<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> スロバキア
<タイトル>
スロバキアの原子力事情 (14-06-08-02)

<概要>
 石炭、石油といった従来の主要エネルギー源からの脱却を余儀なくされていた旧チェコスロバキアでは1980年代から積極的に原子力発電の開発に取り組み、1993年1月の分離独立前には8基を運転中、6基を建設中であった。分離独立後は、チェコとスロバキアのそれぞれが原子力施設を引き継いだ。スロバキアはエネルギー資源に乏しいことに加え、環境面からも原子力発電を推進している。
 2012年現在、ボフニチェ原子力発電所(2基)、モホフチェ原子力発電所(2基)の計4基195万kWが運転中で、モホフチェ原子力発電所内に2基94.2万kWが建設中である。原子炉はロシア型のPWR(VVER-400/V-213)に西欧諸国の安全規制基準を取入れた炉型を採用している。なお、ボフニチェ1、2号機は西欧諸国から安全性に懸念がもたれ、1号機を2006年に、2号機を2008年に閉鎖した。原子力規制庁が原子力施設、核燃料サイクル放射性廃棄物等の安全規制や保障措置を担当し、スロバキア電力(SE社)が原子力発電所の所有及び運転を担当している。使用済燃料はボフニチェ原子力発電所のサイト内に建設した中間貯蔵施設で貯蔵し、地層処分する計画である。
<更新年月>
2012年11月   

<本文>
 スロバキアではトルナバ地方(TRNAVSKY KRAJ)北部のヤスロウスケー・ボフニチェ(JASLOVSKE BOHUNICE)とニトラ地方(NITRIANSKY KRAJ)東部のモホフチェ(MOCHOVCE)の2カ所に原子力発電所が位置する(図1参照)。ボフニチェ原子力発電所では3、4号機(VVER-440/V-213、グロス電気出力50.5万kW×2基)が、モホフチェ原子力発電所では1、2号機(VVER-440/V-213、グロス電気出力43.5万kW×2基)が運転中で、3、4号機(VVER-440/V-213、グロス電気出力47.0万kW×2基)が建設中である。スロバキア電力(SE:Slovenske Elektrarne a.s.)が所有し、運転を行っている(表1参照)。2011年の原子力発電電力量は約154億1,100kWh、総発電電力量に占める割合は53.4%台と高い割合を占めている(図2参照)。なお、ボフニチェ1、2号機(VVER-440/V-230、グロス電気出力44.0万kW×2基)及びボフニチェA-1原子力発電所(HWGCR、グロス電気出力14.4万kW)は運転を停止し、廃止措置プログラムへ移行している。スロバキア電力(SE社)は発電、送電・系統運用、電力輸出入、卸供給、熱供給を行う国営の電気事業者であったが、2002年1月にスロバキア送電系統(株)(SEPS,a.s.)とコシツェ熱併給発電株式会社(TEKO,a.s.)が分離独立した。2011年時点で、スロバキア電力(SE社)がスロバキアの発電設備の約80%を所有している。また、民営化方針により、2006年4月にSE社の株式の66%をイタリアのENEL(エネル)社が取得している。核燃料は全てロシアのTVEL(テベル)社により供給されている。
1.ボフニチェA-1号機の閉鎖
 チェコスロバキア時代の1958年に、天然ウランを燃料とする重水減速ガス冷却炉ボフニチェA-1原子力発電所(HWGCR、電気出力14.4万kW)が着工され、1972年に営業運転を開始した。しかし、1976年と1977年に深刻な事故が発生し、1979年に閉鎖された。
 1976年の事故では、燃料交換時に新燃料集合体が炉心から飛び出して原子炉冷却材である炭酸ガスが放出され、酸欠のため2名の作業員が死亡した。また1977年の事故では、作業員がシリカゲルの入った袋を燃料集合体中に放置したことが基で、原子炉冷却材の流路がふさがれ、燃料温度が上昇して燃料溶融事故が起こった。1977年の事故では、10%の燃料が破損し、重水が一次系に流れ込んで汚染を拡大するとともに、蒸気発生器の欠陥から二次系の配管も汚染した。1999年までに使用済燃料集合体がロシアへ輸送され、今後、2015年まで汚染領域の除染作業、冷却塔の解体、放射性廃棄物の処理等が行われ、最終的な解体撤去は2033年に終了する予定である。
2.ボフニチェ原子力発電所(EBO V2)
