<大項目> 原子力発電
<中項目> 軽水炉(BWR型)原子力発電所
<小項目> 炉心設計・遮へい設計
<タイトル>
BWRの炉心設計 (02-03-02-01)

<概要>
 BWR沸騰水型原子炉)の炉心設計は、核設計(停止余裕、自己制御性の確保)、熱水力設計(最小限界出力比最大線出力密度の遵守)等から構成されている。取替炉心の設計においては、停止余裕、運転制限値を満足して所要期間運転できるように新燃料体数、燃料装荷位置、制御棒パターンの決定が行われるが、運転中の制御棒操作回数を低減するためのコントロール・セル・コア(制御棒を挿入する単位格子を少数にした炉心設計)、燃料ペレット−被覆管相互作用(PCI)による燃料棒破損の可能性を低減するための運転管理方法等を考慮する。MOX燃料の装荷が計画される場合についても1/3炉心程度であれば、MOX燃料及びその装荷炉心は従来のウラン燃料炉心と同様の炉心設計を実施することが可能である。
<更新年月>
2009年11月   

<本文>
1.BWRの炉心構成(炉心構造)の特徴
 BWRの炉心は、原子炉圧力容器(RPV)内の炉心シュラウドと呼ばれる円筒状の構造物に囲まれた領域にあり、燃料集合体を縦に真円形に近い状態に装荷したものである(図1参照)。RPV内の原子炉冷却材(軽水)は、炉心シュラウド外側の領域を下向きに流れ、ジェットポンプにより(改良型BWRABWR)ではジェットポンプに代わるインターナルポンプにより)炉心シュラウド内側に供給され、上向きの流れとなって炉心内を通過する。原子炉冷却材は炉心内を通過する際、燃料集合体から熱を受けて一部蒸発し、気液二相流となって炉心から出て行く。この気液二相流は気水分離器によって水と蒸気に分けられ、蒸気乾燥器を経由して蒸気は出口ノズルから主蒸気配管を経て発電機タービンに送られる。一方、水は炉心シュラウド外側に流れ落ち、給水と一緒になって下降する。
 炉心は4体の燃料集合体とその間に入る断面が十字型の制御棒を基本的な構成単位としており、セル(単位格子)と呼んでいる(図2図3参照)。BWRのタイプにより炉心の大きさ、すなわち、燃料集合体数及び制御棒本数は異なるが、炉のタイプが変ってもこれらの機械的形状を変えないのを特徴の一つとしている。初期のBWR-2から最新のABWRまでの主要な炉心パラメータを表1に示す。BWR-2やBWR-3といった初期のBWRに比べ、BWR-4以降では炉心有効高さを高くするとともに出力密度を若干増加させている。なお、BWRの炉心構成の変遷については、原子力発電技術の開発経緯(BWR)<02-03-01-01>を参照されたい。
2.炉心設計の概要
2.1 核設計
 主な核特性データ(例)を表2に、ドップラ反応度係数を図4に、ボイド反応度係数を 図5に示す。核設計を行う際に考慮している主な事項は以下のとおりである。
1)必要とされる運転期間(従来の電気事業法及び電気事業法施工規則によれば最大13か月、平成21年1月の新検査制度導入に伴い運転期間18か月を検討中)、定格電気出力で運転できること。
2)停止余裕が確保されること。
3)原子炉は自己制御性を有すること。
2.2 熱水力設計
 主な熱水力特性データ(例)を表3に示す。熱水力設計においては、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化(タービン発電機の非常停止、再循環ポンプ1台の停止等)時においても、安全保護系、原子炉冷却系等とあいまって燃料の許容設計限界を超えないように設計している。熱水力設計において考慮している燃料の許容設計限界は以下のとおりである。
1)冷却不十分のために生じる過熱による被覆管の損傷の防止
 通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時においても、燃料棒が沸騰遷移を起こさないように、通常運転時の制限値として最小限界出力比(MCPR)(*1)を定めている。
2)被覆管と燃料ペレットの相対的膨張によって生じる歪による被覆管の損傷の防止
 通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において、被覆管の円周方向の平均塑性歪が1%を超えないように、通常運転時の制限値として最大線出力密度を定めている。
2.3 安定性
 炉心及びそれに関連する系統は、プラント運転中に予期されるあらゆる運転状態に対し燃料の許容設計限界を超える状態に至らないよう十分な減衰特性を有し、出力振動が生じた場合でも制御し得る設計としている。
3.取替炉心設計及び通常運転時の炉心管理
3.1 取替炉心設計
 定期検査において、炉心燃料の約1/4程度を新燃料に取替え、次サイクルまでの必要期間、運転ができるよう取替炉心設計を行っている。取替炉心設計においては、運転サイクルを通じて停止余裕を確保し、MCPR、最大線出力密度の運転制限値を満足するように、燃料配置、制御棒挿入位置を決定している。また、局所(燃料棒毎の出力)、半径方向、軸方向に過大なピーキングが出ることのないように、燃料集合体内の燃料棒毎の濃縮度分布、燃料棒内の軸方向の濃縮度分布についても最適設計を行っている(図6参照)。
 BWRでは運転中の反応度変化を補償するため、制御棒操作を行うが、制御棒の挿入・引抜により制御棒近傍の燃料棒出力が局所的に増加し、ペレット−被覆管相互作用(PCI:Pellet Clad Interaction)により被覆管が損傷する可能性がある。これを低減するため、コントロール・セル・コアという炉心設計を行っている(図7参照)。すなわち、運転中に操作する制御棒を少数に限定し、その制御棒が挿入されている単位格子セル(コントロール・セル)には燃焼の進んだ燃料を装荷する。これにより制御棒の操作により局所的に出力が増加してもその燃料は燃焼が進んでいるため出力の絶対値は小さく、PCIによる被覆管の損傷の可能性を小さくすることができる。また、前述の軸方向に濃縮度分布をもつ燃料設計を併せて採用することにより、コントロール・セルの数を少なくし、運転中の制御棒操作の頻度を低減することができ、これにより運転中の負荷率が向上する。
