<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> エネルギー政策の基本
<タイトル>
主要国のエネルギー政策目標 (01-09-01-01)

<概要>
 今後のエネルギー需要を予測するのは、長期的な見通しはもちろん短期的な場合でも、さまざまな要因が複雑にからむので非常に難しく、世界の経済の景気動向により大きく変わってくる。また、アジアなど工業化を推進している国々の動向もエネルギー需要を左右しそうである。冷戦の終結にともない、国際情勢が大きく変化し、それにともなう国際経済の停滞等によって石油の生産が拡大しないことに加え、発展途上国を中心に今後エネルギー消費の大幅な増大が見込まれることから、国際的需給の逼迫の可能性も指摘される。各主要国は、自国のエネルギー安全保障を第一の目標として努力を続けている。
 さらに地球環境問題への国際的な意識の高まりから、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入への行動目標が、各国のエネルギー政策の基本に取り込まれるようになってきた。問題への認識が、各国のエネルギー政策に新たな課題を投げかけている。
<更新年月>
2005年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.世界のエネルギー需給の概況
 世界のエネルギー消費は今後とも拡大していくものと予測されている。国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の見通しによれば、2000年から2030年までに世界全体のエネルギー消費は1.66倍に増加する。地域別に見ると、アジア(日本・韓国を除く)が、2.4倍と大幅な伸びになっている(図1-1図1-2)。2003年の世界の一次エネルギー消費量は、97.4億トン(石油換算)で、その半分強をヨーロッパとアメリカで消費している。ロシアが5億9千万トン(6.9%)、中国が11.8億トン(12.1%)、日本が5億トン(5.1%)である(図2)。
 IEAによる世界の一次エネルギー需要見通しを図1-1図1-2に示す。一次エネルギー消費量は、先進国ではさほど増えていないが、中国をはじめとする発展途上国では大幅に増加している。一次エネルギー消費量は、2010年には111.3億トン、2020年には131.7億トン2030年には152.7億トンになると予想されている。2000年から2010年までに世界全体でエネルギー消費が1.2倍に、2020年までに1.4倍に、2030年に1.66倍に増加するという。地域別には、OECD(Organization for Economic Cooperation and Development:経済協力開発機構)加盟の先進国が2030年までに1.3倍、日本・韓国を除くアジアが2.4倍、旧ソ連等が1.24となっている。先進国は、省エネルギーに努力し、その成果が現れている。
 一次エネルギーの供給量を国内総生産(GDP:Gross National Products)で割り、GDP100万ドル当たりのエネルギー量が必要か(これを「エネルギー供給量のGDP原単位」という)を国際的に比較してみると、日本のエネルギー消費が極めて効率的であることが分かる(図3)。
 国民一人あたりのエネルギー消費量(石油換算、2001年)では、米国が飛び抜けて高く約8トン、フランス、ドイツ、ロシアが約4.3−4.5トン、日本と韓国が4.2トン、中国が0.7トンである。先進国は、発展途上国に比べて一人当たり6倍近いエネルギーを消費している(図4)。発展途上国ば、先進国による過度のエネルギー使用が地球温暖化などの原因であり、途上国は、これから近代化するためにエネルギーを使用したいという。地球温暖化防止の国際会議で発展途上国と先進国の利害が激しく対立するのは、この点にある。
 主要国の電源構成図5に、電源のうち原子力について各国・地域の原子力発電開発を表1に示す。どのようなエネルギー源を使用して発電しているかは、それぞれの国情を反映している。カナダでは水力が約6割を占めているのに対し、フランスでは約8割が原子力である。水力発電に適した気候と地形を持つカナダ、原子力先進国フランスの姿が見える。中国は7割以上が石炭で、重慶市近郊で酸性汚染ガスによる森林被害等が報告されており、深刻な環境汚染が懸念される。インドの電源構成は中国に似ている。
