
閉鎖された原子炉はBWR型9基、PWR型7基、旧ソ連型PWR型(VVER)6基を含め合計27基である。現在、1990年に運転を停止したグラストバルト発電所の旧ソ連のVVER-440型の5基の原子炉の解体作業を実施中であり、2012年にサイトを解放する予定になっている。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故の影響をうけ、定期検査中の8基の原子炉が閉鎖されることになり、現在稼働中の原子炉は9基となった。
4.我が国の状況
我が国では、2011年1月現在、54基の発電用原子炉が稼働している。
現在廃止措置の過程にある発電用原子炉は、日本原子力発電(株)東海発電所(GCR)、日本原子力研究開発機構新型転換炉ふげん発電所及び中部電力(株)浜岡原子力発電所1、2号機である。日本原子力発電(株)東海発電所(GCR)は2006年3月に廃止措置計画の認可申請が行われ、同年6月に経済産業大臣の認可を受けた。現在廃止措置を実施中であり、2017年に終了する予定となっている。日本原子力研究開発機構新型転換炉ふげん発電所は、2003年3月に営業運転を終了し、2008年2月に経済産業大臣から原子炉規制法に基づく廃止措置計画の認可を受けて廃止措置段階に入っている。中部電力(株)浜岡原子力発電所1、2号機は、廃止措置の全体期間にわたる基本方針と第1段階「解体工事準備期間中」に実施する項目を取りまとめた廃止措置計画について、2009年11月に経済産業大臣から原子炉規制法に基づく廃止措置計画の認可を受けた。2036年に廃止措置が終了する予定である。
(前回更新:2006年3月)
<図/表>
<関連タイトル>
海外主要国における廃止措置の考え方 (05-02-01-10)
海外主要国における発電炉の廃止措置の実績 (05-02-03-01)
米国原子力規制委員会(NRC) (13-01-02-06)
米国エネルギー省(DOE) (13-01-02-08)
<参考文献>
(1)IAEA:
(2)(株)アイ・イー・エー・ジャパン:「米国原子力情報サービス」No.242(2000年11月)、p.25-35
(3)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2011年次報告(2011年1月)、p.6、p.24、p.42
(4)米国原子力規制委員会(NRC):
http://www.nrc.gov/
(5)(社)日本原子力産業会議:米国の原子力発電所の運転許可更新状況(2004年1月)、
http://www.jaif.or.jp/ja/data/monthly/ninka.pdf
(6)(財)原子力研究バックエンド推進センター:第23回報告と講演の会、RANDEN2011003、(平成23年11月28日)、p.21
(7)(社)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2011年版、p.194-196