<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> スロバキア
<タイトル>
スロバキアの国情およびエネルギー、電力事情 (14-06-08-01)

<概要>
 1989年末に旧チェコスロバキアが市場経済へと移行し始めた当時、スロバキアは不況下にあった。1993年1月のチェコ共和国とスロバキア共和国への分離独立後、1993年末までの経済はマイナス成長であったが、1994年から輸出の拡大と国内消費および国内投資が経済復興を支えた。1998年8月の総選挙でスロバキア民主連合のジュリンダ議長が首相に就任し、民主化、欧州化推進路線を進め、2000年9月にOECDに加盟し、さらに2004年5月に欧州連合(EU)に加盟した。
 資源小国であるスロバキアはエネルギー自給率が低く、エネルギーの輸入依存度は1994年に73%であったが、モホフチェ原子力発電所1号機が1998年に、2号機が2000年に運転を開始したことによって2002年には輸入依存度は65%まで低下し、余剰電力を隣国へ輸出するようになった。しかし、ボフニチェ原子力発電所1、2号機は西側諸国から安全性を懸念されたため、それぞれ2006年および2008年に運転停止した。その結果、輸出余力が失われて2007年以降は電力の輸入国に転じている。2011年のスロバキアの総発電電力量は281.4億kWh、原子力による発電電力量は154.1億kWhで、原子力シェアは約55%であった。
<更新年月>
2012年11月   

