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<概要>
 核不拡散条約は、核軍縮交渉の中から生まれた考え方で、核兵器廃絶への一段階としてとりあえずこれ以上核兵器国を増やさないことを狙ったものである。日本は、この条約の不平等性を問題にし、その批准を遅らせていたが、政府は遂に6月条約批准を決定し、97番目の加盟国となった。前年発足した原子力行政問題懇談会は、1年以上に亙る審議を行い、7月に結論をまとめ、これを踏まえて、原子力委員会の開発と規制の役割をを分離し、新たに原子力安全委員会を設け、安全行政の改革を行うことになった。また、9月に原子力委員会は、核燃料サイクルシステムの実用化、商業化の道を示した。軽水炉の相次ぐ事故や故障のため、わが国は自ら手で、その安全性について確かめなければならなくなった。そのため、2月に(財)原子力工学試験センターが設立された。(財)原子力環境整備センターが10月に設立され、海洋試験処分の1978年実施をめざして活動を開始した。

<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1976年
(昭和51年)
1/12 政府の原子力行政体制改革強化推進連絡会議(座長・川島官房副長官)が初会合。科学技術庁(現文科省)原子力安全局発足  
1/15   BNFLの再処理工場拡張及び日本との再処理契約の是非で公聴会開催
1/21 電力社長会、英BNFLに使用済み燃料の1979、1980年度以降10年間処理量4000トンの再処理委託を決定  
1/24   米会計検査院(GAO)、放射性廃棄物対策に問題ありとする報告書を発表
1/28 関西電力美浜3号臨界(PWR、82万6000kW)  
1/30   米英ソ仏西独日加の原子力先進7か国、原子力機器輸出規制で合意
  韓国商工省、同国のウラン埋蔵量は約760万トンなどを内容とするエネルギー資源関係報告書を公表
1/31 原子力委、核融合会議(座長井上五郎原子力委員長代理)が初会合  
2/2   米GE社の管理職3人が原発建設に反対し辞表
2/5   米コロンビア大実験グループ、新素粒子を発見しウピシロンと命名
2/19 科学技術会議、石油に対する依存度の相対的な低下と、原子力中心のエネルギー供給源多元化を政府に提言  
2/23 原研(現日本原子力研究開発機構)、米 NRCのLOFT(冷却材喪失試験装置による軽水炉安全性評価)計画に参加で調印  
2/25 (財)原子力工学試験センター(理事長藤波恒雄事)発足  
2/28   米NRC、国内のBWR原発11基に対し総点検を指示
3/2 政府、久保長崎県知事に「むつ」修理の安全性説明回答書を手渡す  
3/9 原研と米NRC、原研NSRR計画・米PBF(出力急上昇実験炉)計画の相互協力協定に調印 キッシンジャー米国務長官、議会証言で核施設輸出規制の強化は核不拡散をめざす米政府の努力を後退させることになろうと警告
3/17 中部電力浜岡1号(BWR、54万kW)が営業運転開始  
3/18   イラン、国内で大規模ウラン鉱床を発見と発表
3/27 東京電力福島第一原発3号(BWR、78万4000kW)営業運転開始。日本の原子力発電設備容量660万2000kWとなり米、英に次ぎ世界第3位  
4/2   IAEA、ウラン需要は今後10年間に4倍近く増加するだろうと予測
4/5 日本海洋学会・日本放射線影響学会・日本原子学会、放射性固体廃棄物の深海投棄でシンポジウム(東京)  
4/9   仏で高温炉及び高速増殖炉の建設を行なうノバトム社設立
4/12 長崎県、政府にむつ遮蔽改修工事の内容など21項目の質問書提出。6/8科学技術庁と運輸省(現国土交通省)、回答書  
4/15 九州電力、川内原発(PWR、89万kW)設置申請  
4/28 衆院本会議、核拡散防止条約の批准議案可決。5/24参院可決  
5/18   加、インドとの原子力協力協定を恒久的に停止と発表
5/31 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)原子力部会、原子力発電開発の長期構想づくりに着手  
6/1   米カリフォルニア州議会、原発安全規制の3法案を可決
6/8 政府、核拡散防止条約を批准。97番目の加盟国となる 米カリフォルニア州で原発住民投票、原発支持派勝つ。原発規制賛成35%
6/15 四国電力、第2原子力発電所建設で徳島県及び阿南市に事前調査申入れ  
6/18 東海村議会、原子燃料工業の東海成型加工工場建設計画を承認  
7/6   仏CEA、ラ・アーグ再処理工場で酸化ウラン処理工程の試運転に成功と発表
7/7 神戸製鋼、BWR燃料被覆管の品質で日本ニュクリア・フュエル社の認定試験に合格  
7/8 三菱重工、PWR一次系冷却材ポンプの国産化に乗り出すと発表  
7/24   米原産、核燃料の供給保証が核拡散防止最良の方法との報告書まとめる
7/30 原子力行政懇談会、原子力行政体制の改革強化に関する意見(最終報告)をまとめ首相に提出  
8/11 原子力委新型動力炉開発専門部会、軽水炉から高速増殖炉への転換を基幹路線とし、多目的高温ガス炉を並行開発するとの報告書を提出.転換炉の最終決定持ち越す。9/14原子力委決定  
8/12   英AEA、重水炉路線打ち切りを提言。軽水型炉関発へ傾斜
8/27 川内原子力発電所建設漁業者協議会、九州電力環境保全と漁業補償に関する協定書に調印  
8/30   米ハンフォード社核燃料再処理施設で爆発事故
8月   米NRC、UPu混合酸化物燃料の軽水炉使用に関する影響評価声明書(GESMO)まとめる
9/7   WHO、放射線照射食品の安全性について研究成果を発表
9/13 国際資源、ニジェール政府とウラン探鉱に関する最終協定に調印 ユーロディフ、欧州に第2ウラン濃縮工場を建設と発表。1978年着工、1985年運開へ
9/14 東京電力、福島第二原発1号の設置変更を申請。BWR5型(8×8型燃料)を採用  
9/19 スウェーデンで総選挙、社民党敗れ原発廃棄を主張する保守党が勝つ
9/28 原子力委核燃料サイクル懇、核燃料サイクル各段階の施策で政府と民間の果たすべき役割を明示。  
10/8 原子力委、放射性廃棄物の基本方針を決定(高レベルはガラス固化して地下処分、低レベルは固化し海洋及び陸地処分。処理処分の経費は発生者負担)  
10/11   米原子力学会主催、第1回太平洋会議開く(ホノルル〜10/14)
10/22 自治省(現総務省)、福井県の核燃料税新設認可  
10/27 (財)原子力環境整備センター(理事長竹内良市東京電力常務)発足。放射性廃棄物の処理処分、それに伴なう環境保全の調査研究等を実施  
10/28   フォード米大統領、核拡散防止のため再処理の3年間凍結などを内容とする規制強化の原子力政策を発表
11/1 東芝、東京電力福島第二原発1号(BWR、110万kW)の主契約者となる(100万kW級では初めて)  
11/2   米オレゴン・モンタナ・オハイオ・アリゾナ・ワシントン・コロラドの6州、住民投票で原発支持派勝つ
11/12 動燃(現日本原子力研究開発機構)、六フッ化ウラン転換装置が稼働開始、動燃の「混合転換法」完成  
11/14   米原産主催、第3回世界フォーラム大会で原子力機器の輸出問題を論議
11/19 通産省、高浜2号の放射能もれで、同型炉の運転停止を指示 米ベクテル社、ウラン濃縮計画から脱退と発表
12/1 関西電力美浜3号、営業運転開始  
12/3 関西電力美浜1号で3年間隠されていた燃料棒折損事故暴露 スウェーデン政府、原発促進関係法案公表
北海道岩内町議会、共和・泊原子力発電所建設計画に関する賛成決議を採択  
12/7 原子力委、1977年から遠心分離法による濃縮パイロットプラント建設に着手と決定  
12/12   米政府、インド向け濃縮ウラン供給停止


