<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の立地・建設・運転・保守
<小項目> 原子力発電所の運転・保守
<タイトル>
原子力発電所の保守体制と作業管理 (02-02-03-09)

<概要>
 原子力発電所の設備は複雑で多岐にわたっており、設備の保守は安全かつ安定運転のために重要である。その体制強化はますます重要になってきていることから、原子炉等規制法電気事業法などの改定が行われ、平成15年9月から新制度による管理が実施されている。主要な改定は、定期事業者検査、健全性評価制度および施設の維持基準、高経年化対策定期安全管理審査、品質保証制度などに関することである。
 電力会社は、これら法令などを遵守し、日常的な点検・検査を踏まえて、信頼性向上、予防保全などの観点から、設備および部品の取替えなどの保守管理を行うとともに、保全作業に従事する者への保全の考え方、作業手順等の教育・訓練を実施し、作業管理体制の統一化を図っている。
<更新年月>
2006年08月   

<本文>
1.保守管理
 原子力発電所は計画から建設、運転、廃止措置の各段階にわたって、「核原料物質核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(以下、「原子炉等規制法」)および「電気事業法」による規制を受けて管理される。運転段階の安全確保では、日常的には機器の運転状況の点検、定期検査では機器の分解点検など、綿密かつ膨大な検査が行われる。これら点検・検査の結果を踏まえて、信頼性向上、予防保全などの観点から、必要に応じて設備および部品の取替えなど、適切な保守管理が重要である。これら点検・検査の制度に関し、過去のトラブル経験などを教訓に、原子炉等規制法および電気事業法、並びに関連法令が改定され、平成15年10月より新たな安全規制による管理が実施されている。
(1)定期検査
 発電所の運転を停止して、原子炉本体およびその附属設備は約1年ごとに、タービン設備などは約2年ごとに実施される。検査の直接的な責任は電気事業者(電力会社)にあるが、重要な設備の検査に関しては国の立会検査が行われる。図1に定期検査の目的を示す。
 検査には、ポンプ、弁などの分解検査、圧力バウンダリなどの供用期間中検査格納容器主蒸気隔離弁などの漏洩率検査、計装機器の特性試験などがある。検査項目、検査内容などの詳細は定期検査ごとに若干の差異があるが、この期間における作業者数は、1日当たり1,000人以上(最大2,000人)におよび、全期間を通じて延べ人数で約100,000人にも達する。この期間に特別な改造工事などを行う場合は、数か月を要するものがあるが、標準的には2〜3か月程度である。また、この期間に併せて燃料の交換なども行われる。これら検査により発電所の健全性を確認した後に運転が再開される。
(2)定期事業者検査
 平成15年10月から導入された新制度である。つまり、従来は原子力発電所の点検として、電気事業法第54条に基づく約1年ごとの「定期検査」と電気事業者が自主的に行う「自主点検」があった。しかし自主点検の範囲が法令上で明確さに欠けるとのことから、電気事業法第55条で「定期事業者検査」を規定し、電力会社が定期的に実施する検査の範囲、記録保存・報告の義務などを法令上で明確にしている。図2に制度の概要を示す。また、検査の実施体制や検査方法などは、独立行政法人「原子力安全基盤機構」の「定期安全管理審査」を受けることになった。
 この審査基準および保守管理活動の基準としては、(社)日本電気協会電気技術規程「原子力発電所における安全のための品質保証規程」(JEAC4201−2003)および「原子力発電所の保守管理規程」(JEAC4209−2003)が適用される。
(3)健全性評価制度
 定期事業者検査などでシュラウドや原子炉冷却材などの高圧のかかる設備や機器に、「き裂」などの欠陥が発見された場合には、発生原因を推定し、その欠陥がその設備を使い続ける期間中にどの程度進展するかを技術的に予測し、安全性確保という観点からみて評価する制度である。図3は評価方法の概念を示す。従来はその欠陥が安全性へ影響を及ぼす程度のものかどうかにかかわらず、新品のときの「設計・製造基準」に基づいて修理や交換が行われてきたが、「健全性評価制度」では、設備および機器の「維持基準」を満たしていることが確認できれば、その後は監視の強化や適切な経過観察を行うなどして、その設備を継続して使用できる。そして安全上の基準を満たさない場合に、補修または設備の取り替えを行うこととしている。「維持基準」には日本機械学会「維持規格2000年版(2002年)」が適用される。電力会社はこれら記録の保存、評価とその結果を国に報告することが義務付けられている。
(4)高経年化対策
 電力会社は定期検査に加え、10年を超えない期間ごとに、保安活動の実施状況、最新の技術的知見の反映状況を評価する「定期安全レビュー」を実施している。更に高経年化対策として今後長期間の運転を想定し、運転開始後30年が経過する前に、安全上重要な機器・構造物についての技術評価を実施し、それに基づいた長期保全計画を策定することが義務づけられている。この対策の充実のため、平成17年12月に省令改正・標準審査要領等が整備され、実現に向けた取り組みが行われている。図4に高経年化対策の概要を示す。この考え方に基づいて、電力会社は発電所の長期保全計画を作成し、今後の経年評価技術、検査技術の向上、補修・取り替え技術の開発・向上など、計画を進めている。
2.保守体制
 発電所の安全かつ安定な運転を確保するには、支援する組織力が必要である。施設の保守管理は多種多用の内容を含むので、その体制は非常に広範になる。