<本文>
1.国情
 スロバキアの国土は東西400km、南北200kmと比較的小規模で、国土面積は49,035km2であり、日本の約7分の1に相当する。人口は544.5万人(2011年9月、スロバキア統計局発表)である。北西にチェコ、北にポーランド、東にウクライナ、南にハンガリー、南西にオーストリアと隣接する。第一次世界大戦後にオーストリア・ハンガリー帝国からチェコと合併するかたちで独立し、共産党政権を樹立したが、1989年11月のビロード革命で社会主義体制が崩壊。1993年1月1日にチェコスロバキアから分離独立し、現在に至っている。「欧州への回帰」を目標に、2000年12月に経済協力開発機構(OECD)に、2004年3月に北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、さらに2004年5月に欧州連合(EU)に加盟した。2009年1月からスロバキア通貨をコルナからユーロへ切替えた(ユーロ圏内16ヵ国目)。
 独立後の1998年には、貿易赤字、財政赤字の拡大、不良債権問題等が顕在化し、経済成長率は1%台まで低下したが、国内資本の保護的政策を転換し、積極的に外資導入と国営基幹産業の民営化を推し進めた結果、2002年には4.4%に回復した。その後もユーロ圏内の景気と連動する形で経済成長率を維持した。2008年後半以降の世界的な経済危機の影響を受けた結果、2009年のGDP成長率は-4.7%となったが、いち早く回復したドイツ経済に牽引され、スロバキアも予想より早い経済回復を達成し、2011年は通年で3.3%の成長を記録した(図1参照)。ただし、失業率は13%台前半で高止まりしたままである。
2.エネルギー事情
2.1 エネルギー資源
 スロバキアの国土のほとんどは西カルパチア山脈に連なる山岳地帯であるが、エネルギー資源に乏しく、低品位の褐炭および水力以外には見るべきものがない。褐炭の可採埋蔵量は2億6,000万トン(2010 Survey of Energy Resources, 世界エネルギー会議(WEC)調べ)と評価されており、採掘は3鉱山会社(プリエヴィドザ、ドリナ、ザホリエ)が所有する。石油および天然ガス資源については、確認埋蔵量がそれぞれ100万トンおよび150億m3と評価されている。包蔵水力については、技術的開発可能水力が年間76.41億kWhで、既に69%が開発済みであるため、開発可能な水力は約23億kWhである。
 ウラン資源については、1947年にウラン探鉱が始まり、6ヵ所のウラン鉱床が確認されたが、当時は経済価値の低い小規模ウラン鉱床と結論付けられた。しかし、1985年から1990年にかけて再び探鉱が行われ、スロバキア東部のKosice(Jahodna-Kurishkova)に資源量を確認した。2005年にカナダの民間企業Tournigan Energy Ltd.によりKosice I(Jahodna-Kurishkova)付近の32km2の探鉱で品位0.25%U(カットオフ0.05%U)、推定12,500トンUの資源量が見積もられた。Tournigan子会社のLudovika Energy Ltd.はこの地域の探鉱を続けているほか、スロバキア東部の他の鉱床(Novoveska HutaおよびSpisska Teplica)でも探鉱を行っている。また、Beckov Mineralsはスロバキア西部2地域で、Crown Energy Ltd.は東部3地域で探鉱活動を行っている。ウラン生産は、かつて1961年〜1990年にかけてNovoveska Huta鉱床、Muran鉱床、Kravany鉱床、Svabovce鉱床およびVikartovce鉱床を中心に8ヵ所で行われ、210トンUが生産されたが、経済性に乏しいことから生産は中止された。OECD・NEA/IAEAのレッドブック2011によるとスロバキアの発見資源量(推定資源)は9,000トンU、未発見資源量(予測資源)は7,000トンUである。
2.2 エネルギー供給
 スロバキアの一次エネルギー供給量は減少傾向にあり、2009年には1,672万トンtoe(石油換算、以下同じ)であった(図2参照)。国産エネルギーは593.6万toeで、エネルギー自給率は35.5%であった。エネルギー自給率は原子力開発の推進により、1995年の28%から着実に向上した。輸入依存度は1995年の70%から2002年には65%まで低下し、ほぼ横ばい状態で推移している。輸入の中心は石油、天然ガス、石炭で、2009年の輸入量は合計1,125万toeであり、一次エネルギーの輸入依存度は64.5%であった。一次エネルギー供給量の燃料別内訳は、天然ガスが26.6%、原子力が22.4%、石炭が23.3%、石油が20.0%、水力が2.3%、その他の再生可能エネルギーが5.4%であった。
2.3 エネルギー消費
 エネルギーの最終消費量は、2002年の1,171万toeをピークに若干減少したものの横ばい状態で、2009年の最終消費量は1,083万toeであった(図3参照)。部門別の動向を見ると石炭産業を中心とした鉱工業が減少し、運輸業が増加する傾向にある。スロバキアのGDPに占める鉱工業の比率は低下傾向にあり、産業構造自体が第3次産業にシフトしているといわれている。エネルギー最終消費に占める鉱工業の比率は、1995年には51%であったが、2009年には28.8%まで低下した。
2.4 エネルギー政策
 「2000年エネルギー政策」は、独立後のエネルギー安全保障の確保、その一環としてのEUへの参加という基調でまとめられ、(1)国内市場のEU域内市場への統合準備(国内エネルギー部門の市場自由化および再編・民営化)、(2)エネルギーの安定供給、(3)エネルギー部門の持続的な発展を主要3目標とした。しかし、スロバキアのEU加盟も2004年5月に実現したことで見直しが行われた。2030年を見据えた「2006年エネルギー政策」では、(1)安全で確実なエネルギー供給の確保、(2)電力自給の確保と持続的な発展、(3)エネルギー効率の改善が基本目標として掲げられた。目標を達成するための優先課題として、(1)老朽電源のリプレースと熱併給発電の利用拡大、(2)需要側の省エネ、利用効率の向上、(3)エネルギー資源の確保と輸送ルートの多様化、(4)環境面を考慮した安全な原子力エネルギーの利用、(5)再生可能エネルギーの利用拡大、(6)EU域内市場および第三国市場への基幹送電網の整備等が示された。スロバキアは天然ガスと原油消費量の全てを実質的にロシア一国から輸入しており、備蓄率も低いため、2009年のロシア・ウクライナのガス紛争から波及した天然ガスの供給停止は大打撃となった。これにより、エネルギー供給の多様化が求められ、エネルギーの安定供給がエネルギー政策の最優先課題と位置づけられた。
 なお、1990年以降温室効果ガス(GHG)排出量は急速に減少したものの、エネルギー関連のCO2排出量はGHG排出量全体の70%以上を占めている。低炭素経済への移行政策として、原子力と再生可能エネルギーの開発を基本に据え、エネルギー効率の向上、交通・建設部門および地域暖房にGHG排出量の削減を求めている。
