<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
原子力発電の推進(DOE長官顧問会原子力タスクフォース最終報告) (14-04-01-42)

<概要>
 2004年夏に、エネルギー省長官スペンサー・アブラハムは、長官顧問会(SEAB)に小委員会を組織し、連邦政府と産業界が21世紀の電力需要に応ずベく、新原子力発電の資金調達、建設および展開に専念する場合に、向かわなければならない問題とその重要因子を判断するよう要請した。これに基づき原子力タスクフォース(Nuclear Energy Task Force:NETF)が組織され、原子力発電が必要な背景、NETFが何故報告書を書く必要があるか、法制、体制、規制、金融その他の問題を審議した。ここではその概要と勧告について記す。
<更新年月>
2005年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
はじめに
 2004年夏に、エネルギー省長官スペンサー・アブラハムは、長官顧問会(SEAB)に小委員会を組織し、連邦政府と産業界が21世紀の電力需要に応ずベく、新原子力発電の資金調達、建設および展開に専念する場合に、向かわなければならない問題とその重要因子を判断するよう要請した。
 原子力タスクフォース(NETF)は、ベンダー、新しい原子力発電コンソーシアム、官僚、通商と環境組織を含む公共部門、企業部門の代表から、情報とコメントを受け取った。
 NETFは、実際にアメリカ合衆国での原子力のオプションを蘇らせなければならないという「必要(needs)」と原子力産業の「欲望(wants)」、すなわち、原子力産業は新規の建設と関連したリスクとコストを低減させなくてはならないということ、の間の決定的な違いに集中した。この報告書は、NETFの調査結果、結論および勧告を要約するものである。NETFは、報告書が新原子力発電所建設に向けての展開に必要な事項を公平に述べていると信じている。NETFへの委任事項を表1に示す。
1.新規原子力発電に対する背景
 米国では電力需要に応ずる種々の方法が用意されており、米国の発電設備の大部分は政府の関与無しで建設されている。それならば、何故、NETFは新原子力発電所の建設に対する障害と、それを克服する手段を研究しなければならないのか?現在米国の年間発電量の約20%に達する原子力は、その主要な競争者、石炭と天然ガスに勝る2つの重要な利点を持っている:無公害であることおよび重大な価格高騰と供給の不安がないこと。同時に、原子力発電建設の歴史は、高価についたプロジェクトの遅れで満ちている。これらの遅れは、1970年代と1980年代のエネルギー需要の急上昇と結びついて、原子炉建設を発電会社にとって高価な提案とし、この経験から、発電会社と金融業界は新プラントの投資に慎重になってしまった。NETFは、新建設に対する今日の障害を確認し、それの克服の方策を決定することを委任されている。
(1)報告書が書かれた背景
・発電量の約51%と16%を占める石炭と天然ガス発電と違って、二酸化硫黄と窒素酸化物のような、大気汚染物質、および二酸化炭素(温室効果ガス)を排出しない。
ウランは、北アメリカには比較的多量で安定な供給があり、エネルギーの供給安全の問題−主に輸送−がない。原子力発電と石炭、天然ガス発電の違いを表2に示す。
 現在稼働中の103基の原子力発電ユニットは国の電力供給の5分の1になるが、新規のプラント建設が1978年以降開始されなかったということは、注意すべきもっとも重要な事実である。対照的に、最近の10年間だけで、140百万kW以上の新規の天然ガス燃焼発電設備は設置された。
 米国での電力の自由化は、フロントエンドコストが高い、高度に資本集約的形式、すなわち、原子力発電、への投資に対して極めて困難な、そして、クリーンコールプラントに対して少し困難な、環境をつくった。この理由だけで、政府は新原子力発電所のコストを分担すべきか、または別の方法で、支援すべきだと信じる人もいると思う。
(2)新規原子力発電所の建設活性化の条件
 第一に、原子力発電への信頼増加は、どのような形であれ、持続的で適切な公衆の健康と安全の保護の保証に依存している。