 ボフニチェ原子力発電所では、1号機が1978年に、2号機が1980年に、3号機が1984年に、4号機が1985年に商業運転を開始した。原子炉はいずれもロシア型加圧水型原子炉(VVER-440)であるが、ボフニチェ1、2号機は第1世代であるV-230型、3、4号機は第2世代のV-213型を採用している。VVER-440シリーズは、2基1対(ツイン)で構成され、蒸気発生器は原子炉1基につき6ループで横置き、原子炉1基あたり220MWの蒸気タービンが2基取り付けられ、原子炉格納容器を持たないことを基本としている。VVERは独特の安全システム(事故時ローカリゼーション・コンパートメント)を有しており、事故時には、密封された隔室(コンパートメント)の中に放出蒸気を封じ込め、スプレー設備でホウ酸水を噴射させて蒸気を凝縮する安全システムを持つが、VVER-440/V-230では非常用炉心冷却系(ECCS)が十分な機能を有していないこと、及び西欧型PWR並の原子炉格納容器を持たないことが問題とされた(図3参照)。
 ボフニチェ発電所はウィーンの東北東約100kmに位置していることから、隣国のオーストリア政府が「1、2号機を早急に閉鎖する決定をしない限りEU(欧州連合)加盟は認められない」と強硬に主張し、2004年5月のEU加盟を条件にボフニチェ1、2号機の閉鎖が決定した。1号機は2006年12月末に、2号機は2008年12月末に運転を停止し、欧州復興開発銀行(EBRD)からの廃止措置基金を得て、ECの承認のもと、2011年7月から廃止措置プログラムを開始している。
 スロバキア政府は「エネルギー戦略計画2008」の中で、原子力による発電シェア50%の維持を目標に掲げ、既存原子炉の近代化を推進している。ボフニチェ3、4号機に関しては2010年11月までに出力増強工事を完了した。重大事故への対策としては、2009年〜2013年にかけて電力供給系の追加、給水容量の拡大、水素管理、ベント等の改善が行われている。
3.モホフチェ原子力発電所(EMO)
 首都ブラチスラバから東方100km弱に位置するモホフチェ原子力発電所1、2号機は、1981年に建設を開始したが、1991年には資金難から建設が中断された。スロバキアの独立後、モホフチェ原子力発電所はスロバキア電力(SE社)の管轄下に入り、1994年にはSE社が49%、フランス電力公社(EDF)が51%を所有する合弁企業(EMO)となった。その後、ドイツのバイエルンベェルクにもSE社から株式が提供された。
 EMOは1996年に1、2号機の出力増強と建設工事完成のため、ロシア政府から融資を取り付け、1996年4月、シュコダ社(チェコ)を主契約者としたエネルゴプロジェクト社(チェコ)、アトムエネルゴプロジェクト社(ロシア)、EDF(フランス)、シーメンス社(ドイツ)及びフラマトム社(フランス、現AREVA社)による企業連合との間で、建設再開に向けた最終契約を成立させた。1号機は1998年6月に臨界に達し、1999年1月に営業運転を開始した。2号機は1999年12月に臨界に達し、2000年3月に営業運転を開始した。
 また、1987年に着工したが、資金難から建設を中断していた3号機と4号機に関しては、2007年3月にENEL社(イタリア)との間で投資が合意、2008年7月には欧州委員会(EC)により設計の安全基準に関するEC勧告が織り込まれ、2008年11月に建設が再開した。それぞれ2013年及び2014年の運転開始を目指している。
4.ボフニチェ原子力発電所5号機の新規建設
 2008年4月、スロバキア政府はボフニチェ原子力発電所サイト内に5号機を建設することを決定し、5月にはスロバキア国営の廃止措置会社ヤヴィス社(JAVYS)がチェコ電力(CEZ)との間で合弁企業を立ち上げた。2010年中に立地調査、経済性評価、資金調達などの実現可能性調査(FS)を終えている。欧州加圧水型原子炉(EPR、出力120〜175万kW)を採用する予定で、2025年の運転開始を目指している。
5.放射性廃棄物
 スロバキアでは原子炉1基につき、年間60m3の液体放射性廃棄物と、15トンの低レベル固体廃棄物、10トンの使用済燃料が発生する。使用済燃料及び放射性廃棄物は、政府決定No.328/2008(2008年5月)に従って取り扱われる。原子炉から取り出された使用済燃料は燃料プールで3〜7年間冷却された後、ボフニチェ敷地内の長期貯蔵施設(MSVP)で40〜50年間貯蔵管理され、高レベル放射性廃棄物とともに自国内で地層処分する方針である。スロバキアの高レベル放射性廃棄物には再処理するためにロシアへ輸送された使用済燃料の返還廃棄物が含まれる。長期貯蔵施設(MSVP)は、ボフニチェ及びモホフチェの原子力発電所の使用済燃料を保管する湿式貯蔵施設で最大集積燃料集合体は14,112体であり、1987年から受入れ業務を開始している。チェコスロバキア時代にドコバニー発電所(Dukovany)の使用済燃料を貯蔵し、満杯状態が続いていたが、1993年以降はチェコへの返還と合わせて乾式貯蔵を行い、危機的状況を脱した。
 また、放射性廃棄物埋設貯蔵施設(NRWR)は、各原子力発電所の運転及び病院、研究施設から発生する低・中レベル放射性廃棄物を貯蔵管理する施設で、最大集積量は7200コンテナ、総容量22,320m3であり、2001年から操業を開始している。2011年末までに2788コンテナを収容しているが、閉鎖したボフニチェ1、2号機用に2017年までに拡張工事を行う。ボフニチェ廃棄物処理総合センター(BRWTC)では液体・固体廃棄物の減容・密封処理を行っている。図4に低・中レベル放射性廃棄物発生量の推移を示す。なお、放射性廃棄物の管理、廃止措置事業はバックエンド会社JAVYSが担当している。
