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1.1999年度電力供給計画
本電力供給計画の概要は、各事業者から届け出られた電力供給計画を取りまとめたものである。
電力は言うまでもなく、経済社会活動および国民生活にとって不可欠なエネルギーであり、今後とも経済・産業社会の発展および国民生活の高度化が進展する中で、その安定かつ低廉な供給が求められている。このため、必要な電源および送変電等の流通設備の計画的な開発、
電源構成の
ベストミックスの構築、電力供給の効率化に努めるとともに、需要側においても省電力対策および
負荷平準化対策を着実に推進していくことが必要である。(1)電力需要想定(一般電気事業用)
・需要電力量
今後の一般電気事業用の需要電力量については、内需を中心とした安定的な経済成長、経済社会の高度化、アメニティ志向の高まり、高齢化の進展等に加え、電気の持つ利便性・制御性等からの
電力化率の高まりを反映して、省エネルギー対策の着実な進展による減少要因を踏まえても、確実に増加していくものと予想されており、1997年度の7,914億kWhから、2003年度には8,835億kWh、2008年度には9,774億kWhとなり、1997年度から2008年度の年平均増加率は、経済成長率を若干下回る1.9%(気温補正後1.9%)となる見込みである。
・最大需要電力
今後の最大需要電力については、蓄熱調整、需給調整契約拡充等の負荷平準化対策の推進により、
年負荷率が1997年度実績から改善されることから、一般電気事業用の最大需要電力は、2003年度には1億8,711万kW、2008年度には2億524万kWとなり、1997年度から2008年度の年平均増加率は2.1%(気温補正後1.8%)となる見込みである。
・年
負荷率
年負荷率については、負荷平準化対策を講じない場合、負荷率の低い業務用電力需要の割合が増加する一方、負荷率の高い大口電力需要の割合が減少する等の需要構造の変化により長期的に低下していくことが予想される。これに対し、本供給計画においては、負荷平準化対策として、夏季ピーク時における需要を他の時期・時間帯にシフトすること等を目的とする需給調整(業務用電力を中心とする蓄熱調整契約、産業用の計画調整契約、蓄熱式自動販売機等)の拡大や深夜電気温水器、冷暖房兼用エアコン等の普及拡大によるボトムアップ対策等が織り込まれている。
この結果、年負荷率(*1)は、2008年度には57.7%となり、1997年度の56.9%(気温補正後の数値)から0.8ポイントの改善が見込まれている。
(2)供給力の確保
・需給バランス
電力は、需要に応じ安定的に供給する必要があり、かつ、貯蔵することができないという特性を有しているため、常に最大需要電力の増加に対応し得るよう電源設備を計画的に開発していく必要がある。
・長期電力需給バランス
供給力は、今後10年間の電源の開発および供給力の適切な調達により、2003年度には2億504万kW、2008年度には2億2,460万kWを確保する計画となっている。その結果、安定供給が確保できる予定となっている。
・電源構成の多様化
電源構成については、非化石エネルギーの中核として原子力の開発を推進するとともに、電源の多様化の観点から、原子力に加え、石炭火力、
LNG火力、水力(一般および揚水)等についてバランスのとれた開発をすることとなっている。また、国産エネルギーである一般水力および地熱発電についても、着実な開発を進めることとしている。
原子力については、今後10年間で10基1,208万kWが運転開始し、2008年度末において62基5,700万kWになると計画されている。また、1999年度には7基917万kWが電源開発調整審議会(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)に上程される予定である。
2.電力10社の平成11年度(1999年度)供給計画
電気事業審議会基本政策部会(当時)で電力供給システムの在り方全般についての検討が行われ、2000年から部分的な小売り自由化が実施される見通しとなって、電気事業も本格的な競争時代を迎えつつある。
長期的な電力需要をみると2008年度10社(電力9社と沖縄電力)合計の販売電力量は9774億kW時、8月最大電力は2億524万kWとなり、1997年度から2008年度までの年平均伸び率はそれぞれ1.9%、2.1%である。こうした需要想定に基づいての今後10年間の10社全体の電源開発量は6,130万kWで、その内訳は原子力1,208万kW(20%)、水力619万kW(10%)、石炭火力2,050万kW(33%)、LNG火力1,594万kW(26%)などである(