3.2 通常運転時の炉心管理
 サイクル初期は新燃料体数が多いため、余剰反応度が大きい。このため制御棒を炉内に多く挿入する必要があるが、適切な停止余裕を確保するためには余剰反応度をある程度以下に抑える必要がある。このため、燃料ペレットに可燃性毒物ガドリニウム(Gd)をガドリニア(Gd2O3)の形で添加し、サイクルを通しての反応度変化は 図8のようになる。すなわち、サイクル初期の余剰反応度はGdにより抑えられ、燃焼度の進行とともにGdが減少するにしたがって反応度は増加する。やがて、Gd減少による反応度増加よりもウラン−235の燃焼による反応度減少が勝り、反応度は減少に転じ、サイクル末期で余剰反応度は殆んどゼロに近くなる。燃焼に伴う反応度変化をすべて制御棒操作により補償することは煩雑であり、制御棒操作のための出力低下を伴う場合もあることから、BWRでは制御棒位置調整に加え、炉心流量調整を併用している。炉心流量調整による反応度調整は負のボイド反応度係数を利用したものであり、ゆるやかできめ細かい反応度調整を行うことができ、また、局所的な出力分布の変化を小さくすることができる。炉心流量調整範囲の上限・下限に達した場合に制御棒の位置調整を行う(図9参照)。
 また、燃料のGdの濃度、本数を適切に設計し、炉内の燃料配置を適切に行うことにより、サイクルを通しての余剰反応度変化を平坦にすることができ、制御棒位置調整の頻度を減らすことができる。
 原子炉起動時や運転中の制御棒操作及び炉心流量増加による出力上昇時のPCIによる燃料被覆管損傷を防止するため、PCIOMR(Pre-Conditioning Interim Operating Management Recommendations)という炉心管理方法を用いている。「ならし運転方法」とも呼ばれるものであり、ある線出力密度(しきい値)以下ならば燃料棒の出力上昇速度に制約はないが、しきい値を超えた場合は出力上昇速度に上限を設けるというものである。この管理方法により燃料棒損傷の可能性は低減できるが、起動時間が長くなるとか、運転中の制御棒パターンを調整する際には原子炉全体の出力を低下させることが必要であるという短所があり、設備利用率の低下をもたらす。これを低減するため、対PCI性能の向上を目指し従来のジルカロイ−2被覆管の内面に純ジルコニウムを約0.1mm内張りしたジルコニウムライナ被覆管が実用化され、PCIOMRの緩和が段階的に進められている。
4.MOX燃料の採用
 MOX燃料の特性にもとづいて、プルトニウム富化度及びその分布を適切に設計するとともに、高燃焼度8×8燃料で用いられている太径ウォータ・ロッドによる水対燃料体積比の改善効果により、MOX燃料の装荷率が1/3程度であれば、ウラン燃料炉心と同等の特性を持つように炉心設計が可能である。また、改良型BWR(ABWR)ではBWRより燃料集合体の間隔を広げ、非沸騰領域の面積を増加させ、ボイド係数の絶対値の低減や炉停止余裕の向上を図っているので、炉心の全燃料集合体をMOX燃料とすることも可能である(図10)。青森県大間原子力発電所では1/3MOX炉心から始め段階的に増やしていきフルMOX炉心にする計画である。
用語解説
(*1)最小限界出力比(Minimum Critical Power Ratio):まず限界出力とは、沸騰遷移すなわち核沸騰を超えた状態となる燃料集合体熱出力をいい、限界出力比は次の式で定義される。(限界出力比=限界出力/燃料集合体発生熱出力)ここで、炉心内各燃料集合体の中で限界出力比の最小のものを最小限界出力比(MCPR)と呼ぶ。通常運転時のMCPRは1.2〜1.3である。
(前回更新:2000年2月)
<図/表>
表1 BWR炉心の主要パラメータ
表2 BWRの主な核特性データ(例)
表3 BWRの主な熱水力特性データ(例)
図1 BWR原子炉圧力容器内部の構造
図2 炉心の構造図
図3 BWRの単位格子の例
図4 ドップラ反応度係数(第一サイクル)
図5 ボイド反応度係数
図6 燃料集合体の濃縮度分布とガドリニア分布の例
図7 少数コントロールセル炉心の例
図8 可燃性毒物を用いた余剰反応度の制御
図9 サイクル中の余剰反応度変化の例
図10 ABWRのMOX炉心性能評価

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<関連タイトル>
沸騰水型原子炉(BWR) (02-01-01-01)
原子力発電技術の開発経緯(BWR) (02-03-01-01)
BWR原子炉容器 (02-03-03-01)
原子力発電プラント(BWR)の制御 (02-03-06-01)
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)

<参考文献>
(1)通産省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧 '99年版、電力新報社、(1999年10月)
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(第4版) 、平成15年7月
(3) 原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂第3版)、平成20年9月
(4)東京電力:柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書、平成4年10月現在
(5)木下 豊ほか:ABWRにおけるフルMOX炉心の設計、火力原子力発電、509(50)、62-201(1999.2)
(6)濱 輝雄:大間フルMOX−ABWRの炉心設計、原子力eye、45(9)、64-67(1999)
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