6.原子力安全規制
 スロバキアの原子力施設の許認可、安全、放射性廃棄物の管理、放射線防護等に係る行政規制機関である原子力規制庁(UJD:Urad Jadroveho Dozoru/Nuclear Regulatory Authority of Slovak Republic)は、旧チェコスロバキア原子力委員会の後継機関として、スロバキア議会による1993年の第2号法律に基づいて1993年1月1日に設立された。UJDは政府の直接監督下にあり、事務局と、「法規制・国際関係局」と「安全評価・検査局」の2つの局で構成される(図5参照)。UJDが規制対象としているのは、(1)原子力施設の安全、(2)放射性廃棄物管理・廃止措置、(3)核物質の保障措置と管理、(4)品質保証プログラム、(5)原子力安全及び核物質分野での国際協定の締結ならびにその義務の履行、(6)原子力事故時等の危機管理システムの構築、(7)法規制の整備、の分野に及ぶ。
 なお、2011年3月の福島第一発電所事故を受け、モホフチェ発電所のストレステストが行われ、概ね良好という結果が2011年10月にSE社からUJDへ提出された。
 また、原子力安全に関する活動には、以下に挙げる多数の行政機関が関係している。
・経済省:原子力発電プログラムの推進・開発、及びこれに関連した法律の作成。
・厚生省:原子力施設内及びサイト外の放射線防護施策の採択・管理。
・環境省:立地や建設、運転の各認可を発給する各地域事務所の監督を行うほか、環境影響評価を担当。また環境大臣は政府の放射線非常事態委員会の議長を務める。
・内務省:放射線事故の際の火災防護や核物質及び施設の防護、民間防衛対策のほか、原子力事故あるいは放射線緊急事態が起こった際の援助。
・労働安全局。図6に原子力行政関係機関を示す。
(前回更新:2006年1月)
<図/表>
表1 スロバキアの原子力発電所一覧
図1 スロバキアの原子力発電所の所在地
図2 スロバキアにおける発電電力量の推移
図3 ロシア型PWR(VVER)のプラントレイアウト(V-230とV-213)
図4 低・中レベル放射性廃棄物発生量の推移
図5 スロバキアの原子力規制庁
図6 スロバキアの原子力行政関係機関

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<関連タイトル>
ロシア型加圧水型原子炉(VVER) (02-01-01-03)
ロシア型軽水炉(VVER)燃料 (04-06-03-08)
チェコの国情およびエネルギー事情 (14-06-07-01)
チェコの原子力事情 (14-06-07-02)
スロバキアの国情およびエネルギー、電力事情 (14-06-08-01)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑、2012年版(2011年10月)、スロバキア
(2)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2012年版(2012年5月)
(3)OECD/NEA(編集発行)、日本原子力産業会議(翻訳):中・東欧、旧ソ連諸国の最新原子力法(1998年9月)、p.102-109
(4)米国PNNLチェルノブイリ・センター:International Nuclear Safety、VVER-440 Model 230(http://insp.pnnl.gov/-profiles-reactors-vver230.htm)及びVVER-440 Model 213(http://insp.pnnl.gov/-profiles-reactors-vver213.htm
(5)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第2編、2010年版(2010年3月)、スロバキア
(6)スロバキア原子力規制庁原子力安全局(UJDSR):スロバキア特別国家報告書2011(2012年4月)(http://www.ujd.gov.sk/files/SNR_NS_April2012.pdf)、Annual Report(2011年)及び組織図
(7)スロバキア電力:Annual Report2011及びAnnual Report2010
(8)スロバキア電力:BOHUNICE V2/MOCHOVCE原子力発電所運転レポート 2011(2012年)
(9)スロバキアバックエンド会社(JAVYS):
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