表1参照)。このうち卸供給事業者からの入札電源は合計683万kWである。現在、電源開発調整審議会(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)(電調審)で決定済みのものは6,080万kWであり、これだけでは供給が不足するため、1999年度に1,114万kW、2000年度に311万kWの電源を電調審に新規に上程する計画である(
表2参照)。
1999年度に電調審に上程を計画されている原子力は北海道電力・泊3号(出力91.2万kW)、東京電力・福島第一7号(出力138万kW)、福島第一8号(138万kW)、中国電力・上関1号(137.3万kW)、上関2号(137.3万kW)、島根3号(137.3万kW)の計6基779.1万kWである。電源開発・大間原子力(138.3万kW)を含めれば、7基917.4万kWである。石炭火力では東京電力・広野5号(60万kW)、広野6号(60万kW)など3地点121万kW、水力では北海道電力・京極(60万kW)、関西電力・新鳩谷(12.7万kW)など5地点75万kWである。
電力各社の供給計画が実現した場合の他社受電分を含む10社合計の電源設備構成比は1998年度から2008年度にかけて石炭火力は11%から16%に大幅に増加、原子力が20%、LNG火力が25%とそれぞれ横ばいとなる。一方、水力は20%から18%に石油火力は22%から18%ヘとそれぞれ低下し電源多様化を着実に進める計画となっている(
図1参照)。
このような電源開発が計画とおり実現すれば、2008年度までの8月最大需要に対する電力需給バランスは必要供給予備力を確保でき、安定した電力供給ができる見通しである。
電力各社の供給計画の概要を以下に記す。
(1)北海道電力
原子力立地は、なお厳しい状況が続いているが、泊発電所の安定かつ着実な運転の積み重ねと一層の情報公開を基本としながら、地城から信頼してもらうための諸活動を強力に展開している。1999年度供給計画の策定にあたっては以下の事項に重点をおいている。
・地球環境保全に配慮しつつ
エネルギーセキュリティを確保するため、バランスのとれた電源開発の推進と安定供給の確保。
・設備形成・設備運用全般にわたる徹底したコストダウンによる電力供給コストの低減。
・地球温暖化防止の観点から、原子力を中心に太陽光・風力等非化石エネルギーの活用やエネルギーの利用効率向上などによるCO
2の排出量抑制と環境保全。
・北国の快適な生活の提案と、合理的な設備形成や設備運用につながり、経営の効率化に大きく寄与する負荷平準化を目指した営業活動の展開。
泊3号機については、1998年7月、地元に対する立地申し入れを行うとともに、国、道に対して環境影響評価レポートを提出し2008年度の運転開始を目指している。
(2)東北電力
電源開発計画については、エネルギーセキュリティと温室効果ガス排出抑制の観点から、環境負荷特性に優れた原子力発電の開発に積極的に取り組むこととしている。建設中の女川3号機(出力82.5万kW)および東通1号機(110万kW)、建設準備中の巻1号機(82.5万kW)については前年度計画同様、それぞれ2002年1月、2005年7月、2008年度の運転開始の計画とした。また浪江・小高(82.5万kW)は2010年度、
ABWR(改良型沸騰水型炉)を導入する東通2号機(138.5万kW)は2011年度以降を運転開始時期としている。
(3)東京電力
電力需要の伸びに対応し安定供給とエネルギーセキュリティの確保を基本に、経済性、環境適合性などに配慮しつつ、原子力を中核として石炭火力、LNG火力、揚水式水力等を組み合わせ、バランスのとれた電源のベストミックスを着実に推進する。また電力の小売り自由化による将来需要の不確実性の増大に対応し、投資リスク回避を重視した柔軟で効率的な設備形成を進める。
1999〜2008年度までの10年間に原子力309万kW、火力1,307万kW、水力275万kW、合計1,891万kWの新たな電源開発に取り組む(
表3参照)。電源設備は、1998年度末の6,795万kWから、2008年度末には8,686万kWに、2008年度末電源設備構成比は原子力25%、石炭7%、LN(P)G 35%、石油12%、水力18%、IPP電源(卸供給事業者からの入札電源)1%になると想定されている。