 1970年代の二次にわたる石油危機は世界経済を混乱させた。主要国のエネルギーセキュリティを比較して図6に示す。グラフの面積が小さい国ほど、エネルギー構造が脆弱であるといえる。また、資源別のエネルギー消費見通しを図7に示す。石油が占める割合が約4割と依然として大きい。石油に石炭、天然ガスを加えた化石燃料は約9割で、地球温暖化への警告が発せられても、脱石油、脱化石燃料への道は険しい。
2.主要国のエネルギー政策
(1)アメリカ
 アメリカはエネルギー資源に恵まれた国である。そのためエネルギー消費、生産ともに世界第一位にランクされ、2003年の消費量は世界全体の約24%にあたる約23億トン(石油換算)、そのうち約80%を生産している。OECD(Organization for Economic Cooperation and Development:経済協力開発機構)加盟国全体のエネルギー需要の約半分を占める消費大国でもあり、かつ最大の石油輸入国(世界の原油輸入量の約1/4)であり、一人当たりのエネルギー消費量で見ても、わが国の2倍以上となっており、先進国のなかでも飛び抜けた数字になっている。
 エネルギー省(DOE:Department of Energy)エネルギー情報局が発表した「エネルギー見通し99年版」(International Energy Outlook 1999)によると、エネルギー消費全体の見通しでは、2020年までは年平均1.1%で増加し、輸送部門では航空輸送の増加が予想されている。発電燃料については石炭火力とコージェネ発電を主体とする天然ガスが伸び、石油は天然ガスに押されて減少する。原子力は減少傾向にあるとしており、最悪のケースでは2020年で原子力発電はほぼゼロになるとしている。この様な原子力発電の減少と再生エネルギー開発の遅れのため、アメリカのエネルギー生産に伴う炭酸ガス排出量は増加の一途をたどり、2020年には現状の約40%増が見込まれている。アメリカはすでに世界の炭酸ガスの約1/4を放出しており、議会での批准はされていないものの、京都会議議定書では2012年までに1990年時点の水準から7%温室効果ガスを減少させることを公約しており、上記の長期見通しとの乖離は著しい。
 原子力政策の当面の重要課題は、高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料)処分、核不拡敵、環境回復である。研究開発では、商用炉の寿命延長などは産業界に委ねられ、政府支援は安全、核不拡散、低コスト、低環境負荷倣射性物質)のエネルギーを目指した未来志向型の活動へ衣替えしようとしている。産業界では、電力規制緩和によって、原子力と他電源との競争が高まり、西欧勢も参加した業界の再編の動きが始まっている。
 クリントン政権の発足当初は、核不拡散を最優先課題とし、エネルギーについては原子力を重視せず「再生エネルギーを重視」するものであり、前ブッシュ政権時代と比べて原子力開発予算は劇的に削減され、重要プロジェクトは次々と中止に追い込まれた。逆に、政権の2期目では、原子力に対する政権の取り組みが徐々に変わり、地球温暖化防止、輸入石油への依存などの現実から、「原子力をエネルギー源選択のオプションとして残す」方向へと政策は変わってきた。また既存の原子力発電所定期検査のサイクルの長期化、出力増加等により発電量を増大させるとともに「原子力2010」計画により新規原子力発電所建設を目指し、補助金、規制改革など民間の取組を支援している。国内の石油、ガス価格高騰、大規模停電等の問題解析のため、2001年5月「国家エネルギー政策」を発表し、これを受けて上下両院で包括エネルギー法案の審議が開始された。審議は難航したが、2005円4月下院を通過した。同6月上院を通過し、上下両院協議会に入り、合意を得た後、8月8日に大統領が署名し成立した。
(2)イギリス
 イギリスは、1975年に生産を開始した北海油田の増産を背景に、1981年にはエネルギー自給を達成し実質的なエネルギー輸出国に転じた。石油、ガス、石炭資源を有し、さらには1,000万kW以上の原子力設備を保有するイギリスはEC諸国内でも最もエネルギー自給率の高い国である。
 イギリスは、1975年に生産を開始した北海油田の増産を背景に、1981年にはエネルギー自給を達成し実質的なエネルギー輸出国に転じた。石油、ガス、石炭資源を有し、さらには1,000万kW以上の原子力設備を保有するイギリスはEC諸国内でも最もエネルギー自給率の高い国である。