(1)保守産業の構造
 保守に係わる工事に関しては、電力会社は基本設計を行い外部業者へ発注する。また、検査・点検などにおいても、専門業者の協力を得ることになる。これら外部業者との関係を図5に示す。つまり、プラント(発電所)製造メーカ系列および電力会社関連系列の構造からなる。協力会社はそれぞれの特質に基づき分業して保守作業に当っている。電力会社は請負工事として各元請会社や協力会社に発注し、一次下請け、二次下請けのような多層化した構造となっている。
 最近、これら原子力発電所の保守産業では、発電所の基数が増加し、保守技術が定着化しつつあり、発電所立地地域の経済振興のために地元雇用の拡大をはかる傾向にある。また、原子力発電所自体もその協力会社の選定については地元企業の採用を計り、地元との共生に努めている。このように保守産業には多種多様の構造を含むので、これら関連において、電力会社と各請負会社ならびに作業員との意思統一、信頼関係などが重要な要素である。
(2)発電所の体制
 原子力発電所の保守体制は、一般的には「機械保修」と「電気保修」の二つの部署からなる。この組織の例を図6に示す。通常、責任者である保修(あるいは、保守)課長、保修課長を補佐する副長(係長、主任)、主要設備を担当する班長(副班長)、担当の職制で運営されている。また、保全計画(定検工程管理)だけを担当する要員が保修課内に所属している場合もある。
 保守員の教育・訓練は、実務訓練実施要領書等を作成し、社内教育、日常業務、定期検査時に実施する実務教育(OJT)などによって行っている。実務経験の浅いうちはルーチン的な軽微作業および付帯設備の保守を担当し、保守技術、作業管理、品質管理などを習得する。次に定期検査を2〜3回経験すると担当する設備が代わり、順次いろいろな設備を担当していくことで幅広い知識を習得する。さらに中堅層になると主要な設備を4〜5年にわたり、責任をもって担当し、専門家としての養成が行われている。
 また、1981年以降、電力会社では原子力発電所の立地場所近くに保守員の教育・訓練を目的とした「保修訓練センター」を設置し、保守業務に必要な専門知識と技能を習得させている。「保修訓練センター」では、実機を模擬した訓練用機器による実技訓練が行えるため、放射線下での作業や技術的に高度な作業、クリティカル作業等の事前研修に役立っている。
(3)協力会社の体制
 協力会社の保守体制は、会社の事業規模によってかなりの差異があるが、一般的には図7に示すような組織である。作業責任者(班長等)、作業主任、作業員の編成によるグループ作業によって職務を遂行することが多く、単独作業は原則的に禁止されている。このような作業体制は、設備が複雑なこと、放射線下作業が多いこと、作業空間が狭いことなど、原子力発電所の特徴を反映したものであり、作業安全の確保と作業ミスの防止に重点を置いたライン管理を構成している。
(4)安全管理体制
 国の規制と監督のもとに、電力会社では自主保安管理体制を確立して、安全確保に万全を期している。とくに、定期検査時の作業安全管理の実施にあたっては、直接には工事を委託した主管課(保修課)が担当するが、発電所内全体の総括として工事業者ごとに安全管理者が選任されている。この安全管理者は、安全対策の徹底のための諸施策の一層の定着化を図るために工事主管課と請負工事業者間の連絡を密にし、作業者への周知徹底を図るとともに作業現場における指導監督の強化を主な役目としている。
 安全管理に関する連絡組織としては、図8に示すような安全推進協議会が組織されている。この協議会を定期検査期間中に定期的に開催し、発電所の保修部門、工事業者の担当部門との意思疎通を図っている。
3.保守作業管理
 保守作業に関わる管理の主な項目は以下の通りである。
(1)作業着手前の放射線管理計画
 放射線管理の徹底および被ばく低減をより一層図るために作業計画段階において工事業者と事前(例えば前回定検時の被ばく実績)検討を行い、放射線管理計画書を作成して作業環境の保全を行う。
(2)工事業者に対する指導
 放射線管理上の遵守事項および具体的な放射線管理方法等を提示し、工事業者側に周知徹底するように発電所の保修担当者が指導する。
(3)工事実施中における指導
 工事実施段階においては、放射線防護指導書の活用や、現場パトロールにより、工事業者に対して助言、指導を行う。
(4)被ばく低減措置
 工事作業者の被ばく低減を行うために工程調整、作業場所の除染、鉛遮へいなどを行う。また、作業場所の環境保全のために局所排風機、保護具の着用などにより内部被ばくの防止に努める。
(5)現場パトロール
 工事業者を含めた安全管理組織による定期的な安全パトロールを実施し、現場における安全管理に関する現場指導を行う。
<図/表>
図1 定期検査の目的
図2 定期検査の制度
図3 設備の健全性評価の方法
図4 原子力発電所の高経年化対策
図5 原子力保守産業の構造
図6 原子力発電所における保守体制の例
図7 協力会社における保守体制の例
図8 安全推進会議の例

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<参考文献>
(1)(財)電力中央研究所 原子力情報センター:日本の原子力発電所 1993(1993年)
(2)山内章義:電力設備のスペシャリストの技術研修、電気現場技術(1993年4月)
(3)原子力安全・保安院:原子力発電所の安全規制
(4)電気事業連合会:「原子力・エネルギー」図面集 2005−2006
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