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1976年
(昭和51年)
2/4   米上院で、ロッキード事件明るみに
2/27 政府、エネルギー問題の国際協力を推進するため IEA(国際エネルギー機関)の長期協力計画に参加  
3/5   英1ポンド、史上初めて2ドルを割り、伊リラ大暴落
5/27   OPEC総会原油価格当面凍結を決める
6/14 鹿児島県、新大隅開発計画案発表(世界最大級の石油備蓄基地)  
6/15 通産省(現経産省)、北海道電力など4社の電気料金値上げ認可。7/30関西電力。8/20東京電力など4社の値上げ認可(9社平均23%の値上げ)  
7月 東京地検、ロ事件で田中角栄前総理を逮捕  
7月 海洋科学技術センター(横須賀市)、1560気圧まで加圧可能な高圧実験水槽を設置  
8/9 経団連代表団(団長土光敏夫)訪ソ(〜8/18)  
9/9   毛沢東死去
11/2   カーター、米第39代大統領に
11/9 経済関係閻僚会議、景気テコ入れ策を発表  
12/15   OPEC総会。原油価格の10%引上げ1本化成らず

<関連タイトル>
原子力安全委員会の当面の施策について (10-03-02-01)
原子力安全委員会の安全規制に関する活動(2001年) (11-01-01-02)
わが国における低レベル放射性廃棄物の処分についての概要(制度化の観点から) (11-02-05-02)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(上巻)(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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