 イギリスはエネルギー消費量に対して14.7%を輸出している(1996年)。北海原油と天然ガス、石炭、さらに原子力を保有しているためである。2003年のイギリスのエネルギー消費量は日本の約44%で石油換算約2.2億トンである。現在でもイギリスは石油により純輸出国である。しかし、原油生産量のピークは1986年の日量254万バレルで、その後横ばい状態にある(251万バレル:1995年推定値)。石炭はかつてイギリスの主要産業であったが、国内炭は輪入炭に比べて割高であるため、需要が低迷して減産しており、石炭の一部は輪入炭で賄われている。2002年のエネルギー源別消費構成は、石油が34%、石炭18%、天然ガス38%、原子力9%で、残りの1%が水力等で賄われている(図2)。2003年発表のエネルギー白書では、原子力発電所の新規建設の具体的計画は盛り込まれなかったが、新設の可能性は残された。2004年7月エネルギー法案が成立した。
 最終エネルギー需要の構成(1996年)は、産業部門のエネルギー消費量が少なく25%、民生部門と運輸部門がそれぞれ伸びている。民生部門が大きく41.8%、運輸部門は31.7%である。1973年では産業部門の割合は46%、運輸部門のシェアは20%であった。運輸部門と民生部門がそれぞれ伸びている。
(3)フランス
 フランスは、OECD加盟国のなかで、独特のエネルギー政策を取っている。エネルギー源別の消費量を見ると、原子力が38%(2003年)となっており、これほどのシェアを占める国はほかにない。総発電量のなかで比較すれば78.7%(2002年)にも達している。その代わり、石炭の比重が極端に低い(エネルギー消費量の5.0%(2003年))。エネルギー自給率は1996年には1973年当時の23%から51.2%にまで大幅に改善されている。
 フランスのエネルギー政策の特徴は原子力発電の積極的な利用である。
 エネルギー資源に乏しいフランスは、1973年の第1次石油ショックを契機に石油への依存を軽減させるため、国内資源の開発・省エネルギー・エネルギー源の多様化を3本柱とするエネルギー政策を進めてきた。特に、原子力発電については1974年に「今後、新規電源開発は全て原子力発電所で対応する」との方針を打ち出し、以後、軽水炉の建設が急ピッチで進められた。このため、原子力発電所の設備容量はアメリカに次ぐ世界2位、総発電電力量に対する原子力発電のシェアは約3/4となり、電力輸出による貿易黒字(1976年〜1997年)も総額3,160億ドルに達している。2003年エネルギー政策の国民討論が行われ、2004年5月エネルギー基本法案が下院に提出された。これを受けて、2004年10月フランス電力会社(EDF)は、欧州加圧水型原子炉(EPR)の初号機実証炉)を建設すると発表した。
 また、フランス核燃料公社(COGEMA)は、カナダのCAMECO社に次ぐ世界第2位のウラン生産者で、そのシェアは世界の20%を占め、再処理事業もイギリス原子燃料会社と並ぶ世界最大の再処理能力を有している。
 ただし、1997年に実施された総選挙を受け、誕生したジョスパン新首相(社会党)は、1997年に就任演説で高速増殖炉(FBR)の実証炉スーパーフェニックス(124万kW)の閉鎖方針を明らかにし、1998年に同炉の即時閉鎖を決定した。スーパーフェニックスの閉鎖が決定した一方、政府は大改造を終えたFBR原型炉フェニックス(25万kW)の運転を再開させ、各種の研究を行うと発表し、1998年に同炉は運転を再開した。
(4)ドイツ
 ドイツのエネルギー消費量は、2003年で石油換算3.3億トンであり、日本の2/3程度である。西ドイツと東ドイツの統合によって、エネルギー分野においても多くの問題を抱え込んだが、国内には豊富な石炭資源がある。
 両ドイツの統合により単にエネルギー消費の増大だけでなく、経済活動の面でいろいろの問題が生じた。旧東ドイツの人間は旧西ドイツに流れ、旧東ドイツの製造業の生産活動は低迷しエネルギー消費も減少している。統合当時、西ドイツは石油を中心として(41%)、石炭27%、天然ガス17%、原子力14%とエネルギー源が適度に分散され、ほぼ自給水準にあった。一方の東ドイツは70%以上を国内石炭(褐炭)に依存していたが、環境対策や省エネルギー対策がいちじるしく遅れていた。統合後のドイツ政府のエネルギー政策では、旧東ドイツ領内のエネルギー効率改善に焦点があてられている。