 第二に、9月11日以後、安全保証強化がすべての原子力発電所に施され、他のインフラより一層安全保証されている。継続的に安全確保に焦点を置くことは、原子力発電容量の増加の重要な前提条件である。
2.法制、体制および規制の障害
 原子力発電所は、原子力規制委員会(NRC)の許可なしでは運転できない。新規炉の建設に対する障害の1つは、いわゆる「規制の障害」である。歴史的にはNRCと以前の原子力委員会(Atomic Energy Commission:AEC)が現存する稼動中の原子力発電所に、2段階許認可プロセスを使って認可を発行した(10CFRパート50)。プロセスは安全と環境の問題の徹底的な審査を提供したが、プラント運転許可の前に、時に大幅な遅れと高価な改造があった。NRCは、規制の枠組みを改善する別のアプローチを確立した(10CFRパート52)。新しいシステムは、安全性についての慎重で完全なレビューを保証する一方、NRCのレビューと関連した財政的リスクを最小にするのに役立つ。新しい枠組みはレビュープロセスで、できるだけ早く決定し、発電所建設の総費用の主要な部分が負わされる前に、大部分の規制に必須な部分を用意し、規制に伴うリスクの低減を達成する。規制の枠組みと問題について表3に示す。設計認証、早期立地許可と建設運転の一括認可が改訂された認可プロセスの要素である。設計認証の過程の一部として、申請者はプラント建設後、認証された設計に従い運転されることを証明するのに十分な「検査、試験、解析および許容基準」(ITAAC)を提案し、NRCが決定する。ITAACが満たされる場合だけ、プラントを運転できる。NRCは、3つのデザイン、ABWR、System80+とAP600を認証した。デザイン認証は最終的な設計承認を受けたAP1000に関しては未決である。
3.財政的障害
 米国の最初の新規原子力発電所の建設は、過去の経験から、電力産業と金融業界の側では比較的リスクの大きい仕事と考えられている。現在稼動中の多くの原子力発電所の建設は、会社に厳しい財政的な影響を引き起こした。以下のようないくつかの要因が、この影響をもたらした:規制基準と要件の変化、デザイン標準化とモジュラー建設経験の欠如、原子力技術が変革中で、今日の技術的な成熟のレベルに届いていなかったという事実、上昇する金利、変動する電力需要、建設プロセスの未熟と誤った処置。この結果、債券や株の投資家が新規原子力建設の融資に非常に用心深くなる。
 債券金融を提供する人々に対する主なリスクは、事業経営を超えた要因によって運転が遅れ、そのために、収入が遅れることである。例えば、そのリスクは規制や訴訟の結果、生じるかもしれない。このリスクが緩和されない限り、金融業界は、合理的なコストで、十分な量で資本市場から債券金融に接近することが不可能である。株式についても同様である。
 原子力発電所への投資は株式投資家にとって危険と見られているので、株式市場は非常に高いリターンを要求する。少なくとも最も早い新規原子炉の建設期間中は、初期に政府によるある種の支援がないと、経営者や投資家は大型原子力プロジェクトに着手することをためらうだろう。しかし、経営者はプラントが一旦運転されるならば、喜んで原子力プラントに関連したリスクを採ることを、経験が示している。債権株式投資家も、最初の数基のプロジェクトが成功すれば、新規原子力建設のリスクを選ぶ用意があると信じられる。
3.1 金融戦略
 新規建設は、3つの異なった金融環境の中で起こるであろう:規制電力事業者によって遂行されるプロジェクト、自由商業発電会社によるもの、無償還のプロジェクト金融を通して着手されるもの。この3つの金融環境について表4に示す。NETFは、これらの3つの異なる金融環境の中で、種種の財政的活性化の提案を検討した。
3.2 財政的活性化
(1)初号機技術コストの分担
 原子力オプション拡大に対する障害の1つは初号機技術(First-of-a-Kind Engineering:FOAKE)コストである。もし、特定のデザイン原子炉ユニットが多数注文されると確信できれば、このコストを複数の将来のユニットに負わせることができる。しかし、現在の環境では、注文される最初の数ユニットにFOAKEコストを分散させなくてはならない。FOAKEコストは、最初のユニットに対し3億ドルから5億ドルまで変動する。DOEは、このコストを産業界と分担しようとしている。