3.発電設備と電力需給
3.1 発電設備
 2011年末、事業者であるSE社(Slovenske Elektrarne, a.s.:スロバキア電力会社)の発電設備は4,993MWで、その電源構成は火力が1,398MW(28%)、原子力が1,940MW(38.9%)、水力が1,653kW(33.1%)となっている(図4参照)。原子力設備についてはモホフチェ原子力発電所の1、2号機がそれぞれ1999年、2000年に運転を開始したことで880MW増加し、2000年以降8,000MW台を維持した。しかし、西側諸国からボフニチェ原子力発電所1、2号機の安全性に懸念がもたれ、2008年までに同1、2号機(ともに440MW)を閉鎖した。さらに、2010年までに老朽化した火力ユニット4基(440MW)を閉鎖して1,320MW減少した。他方、ボフニチェ3、4号機とモホフチェ1、2号機の出力増強工事により、2011年までに合わせて121.9MW増加している。
 また、原子力発電所を所有するSE社の民営化に伴い、イタリアの電力会社ENEL(エネル)が株式の66%を取得した。SE社の発電設備は総発電設備容量の約80%を占めている。配電会社は、ZSE(西部)、SSE(中央)およびVSE(東部)に分かれ、持ち株はそれぞれ州政府とドイツのE.ON、フランスのEdF、ドイツのRWEが保有する。
3.2 発電電力量
 2011年の総発電電力量は前年実績を4.15億kWh上回り、281.4億kWhであった。このうち事業者であるSE社の発電電力量は251.4億kWhであり、総発電電力量の89.4%を占めた(表1参照)。電源別内訳では原子力による発電量が154.1億kWhで、SE社発電電力量の61.3%を占める。以下、火力が57.3億kWh(22.8%)、水力が40.1億kWh(15.9%)であった。2011年の総発電電力量は2006年と比較して約10%の減少となった。なお、SE社は発電と同時に熱供給も行っており、総熱供給に占めるSE社のシェアは数%であるが、火力および原子力発電所も重要な熱供給源になっている。
3.3 電力の需給バランスと輸出入
 スロバキアは、1998年および2000年のモホフチェ原子力発電所1、2号機の運転開始以来、電力供給力に余裕が生まれ、電力の純輸出国であった(図5参照)。しかし、2006年および2008年にボフニチェ原子力発電所1、2号機が運転を停止すると輸出余力が失われ、2007年以降電力の輸入国に転じている。貿易相手国はチェコ、ハンガリー、ポーランドおよびウクライナの4ヵ国で、ハンガリーおよびウクライナに対しては輸出超過国となっているが、チェコおよびポーランドに対しては輸入超過国であった。ちなみに、2011年の国別輸出入実績は、対ハンガリーが81.1億kWh、対ウクライナが19.5億kWhの輸出超過、対チェコが77.6億kWh、対ポーランドが30.3億kWhの輸入超過であった。
 送電設備に関しては、スロバキア送電系統会社(SEPS)が400kVと220kVの基幹送電線を所有し、国内110kV送電線は各配電会社が所有、SEPSは中央給電指令所(SED)を通して系統運用を行っている。隣国との系統連携は、1992年から中東欧電力供給機構(CENTREL)を通してチェコ、ハンガリー、ポーランド間で電力を融通している。また、1995年から欧州送電強調連盟(UCTE)とも連携が実現している。図6にスロバキアの基幹送電系統図を示す。
3.4電力需給想定
 スロバキアのエネルギー戦略としては、(1)電力自給の確保、(2)最適な価格政策の推進、(3)輸出の促進、(4)エネルギーの通過国としての地位の強化等が掲げられている。エネルギーの安定供給、エネルギー源の多様化の観点から原子力開発を推進しているが、安全性やデコミッショニング、バックエンド問題にも特別な注意を払うことが要請されている。電力不足分に関しては、モホフチェ3、4号機(VVER-440/V213、出力440MW)の建設工事を2013年以降の運転開始を目指して進めているほか、ボフニチェ3、4号機の運転延長、ボフニチェ5号機(出力:120万〜175万kW)の新規建設など、原子力を中心とした電力需給が想定されている。
(前回更新:2006年1月)
<図/表>
表1 スロバキアの電源別発電量の推移
図1 スロバキアの経済成長率の推移
図2 スロバキアの一次エネルギー供給量の推移
図3 スロバキアのエネルギー最終消費量の推移
図4 スロバキアの電源別総発電設備容量の推移
図5 スロバキアの電力需給推移
図6 スロバキアの発送電設備マップ

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
チェコの国情およびエネルギー事情 (14-06-07-01)
チェコの原子力事情 (14-06-07-02)
スロバキアの原子力事情 (14-06-08-02)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第2編2005年版(2005年3月)、2008年版(2008年3月)、2010年版(2010年3月)、スロバキア
(2)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2012年次報告、(2012年5月)
(3)外務省ホームページ/各国・地域情勢/欧州/スロバキア共和国、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/slovak/
(4)OECD・NEA/IAEA:Uranium2011 Resources, Production and Demand(2012年2月)、スロバキア
(5)国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency):スロバキア共和国統計、2009 Energy Balance for Slovak Republic 、Total primary energy supply 、Final consumption by sector
(6)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2012(2011年10月)、スロバキア
(7)世界経済のネタ帳:スロバキア経済成長率の推移、http://ecodb.net/country/SK/imf_growth.html
(8)世界エネルギー会議(WEC):2010 Survey of Energy Resources
(9)スロバキア電力:Map Power plant types Projects (http://www.seas.sk/en/power-plants/map)、
Annual Report 2011

Annual Report 2010

Annual Report 2011

Annual Report 2006

(10)スロバキア送電システム(SEPS):Annual Reports
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