 統合以降のエネルギー需要の変動も東と西では大きく異なる。人間が旧西ドイツに流れ、旧東ドイツの産業活動が低迷状態であるため、1990年と1991年とで比較すると、旧西ドイツ領内のエネルギー消費量は前年比6%増加したのに対して、旧東ドイツ領内のそれは29%も減少している。
 統合後のドイツの2003年のエネルギー源別消費構成をみると、石油38%、石炭26%、天然ガス23%、原子力11%、水力等が2%である。天然ガスは2割強を自給できるが、石油はほとんど輸入である。しかし、石炭がほぼ自給水準であるため、これに原子力を加えると、一次エネルギーの国産エネルギー比率は40.2%(1996年)になる。
 ドイツにおける大きな問題は脱原子力政策に関するものである。総発電電力量に対する原子力発電のシェアは約3割であり、2004年12月末現在、14か所の原子力発電所で18基が運転中であり、平均設備利用率も高い水準を維持している。しかしながら、1998年の連邦議会(下院)総選挙で、社会民主党(SPD)が勝利をおさめ、緑の党との連立政権が発足した。連立内閣の発足にあたって、将来的には原子力発電所を廃止する方針が連立協定に盛り込まれた。これに対して、原子力産業界は強い反対姿勢を示した。欧州原子力産業会議(FORATOM)は「ドイツにおける過去40年間の原子力研究・技術開発を水泡に帰すばかりか、電気料金の値上げや炭酸ガス排出量の増加をもたらす」と強く非難し、政府に対して、原子力産業界と協議し、原子力発電も含めた現実的な長期的エネルギー・環境政策を策定するよう求めた。2002年に原子力発電所の平均運転期間を32年間とし、その後は廃止することで政府と電力業界で合意。一方、政府は政治的動機で運転・輸送等の妨害をしまいとしている。ただし輸入電力量は、約8%の割合で、そのうち約43%はフランスから輸入している。
<図/表>
表1 世界の原子力発電開発の現状
図1-1 世界の一次エネルギー消費量の推移と見通し(地域別)(1/2)
図1-2 世界の一次エネルギー消費量の推移と見通し(地域別)(2/2)(OECDに日韓を除く場合)
図2 主要国の一次エネルギー構成
図3 GDP原単位当たりのエネルギー供給量
図4 国内総生産とエネルギー消費量
図5 主要国の電源別発電電力量の構成比
図6 主要国のエネルギーセキュリティ
図7 世界のエネルギー供給の推移と見通し

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<参考文献>
(1) 資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.850-861
(2) (社)海外電力調査会(編集発行):海外諸国の電気事業第1編1998(1998年3月)、p.38-43,p.81-83,p.127,p.203-204
(3) (社)日本原子力産業会議:世界の原子力発電の現状(2004年12月31日現在)、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2005/0408doukou.html
(4) 電気事業連合会:「原子力エネルギー」図面集(2004-2005),4/25,7/25,6/8
(5) 舛添 要一:完全図解「日本のエネルギー危機」、東洋経済新報社(1999年12月)、p.14-34
(6) (社)日本原子力産業会議(編集発行):世界の原子力発電開発の動向(2000年5月)、p.4
(7) (財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):EDMC/エネルギー経済統計
要覧、(財)省エネルギーセンター(2000年1月)p.217
(8) 宮崎 勇、田谷 禎三:世界経済図説、(株)岩波書店(2000年2月)、p.1-20,p.30-31,p.121-140
(9) 資源エネルギー庁:エネルギー・資源を取り巻く情勢、世界の円ルギー需要見通し
(10)資源エネルギー庁:エネルギー政策における原子力発電、新計画策定会議(第21回)資料第1号(2005年3月)
(11)資源エネルギー庁:平成16年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)(2005年5月)
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