(2)担保ローンと連邦ローン保証
 担保ローンまたは連邦ローン保証は、特定の原因(例えば規制と訴訟のリスク)に対して、貸し主保護を提供することによって、魅力的なコストで債券金融の有効性を確実にするものである。
(3)連邦電力購入契約
規制や訴訟による遅れは連邦電力購入契約によって緩和される。プラントの商用運転が遅れた場合、現金を融資し、債務を補償する。
(4)加速減価償却
 減価償却の加速は早い時期に税を軽減する措置である。中程度の価値があると考えられる。
(5)投資税クレジット(ITC)
 投資の奨励のため、資産税の一定割合だけ税負担が軽減される。10、15および20%のITCが、最初の新規プラントに対して提案されている。
(6)発電税クレジット
 財政的または社会的政策を推進する努力を奨励するための、企業税の負担の直接的な軽減である。
 NETFは、財政問題に関する審議に基づいて表5に示すような結論に達した。
 原子力発電所の建設と運転の許可を得るプロセスははかなり合理化されている。しかし、新プロセスの正当性と効率性はまだ完全には検証されていない。NETFは、政府が、発電所認可に関する不確実さを解消し、遅延を少なくする手段として訴訟を乱用する脅威を最小にするか、なくすべく行動するものと信じている。許認可プロセスは新しい設計に関してもっと開発、進化させる必要がある。NETFは、最初の2〜3の新プラントを建設する不確実さと財政的障害を克服しようという政府支援の検証計画があるべきだと信じている。
 NETFは、以下のプログラムに、このように立法上の支持と資金提供を勧告する:
・DOEと産業界によって共同で資金を供給される、早期の立地許可と建設・運転結合認可の検証計画。
・新デザインの最初の設備建設に不可欠のFOAKEコストに対するコスト分担計画。FOAKEコストは、3つの主要な設計の各々に対して連邦政府負担最高2億ドルまで−支援すべき設計はエネルギー省長官の裁量による−設計ベンダーと連邦政府で50/50ベースで分担される。
 これらの設計を使用する以降の50基のユニットの各々は、政府に1200万ドル(2004年ドル)を払い戻す。少数の(4基まで)原子炉に対する支援プログラムは、規制発電事業者、自由商業発電者、および無償還プロジェクト金融で資金を得ている発電所等、異なる状況における建設に対して、財政的オプションを提供している。
<図/表>
表1 NETFへの委任事項
表2 米国の原子力発電と石炭・天然ガス発電の違い
表3 規制の枠組みと問題
表4 三種の金融環境
表5 金融問題に関する結論

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<関連タイトル>
原子炉許認可についての米国NRCの動向 (14-04-01-31)
米国エネルギー省と原子力産業界の軽水炉開発共同計画 (14-04-01-39)
米国MIT報告書「原子力の将来」 (14-04-01-40)
米国エネルギー情報局「エネルギー見通し2005年版」の電力予測 (14-04-01-41)
原子力発電の推進(DOE長官顧問会原子力タスクフォース最終報告) (14-04-01-42)

<参考文献>
(1)NEI>U.S.Secretary of Energy Advisory Board Recommends Financial Incentives for New Nuclear Plant Construction to Ensure Energy Security and Environmental Benefits,
(2)New Reactor Licensing,
(3)New Reactor Licensing,
(4)U.S. Department of Energy、Nuclear Power Industry Strategic Plan for Light Water Reactor Research and Development February 2004,
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