(4)中部電力
原子力は電源多様化の柱として、地球環境保全のもっとも有効な手段として、最優先に開発を進めていく。浜岡原子力5号機(ABWR 138万kW)は2005年1月使用開始を予定している。広域開発では日本原子力発電が建設する敦賀原子力3・4号機(あわせて307.6万kW)の発生電力を受電する。一方北陸電力、関西電力との共同プロジェクトである珠洲原子力発電所については、地元の合意形成に注力する。電源設備構成および燃料種別発電電力量構成は
表4のとおりである。芦浜1・2号機原子力発電所計画については、2000年2月22日、三重県知事から「計画が地元住民から同意と協力が得られている状況ではない」との意向が表明された。
(5)北陸電力
電源開発では長期にわたる電力の安定供給を図るため、地球環境問題に配慮し原子力、高効率石炭火力などバランスのとれた供給力構成を目指し、地域から信頼される発電所づくりを推進する。原子力では、志賀原子力発電所2号機(改良型
BWR 135.8万kW)は1999年9月着工、2006年3月の運転開始を目指す。珠洲原子力発電所地点については中部地域3社(北陸電力、中部電力、関西電力)による協調体制のもと引き続き地元合意形成に努める(
表5参照)。
(6)関西電力
電源開発計画では、従来どおり原子力を電源開発の主軸として最優先に取り組み、新規地点の確保に向けて地元との合意に全力を傾ける。次に火力ではLNG(
液化天然ガス)と石炭の開発を進め、水力では揚水を中心に開発を進める。広域電源に関しても関係各社と緊密な連携を行い、橘湾(石炭)や珠洲(原子力)の開発を積極的に進めていくとしている(
表6参照)。
(7)中国電力
供給計画の中心となる電源開発では、まず新規原子力の早期開発を目指して最大限の努力を傾注しており、上関原子力1・2号(137.3万kW×2基)および島根原子力3号(137.3万kW)を1999年度に
着手する。火力では大崎1号系列(石炭50万kW)を2000年12月と2005年12月から順次営業運転開始とする。
(8)四国電力
電源開発計画では、約96万kWの開発を計画している。この結果、電源設備構成比は原子力が1998年度の28%から2008年度には25%に、水力が同20%から17%に下がる一方、火力は52%から58%と6割近くになる(
表7参照)。これにあわせて発受電電力量構成比は原子力が1998年度の44%から、2008年度には38%と4割を切り、水力も同11%から10%と若干減る。半面火力は同45%から52%となり5割を超える。ガスと石油火力が減る一方で、石炭火力が増加し、1998年度の16%から2008年度には35%と3割を突破する。
(9)九州電力
電源開発計画は昨年度の計画と基本的に変わっていない。それでも2008年度の供給力は2,052万kW、供給予備率11.1%と十分な安定供給力を備えられる見通しである。電源設備構成比は原子力が1998年度の25%から2008年度には22%に下がる一方、水力が同13%から16%と僅かに増加し、火力は62%から61%と横ばいである。これにあわせて発受電電力量構成比は原子力が1998年度の44%から2008年度には38%と4割を切り、水力も同8%から7%と若干減る。半面火力は同46%から53%となり5割を超える。液化天然ガスと石油火力が減る一方で、石炭火力が増加し、1998年度の18%から2008年度には28%と3割に近づく(
図2参照)。
脚注
(*1)年負荷率とは、最大需要電力に対する年平均需要電力の比率をいい、夏季ピーク需要が大きくなるに伴い、年負荷率は小さい値となる。
<図/表>
<関連タイトル>
電力各社の電源別構成比(平成12年度計画) (01-03-04-06)
平成8年度電力供給計画(「電源開発の概要」から) (01-09-05-01)
平成8年度電力供給計画(資源エネルギー庁発表) (01-09-05-04)
平成10年度電力供給計画 (01-09-05-14)
<参考文献>
(1)電力10社の平成11年度供給計画、エネルギー、32(6),p.48-67(1999)
(2)資源エネルギー庁(編):我が国のエネルギー供給の現状と今後の対策−1999年度電力供給計画の概要−、エネルギー2000 (1999年10月),p.155-159
(3)資源エネルギー庁:平成11年度電力供給計画の概要、1999年4月
(4)大竹康一郎:平成11年度電源開発基本計画の概要、火力原子力発電、50(11),p.10-12(1999)